リアルで環境が色々と変わりすぎてなかなか思うようにいかない今日この頃。
遅れましたがとりあえずの更新です。ぶっちゃけお話的には全然進んでいません!
第38弾です。
透がボディーガードの任務に行き、部屋を空けてから数日が経った。
透の仮
しかしながら、課題の『自分のプロフィール』制作の方は難航していた。
一通りの掃除を終えた千佳は、一息ついてソファーに座り、携帯を取り出し、未送信ボックスに残されていた編集中のメールを開ける。
・吉水千佳
・1年B組
・
・特技:
・長所:
・短所:物事をマイナスに捉えてしまうこと
・高校卒業したら独り立ちして働く為に、多種多様な専門分野があり、そこで学べばそのまま職に繋がると思い武偵高に入学しました。
『特技』と『長所』の欄がなかなか埋められずにいた。
(透先輩がいつ帰って来るのか分からないけど、このままじゃ透先輩の正式な戦妹になれない・・・!)
はぁ、と溜め息をつき立ち上がる。透の部屋にいるからといって何か思い付くわけでもない。
今日はバイトも入ってないし、家に帰ってゆっくりしよう。
そう考えて部屋のドアに手をかけようとした瞬間───
ガチャッと一足先にドアが開き、目の前にいた人物に驚愕する。
「───か、神崎・H・アリア先輩!?」
まさかの人物の訪問に、千佳は思わずアリアの名前をフルネームで口にする。
「あんた誰?」
アリアは千佳の存在を当然知らないのでごく自然な反応をする。
アリアは見知らぬ少女をまじまじと見つめ始めたかと思うと、ハッと何かに気付いた様子で二丁拳銃を抜いた。
「さては、あんたが
「ええっ!? い、いきなりなんなんですか!?」
突然、拳銃を向けられた千佳は反射的に手に持っていたスクールバッグを顔の前に出し、ガードをする。
「ここは透の部屋よ。出入りする人間は透とあたししかいない。それにあんた、あたしの顔を見て随分と驚いてたわね。きっとこの部屋に盗聴器とか
短絡的な推理を披露するアリアだが、千佳には何を言っているのかさっぱりであった。
自分は透の部屋を掃除しに来ただけなのに、何故アリアに拳銃を向けられているのだろうか。
「もう逃げられないわよ! 観念しなさい、
そもそも先ほどからアリアが口にする『
それすらも千佳は理解していなかった。
「アリア、お前何してるんだ」
ジリジリと詰め寄られる中、突如として聞き覚えのある声が外から聞こえた。
「あんたの部屋にノコノコと姿を現した
「
近付いてくるこの声の主は間違いない。
「・・・何を勘違いしてるのかは知らないが、そいつは
姿を見せたのはこの部屋の家主で、千佳の
「俺の戦妹だ」
「あんた、戦妹いたの!?」
今度はアリアが驚く番だった。
「まだ仮の
「・・・ふーん、そうだったのね」
アリアは千佳が
「ねえ、あんた名前は?」
「よ、吉水千佳です・・・」
アリアの手に拳銃がなくなったことを確認した千佳はカバンを顔の前から下ろし、ゆっくりとした口調で名乗った。
「千佳、いきなり銃抜いて悪かったわね。でも、あんたも武偵ならただ震えてるだけじゃダメよ」
アリアは自分の非を謝罪しつつも、千佳に対して苦言を
「は、はい・・・すみません・・・」
「あんたも、戦妹の教育くらいしっかりしときなさいよね」
「分かってるよ」
アリアは透にも注意すると、千佳を避けて部屋の奥へと入っていった。
「・・・悪いな。最近ストレスが溜まってるせいで、少しでも怪しい奴がいるとすぐあんな感じになるんだ。決して悪気があって言ったわけじゃないから許してやってくれ」
「はい、それは良いんです。事実ですから。でも、私のせいで透先輩も怒られちゃって・・・」
「気にするな。こっちは怒られ慣れている」
透は苦笑いしながら冗談交じりにそう言う。落ち込んでいる千佳を遠回しに
その優しさに、いきなり拳銃を向けられた事の衝撃と先ほどのアリアのお小言で、速くなっていた千佳の鼓動が少しだけ落ち着いた。
「・・・ところで、戻って来たということはお仕事は終わったんですか?」
そして冷静になったところで、依頼でしばらく戻ってこないはずの透がいることに、千佳は違和感を思い出す。
「いや、まだ終わってないが状況が変わったんだ」
「そうなんですか?」
「透ごはんー」
リビングにいるアリアからのお声が掛かったとあり、透は千佳に中に戻るようジェスチャーしつつ部屋へと入る。
「これから夕食を作るが食べて行くか?」
「いえ、神崎先輩もいらっしゃいますから・・・お二人で何か大事なお話があるんですよね?」
透からのお誘いは嬉しいが、怒られた手前、アリアと一緒に食卓を囲むのは気まずいし、恐らく自分が聞かない方が良い依頼絡みの会話などもあるだろう。
そう思い断ったのだが、
「アリアが勝手に泊まりにきただけだから、そんなに気を使わなくても良い」
と言われ、結局夕食にお邪魔させてもらうこととなってしまった。
透が夕食を作っている間、ソファーで大人しく待機することになった千佳。
初めはもちろん、夕飯作りの手伝いをするつもりだったが、透に断られてしまい、しかもアリアと何か会話してみろ、と言われたのだ。
(確かに強襲科《アサルト》Sランクの人と話す機会なんてそうないけど・・・)
携帯をいじっているフリをしながら、チラチラと対角線上に座っているアリアの方に視線を向けてみる。
そのアリアは、透の部屋のテレビで録画していたらしい動物番組を夢中になって観ていた。
こうして見ると年相応の女の子のようで、先ほどまでの怖さや、Sランクという肩書きや威厳が嘘のように思えてしまう。
「なに?」
アリアは千佳の視線に気が付いたようで、番組を一時停止して千佳の方に顔を向けてきた。
元々、ツリ目気味のアリアなのでその淡白な一言と相まり、千佳からすれば
「あ・・・いえ、なんでもないです・・・」
恐らく、本人にそのつもりはないのだろうが、千佳はついつい萎縮して口ごもってしまう。
「何か言いたいことがあるならハッキリ言いなさい」
煮え切らない態度に、アリアもムッとした様子になったので、千佳はその場を
「ど、どうしたら透先輩や神崎先輩みたいに強くなれますか?」
自身の目標である透。その目標に少しでも近付く為にはいったいどんな事をすれば良いのだろうか。
また、アリアはどのような事をしてきて今の実力を手にしたのだろうか。
「あんた、強くなりたいの?」
「はい」
「・・・見た感じ、あんた戦闘には向かなさそうだけど」
アリアは先ほどのビビりっぷりと
そして、手を顎に当てて何かを考えるような仕草をする。
「ねぇ、あんた専門科目は?」
「ろ、車輌科に所属しています!」
「それなら無理して強くなる必要はないわ。車輌科には車輌科の仕事がある。戦闘に巻き込まれる事になったら強襲科や
無論それは習った。車輌科はあくまで戦闘部隊の補助であるということも理解している。
むしろ中途半端に実力をつけて加勢しようものならば、かえって
守られる側にもその自覚と責任は必要なのだ。
「・・・1ヶ月程前ですが覚えてますか? 一般校区で車輌科の生徒が移送した中国系マフィアの人たちにやられてたのを神崎先輩が助けてくれたんです」
「そんなこともあったわね」
「私もあの時その場にいて胸ぐらを掴まれてて正直怖かったです。自分じゃ何もできなくて、周りの人も見てるだけで助けてくれなくて、神崎先輩が来てくれるまでは本当にただただ怖かった・・・」
千佳はあの時の恐怖を思い出し、肩を少し震わせながら話をする。
「あの頃から少し考え方が変わるようになったんです。車輌科だからって弱いまま、何もできないのは、違うんじゃないかって」
アリアの視線を感じつつ、千佳は話を続ける。
「そしたら、今度はバスジャックで透先輩のことを知りました。透先輩は
アリアの事がまだ少し怖くて、自分の事を話すのが少し恥ずかしくて、視線を
熱心に語っていた事に気が付いた千佳は急に恥ずかしくなり、
「あ、ご、ごめんなさい! 私ったら勝手に興奮しちゃって・・・!」
顔を赤面させながら、別に聞きたくもないであろう自分話をしていたことを謝った。
「謝る必要なんてないわよ」
しかし、意外にもアリアは
「人はちゃんとした理由や目標がなければ成長できないわ。なんとなくで強くなりたいとか言ってるんなら怒ってたとこだけど、あんたにはその
アリアは真剣に話を聞き、自身の考えを伝えた上で、千佳の目標を応援してくれているのだ。
専門外だからとか、実力がないからとか言われて否定されるかもとも思っていた。
アリアはそういう偏見の目を持たないのだろう。今までの応答は自分を試していただけ。
「透は優秀な武偵よ。学べることはたくさんあるはずだから、しっかり頑張りなさい」
少しだけアリアという人物のことを誤解していたのかもしれない。
初めは、話も聞かずにいきなり拳銃を抜く怖いだけの印象だったが、動物番組を観ては可愛い表情になったり、人の話をきちんと聞いてアドバイスをくれる
そう思ったら必要以上に怯えていた自分がバカらしくなり、アリアに対しても失礼だったと
「はい! ありがとうございます!」
素直にお礼を口にすることができた。
「それから、あたしのことは、『アリア』で良いわよ」
「はい、アリア先輩!」
千佳が憧れる先輩はもう1人増えるのだった。
○
夕食後、暗くなった道のりを千佳と透は歩いていた。
千佳はこれ以上居座ってはお邪魔になると思ったので失礼し、透は千佳を駅まで送り届けるという名目で一緒に外出していた。
千佳も一度は断ったのだが、なんでもアリアがお風呂に入っている間は家にはあまり居られないとかで、どのみち外にいなければならないそうだ。
どっちが家主なんだか、と口にはしないものの千佳は苦笑いしながら了承し、透は現在隣を歩いている。
「・・・課題は順調か?」
寮を出てしばらくは無言だった2人だが、唐突に透が話を切り出してきた。
しかも内容は千佳が聞かれたくなかったものである。
「あ、ごめんなさい。まだ途中で・・・」
終わってない、と言ったらどうなるのだろう。その不安から弱々しい声で千佳は答えた。
「別に怒ってはない。どこまで進んでるんだ?」
見せてみろ、と言わんばかりに手を出してきたので、千佳はメール画面を開いた携帯を透に手渡した。
「・・・『特技』と『長所』が思い浮かばないのか」
「はい・・・」
透の落ち着いた声に千佳は落ち込んだ声で返す。
「そうだな。千佳、俺の長所と短所を1つずつ言ってみてくれないか」
「え、そんなこと言われましても・・・」
透は自分の理想で憧れの先輩。長所なんていくつも出せるが短所なんて何一つ思い付かない。
「じゃあ、どっちかだけでもいい」
「冷静で、臨機応変に対応できて、リーダーシップもあって、カッコ良くて───」
「1つだけで良い」
即答で次々と透の長所を挙げていく千佳だが、4つ目で止められてしまった。
「初めに挙げてくれた『冷静』だが、例えば『素っ気ない』とか『理屈っぽい』と言ったような短所的な意味合いもある」
「透先輩はそんなことないです!」
「俺自身のことはどうでもいい。俺が今言いたいのは『長所』も『短所』も言い換えることができるということだ」
つまり、透は千佳の『短所』を『長所』に言い換えれば、そこの項目は埋まると言っているのだ。
「『物事をマイナスに捉えてしまう』か・・・例えば、『最悪の事態』を考えられる。つまり、『危機管理能力が高い』とも言える」
それに、と透の話はまだ続く。
「お前は気が利くし、バスジャックの時も
「そんなことが長所や特技になるんですか?」
「そんなことじゃない。どれも自信を持って良いことだ」
お互いに知り合ってまだそんなに経ってないというのに、透はそういう細かな点に目を向けてくれていた。
それが分かった途端、長所と特技を言われただけなのに、千佳は胸がいっぱいになってしまう。
「後は『武偵高に進学した理由』だが、卒業したらすぐ働くつもりで車輌科にいるということは、乗り物関連でやりたい仕事でもあるのか?」
「あ・・・いえ、運転免許さえあれば何かしらお仕事できるかなー、と思って車輌科にしただけです。特にやりたいお仕事はありません」
適当な理由で専門科目を決めていたので印象を悪くしてしまっただろうか、と少し不安になるが、
「そうか。それなら余裕がある時は他の学科の自由履修を受けてみろ。やりたいことがないなら、選択肢を増やしておいて損はない」
透は特に気にした素振りはせず、模範的とも言えるような返答をした。
「はい。あの、透先輩はどうして装備科に所属しているんですか?
透先輩ならどこにいても活躍出来そうなのに」
以前から気になっていたこと。透も今しがたしたアドバイス通り、将来の選択肢を増やすための学科の取り方をしているのだろうか。
「・・・装備科にしたのは、他の学科より稼げるからだ」
「そうなんですか?」
「ああ。顧客を作れれば安定した収益を得られる。それに、
「へぇー、でもなんか意外です。透先輩はあまりお金に興味ないかと思ってました」
バイトもしておらず、他の所よりもワンランク上の寮の部屋に住む透はさぞお金には苦労していないと勝手に思い込んでいたのだが、装備科で上手く稼いで生活を送っていたのだろう。
「別に興味はない。だが、武偵にとってお金は弾薬や装備に繋がる生命線だ。お金がなければどんな武偵も弱体化する。それから・・・」
透の言葉が途切れる。何か言おうか言わないかを悩んでいるような感じだ。
「・・・後は、色々と必要だから稼いでるだけだ」
結局、言ってはくれたものの何か誤魔化すような言い方である。
なんとなくだが、気軽に踏み入っていい内容ではない気がした。
気になりつつも、それ以上の追及を避けて黙っていると、
「着いたな」
と透の一言。
タイミングが良いことに駅に到着したようだ。
「今日はありがとうございました!」
アリアと話せたこと、自分の長所や特技を
「・・・今日聞いたことを参考に今後の方針を決めていく。アドシアードが終わったら少しずつ指導していくからそのつもりでいてくれ」
「はい、よろしくお願いします!」
「ああ、気をつけて帰れよ」
透は千佳を見送ることなく一足先にUターンし、その場から去っていく。
その後ろ姿を見ながら千佳は先ほどのはぐらかされた会話を思い出す。
戦兄妹になれて、短期間ながらも透は千佳のことをある程度理解してくれていたことから、千佳は勝手に透との新密度が上がっていると思い浮かんでいた。
だが、透は千佳との間に一線を引いている。まだ、信頼に足る人物になれていないことがさっきの会話で気付いてしまった。
透から信頼を寄せられる人物になろう。新たな決意を胸に千佳は小さくなっていく背中を見送るのだった。
まとまった時間が取れなくなったので、今まで以上に更新頻度遅くなるかもです。
気が向いた時にちょいちょい進めていこうかなとは思っています。