とある魔術の禁書目録にARMSを入れてみた(仮)   作:コウ・カルナギ

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木原一族。

科学を悪用する為に存在する一族。
勉強しなくても「科学」に目一杯愛される人間たち。


そんな一族に欠陥品がいた。
それが、「木原連立」。

善人であり、もしももう少し長く生きていれば、とある女にその人生観を『諦め』させられていた男。


「木原連立」

 極上の素材で作られた料理。

 しかしそこに全く別の料理を振りかけられたら味はどうなるだろう?

 麻婆豆腐にカレー? 

 成程、確かにそんな料理もあるらしい。美味いかどうかは知らないが。

 カツ丼にシチュー?

 重いモノに重いモノを乗せて喜んだところで胃靠れするのが請け合いだ。

 ラーメンにアイスクリーム?

 熱い料理に冷たいモノを乗せるにしても限度がある。

 そして、この物語は例えるのなら、『とある魔術の禁書目録』というフルコースに、『ARMS』というソースを上からぶちまけたようなものだ。

 故に、その味付けは濃く重い。

 何故なら。

 他にも微妙なトッピングまで追加されているからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 この物語に登場する主人公は四人。

 

 名を上条当麻(かみじょうとうま)一方通行(アクセラレータ)浜面仕上(はまづらしあげ)。そして――黒嶺流星(くろみねりゅうせい)

 前述した三人は元よりヒーローとしての素質はあった。

 しかし最後の少年だけは違う。彼は不幸にも選ばれてしまった。

 世界の舞台で踊る権利を得てしまう。

 

 

 

 四人は、とある科学者によって無自覚に改造された。

 その男は、自覚は無いが転生者と呼ばれるような生い立ちだった。本来ならば彼の願い通りに、博士キャラとして主人公たちを面白おかしく愉快に素敵に煽っていっただろう。

 しかし生まれが問題だった。

 男の名は、木原連立。

 科学の発展の為なら、どんな外道な行いも嬉々として行う狂人の家系に産まれた欠陥品にて異端児。

 彼は学園都市において様々な科学に触れても「木原」として覚醒せず、普通の科学者である――とされていた。事実そうだった。

 彼にはその『異端』の片鱗は確かにあった。驚異的な学習速度は一族でも一目置かれていたが、狂気的な科学への熱意――言い換えれば「実験に際し一切のブレーキを掛けず、実験体の限界を無視して壊すことが研究の第一歩」「壊さなければ限界の数値はわからない」という想いが無かったのである。

 故に彼は『欠陥品』と呼ばれた。

 しかしそれには連立は異を唱える。

 ――自分には、まだピースが足りない。

 そう言って憚らなかったのである。誰も取り合わなかったし、本人もそれでいいと思っていた。反論したのもたった一度だけだ。

 本来ならばそのまま、木原であって木原でない中途半端な科学者のまま死んでゆくのだと思っていた。彼を含めた誰もが。

 そんな時だ。

 とある隕石が発見された。

 それが、木原連立の『トリガー』だった。

 本人は知らない前世において、連立となる男は転生する際『なにか』に頼んだのだ。

 嘗て、地球から隕石の衝突で飛び散った破片が、長い時を経て変異し地球へと舞い戻った群体のシリコン生命体。

 名をアザゼル。

 それと出逢うように、と願っていたのだ。

 結果としてその願いは果たされた。

 学園都市付近の山中にその『隕石』が落下したのを知り、今まで普通の科学者としてしか生きていなかった男は動いたのである。

 初めて見たにも関わらず、木原連立は行動を開始した。

 即座に連立は隕石を回収し、研究を開始した。

 木原連立は、「木原」としての本性を現したのである。

 明らかに他の木原よりも異質で異端を極めていく。その隕石に関する新たな概念、法則を幾つも証明し、しかしその殆どの『成果』を秘匿隠蔽したのだ。

 他にも様々な道具を発明し、その大部分を秘密倉庫に秘蔵した。

 表に出したのは、最低限の成果のみ。

 気付けば木原連立は、「木原」でも有数の異端者であり、秘密主義者となっていた。

 

 

 

 

 

 

 そして一年もしない内に、連立は隕石を幾つかの兵器へと作り替えた。

 名を、『ARMS』。

 炭素生命体と珪素生命体のハイブリッド兵器。

 人間に寄生し、進化成長していく兵器だ。

 元は、皆川亮二(原案協力:七月鏡一)による日本の漫画作品である。勿論この世界にその原作は存在しない。

 彼の前世において発売されていた漫画の一つだ。

 『なにか』によって転生を示唆されたかつての連立は、こう願った。

 ――『自分で考えたARMSを作りたい』と。

 ただそれだけを願い、『何か』はそれを叶えた。

 そして、連立は「木原」に産まれた。

 だが、「木原」という特性は、それだけで精神を狂気で歪めてしまう。呑まれてしまう。

 培った倫理観はゴミとなり、人を消費物として扱うのだ。

 しかし自覚していない前世の分も含めた人としての倫理観が真っ当な「木原」である事を阻害する。してくれた。

 そして彼は基本的に善人であり、無意味に他者を傷付ける行為を嫌悪していた。

 平たく言えば、木原加群や木原脳幹と同じ、善性の木原と言える。

 しかし加群は現在絶賛『木原』を行使しまくっており、その犠牲者は歴代最高のレコードをずっと更新していた。それなのに、使い潰した人間はゼロなのだから恐ろしい。

 脳幹の方は、七人の始祖達によって演算回路を取り付けられた人と同等の思考力を持つゴールデンレトリバーだ。

 つまり一族最高齢。始祖たちは全員鬼籍に入っており、それからも「木原」を見守っている見上げた男(犬?)である。

 殺傷力過多の兵器を扱いながら「合体は男のロマン」などと語るような存在で、「外道」を自称しながらも不要な破壊行為や人的被害は避けるべきとの思想を持っていた。

 連立も「木原」として活動を開始しようと無駄な殺生を嫌っており、実際に殺害件数は0件である。

 この一匹と一人はとても似通った思想をしていた。

 それ故に、脳幹は連立に好感を得た。

 脳幹の教え子を自任している木原唯一はそれを知って、連立に対して隙あらばあらゆる痛苦を与えて殺してやろう、と思うくらいには嫌悪されてしまう。実際に何度か殺そうとした。だが、全て回避させられた。それが余計に彼女の憎悪を煽った。

 そんな唯一を知ってか知らずか、連立は隕石の研究の為の施設を第一九学区の最も寂れた周辺に何も無いような僻地に作り、そして引き籠ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな異端で秘密主義者で引き籠りな木原連立は、『ARMS』を持って学園都市を時間を掛けて歩いていた。

 『適合者』を捜しているのだ。

(……さて、どこに『適合者』はいるのやら)

 白衣を着ていない連立は、どこにでもいる普通の男にしか見えない。

 しかしそんな男が懐に適合すればこの学園都市に存在する現行兵器(学園都市にとって)どころか、超能力者たちすらも圧倒する超兵器を持っているとは誰が思うだろう。

 今持っている『ARMS』は四つ。

 いずれも強力無比な戦力を誇り、性能を十全に発揮すれば『核』の一撃すら耐えられるだろう。……理論上は、だが。

 それ故に弊害も存在する。

 『ARMS』には適合率が存在した。

 この適合率が高ければ高い程に『ARMS』との親和性は増大し、制御も容易になる。

 逆に、適合率が低ければ珪素が肉体を急激に浸食し、その身を崩壊させてしまう。まるで泥人形が風でボロボロと崩れていくように。

 マウスを使っての実験になるが、それは実証された。

 だからこそ、連立は脚を使って『適合者』を捜す。

 四つの『ARMS』には、それぞれ『好み』があった。そして、その好みの人物は総じて適合率は高い。それ故に連立は『ARMS』が懐で振動する度に周囲の人間をリストアップしていく。

(……大体解ってきた。『全竜』と『軍団』は無能力者(レベル0)を。『竜帝』と『魔王』は大能力者(レベル4)超能力者(レベル5)を捜してるな)

 その精神性の多様さに面白さを感じながら、しかし彼は周囲にいる子供たちを観察していく。

 そんな時だ。

「ふこうだー」

 なんとも間の抜けた声。

 まだ幼い、小学生くらいだろうか。

 その声を聴いた瞬間に、『全竜』が痛い程に振動し始めたのだ。

「なん……っ!?」

 思わず懐から金属球状の『ARMS』を取り出してしまう。

 その瞬間、『全竜』が掌からこぼれた。

 連立が落としたわけではない。『ARMS』が自ら落ちたのだ。

「な、ちょ……」

 その金属の球は自然な様子を装いながら、少年の足の下にまで転がり、少年を転倒させた。

「うわぁっ!?」

 そのまま少年は前に倒れる。咄嗟に両手で身体を支えたのは良い判断と言えた。

 ――その瞬間、連立は見ていた。

 『全竜』が少年の右手の下に潜り込んだのを。

 少年は咄嗟で目を瞑っていたから気付けなかったようだ。

 だから、その金属の球体を地面と右手でサンドイッチしてしまい、激痛に悶絶することになった。

「――――――っ!!??」

 涙目で声も出ない少年。

 しかし連立もまた声が出なかった。

 右手を突いた場所に『全竜』がなかったのだ。

 恐らく右掌から体内に侵入したのだろう。

「おいおい……まさか、適合したのかよ」

 適合率が高いとは言え、それでも何の調整もしていないのならば崩壊のリスクは存在する。そのリスク回避の為に数十通りの拉致方法をあの一瞬で考えていたのだ。

 それなのに。

 十秒もしない内に少年の身体が崩壊するかもしれない、そう思っていたのに。

「うわあ。すなだらけじゃん。ふこうだなぁ」

 それだけだった。

 転んだ事への不幸を嘆くだけで、それ以外に少年はなんともないような顔をしていた。

 完全に、完璧に、十全に。

 適合したのである。

「なあ、少年」

 だからつい問い掛けた。

「んぁ?」

 どこか恍けた顔をしたウニのようにツンツンとした頭の少年だ。

 その眼を見て――木原連立は、後ずさった。

 理由は解らない。

 何か、大切な何かに取り返しのつかないことをしてしまった。

 そんな思いが消えない。

「……俺は木原連立。君、名前は?」

「かみじょうとうま。なんかようか、にーちゃん」

 その名前に聞き覚えはない。

 なのに、その思いは強くなった。

 

 

 

 

 

 それから数日後、路地裏で黒髪の小学生とすれ違った際、『軍団』が。

 翌日に引っ込み思案の白髪の少年に、『魔王』が。

 公園で昼寝をしている少年に、『竜帝』が。

 

 

 

 

 それぞれ反応し、偶然を装って寄生した。 

(……おかしい。まさか『ARMS』を持ち歩いて、まさか一週間もしない内に四人の適合者が見つかるとは……)

 しかも『ARMS』自体が望んで宿主に選ぶとは。

 いくらなんでも都合が良すぎる。

 ……とは言うものの、早く見つかったのはこちらとしても都合がいい。

 何故なら、

(元々俺の方も、長くはねぇ)

 試作製の『ARMS』に侵入されたこの身体。

 制御装置を開発し、身に着けることで浸食と崩壊を防いではいるが、長くはないだろう。厳密に言えば二年は持たない。

 だから適合者が現れたのは良かったのだ。

 そう思っていると誰かがこの部屋に近付いてくるのが感じられた。

 ――木原だ。

『随分と、様変わりしたな。木原連立』

「……ふむ」

 木原脳幹。

 木原加群。

 『木原』の長老犬と、生粋の人格者が現れた。

 前者は統括理事の友人であり始末屋で、後者は歴代最多数の殺害件数と同じ蘇生件数を誇る。

 この二人(一匹?)を前にしても、そんなことでは連立の感情は波立たない。

 既に死期は見えているのだ。それが早いか遅いかでしかない。

「……なんだ、脳幹(ちょうろう)に加群サンか」

『聞きたいことがあってな』

 そう言うゴールデンレトリバーに連立は手で先を促す。

 対して加群は無言。

『何故、自分自身を実験体にした?」

 自分という『木原』の犠牲は一番最後まで取っておく。どんな実験も最初は赤の他人から。

 それが『木原』の研究における一つのスタンス。

 最初から最後のカードを切るなんて馬鹿げている。

 脳幹としては、その精神は好意に値するが、大多数の「木原」からしてみれば考えられない浪費と言えるだろう。

「……多分、そうなったら必要な素体の数は億や兆じゃきかなかったでしょうな。でも多分、全部を使い潰しても『俺の研究の終着地点』には届かない。……俺は『こうなって』初めて、俺の執着地点に辿り着けるんだ」

 この身体になって、隕石(アザゼル)の解析は飛躍的に進んだ。最短で五年は掛かるという予定が、僅か一年で『目標』まで達成した。

 倫理観がどうというのではない。ただ数をこなせば目標を達成出来るわけではない。

 これが必要だったからそうしたまでだ。

『……まあ、君がそうだと言うのなら、それでいいさ。だが、アレイスターが少々興味があるそうだ』

 脳幹はそう言う。

「アレイスター……ああ、学園都市総括理事長ですか」

 

『その通りだ』

 

 突然、PCの一つから音声が聴こえた。男にも、女にも、子供にも、大人にも、老人にも聴こえる――奇妙な声。

「……初めまして、総括理事長」

『ああ、初めましてだ。木原連立』

 連立は机の上にあるコーヒーに手を伸ばしながら、

「で、この半死人で超天才の木原連立サンにどんな御用ですか?」

 そんな連立に顔すら公に出さない学園都市創立者は笑いながら答えた。

『……なに、君が提唱した炭素生物と珪素生物のハイブリッド生命体の存在について、少し聞きたいことがあってね』

 確かに一年以上前、必要な資材を発注する時に研究目的を論文として提出させられたが、基本的に資金は連立がこれまで稼いできた資金で賄われている。賄える程度の小規模な研究だと思われた。

 そして、ほぼ全員がその研究は失敗すると思っている。

 事実彼が提出した成果は、珪素物で構成された義手義足程度のものだ。

 だが、劣化速度は金属と比べ物にならないレベルでこちらが上だと言える。

 その分高価になるが、従来の四肢と似たような感覚で使用出来る、と評判だった。

 だからこそ夢物語だ。

 炭素と珪素、そのどちらもを持つ生体兵器など。

 そう思っていないのは、研究者本人である連立と、今こうして会話をしているアレイスターとそれに近しい者たちだけだろう。

 同じ『木原』であっても、この研究を無意味だと思っている者は多い。

 しかしここにいる者と、スピーカーの向こうにいる逆さまの男は違う。

「聞きたいことですか……何でしょうか?」

『君の研究には、一定の成果があるのは理解している。その研究によって得られた成果は少ないが、どれもが今後の学園都市の発展に尽力されるだろう。……だが』

 そこで一言置き、

『何故、自分の本当の研究を公開しないのかね?』

 基本的にこの研究は、スタンドアローン型のイントラネットを使用しており、外部との通信は、今アレイスターが使用しているPCしか存在しない。

 更に、空気中に散布されているナノマシン滞空回線(アンダーライン)もここでは意味を為さない。

 既に存在する別のナノマシンに手あたり次第に『捕食』されているので、情報がアレイスターに入ってこないのだ。

 だから、アレイスターは気付けなかった。

 自らの『プラン』において重要な役割を果たす「かもしれない」子供たちに連立が接触した事を。

 彼の周辺には何故か情報のエアポケットが出来るのだ。

 何をしても、ナノマシンは彼の情報を送れない。近付く度に食われているのだから。

 だからこうして接触した。

 何を考え、何を求めて行動しているのかを知る為に。

 研究を公開しない理由を訊いているのは建前で、もしも『プラン』に悪影響を及ぼすと判断すれば、木原脳幹が直接手を下すだろう。

 木原加群は情勢が変わった場合の『蘇生役』だ。

「……意味がないから、ですかね」

 そんな木原の見ている前で、連立はリクライニングチェアに座りながらコーヒーを啜る。

『――なに?』

「俺の研究は完成した。既に被験者も――こっちは想定外だったが、全員揃った」

 遠いどこかを見る連立。

 その態度に「やりきった者」特有の満足感と少しの虚脱感が感じられた。

「だから、後はもう何もしねぇ。俺の理論は証明された。――それに俺は、もうすぐ死ぬ」

 そう言って、連立は脳幹と加群に手を見せた。

 人の形をまだ保っていた左手は、しかし人ではありえない亀裂が無作為に走っていた。パラパラと剥離していく「皮膚だった何か」を見て、理解する。

 この男は、本当に死ぬ。

 それが直感として理解出来た。

「俺の研究成果は既にこの世に解き放たれた。だったら後生大事に実験データを残しておくつもりもない。全部削除したし、これからここも爆破させる」

 そう言いながら連立は着ているシャツのボタンを引き千切るように胸元を露出させる。

 そこには、機械が埋め込まれていた。

 勿論その程度で木原は慌てないし、嫌悪感も湧かない。

 ただ、その装置を中心に全身へと放射状に伸びる謎の線には興味を惹かれるが、妙な危機感を感じた。

「この装置が破損すれば、全ての研究施設の扉が閉まる。俺の心音が止まれば、この研究所は爆発する」

 だからさっさと逃げた方がいいぞ。

 そう言ってやると、統括理事もまた撤退を命令する。

「脳幹、木原加群。撤退しろ。機材その他研究資料の持ち出しも不可能のようだ。当の本人もこのまま死ぬつもりで、学園に害を為す存在とは認識出来ない。そもそも――持ち出した所で開発者がいなければ扱えない。ここにあるのはそういうものだと理解したよ」

 アレイスターの命令に、二人は是と答えた。

「……了解した」

『いいだろう。……ではさらばだ。木原であって、誰も殺すことなくその生涯を終える同胞よ』

 そうして、アレイスターは通信を切り、二人は研究所を後にした。

 その道中、脳幹は思う。

 あの青年は、一極集中型の「木原」だ。

 遥か過去に飛来した隕石の研究のみに特化したそれ。

 たった一つの目的の為に生涯の全てを捧げている。

 だからこそ、その到達点は他の「木原」は先に辿り着く事は出来ない。

 彼らは先駆者なのだ。

 そして、彼らは例外無く短命だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日。

 学園都市の一角で爆発事故があった。

 その研究所はシリコンを使用した珪素物による義手義足の研究開発を行う小規模な実験施設だったとか。

 研究所の一角に保管されていた燃焼化合物に引火し、研究所を吹き飛ばした――ということになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 火の手が上がった。

 それを知覚するが、何もする気がない。

 満足していたからだ。

 この為だけに、自分は生きていた。

 後は保有者たちが、どうなろうとどうでも良かった。

 「覚醒」すれば、四人は世界すら好きに振り回せるだろう。

 例え木原の誰かが干渉しようと、どのようにデザインしようと――彼らは成長する。

 嘗て見た――()()()()()()()()()()()()()()()()

(――ん?)

 瞬間。

 コンマ数秒も要らないような刹那の中で、封印されていた前世の記憶が解禁される。

 ――上条当麻禁書目録必要悪の教会ステイル=マグヌス神裂火織吸血鬼殺し姫神秋沙アウレオルス=イザード竜王の顎御坂美琴妹達一方通行絶対能力者進化計画御使堕し土御門元春ミーシャ=クロイツェフロシア成教上条刀夜上条詩菜闇咲逢魔最終信号・打ち止め冥土帰し海原光貴天井亜雄風斬氷華虚数学区・五行機関シェリー=クロムウェル黄泉川愛穂ゴーレム=エリス最大主教ローラ=スチュアートローマ正教アニェーゼ=サンクティスオルソラ=アクィナス建宮斎字天草式十字教騎士団長法の書アレイスター=クロウリー結標淡希白井黒子婚后光子初春飾利大覇星祭オリアナ=トムソン使徒十字吹寄制理リドヴィア=ロレンツェッティ御坂美鈴ローマ教皇ビアージオ=ブゾーニ女王艦隊カテリナルチアアンジェレネ五和刻限のロザリオ木原数多特力研虚数研叡智研暗闇の五月計画武装無能力集団置き去り猟犬部隊ワシリーサ前方のヴェント天罰術式駒場利徳浜面仕上服部半蔵親船最中親船素甘左方のテッラ光の処刑C文書神上アイテム麦野沈利絹旗最愛フレンダ=セイヴェルン滝壺理后垣根帝督未元物質ウィリアム=オルウェル後方のアックア――――――――――――――――――――――――そして、『理想送り』上里翔流。

 言葉の羅列。

 意味の無い言葉をただ並べ替えている――のではない。

 これは、記憶だ。

 かつて前世の自分が読んだ「とある魔術の禁書目録」にて登場したキャラクターの羅列。

 それが意味するのは――

「――ひ、ひひひ…………」

 口から笑いが込み上げる。

「ひぃ――ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははっっっ!!」

 次の瞬間には爆発した。

「なんだこれ!? 魔術組織? 第三次世界大戦!? 魔神!? そして――世界の終わりっ!?」

 なんて。

 なんて。

 なんて――厄介な。

 これでは気になって死んでもいられない。

 目的を達成し、「木原」では無くなっていた連立は普通の人間のように、頭を抱えてしまう。

「……仕方ない、か」

 嘆息一つ。

 連立は炎に取り囲まれながらも、立ち上がる。

 最早、酸素を取り込む機能すら消え去った。

 迷いのない手が、胸元の制御装置に掛かる。

 これを取っ払えば即座に研究所は爆発し、自分の身体も燃え尽きるだろう。

 しかしそんなことはどうでもいい。

 引っ掻き回して「物語」に余計な茶々を入れた以上、リカバリー要素は必要だろう。

「なら、やっぱし『ARMS』に仕込んだチュートリアルとガイダンスだけじゃ心配だ」

 そう言って、木原連立は己の枷を外し――炎の中に消えた。

 こうして、木原連立は死んだ。

 己の証である『ARMS』を五つ生み出して。




男は炎に呑まれて死んだ。

ある女は、その死に喝采の声を上げる。

ある男は、その人生の意味に疑問を抱いた。

ある少女は、その思考に意味を見出せなかった。

ある女は、『諦め』させることが出来なくて、残念に思った。

そして、ある犬は――その満足した生き方に、敬意を払った。
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