緋弾のアリア~灰色の武偵~   作:ソニ

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今回は透についての説明回になります。




第5弾~灰色の武偵~

実力試しを終えた透はアリアに連れられ、彼女の部屋へと向かっていた。

 

当初はキンジが住んでいる第3男子寮へ行く予定だったが、先に荷物を取りに戻りたいとアリアが言い、現在に至っている。

 

「しかし、お前に戦姉妹(アミカ)がいたとはな」

 

武偵校には先輩の生徒が後輩の生徒を1年間指導する『戦徒(アミカ)』という制度がある。男子同士が組むと『戦兄弟(アミコ)』、女子の場合は『戦姉妹(アミカ)』と呼ばれ、異性間で契約することも可能である。

 

戦徒になれば、後輩は先輩の依頼(クエスト)に付き添うこともできるようになるが、後輩のミスで先輩が命を落とす事例も少なくない。なので、それなりに腕が立つ後輩であるに越したことはない。

 

Sランク武偵──武偵には、通常E~Aまでのランクが存在し、民間の依頼や各学科の試験の成績によってランク付けが行われる。そして、Aの上にはSという特別なランクがあり、Sランク付けされた者はその道のプロと呼んでも差し支えない──であるアリアは当然死と隣り合わせである仕事が多い。

 

そんな彼女に戦姉妹がいることは透にとって少なからず驚きであった。

 

 

今はその戦妹(いもうと)に荷物を準備させているようだ。

 

「お前の戦妹、余程優秀なんだな」

 

「・・・諦めの悪さならSランク並みなんだけどね」

 

何とも歯切れの悪い物言いである。優秀でないなら契約した理由が見えてこない。

 

透は理由を訊こうとしたが、着いたわ、とアリアの一言。いつの間にか女子寮前まで来ていたようだ。

 

「あんたはここで待ってなさい」

 

「言われなくとも」

 

透は中へ入って行くアリアを見送り、ふぅと一息吐いた。

 

(諦めの悪さか・・・)

 

透の過去の記憶には諦めの悪さに定評がある人物が1人浮かんでいた。

 

 

明るく、無邪気で、少し抜けていて、そして諦めが悪い、そんな女の子。妹もいたが、反対に大人しくしっかり者だった。

 

その()達とは親同士の親交が深かった為、透が9歳の頃から、週末になると県外でありながらその姉妹の家を訪れていた。

 

活発な兄と姉はよく竹刀で戦ってみたり、徒手格闘したりと、遊びの範囲内で楽しんでいた。いずれも透の方が(まさ)っていたが、女の子は諦めずに透に何度も挑み、最終的には疲れた透が上手く負けることで終息する。

 

そんな日々を5年過ごしていたが、父親が亡くなり、妹が行方不明になってからは姉妹に会うことはなかった。

 

(あれから2年か・・・)

 

あいつらは今どうしてるのだろうか、とその姉妹のことを考えてみる。

 

「待たせたわね」

 

深く考える時間もなく、アリアが戻ってきていた。その手には車輪つきのトランクがあった。

 

透はそのトランクを持ってあげようと手を差し出す。

 

「なによ」

 

どうやら手を出した意味が伝わってないらしい。

 

「触られたくないなら構わないが、そのトランクを持とうと思っただけだ」

 

アリアの目が少し大きくなる。軽く驚いているようだ。

 

「あんた、意外と紳士的なのね」

 

透はトランクを預かると、道案内の為に先に歩き始めた。

 

「そういうところは好感が持てるわ」

 

「俺のことを嫌ってるような言い草だな」

 

そういう訳じゃないわよ、とアリアは微笑む。

 

 

 

「ねぇ、あんたって『超偵(ちょうてい)』なの?」

 

女子寮から歩き始めてすぐに、アリアが話を切り出してきた。

 

超偵とは、超能力を有する武偵のことを示す。本来、近接武器であるはずの刀だが、透は距離が離れていたセグウェイやアリアにも攻撃していた。

 

それを見た、アリアは透のことを超能力者(ステルス)ではないかと考えたのだろう。

 

「いや、俺は超偵じゃない」

 

透は歩みを止めて、腰に据えていた日本刀をアリアの前に差し出した。

 

「これを持ってみろ」

 

言われるがままに、アリアはその日本刀をしっかりと握る。それを確認すると、透は鞘を少しずつ抜いていく。

 

鞘が完全に抜かれると、アリアは脱力感に襲われ、その手から日本刀を落としてしまう。

 

「え?」

 

こうなることを予測していた透は不快な金属音が鳴る前に足で刀身を受け止めていた。

 

「なに・・・今の・・・?」

 

一瞬間だけだったが、力が抜けた。

 

「これは『妖刀(ようとう)』という刀だ」

 

落とした妖刀を鞘にしまい、再び歩き始めた。

 

「見た目はただの日本刀だが、妖刀には『妖怪』が封印されている」

 

「妖怪?」

 

「ああ、妖刀は封印された妖怪の力が使えるようになる。俺の刀は『鎌鼬』と言って、簡単に言えば離れた相手にも()()()()()()を与えることができる」

 

アリアは自分の腹部を触った。防刃も備えた防弾制服には斬撃も打撃と化す。

 

防弾・防刃が当たり前の武偵の世界では()()()()()()と言った方が正しいかもしれない。

 

「だが、代わりに大きなリスクを伴うことになる」

 

それが先程アリアを襲った脱力感である。もちろんこれだけでは大きなリスクとは言えない。透が説明したいのはここから先だ。

 

「人間には『精気』という生命を活動させるもとになる力がある。妖刀はその力を喰らう」

 

アリアが脱力感に襲われたのも精気を喰われるという経験したこともない感覚を感じたからである。

 

「初めて持つと誰でもそうなる。俺はもう慣れたが、使えば使うほど精気が喰われ続けることは変わりない」

 

「それで、その精気が喰われ続けるとどうなるの?」

 

 

透は一呼吸空けて、静かに言い放った。

 

 

 

「──やがて喰い尽くされて、死ぬ」

 

これこそが妖刀の持つ大きなリスクだった。

 

「・・・なるほどね。それで、最後まで刀を抜かなかったわけね」

 

「そういうことだ。納得したか?」

 

「でも、前からそれを使ってたんでしょ? 精気は? 底を尽いてないの?」

 

「精気は生命活動する為の力だ。普通に生活していれば自然と回復する」

 

早寝早起き、一日三食、適度な運動など、健康的な生活はさらに有効だと言う。

 

「俺からは以上だ。後はお前の話を聴くだけだ」

 

「透、もう一度だけ訊いてもいい?」

 

「ダメだ」

 

「まだ何も訊いてないじゃない!」

 

透の理不尽な返答に憤慨するアリア。冗談だと透が言うと、コホンと仕切り直して再び訊いた。

 

「透、あんたは一体何者なの?」

 

「・・・答える義理はない」

 

透は睨みを利かせるて見下ろすが、アリアは真剣な眼差しで見上げてくる。

 

しばらくその状態は続いたが、先に透が目をそらし「分かったよ・・・」と呟いた。

 

別に正体を明かすわけではない。それに必要以上に自分を隠そうとするとかえって疑われる。

 

透は自分が何者なのかという答えとヒントを表す言葉を選んだ。

 

 

 

「俺は、『灰色の武偵』だ」

 

 

 

当然、意味が分からなかったアリアに質問攻めされるが、それ以上のことは何も言わなかった。

 

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