俺はただ呆然としていた。
━血の付いた、しかしどこか見覚えのあるネックレスを見つめていた。
『コレ、美佳からの誕生日プレゼント!かっこいいよなコレ!』
『凄い気に入ってるなあ、眞佐斗』
…いやな予感が過ぎる。
さっき秀華が電話で言っていた。「眞佐斗が狙われている」と。
眞佐斗がやられた?信じたくない。
でも、俺等の中でも実力者である光太朗がやられた。…まさか、本当に…
眞佐斗はこのネックレスを貰って以来、これを一瞬も手放さなかった。これを捨てるということはあり得ないだろう。…だったら何だ。血が付いていることから戦いの際に落としたか、逃げる時に落としたか…
いずれにせよ、眞佐斗が負傷していることが考えられる。
その時だ。
耳を劈くような悲鳴が鳴り響く。その声は、やはりどこか聞き覚えのある声だった。
━気が付けば、俺は声がした方へ走り始めていた。
「眞佐斗オオオオオオ!!!」
━俺には分からなかった。
何故そこまでして人を助けたいのか。昔からそうだ。困った人を助けずにはいられなかった。時には騙されもした。だけど、俺は人を助け続けた。しかし、何故助けるのかという理由は分からなかった。
廊下を鳥のように駆け抜けて行き、気が付くと怪我をしていた。だが、今の俺にはそんなことはどうでもよかった。
眞佐斗を助けたい、いや、仲間を助けたい一心で走っていた。
息を切らし辿り着いた場所には、彼が居た。
━しかし、血を吐き、ナイフが刺さっている姿は、見るに堪えない姿だった。
「眞佐斗!!」
「夏雄…って、そのネックレスは…!」
「あ、落としていたみたいだし、拾っておいたよ」
そう言うと、眞佐斗にネックレスを渡した。
「…すまねぇ…すまねぇ…」
眞佐斗は涙を溢れさせ、そう言った。
「礼に及ばないよ。それより、応急処置をしないと…」
眞佐斗が無事(そうは言い切れないけれど)で良かった。
しかし、同時に怒りが湧いてくる。
何故、近くの奴等は眞佐斗を助けなかった?
…わからない。だが、普通だったら助けるだろう。
とりあえず、連絡を取っておかないと。他の皆は無事なのかも確かめなければ…
『もしもし?』
「もしもし、夏雄だ。秀華、眞佐斗が怪我をしている。結構深い傷っぽいから、本格的な治療はお前に任せるよ」
『分かったわ』
「他の奴等はどうだ?」
『光太朗はかなり傷が深いわね…今は寝かせてあるわ。朱音はこっちに待機中、それ以外のメンバーはどこかしら散らばってるわ』
「どこかしら…ねぇ」
『あ、眞佐斗をこっちに連れて来てくれない?場所は第二理科室よ』
「了解。じゃあ、あとで」
どこかしら…引っかかるな。攻撃を受けていないことを願う。
携帯でテレビを見ていると、高校生達が交戦中というタイトルでヘリコプターからの中継になっていた。
「眞佐斗、理科室へ行くぞ。秀華達が居る」
「ああ。近くて助かるよ」
理科室はすぐ近くの階段を降りて左に行けばある。楽な道のりだ。
…しかし、眞佐斗にとってはキツイ道のりかもしれない。
ナイフを刺されたことによる出血、そして吐血までしている。かなり傷は深い。
…光太朗もこんな状態なのだろうか。
こいつ等の仇をとる為ににも、櫻ノ會を倒さなければならない。
━俺等の長い戦いはまだ序章に過ぎない。