緋弾のアリア~灰色の武偵~   作:ソニ

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本当は次話と合わせて一つだったのですが、思ったより長くなってしまったので分割。


第3弾~騒がしい新学期~

当然始業式には間に合うことなく、透は新しいクラスとなる『2-A』と書かれた教室に直接来ていた。

 

教室内は騒がしかった。あちこちで2、3人のグループを作ってはそれぞれが会話をしている。

 

一般的によく見られる光景ではあるのだが、

 

(うるさい・・・)

 

透は騒がしい場所は苦手であった。

 

さっさと自分の席で寝よう。そう思い、入口から移動した時だった。

 

「くふっ。ごくろうさま」

 

小柄な少女が通りすがりに耳打ちしてきた。

 

「・・・お前も同じクラスだったのか」

 

透はそれだけ言い残すと、自分の席へと向かう。

 

ところが、座席表で確認したはずの席は既に他人によって使われていた。何やら隣の人物と会話をしている。

 

おかしい。座席表は確かここの席を示していたはずだ。

 

自分が間違っていることもありえる。透は念の為、そこに座っている男子生徒に訊いてみることにした。

 

「少しいいか」

 

透の呼び掛けにその席に座っていた男子生徒が会話を中断し、見上げる。

 

「何だ?」

 

「そこは俺の席だと思うんだが」

 

「おおっ、そうなのか。悪ぃな。使わせて貰ってたぜ」

 

男子生徒は申し訳なさそうに謝り、立ち上がった。

 

身長190cmは越えているだろうか。今度は反対に透を見下ろす形となった。

 

「俺は武藤剛気(むとうごうき)ってんだ。よろしくな!」

 

「・・・平川透だ。会話中に水を差してすまなかった」

 

「気にしなくて良いよ。勝手に使ってた僕たちにも非があるし」

 

透が謝ると、武藤と会話をしていた少年も立ち上がった。

 

「僕は不知火(しらぬい)。平川君、よろしくね」

 

爽やかに自己紹介をし、笑顔で手を差し出すイケメン不知火君。

 

女子相手ならドキッとしてもおかしくないだろう。

 

「ああ、こちらこそよろしく」

 

透は差し出された手を軽く握った。

 

 

「おっ、キンジが来やがった」

 

武藤の目線の先には何やら負のオーラを纏ったキンジがいた。自分の席に座るや否や頭を抱えて沈んだ。

 

 

 

 

 

(最悪だ・・・)

 

アリアから何とか逃げ切ったキンジは教務科教務科(マスターズ)に報告を済ませ、新しいクラスで机に突っ伏していた。

 

『HSS《ヒステリア・サヴァン・シンドローム》』──キンジは独自に『ヒステリアモード』と呼んでいる──。

 

この特性を持つ人間は性的に興奮すると、一時的に思考力や判断力、反射神経などが通常の30倍にまで向上する。

 

ただし欠点として、女性を最優先して守ろうとするあまり、物事の優先順位が正しく付けられなかったり、女性に対してキザな言動を取ってしまうという。

 

女子の前でそのヒステリアモードになってしまったことにキンジは激しく落ち込んでいたのであった。

 

「いよーう。喜べ、キンジ! 今年も車輌科(ロジ)の武藤剛気さまが一緒のクラスだぜ」

 

空気を読めと内心毒づくキンジ。

 

誰だって落ち込んでいる時にハイテンションで話しかけられれば、苛立ちを覚えるだろう。

 

星伽(ほとぎ)さんと別のクラスになったのが、そんなに悲しいのか?」

 

「武藤、今の俺に女の話題を振るな・・・」

 

「んだよ、連れねぇな」

 

武藤はしぶしぶキンジの右隣の席に座った。本来の自分の席のようだ。

 

「はーい、皆さん。席に着いてくださーい。2年生最初のHRをはじめますよー」

 

ほぼ同じタイミングで担任が教室に入って来た。会話を辞め、各々が自分の席へと着く。

 

「まずは去年の3学期に転入してきたカーワイイ子から自己紹介してもらいまーす」

 

先生の言葉で立ち上がった生徒の背中にキンジは見覚えがあった。

 

小学生と見誤る程の低身長に、嫌でも目につくピンク色のツインテール。

 

教壇に立ち上がり、キンジに向けて指を差したその少女は───

 

 

「先生、あたしはアイツの隣に座りたい」

 

 

神崎・H・アリアだった。

 

 

あまりの出来事にキンジが呆然としていると、武藤が席を代わると言い出した。

 

「あらあら。最近の女子は積極的ねぇー。それじゃあ武藤君、席を代わってあげてー」

 

先生のOKが出ると、教室内は大盛り上がり。拍手やら何やら聞こえるが、ほとんど男子勢の罵声やら非難の声によってかき消される。

 

「キンジ、これさっきのベルト」

 

アリアはキンジに近付き、ベルトを投げ渡した。

 

実は爆発に巻き込まれた際に、アリアはスカートのホック部分を壊していた。

 

それに気が付いたヒステリアモード時のキンジがスカートを落とさないように自分のベルトを貸していた。アリアはその後、保健室で予備のスカートを借りた為、ベルトを返した訳だが、

 

「分かった!! 理子、分かっちゃった! これフラグばっきばきに立ってるよ!!」

 

そんな出来事があったと知らないおバカが一名、状況を悪化させようとしていた。

 

「キーくん、ベルトしてない。そのベルトをツインテールさんが持ってた。これ謎でしょ、謎でしょ!? でも理子には推理できちゃった!」

 

キンジの左隣に座っていた、ツーサイドアップに結った金髪のゆるい天然パーマ、小柄な体型に見合わない放漫な胸を持った少女が立ち上がった。

 

峰理子(みねりこ)。キンジ曰く『探偵科(インケスタ)No.1のバカ女』だが、ロリ顔巨乳に、ヒラヒラなフリルだらけに改造した制服。武偵校ではある意味有名人で、ファンクラブができる程である。

 

「キーくんは彼女の前でベルトを取るような何らかの行為をした! そして彼女の部屋にベルトを忘れてきた! つまり二人は・・・熱い熱い、恋愛の真っ最中なんだよー!」

 

この発言にクラス内の騒ぎは更にヒートアップ。

 

「キンジは俺と同類だと思ってたのに!」 「フケツ!」 「後で八つ裂きにしてやる!」 など、キンジは罵声を浴びせられる始末。

 

 

 

 

 

またこのばか騒ぎにキンジとは別に苛立つ人物がいた。

 

「こういうのは苦手かい? 平川君」

 

「・・・ああ、嫌いだ」

 

苦笑いしながら訊ねてくる不知火に、透は淡白な返事を返すと机に伏せて寝ることを決め込んだ。

 

その時、2回程乾いた音が教室内で鳴り、辺りは一気に静まり返る。

 

その発音源はアリアの両手に握られた拳銃からだった。

 

「れ・・・恋愛だなんて、くっだらない!!」

 

一番盛り上がっていた理子は目の前で発砲されたことに文字通り目を丸くし、変な動きをしながら着席した。

 

「全員覚えておきなさい! そういうバカなことを言うヤツには・・・」

 

アリアは拳銃を持ったままわなわなと身を震わせて、後に何度も聞くことになるあのセリフを叫んだ。

 

「風穴開けるわよ!!」

 

 

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