ネタバレが入ってるので原作未読の方はちょっと注意です
後、駄作だと思われるのでそこもご了承いただけると幸いです
批判、感想はうぇるかむですが、批判に関してはどう改善すればいいかの提示をよろしくお願いします。
2015/10/7
少しだけ書き足し・書き直し
2016/2/13
ほんのすこーし書き足し・評価の設定変更など
「ねえ、」
という呼びかけを聞いた、風呂を上がって早々に薄手のシャツとパンツを身に着け、冷蔵庫を漁っていた黒髪の男――ガンマルは、その声の主――金色の身の丈程も届こうか、という翼と、腰まで届く同色の、ガンマルと同じく風呂上がりで湿った髪をタオルで拭いている匪天(ナイン・アンゲル)の女性ーーアキラに、んー?と返しながら缶ビールを二本取り出した。
ほれ、と一本放り、ありがと、とアキラが受け取ったのを見て、どーしたよ?と問いを返す。
プルタブを起こそうとするガンマルに待ったをかけ、
「『中秋の名月』って知ってる?」
「んや、聞いたことも無いな。なんだそれ?」
「日本で、一番月が綺麗に見える日の月をそう呼ぶんだって。で、それが今日らしいの」
将軍が言うにはね、と続けたアキラの言葉を聞き、そういえば、とガンマルは帰りがけにちらと見えた月の明るさを思い出す。
「そーいえば、確かにいつもよりもやけに明るかったな」
「で、せっかくの良い月が出てる夜だからさ。たまには月が見えるとこで、ってーのもどうかなって思ったんだけど」
どう?という問いに、ガンマルはアキラの言葉を思い、笑みを浮かべる。
――――なるほど、良い月、ねぇ
「まあ、たまにはそーいうのもいいかもな」
待ったをかけられ、プルタブに掛けたままで止めていた指を離す。
「しかし、となるとどこで見るかね」
五年前のかつて、香港の地上ならいざ知れず、ここは香港洞。表層から最下層まで3キロはあり、それぞれの階層が横に広い居住区というのもあって、香港の住人が丸ごと移住出来てしまうような洞窟だ。
地上からほぼ垂直に掘られており、この部屋は香港洞中央の吹き抜けになっている空間にも比較的割と近いとはいえ、どちらかと言えば下層に位置している。酒を飲む為に地上まで上がるのは流石に億劫に感じる距離だった。吹き抜けの部分の通路でも見えるが、そこで飲むのは流石に無い。
となると、
「泉に浮かんでる月でも眺めて一杯といきますか」
「ま、そーなるわな」
最下層にある泉に浮かぶ月を見る、という同じ発想に至っていたらしいアキラの答えに同意し、ガンマルはシャツの上に軽くジャケットを羽織る。
「さて、行きますかね」
・ ・ ・ ・ ・
缶ビールを冷蔵庫に戻し、最下層に一番近い店でビールを買い直して、最下層に到着する。
おお、と、どちらからともなく感嘆の声が漏れる。月に照らされ、小さな明かりで照らされた薄暗いステージのような様相となっている最下層、そこの中央に位置する泉には、名月の名に相応しい満月が浮かんでいた。
「なーるほどねぇ・・・・・・名月とは言ったもんだ」
「全くよねぇ・・・・・・」
泉の辺に歩み寄り、適当な場所に腰を下ろす。
近くの店で買いなおした、表面が濡れて来てはいるもののまだ冷たい缶ビールを一つずつ手に取り、プルタブを起こした。
プシュ、という発泡性の飲料を開栓した時特有の快音を聞き、
「良い月に」
「君の瞳に」
思わず、と言った風にアキラが噴き出す。
「アンタはそんなキャラじゃないでしょーが」
「いや、喜ぶかと思ってな」
「せめて高級レストランで、もっと高いお酒を用意してから言ってよねー」
「こりゃ手厳しい」
何はともあれ、
「んじゃ、乾杯」
「ん、乾杯」
くい、と缶を傾け、ビールを口に流し込む。
ビールの苦味と快い喉越しを感じつつ、一度口を離してぷはぁ、と息をついて、アキラは泉に移された白銀の真円を眺める。
「こんだけ綺麗だと、いつも飲んでるビールもなんか美味しく感じるわねー」
「ん、まあ、そうだな・・・・・・」
「・・・・・・?どーしたのよ?」
気落ちしているようにも聞こえるガンマルのやや暗い声に、満悦顔だったアキラは不思議そうにガンマルの顔を覗き込む。
「・・・・・・いや、あん時の事を思い出してな」
「あの時?」
「アキラが、香港洞(ココ)を風水(チューン)した時」
ああ、そういえば、と、アキラは思う。
――――あの夜も、こんな月だったっけ
アキラがその身を風水して大地龍と成し、この香港洞を整調し――――そして姿を消した夜。その五年後、この香港洞に戻るまで、ガンマルがどうしていたかは、将軍から軽く聞いた。本人に聞いても話さないからではあるが、それでも軽く聞いた程度で、後は本人から聞けと言われてしまった。
それでも、
――――寂しがらせちゃった、んだよね
アキラが帰って来ると信じていたと、ここに工房を作る為、実家の宗主にさえなったと。そう、将軍から聞いた。
「月に、アキラの姿が被った時な。綺麗だと思った。」
でも、
「どこか、遠くに行っちまう事が・・・・・・やっぱり、寂しく感じてたんだよなぁ」
「・・・・・・」
「まぁ、約束もしたしな。帰って来る事を信じてはいた。何時までも待つつもりでは居た。・・・・・・でも、やっぱり喪失感は残ってた」
「・・・・・・そっか」
「・・・・・・ま、もう終わった事だ!せっかくの良い月夜、のんびり酒を――――」
「ガンマル」
字名(アーバンネーム)を呼び、言葉を遮る。
「私は、もう居なくならないから」
だから、と、体を軽く硬直させたガンマルに対して言葉をつなげる。
「だから、もう心配しないで大丈夫。まあ、もう一生分の大仕事はしたようなもんだし、そもそもこんな事はそうそう起こるようなもんじゃーないでしょ?」
「・・・・・・そう、だな」
俯き、絞り出すようにも似た小さな声で、ガンマルは呟いた。
「私はここに居るよ、ローガン」
アキラは座ったまま上半身だけガンマルに向きなおし、彼を軽く抱きしめて字名では無く本名(ワイルドネーム)で呼んだ。周りに人が居ないのは来たとき既に確認している。この行為も本名を呼ぶことも、気にする必要は無い。
「ここに居るから、月を見るたびに寂しく感じる必要なんてないんだよ」
「・・・・・・ああ」
「それに、こーんな良い月を眺めてる時に一人で昔の、完全に終わってる事でしんみりされると、月にも私にも失礼だし」
「・・・・・・そーかい」
「そーよ」
「そー、かもな」
「ええ」
何時もの雰囲気に戻ったところで、アキラが抱きしめていた体制から元の座っていた状態に戻ろうと腕を離した時、不意にその腕をガンマルが掴んだ。
「え、あの、ちょ、ガンマル?」
「良月」
次は、アキラが体を硬直させる番だった。その名は、
「ちょ、ガンマル!こんなとこで私の本名――」
「いや、お前が先だっただろーが」
「そうだけど!こんな急に――!」
いいから少し落ち着け、と腕を引き寄せるガンマル。
「えっと、ガンマル・・・・・・?顔、近い、んだけど・・・・・・」
顔を酔いとはまた違う理由で赤くするアキラに、ガンマルは誓いを立てるかの様に囁いた。
「――――もう、お前を離さない」
「・・・・・・!」
「もう、強がって損するのは散々だしな。一人でどっか遠くになんか、もう行かせねえ。行っちまっても、どんな方法を使おうと、必ずそこにたどり着いて見せる。」
――――でも、
「それは、お前が一人で行っちまった時の話だ。お前は俺のそばに居る、と言ってくれたしな。その約束、守ってくれよ?」
「――――ええ、勿論」
その返事を聞き、顔の距離を詰めて――――唇を奪った。
柔らかな感触と、軽く火照って暖かい感覚を感じながら、ゆっくりと唇を離し、見つめ合う。
口を開き、互いに最初に出たのは苦笑だった。
「ビール臭い」
「そりゃそうだ、ビール飲んでたんだから」
ガンマルは腕を離し、二人は来た時の様に座りなおす。
「さーて、もう一本開けますか!」
ガサガサ、と袋を漁って二人分のビールを再び取り出したガンマルに対して、アキラはそれもいーかもね、と言いながら笑顔で受け取る。
「それじゃ、中秋の名月という良い月に!」
「君の瞳に!」
顔を見合わせ、互いに笑いながら、
「「乾杯っ!!」」
『惟望再笑君』
良い月へと届いた祈りは叶い――――
二人は、共に笑みを浮かべている。
という訳で、久しぶりに書いた短編、風水街都香港の中秋の名月ネタです。
良い月でしたねぇ・・・・・・眺めながら酒でも飲みたいところですが、まぁ日本酒が苦手なもんで何とも言えない感じで。
水割りのウイスキー傾けながら書いてました。
さてこの香港。読んだ都市シリーズで一番好きな作品ですが・・・・・・
まあ遺伝詞のラの字も出ませんでしたね!
いえ、出したい気持ちはあったんですが、妄想が走るままに書き連ねてるだけだったんで許して下さい何でもはしません。
さてさて、とりあえずはこの辺で。
読んでくださった方、是非是非感想などいただけるとありがたいデス
それではまたお会いする事がありましたらー