自由なエリレさん。   作:灯火011

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戦艦レ級エリート。
深海の奥底で暇をもて余した彼女が
少し暇潰しに来たようです。


第一章 自由なエリレさん。
1 自由なエリレさん。


深海棲艦と呼ばれる異型の化け物が、人類から制海権を奪いはや数年。

気づけば艦娘という謎の存在が人類に味方し

更にはそれを指揮する「提督」なんていう職業も現れ始めた。

 

艦娘が出現した当初は、深海棲艦は駆逐級のみであり

人型の艦娘は、その行き足と、小回りの鋭さを持って

深海棲艦を圧倒し、制海権を人類へと取り戻しかけていた。

 

だが、深海棲艦も馬鹿ではない。

 

艦娘を模範し、強力な人型の深海棲艦へと

変貌を遂げていく個体も現れ始めたのだ。

 

一端は艦娘と人類に傾きかけた勢力図が、

人型の深海棲艦の登場により、徐々に、深海棲艦へと傾き始め、

そして現状、その勢力は、艦娘と深海棲艦で拮抗し

人類は未だ、深海棲艦から制海権を取り戻せないでいた。

 

さて、そんな深海棲艦の海域を

1隻のパーカー姿の深海棲艦が闊歩していた。

 

人類からの通称は「戦艦レ級」。

深海棲艦からも「レ級」と呼ばれている深海の船だ。

 

「サァテトォ。今日ハ何ガアッルノッカナァ」

 

レ級は笑顔で、大海原をスキップに近い足取りのまま

人類の制海権へと侵入し、キョロキョロとあるものを探していた。

 

レ級が探すあるもの、それは

艦娘が護衛を行う「輸送タンカー」である。

 

「オォ!早速タンカー発見。護衛ハッ・・ト」

 

レ級は輸送タンカーを発見すると、

護衛の数を確認していく。

 

「今日ノ護衛ハ少ナイナ。狙イ目ダ!」

 

レ級はタンカーの護衛が少ないと見るや

にやにやとした顔をして、武装を展開していく。

 

「主砲弾装填。同時ニ艦載機発艦準備開始。」

 

レ級が呟くと同時に、主砲である41cm3連装砲に弾丸が装填され

艦載機に魚雷と投下爆弾が装備されていく。

 

ガゴン、という音とともに、装填されていく弾丸。

レ級は、全数が装填されたことを確認すると

ニイイと笑みを浮かべ、大きく息を吸い込み

 

「ヨシ、主砲弾装填完了。全門、斉射アッ!

 ツイデニ、艦載機発艦!艦娘ヲ戦闘不能ニシテコイ!」

 

大声で叫んで、タンカーと護衛の艦娘達に攻撃を加え始めた。

大音量で響く砲撃の音に続いて、レ級の艦載機が次々空へと上がっていく。

 

そして、タンカーを護衛している艦娘がレ級の攻撃に気づき、

回避運動を取るも、物量で攻めてくるレ級に対し、

為す術もなく護衛対象であるタンカーごと

爆風に巻き込まれていくのであった。

 

---------------------------------------------------

 

レ級の攻撃から数分後、護衛船団とタンカーは

致命的とも言えるダメージを受け、完全に行脚が止まっていた。

 

レ級の砲弾が直撃し、護衛していた艦娘は大破沈黙。

タンカーも、主機に爆撃を食らい、轟沈とはいかないまでも

行動不能の大破状態である。

 

「くそぉ・・・・!」

 

そうつぶやいた艦娘は、白髪を靡かせる菊月という艦娘である。

急な襲撃に対応しきれなかった艦娘の中で、

比較的ダメージが少なく、唯一動けている艦娘だ。

 

だが、痛みと絶望に、その顔はひどく歪んでいた。

 

(なんだ・・・何が起こった。

 電探にあった反応は・・・たったひとつの・・・

 敵はわずか1隻の深海棲艦じゃなかったのか・・・!)

 

内申悪態を付きながら、血まみれで痛む体を持ち上げ、周囲を確認していく。

その目に入ったのは、呻きながら海面に伏す姉妹たちと

轟音を立てて炎上する、護衛対象であるはずのタンカーの姿であった。

 

(くそったれ。一体何がどうなってるんだ・・・・)

 

菊月が周囲を見渡してながら、考えていると、なにやら遠くから

 

ジャブ、ジャブ

 

と、海面を歩く音が聞こえてくる。

 

(誰だ?・・・もしかして、近くを航行していた艦娘が

 救援にきてくれたのか・・・?)

 

菊月はそう考え、血まみれで重い体を引き摺りながら

足音のする方向に歩いて行く。

 

そして、菊月の赤い、綺麗な瞳は、その足音の正体を捉えると、

菊月は愕然とした表情のまま、完全に固まってしまった。

 

呆然と立つ菊月の赤い瞳に映るのは、

特徴的なパーカーを被った赤いオーラの深海棲艦だ。

そう、「戦艦レ級エリート」がゆっくりと、

足取り確かにタンカーへと向かってきていたのである。

 

「あ・・・・あぁ・・・・」

 

菊月は恐怖のあまり、ガチガチと奥歯が鳴り始め

その表情は、完全に絶望に染まっていた。

 

(なぜ、レ級が、こんな海域にいるんだ。

 しかもなぜ、こんな価値のないタンカーと、護衛船団を襲うんだ・・・。

 あぁ・・・姉妹達が全員大破したのは、

 こいつの攻撃をモロにうけたから、か

 仕方ないな・・・あぁ、私も、年貢の納め時か)

 

恐怖のあまり、菊月は冷静に、自身の死を受け入れていた。

なにせ、今菊月は大破、武装もなく、そして頼れる姉妹も全員大破沈黙。

客観的に見ても、攻撃することも、撤退することも出来ない状況である。

 

そうして、絶望に佇んでいる内に、いつの間にかレ級は菊月の前に立ち、にやりと笑みを作る。

菊月はレ級の笑みに驚き、悲鳴をあげようとするも、次の瞬間

レ級が無造作に、手刀(・・)を菊月の首筋(・・)に叩きこみ

菊月は悲鳴を上げる間もないまま、意識を闇に落としていくのであった。

 

---------------------------------------------------------------

 

自身の攻撃により作られた、燃え盛る海を見渡しながら、

戦艦レ級がゆっくりとタンカーに歩いて行く。

炎に包まれつつも歩くその姿は、まるで地獄からの使者のようである。

 

「イイネイイネ。艦娘モ全員大破。タンカーモ行脚トマルッテナ。

 コレデユックリト選別デキルナァ」

 

レ級はそう呟くと、獰猛な笑みを浮かべタンカーを見据えていた。

そんなレ級の視線の先に、1隻の船が立ちはだかる。

 

(・・・護衛艦隊ヲ撃チ漏ラシテイタカ

 アレハァ、菊月ッテ船、ダナ。

 対処シトキマスカァ)

 

レ級はそう考え、菊月の姿を確認すると同時に

ジャブジャブと足音を立てながら、菊月にゆっくりと接近していく。

 

「あ・・・・あぁ・・・・」

 

すると、レ級から見ても明らかなほど、菊月の体はガクガクと震え始め

みるみると顔色が悪くなっていった。

 

(オヤ。アレハ、ズイブント血マミレダナ。

 コンナスガタデ、私トタタカウ戦意ハアルノカ?)

 

そう考えたレ級が、更にジャブジャブと菊月に近づいていくと、

菊月は、呆然とした表情を浮かべながら

 

「あぁ、私も死ぬのか」

 

などと、独り言をつぶやき始める始末である。

 

(オモシロイナ。私ガソンナニ怖イノカ!)

 

そして、レ級が菊月の前に立ち、

菊月の反応の面白さのあまりニイイイイイっと笑みを浮かべた時である。

 

菊月が固い表情のまま、大きく息を吸い込んだのだ。

 

レ級は一瞬で「悲鳴を上げるなこの船」と判断し

菊月の首へと手刀を落とし、一瞬で意識を刈り取る。

 

(ウルサクサレチャア、選別(・・)スル時間ガ減ルカラ、

 悲鳴ハアゲチャダメダ)

 

レ級がそう考えながら、意識を失っている菊月を抱え、タンカーへと乗船していく。

そして、タンカー上部にたどり着くと、菊月を甲板に寝かせ、

レ級自身は、顔にすさまじい笑みを浮かべ、スキップをしながら

タンカーの奥深くへと潜っていく。

 

「フフフフフ。サァ。今日ハドンナ出会イガアッルカナァ!」

 

レ級は鼻歌交じりに、機嫌よくタンカーの内部を進んでいく。

そして、『食料庫』と書かれた部屋の前で、その歩みを止めた。

 

「トウチャーク。ドレドレット。」

 

レ級は食料庫のドアを開けようと、ドアノブに手を伸ばすも、

鍵がしっかりと掛かっているようで、ガチャガチャと音がするだけで、

部屋に入ることは出来なかった。

 

するとレ級は、ドアから一歩下がり、

腕を引き絞り、息を勢い良く吸い込むと

 

「セイヤアアアア!」

 

そう叫ぶとともに、ドアを勢い良く殴りつけていた。

戦艦の力で思い切りぶん殴られたドアは変形し、

そのまま部屋の奥へと吹っ飛んでく。

同時に「ズッガアアアアン」という、

すさまじい音がタンカー全体に響き渡っていた。

 

そして、ドアをぶっ飛ばしたレ級は

にっこにこの笑顔で、食料庫の中から何かを物色していく。

ごそごそと、食料庫で蠢くパーカー姿のレ級は

傍から見れば、残飯をあさるゴキブリのようである。

 

そんな戦艦レ級(ゴキブリ)が、何かを見つけ

 

「ウォッホォ!今日ハ、ナカナカ珍シイナ!

 キョウノ銀蠅(・・)ハ大成功ダ、

 コンナ瓶、ミタコトナイゾ!」

 

嬉々とした声で叫び、とある銘柄が入っている一升瓶を掲げていた。

 

「『四季桜』、カァ。良イ名前ダナァ。

 ドンナ味ナンダロウカ!」

 

目をキラキラさせながら、銘柄を見る戦艦レ級。

その手には、とある県の地酒「四季桜 万葉聖」が握られていた。

 

何を隠そうこのレ級、極度の酒好きである。

 

「ンー、大吟醸ッテカイテアルナ・・・

 オツマミドウシヨウカナ」

 

レ級はそう呟きながら、地酒の瓶を握りしめながらも、

ツマミ用にと、缶詰めが置いてある棚を、物色していく。

そして、魚介類の缶詰が置いてあるところで、動きを止めた。

 

「・・・オッ、アルジャナーイ。

 敵ナガラ、帝国海軍モ、ヨクワカッテラッシャルナァ」

 

呟くレ級の目の前には、「オイルサーディン」と書かれた缶詰と

にんにく詰めの瓶、そして鷹の爪が鎮座していた。

 

「オイルサーディンニニンニクイレテ

 ツイデニ、タカノツメモイレテ、炙ル!

 ソシテ、キューット大吟醸デイタダク。

 ・・・ウヘヘ、イイネェ」

 

呟きながら、恍惚とした笑みを浮かべる酒飲み。(戦艦レ級)

頭の中は常に新しい酒と、美味しいおつまみのことだけである。

しばらく妄想に浸っていたレ級であるが、

 

「ア、マッズ。長居シスギタ!急イデ撤退シナキャ」

 

ハッとした顔を浮かべ

タンカーの外部へと急ぎ駆け出していた。

もちろん、その両手には酒瓶とツマミの缶詰をしっかりと持ったまま

甲板で寝ている菊月を飛び超えて、海へと着水する。

 

そして、援軍の艦娘が来る前に、全速力で

深海の自身の拠点へと、戻っていくのであった。

 

------------------------------------------------------

 

タンカーから脱出したレ級は、追撃を受けることもなく、

ツマミと酒も無事に、深海の都に帰朝していた。

そんなレ級の拠点では、なにやらニンニクのいい香りが立ち上っている。

 

「アーンマリ火力ヲツヨクスルト、

 オイルサーディンノ鰊ガ爆発スルカラ、弱火デジックリット」

 

レ級は、そう言いながらすりおろしたニンニクと、刻んだ鷹の爪が乗った

オイルサーディンを缶詰のまま加熱していく。

 

グツグツグツグツと煮立ったところで、

レ級の拠点に備え付けてあるパン粉を上に乗せ

パン粉がニンニクの効いたオイルサーディンの油を吸い、

狐色に成り、いい香りを発するまで更に加熱を続けていく。

 

グツグツグツグツ

 

レ級は無言で、無表情で加熱されていくオイルサーディンを見る。

口には若干のよだれがタレ、手はスリスリスリと、落ち着きが無い。

そしてしばらく加熱を続けていると

ニンニクの良い香りに続いて、パン粉の香ばしい薫りが辺りに充満していく

 

「アァ、タマランカオリダナァ・・・・」

 

 

そして、パン粉がきつね色になったところで

オイルサーディンを火から降ろし、酒の準備をする。

 

「ソノマエニィット、ツマミグイ、

 ジャナクテ、味見、味見」

 

レ級は、出来上がった

ニンニク風味のオイルサーディンを一切れつまむと

ぽいっと口へ放り入れた。

 

「オホォ・・・・コレハ、ニンニクガキイテ、

 シカモ、鷹ノ爪ガイイアクセントダ・・・。

 チョット味ガ濃イケド!」

 

ツマミの出来を確認すると

冷たい深海の海で冷やしておいた四季桜を取り出し

トクトクと御猪口へ注ぐ。

 

そして、ニンニクが効いたオイルサーディンの味が残っている内に

御猪口の中身を、一気に飲み干した。

 

「クゥウウウウウウウ・・・アァアア。

 オイルサーディン、最高。

 四季桜、最高。オイルサーディンニバッチリ合ウナァ」

 

レ級は、更にオイルサーディンを一切れつまみ

四季桜をお猪口に注ぎながら、ぐいぐいと呑んでいく。

 

「クウウウ・・・・。アァ、大吟醸ハ、水ノヨウニノメルナァ。

 シカモ、コノ四季桜、スッゴイ、フルーティナンダヨネェ。

 コレハ、甘イオツマミモ合ウノカモシレナイナァ。」

 

レ級は、酒で顔を赤くさせながら、一人呟き続ける。

 

 「深海元気デ、日本酒ガ旨イ。・・・アァ、至福ゥ」

 

オイルサーディン片手に、四季桜飲みながら

四肢を放り出し、とろけるような幸せな顔をする戦艦レ級。

その姿は、深海の化け物、というよりは、

船に乗って酒を飲むおっさんのような姿であった。




妄想、少し捗りました。
すいません、またレ級さんです。
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