緋弾のアリア~灰色の武偵~   作:ソニ

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GW2日目。
今回は一応、アリアメインのお話となります。




第40弾です







第40弾~5月3日~

その日、アリアは新宿警察署まで来ていた。

 

その理由はもちろん、母親───神崎かなえと面会をするためである。

 

面会室に通されてから待たされること数分。

 

2人の管理官に見張られて、奥の扉からかなえが出て来た。

 

「あら、アリア。今日は透さんは一緒じゃないの?」

 

前回の面会時にパートナーと称して紹介した透が隣にいないとあってかかなえは少し不安そうに尋ねてくる。

 

「ママ。今、あたし達『魔剣(デュランダル)』に狙われてる()のボディーガードをしてるの。だから、透にはそっちに当たってもらってるわ」

 

今現在、アリアが面会に来ている間、透にはレキの部屋へ行ってもらいキンジの部屋の見張りをしてもらっていた。

 

「良かったわ。ちゃんと上手くやってるのね。もう1人の・・・キンジさんとは仲良くしてるのかしら?」

 

「そ、その、あのバカは・・・」

 

アリアは顔を少し赤くし、ゴニョゴニョと呟いたが、「と、とにかく!」と仕切り直した。

 

「今回の件で絶対に魔剣(デュランダル)を捕まえる。そうすればママの懲役(ちょうえき)も635年に減刑できるわ」

 

「アリアありがとう。でも、少し焦りすぎよ。あなたが『武偵殺し』を冤罪だと証明してくれたから最高裁も延期になった。だからあなたは落ち着いて、パートナーとの関係性を大事にしなさい」

 

「・・・うん」

 

アリアの気持ちを受け止めつつも、母親として道を示すかなえの言葉にアリアは素直に頷いた。

 

自分1人じゃ解決できないこともある。それは『武偵殺し』の1件で痛感した。

 

今、アリアには透がいる。ケンカして少し距離を取ってしまっているがキンジもいる。

 

2人のパートナーと協力することが一番の近道だということをアリアは学んだ。

 

「神崎、時間だ」

 

壁際に立っていた管理官に言われ、かなえは「はい」と応じる。

 

「ママもう少しだけ待ってて。絶対・・・絶対に助けてあげるから」

 

アリアのその言葉にかなえは安心したような目で微笑み、2人の管理官と共に退室していった。

 

3分という短い面会時間。本当はもっと話したかった。

 

キンジのこと。透のこと。まだ話したことのないあかりのことも。

 

そんな他愛ない会話も許されない状況が悲しいし、悔しい。

 

しかし、いつまでも落ち込んではいられない。

 

そういう当たり前の会話ができるような平穏を取り戻す為にも、今は魔剣(デュランダル)の件に集中しなければ。

 

要件を済ませたアリアはレキの部屋に向かうべく、警察署を後にするのだった。

 

 

 

 

警察署を出てから新宿駅方面へ歩きだしてすぐにアリアは見知らぬ男に声を掛けられた。

 

「すみません。君が神崎・H・アリアさんかな?」

 

「そうだけどアンタ誰?」

 

その男は黒髪短髪で、白色無地のTシャツの上にグレーのパーカーを羽織り、黒色のスキニーパンツという今時のファッションをしており、『爽やかイケメン』という言葉が似合う印象である。

 

「僕はフリーの探偵をしている者だよ」

 

その男は懐から名刺を一枚取り出し、アリアに手渡す。

 

八代(やしろ)探偵事務所 所長 八代白夜(びゃくや)

 

名刺には名前と電話番号が書かれていた。

 

「随分と若いわね」

 

「ははっ。よく言われるけど、これでも30なんだ」

 

苦笑いしながら答える八代という男は高校生と言っても通じるくらいの童顔であった。

 

「君が警察署内に入っていく姿を見かけてね。待っていた甲斐(かい)があったよ」

 

「悪いけどあたし忙しいの。何を知りたいかは知らないけど他を当たってくれる?」

 

アリアは渡された名刺を突っ返し、さっさとと歩き出す。

 

「いやいや、君に()()()()()()()()()()()()()()ことがあるんだよ。神崎かなえさんについてね」

 

かなえの名前が挙がったとあり、アリアの足がピタッと止まる。

 

「話を聞いてくれる気になってくれたかな?」

 

この八代という男、なんだか胡散臭(うさんくさ)い。

 

アリアの直感も関わるべきではない、と言っているのだが、大好きな母親について何か情報があるならば聞かざるをえない。

 

「早くママについての情報を教えなさい」

 

アリアの返答に満足したのか、八代はニコリと笑い、

 

「じゃあ、続きはお茶でもしながら、ね」

 

近くの喫茶店まで連れて行くのであった。

 

 

 

 

 

「分かりきっていたことだが、全く異常なしだな・・・」

 

「はい」

 

レキの部屋からキンジの部屋を覗く透とレキ。

 

2人の視線の先は、リビングで白雪がキンジに勉強を教えているという、青春と平和そのものであった。

 

魔剣(デュランダル)もどこからか2人の様子を見張っているだろうが、寮の部屋にこもっている以上手出しはできないだろう。

 

耳につけたイヤホンから2人の会話が聞こえているのを確認し、双眼鏡を目から離した。

 

「レキはアドシアードの代表なんだろ? 学校に行かなくて良いのか」

 

何事もない2人組をただ見張り続けるのはなかなか骨が折れる。

 

レキからは話題を振ってこないので、たまに透からこのように話しかけて暇潰しをしていた。

 

「学校へは昨日行きました」

 

「昨日はアリアと2人で見張っていたんじゃないのか」

 

レキはふるふると首を横に振り、

 

「昨日は、私がアドシアードの件で学校へ行き、アリアさんがここから白雪さんを見張っていました」

 

ドラグノフ狙撃銃のスコープから目を離し、静かに答えた。

 

「今日は私が一日中白雪さんを見張ります。アリアさんからも、できれば透さんを休ませるように言われていますので」

 

透は基本的に夜中に見張りをしているので、昼夜逆転の生活をするのが理想的なのだが、そう上手くいっていないのが現実である。

 

昨日は夾竹桃に呼び出されて、今日はレキと共に見張り。実はまとまった睡眠を取れたのは2日前の授業中だけである。

 

「いや、それならお前は腕の時間貸し(パート・タイム)なんだから、こっちよりアドシアードの方を優先すれば良い」

 

実際、この様子なら見張りは2人もいらない。

 

1人で充分なら、レキをアドシアードの練習に送り出す方が良いに決まっている。

 

「睡眠不足は集中力、注意力を低下させます。今のあなたに必要なのはそれらを回復させること」

 

アリアの命令だからか、それともレキが頑固なのか、いずれにせよレキはその場から動こうとはしなかった。

 

「問題が起きた場合は必ず起こします。ですから、透さんは休息を取ってください」

 

「・・・じゃあ、お言葉に甘えさせてもらう」

 

いたちごっこが見える会話を早々に切り上げた透はスクールバッグを枕にリビングで横になる。

 

目を閉じてから10秒と持たずに眠りにつくのだった。

 

 

 

 

 

喫茶店へと移動したアリアと八代はそれぞれ注文してから話を始めた。

 

「早くママのことを教えなさいよ」

 

「そんなに慌てないで。順を追って説明するから」

 

初めに出された水を一口飲むと、八代は語り始める。

 

「改めてだけど、神崎かなえさんは『武偵殺し』の件に始まって多くの事件の容疑者として服役中。ここまでは間違いないよね?」

 

「ええ、でも───」

 

「分かってる。先日、起きたハイジャック事件。その事件を君が解決したことから、かなえさんの『武偵殺し』の容疑は晴れた」

 

八代が「ここから」と言いかけたところで、2人が注文したコーヒーが来たので会話は一時中断される。

 

「・・・さて、ここからが本題なんだけど、今回『武偵殺し』の一件が冤罪だって判明したことで、警察内の一部からその他の事件も冤罪なんじゃないかって声が挙がっているんだよ」

 

「そ、それ本当なの!? っていうか何であんたはそんなことを知ってるの!?」

 

「僕はこれでも元警官でね。警察関係者には知り合いが多いんだよ」

 

驚きと興奮で大きな声が出たアリアを静めるように、八代は口元に人差し指を当てながら話す。

 

「・・・ママは本当に無罪よ。何も悪いことしてないのに、あいつらときたら・・・!」

 

アリアは、様々な罪を被せたイ・ウーの連中はもちろん、容疑者になっているとはいえ、かなえを乱暴に扱う警察にも腹を立てていた。

 

「だけど、どの事件においても、かなえさんが犯人という証拠は見つかっている」

 

「そんなもの全部でっちあげの証拠よ!」

 

「そう・・・不自然すぎるくらい()()()()()()()()()()()。複数の事件を起こしておいて、その全てに自分が犯人だという足跡を残す犯罪者がこの世にいると思うかい?」

 

注文したアイスコーヒーを飲み、八代は話を続ける。

 

「僕の知り合いの警官によると、かなえさん絡みの事件は上から圧力がかかっていて、どうも正式な再捜査ができないんだって。それもおかしな話だよね」

 

八代は突っ返された名刺を再び取り出し、アリアの目の前に置いた。

 

「そこで僕の出番だ。まあ、警官が民間に依頼するなんて問題だから内緒にしておいてね」

 

「仮に・・・その話が本当だとしても、あんたに何が出来るの?」

 

アリアは今までの話を全て聞いた上で、名刺には目もくれずにコーヒーに口をつけた。

 

「それにあんたがママの無罪を証明することに何のメリットがあるの?」

 

「メリットなんて悲しいこと言わないでよ。僕は冤罪を許せないだけさ。これでも弁護士の人と協力して逆転無罪にさせた事件とかいくつかあるんだよ」

 

口頭ではあるが、その実績が事実ならば協力者としては確かに心強い。

 

「だからまずは君が立ち会いのもと、かなえさんと面会させて欲しいんだ」

 

八代の真摯(しんし)な態度にアリアは頭を悩ませる。

 

この男の話を全部鵜呑(うの)みにするのは危ないような気がする。

 

しかし、一方で頼りたい気持ちも少なからずあった。協力者が増えてくれれば、それだけかなえの刑期短縮と出所を早められるかもしれないのだから。

 

「・・・少し考えてみてくれないかな」

 

八代はアリアの目の前の名刺を裏返し、電話番号とメールアドレスを書いていく。

 

「それは僕個人の連絡先。僕の手を借りたくなったらいつでも連絡して。他の依頼もあるから出られない事もあるけど、なるべく対応はするから」

 

八代は残りのコーヒーを飲み干すとレシートを取り、席を立った。

 

アリアは八代がいなくなり数分経ってから、名刺を手に取り喫茶店を後にするのだった。

 

 

 

 

 

「・・・!」

 

ガチャッと玄関のドアが開く物音で透は目を覚ました。

 

アリアが戻ってきたのだろう。

 

別にやましい事があるわけではないが、人間の本能なのだろうか。透は慌てて体を起こし、レキの隣へ行き外を眺め始めた。

 

「透」

 

その聞き間違える事のない声にアリアだと確信し、透は振り返る。

 

「かなえさんには会えたか?」

 

「うん。ちょっとその事で話があるの」

 

レキには引き続き見張りをしてもらい、アリアは今日あった出来事を話し始めた。

 

 

 

「なるほどな」

 

透はアリアの話に出て来た男───『八代白夜』という人物を早速、携帯で調べ始める。

 

一応、探偵事務所のHP(ホームページ)も簡易ながら存在しており、そこには顔写真も載っていた。

 

「アリア、お前が会った男はコイツで間違いないか?」

 

「うん。コイツで合ってるわ」

 

それならば今度は逆転無罪に導いたという事件の内容や八代の貢献度。それらを調べたいところだが、手間暇がかかってしょうがない。

 

これらは探偵科(インケスタ)辺りに依頼をお願いする事にして、

 

「アリアはコイツに協力してもらうつもりなのか?」

 

まずはアリアがどうしたいか、気持ちの確認をする。

 

「透はどうした方が良いと思う?」

 

「俺はこの八代と直接話してないから、正直なんとも言えない。ただ実績が本物で、嘘偽りなく本気でアリアに協力してくれるなら、かなり大きな戦力にはなるとは思う」

 

自分なら八代が嘘をついていたかどうか判断できただけに、その場にいなかったことが少しだけ悔やまれる。

 

「私も透とほとんど同じ意見よ。だから一度、一緒にママの面会に行っても良いとは思ってる・・・でも、何か引っ掛かるのよね」

 

「・・・何となく怪しいってことか?」

 

「あくまで、あたしの直感よ。根拠があるわけじゃないの」

 

いつもなら自分の直感に自信のあるアリアだが、今回はやけに控えめである。

 

かなえ絡みのことだから慎重になっているのかもしれない。

 

「とにかく、俺はこの八代のことを探偵科に早急に調べてもらうよう依頼しておく。それまで返事は保留にしておこう」

 

「そうね。それが懸命ね」

 

アリアが容認したということで、透は電話帳を開く。

 

少し前までなら、探偵科向けの依頼は全て理子にお願いしていたのだが、今は音信不通だ。

 

なので透は他の知り合いに頼むことにする。

 

『さ行』の(らん)を開き、ある人物を選んでメールを作成する。

 

 

 

『To 佐々木志乃』




またしても新キャラが出てきてしまった。


いかにも怪しい八代ですが、今後どんな活躍するのか楽しみにして頂ければと思います。


次回は透と志乃メインの予定です。

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