緋弾のアリア~灰色の武偵~   作:ソニ

42 / 52


GW3日目に突入です。
今回は志野がメインのお話。


第41弾です。


第41弾~5月4日~

 

GW(ゴールデンウィーク)による連休も折り返しとなる今日。

 

志乃は()()()()のせいで、1日のほとんどを不意にしてしまっていた。

 

それは(さかのぼ)ること、ほぼ24時間前。一通のメールから始まった。

 

その頃、志乃はあかりの妄想に(ふけ)っていた最中だったのだが、携帯が震える音で意識は現実に戻される。

 

(せっかく、あかりちゃんと『あ~ん』し合っていたのに誰・・・)

 

携帯を開くと1件のメールが入っていた。

 

あかりとのイチャイチャタイムを邪魔した相手はいったいどこの誰なのかとメールを開けると、『From 平川透』の文字。

 

まさかの人物だった。夾竹桃の事件以降、顔も合わせていなかった相手からどんなメールなのか。

 

あかりやライカ宛にも送られているのかと思いきや、自分だけにしか送信されていない。

 

(い、いったいなに・・・)

 

ドキドキしながら内容を確認すると・・・

 

『連休中にすまない。

 

『八代白夜』。職業探偵の男らしいんだが、こいつが証人として裁判に出廷した記録を明日までに調べて欲しい』

 

内容は依頼のメールであった。

 

いったい自分は何を期待していたのだろう。

 

せっかくの休日を犠牲にしてまで調べたくもないが、仮にも武偵高の先輩からの依頼。

 

しかも、何かとお世話になった先輩。

 

さらに言えば、闇討ちの一件で弱みも握られている。透に限って言いふらしたりすることはないだろうが、あの一件は志乃自身、少なからず罪悪感があるのだ。

 

となれば断れる理由がない。

 

昨日の夜、今日の日中をフルに使い、『八代白夜』のことを調べあげたのだ。

 

そして、この事は既に透に連絡済みであり、現在は屋敷に来る透を待っている状態。

 

わざわざ足を運ばせるのも申し訳ないので、資料をまとめてメールで送ると伝えたのだが、ついでに渡したいものもあるのだとか。

 

「・・・・・・」

 

客間のテーブルに資料を置き、ソファーに座っていた志乃だが、ソワソワとしていて落ち着きがない。

 

資料の漏れがないか、ざっと確認してみたり、一応、着替えた武偵高のセーラー服に乱れがないか鏡で見てみたり。

 

何故こうも落ち着かないのだろう。自問自答してみるも答えは出ない。

 

そうこうしているうちに、呼び鈴が鳴る音が聞こえ、反射的にソファーの上でピシッと背筋が伸びた。

 

佐々木家に(つか)える双子メイドの宮本詩織(みやもとしおり)伊織(いおり)姉妹に案内され、客間にやってきたのは、やはり平川透先輩。

 

「よ、ようこそ」

 

志乃は立ち上がって挨拶するも、噛んでしまう。

 

普段なら普通に挨拶できるはずなのに、何故かどぎまぎとしてしまった。

 

透を案内し終えた宮本姉妹は、顔を見合せながら嬉しそうに話をしている。

 

その喜びの表情は、初めてあかりを家に連れて来た時と似ている。

 

ここで、志乃はハッと気が付いた。

 

これまで志乃が友達を家に招いた事があるのは、あかりとカルテットでの合宿の時と2()()だけ。

 

そんな志乃が休日に異性1人だけを家に呼んだ。

 

(まさか・・・)

 

2人が勘違いしていてもおかしくはない。

 

というか、あの表情は絶対に勘違いしている。

 

自分が落ち着かなかったのも、人を招待する機会が少なく、しかも異性の先輩だということで意識してしまっていたのだろう。

 

これはいきなりの凡ミスである。透はわざわざ外出させるのも悪いということで家まで来てくれたのだが、断って外で待ち合わせれば良かった。

 

「佐々木? 顔が赤いけど大丈夫か?」

 

突如、目の前に現れた透の顔。あれこれ考えていた為、接近に気が付かなかった。

 

「だ、大丈夫です!」

 

ソファーがあり、後ろに退()けなかった志乃は勢い良く座り、透と顔の距離を離した。

 

「そうか。少し無理をさせすぎたかと思ったが大丈夫なら良かった」

 

志乃が座ったとあり、透も向かいのソファーに腰を下ろし、(ふところ)から何かを取り出すと志乃の前に置いた。

 

「これは何ですか?」

 

それは、チケットや商品券など横向きの物を入れるためのギフト用の封筒。

 

中を開くと、『東京ウォルトランド・1デーパスポート』が2()()入っていた。

 

これが例の渡したいものなのだろうか。

 

「それはまあ、快気祝いみたいなものだ」

 

「え? ありがとうございます」

 

快気祝いとは、夾竹桃との戦闘の際に負ったケガの事だろう。

 

実際、志乃のケガは完治とまではいかないが、ほとんど()えていた。

 

志乃は予想だにしていなかったプレゼントに驚きつつもお礼することを忘れない。

 

しかし、何故遊園地のチケットなのだろうか。しかも2枚。

 

「明日そこで花火大会があるみたいだから良かったらと思ってな」

 

表情に出ていたのだろうか。こちらから尋ねる前に透が答えた。

 

しかし、その回答が志乃をさらに困惑させる。

 

花火大会があるからと用意してくれたチケット。しかも、今の言い方と2人分のチケットから連想してしまうのは───

 

(───で、デートのお誘い・・・!?)

 

いやいやと頭の中で否定してみるも、そう考える方が自然である。

 

そもそも、透は何故急に依頼をしてきたのだろうか。しかも自分に。

 

探偵科(インケスタ)には志乃よりも優秀な先輩はいくらでもいるし、透だって他に知り合いはいるはずだろう。

 

出来事を客観的に捉えてみても、導き出してしまう推理は『デート』の3文字。

 

今回の依頼も実は形式的なものであり、本命はこちらだったのではないのだろうか。

 

様々な憶測が志乃の頭の中で飛び交う。

 

しかし、自分にはあかりという心に決めた人がいる。

 

ここはハッキリと断っておくべきだ。

 

「あ、あの私───」

 

「あかりでも誘って行って来たらどうだ?」

 

「───はい、私にはあかりさんが・・・って、え?」

 

今、透は何と言ったのだろうか。

 

無論、透の言った事は聞き取れた。しかし、理解するのに少しの時間を要した。

 

「えっと・・・平川先輩。このチケットは・・・」

 

志乃は自分の予想していた事と透の言葉との事実関係の相違を確認するように、ゆっくりとした口調で言葉にしていく。

 

「ああ。お前とあかり用に用意したものだ。別に明日じゃなくも使えるから都合の良い日に使ってくれ」

 

全ては志乃の思い違いであった。

 

透は初めから志乃の事を考えて、志乃と()()()の為にチケットを渡してくれていたのだ。

 

その事が分かった途端、志乃は気恥ずかしさを覚え、先ほどよりもさらに顔を熱くする。

 

「本当に大丈夫か?」

 

「ええ! 問題ありません! 平気ですから早く『この(かた)』のお話をしましょう!」

 

再度、体調確認してくる透に、志乃は心情を悟られまいとして、机の資料をバンバンと叩きながら強引に話を持っていく。

 

「あ、ああ・・・」

 

志乃の豹変した態度と圧を受けた透は少し身を引きながら頷いた。

 

「・・・こほん。では」

 

志乃は咳払いを一つし、呼吸を落ち着けてから資料を1ページめくり、透が見やすくなるように置き直した。

 

「八代白夜さん。30歳男性。神奈川武偵高出身で専門科目は強襲科(アサルト)探偵科(インケスタ)を兼科。卒業後は神奈川警察署で6年間勤めた後、25歳の若さで新宿に探偵社を開業したみたいです」

 

志乃は生年月日、学歴・職歴等が記載されたページを要約しながら説明していく。

 

透が求めていたものはあくまで、八代が証人として、裁判に出廷した記録。

 

なので、ここでは八代の簡単な経歴にだけ触れておく。

 

「それから八代さんが裁判に立ち会った件数ですが、約12件。検察側の証人が5件。弁護側としての証人が7件でした」

 

「その弁護側の裁判で無罪になった事件はいくつある?」

 

「無罪ですか? えっと・・・3件ですね」

 

志乃はページをパラパラとめくり、その3件のうちの1件の事件をまとめたページを透に見せる。

 

「これは当時31歳の男性が出勤中に痴漢の容疑をかけられた事件です。実際は被害女性と犯行現場を見たと供述した男性による示談金を目的とした共犯であることが八代さんの調査で判明し、不起訴となりました」

 

「他には?」

 

「後は、一家心中事件で生き残った当時46歳の男性に容疑がかけられたものの、死亡した奥さんの犯行であった事を証明。もう一件は、連続空き巣犯が別事件の強盗殺人の容疑をかけられてその容疑を晴らしています。その空き巣犯は住居侵入罪で捕まっているので無罪放免という訳ではありませんが」

 

志乃自身、調べているうちに思ったことであるが、この八代という人物はかなりの手腕の持ち主である。

 

容疑者を無罪にしえるだけの証拠を集める能力もそうだが、検事や弁護士からも証人として事件に協力要請を受けるほど、一定以上の信頼性があるのだろう。

 

「・・・そうか。昨日の今日でよく調べてくれた。感謝する」

 

透はその無罪の事件、及び他の事件のページも、さっと流し読みしてから志乃にお礼を述べる。

 

「報酬は何が良いか考えておいてくれ。俺にできる範囲のことならなんでもする」

 

「え? ですが、先ほど遊園地のチケットを・・・」

 

「あれは快気祝いだと言っただろ」

 

透は資料を手に持ち立ち上がる。どうやらもう帰るようだ。

 

なので、志乃も立ち上がり玄関までお見送りをする。

 

「あの・・・今回どうして私に依頼をして頂けたのでしょうか」

 

透が家を出ていく前に一言、気になっていた疑問をぶつけてみる。

 

「・・・俺の知り合いで、早急に対応してくれそうなのが佐々木だけだと思ったから、だな」

 

そう、透が志乃を選んだのはのは合理的な判断の結果に過ぎない。決して好意からくるものではなかった。

 

透を見送った直後、志乃は胸の奥で何か引っかかるような感覚を覚える。

 

その違和感は、しばらく続くのであった。

 

 

 

 

 

「・・・という訳で、八代の実績に関しては何も言うことはない」

 

自分の部屋へと帰宅した透は、アリアに八代の調査結果を報告していた。

 

「どうするかはアリア次第だ。もし必要なら俺も付き添うが」

 

「そうね。今度アイツと会う時、あんたがいてくれたら心強いわ」

 

八代の実績を確認したアリアはひとまず彼と一緒にかなえの面会に行く事に決めたようだ。

 

アリアは携帯を手に取り、早速八代に電話をかけていた。

 

「もしもし、あたしよ。神崎・H・アリア。昨日の話だけど、いいわ。ママに会わせてあげる」

 

アリアは一方的に要件を伝えると、電話の向こうの八代が話しているためか少しの間、口を閉ざす。

 

「ええ・・・明後日? ・・・・・・分かったわ」

 

アリアは通話を切ると、透に顔を向けてきた。

 

「明後日、八代と会うのか?」

 

「ええ、午後4時以降ならいつでも。それまでは忙しいんだって」

 

明後日は連休明けで、アドシアードが始まる日である。

 

2人揃って武偵高から離れるわけにもいかない。

 

「だから、あんたは武偵高に残って白雪の監視。くれぐれも魔剣(デュランダル)に気付かれないようにね」

 

「・・・了解した」

 

アリアは八代の事を少し怪しいと言っていた。

 

そんな人物からアドシアードが始まるというタイミングでの呼び出し。

 

(考えすぎか・・・?)

 

一抹の不安を感じるが、それを確認する手立てが今はない。

 

その不安が的中しないことを、透はただ願うばかりであった。

 





~透の帰宅後~

志野「あかりさん、明日ウォルトランドで花火大会があるみたいなんですが、一緒に行きませんか?」

あかり『ごめん、志野ちゃん。今あたしお金なくって・・・』

志野「私も頂いたチケットですから、お金の事は心配しなくていいですよ」

あかり『本当!? じゃあ、ライカと麒麟ちゃんも誘っても大丈夫!?』

志野「え?」

あかり『明日、ライカの誕生日だからみんなで遊んで祝おうよ!』

志野「そ、そうですね・・・」



~~~


透 (佐々木からメール?)

志野『先ほどの報酬のお話ですが、ウォルトランドのチケットもう2枚程お願いします』

透 (・・・よく分からないが、まあ用意してやるか)


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。