自由なエリレさん。   作:灯火011

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居酒屋に秋刀魚を差し入れ、提督と艦娘と一緒に酒を呑むレ級さん。

港湾棲姫も秋刀魚を楽しみつつ、酒を呑んでいるようです。


9 秋刀魚と港湾棲姫さん

レ級の差し入れた秋刀魚と、提督の釣り上げた平目をハイボールで摘み、

金剛・提督・鳳翔・レ級・港湾の4隻+1人は

居酒屋鳳翔で、がやがやと宴会を続けている。

 

そんなさなか、レ級がふいに、金剛に質問を投げかけていた。

 

「金剛ヨォ!金剛ノ拳ッテ、ナンデソンナニ痛インダ?」

 

レ級は金剛の拳を見つめながら、口を開いていた。

金剛はハイボールを飲みつつ、レ級の質問に答える。

 

「そりゃあ、鍛えてまーすから。

 あれ?デモ、レ級、あなたを殴ったことってありましたっけ?」

 

金剛の記憶の中では、こんな酒呑みで自由なレ級はいない。

不思議そうにレ級を見つめる金剛に、レ級は少し上を向いて考え

金剛の前に人差し指を立てながら、口を開く。

 

「ツイコノ前、私ノ拠点ノ近クマデ来タジャネーカヨ。

 私ノ艦隊全滅サセタアト、私トナグリアッタジャネーカ」

 

レ級は、にやにやとしたいい笑顔を浮かべていた。

 

金剛は、最近の任務を思い出しつつ

レ級と戦った記憶を、脳内から引っ張り出していた。

 

「・・・・あの時の殴り合ったレ級でーすか!?

 沈んだかと思ってまーした」

 

金剛は驚きで目を見開き、レ級に叫び気味に話しかけていた。

 

というのも、金剛の記憶の中で、殴りあった敵というのはほとんどいないからだ。

特にレ級という艦種になれば、もっと少ない。

そして、最近殴りあったレ級と言えば、特殊任務で深海棲艦の拠点の奥地まで進み

最深部手前で出会ったレ級ぐらいであった。

 

レ級は、少し険しい表情を浮かべながら、金剛に口を開く。

 

「多分ソウダゼ。マッタクヨォ。

 私ガ殴リ合イデ負ケルトハ思ワナカッタゼ」

 

そこまで言った所で、金剛の肩が少し震えていることに気づいたレ級は、

表情を変え、少し心配そうな顔で金剛に話しかけていた。

 

「・・・・ドウシタ?金剛。

 呑ミスギデ、気分デモ悪イノカ?」

 

と、レ級が声をかけながら、金剛の様子を確認しようと、

金剛の肩に手をかけた時である。

金剛は般若の様な顔で、レ級の手を払うと

 

「レ級ぅううう!あの時、よくも

 私のことをババァといってくれがりマーシタね・・・!

 しかも、しかも、ボクシング中毒とかいってまーしたヨネェ!?」

 

金剛は逆に、レ級の肩を力いっぱい、つかみ、叫んでいた。

戦艦の力で掴まれたレ級の肩が

ビキビキと嫌な音を上げはじめ、レ級の顔は、痛みで歪む。

 

「イテテテ。金剛、肩ッ!強イ強イ!

 ッテモサァ!」

 

レ級は顔をしかめながら、金剛をにらみ

さらに言葉を続けていた。

 

「金剛、実際ババァジャンカ!

 シカモ、殴リ合イヲスル艦娘ナンテ金剛グライシカイネージャン!

 コノ、ボクシング中毒ゥ!」

 

レ級は叫ぶと同時に、金剛の手を渾身の力で跳ね飛ばす。

すると、金剛は一瞬バランスを崩すも

般若のような怒りの表情を浮かべ

ガタリと椅子を蹴り立ち上がると、レ級に叫んでいた。

 

「レ級ウウウウ!いいましたネェ!

 私に負けた癖してぇ!

 ちょっと顔貸しやがれデース!」

 

レ級は、金剛の言葉に青筋を立て、

金剛に顔を突き合わせると、まくしたてるように口を開く。

 

「・・・アァッ!?

 金剛ババァ!一回勝ッタグライデ良イ気ニナルナヨ!?

 ゴ老体ヨォ!イイゼ!ヤッタロウジャネーカ!」

 

そこまでレ級が言うと、金剛も顔に青筋を立てていた。

 

そして、レ級と金剛はお互いに右拳を握りしめ腕を引き絞ると

次の瞬間、お互いに握りしめた拳を、お互いの顔面に叩き込んでいた。

 

「「オラァ!」」

 

パァンといい音が居酒屋鳳翔に響く。

そして、レ級と金剛は、お互いの拳の威力をまともに食らったからか

おもいっきりヨロケながらも、次の瞬間、更に力いっぱい

左の拳をお互いに叩き込んでいた。

 

「痛クネェゾ、ババァアア!」

 

「レ級ううう!黙りやがれデース!」

 

そして、再度パァンという破裂音が響き

お互いにふらりとよろけ、罵倒を続けてていた。

 

「・・・あの、レ級さん、金剛さん。

 殴り合いはいいんですが

 居酒屋の備品だけは、壊さないで下さいよ?」

 

金剛とレ級のよっぱ2人が殴り合う中、

食器の片づけをしつつ、2匹目の秋刀魚を焼いていた鳳翔だけが

あきらめたような顔で静かにつぶやいていた。

 

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2匹目の秋刀魚を目の前にした港湾棲姫は、

早速、器用に箸で秋刀魚の頭を掴むと

グッと力を入れ、身を少しだけ潰す。

そのまま少しずつ尾っぽに向けて、

同じように箸で秋刀魚の身を挟み、圧迫を加えていく。

 

港湾棲姫は、秋刀魚の全身に圧迫を加え終わると

尻尾の部分に箸を当て、秋刀魚の尻尾を切り取った。

 

そして、今度は秋刀魚の身を箸で押さえたかと思うと

港湾棲姫は自身の爪の様な手で秋刀魚の頭を掴み、ゆっくりと

秋刀魚の頭をひきぬく。

 

すると、なんと素晴らしい事か。

秋刀魚の頭を引き抜くと同時に

秋刀魚の背骨が尻尾に近い部分まで、スルリと全部抜けたのである

 

その光景に、思わずニンマリとする港湾棲姫。

骨が取れた秋刀魚に辛味大根とスダチをかけ

港湾棲姫は内臓と一緒に身を口に運ぶ。

 

すると、港湾棲姫の口の中に、秋刀魚の身の味と

油の味、そして内臓の苦味がなんとも言えない

旨みのハーモニーを奏でていた。

しかも秋刀魚が新鮮故に、白身がジューシーで、

内臓も、苦いながら全て食べれるぐらいの旨みを誇っていたのである。

 

「ンンー!コノ苦味ガイイワヨネ」

 

港湾棲姫は、思わず笑顔になりながら、叫ぶ。

そして、レ級特製のハイボールを一口、口に含む。

 

ゴクリ

 

港湾棲姫の喉が動き、ハイボールが喉の奥に突撃していく。

秋刀魚の旨み、そして薬味のアクセント

そしてスダチ入りのハイボールの爽やかさに

港湾棲姫は満足そうな笑みを浮かべ、ため息をついていた。

 

「アァ・・・幸セダ」

 

「旨いですねぇ。港湾殿。」

 

提督も、港湾棲姫の隣で、同じように2匹目の秋刀魚を食べながら

ぽつりと呟いていた。提督の表情も、港湾棲姫と同じように

満足そうな笑みを浮かべている。

 

そんな提督を横目に、港湾棲姫は骨を鳳翔に見せながら、口を開いていた。

 

「ア、鳳翔サン。

 秋刀魚ノ骨、アブレマス?」

 

話しかけられた鳳翔は、笑顔で港湾棲姫から秋刀魚の骨を受け取ると

 

「はい。大丈夫ですよ。

 港湾さん。通ですね」

 

そう言いながら、秋刀魚を焼いている七輪の上に、秋刀魚の骨を乗せた。

提督も同じように骨を鳳翔に見せながら、口を開く。

 

「おっ、港湾殿。わかってらっしゃる。

 鳳翔。私のも頼めるか?」

 

鳳翔は、笑顔で提督から骨を受け取りながら、口を開いていた。

 

「はい、もちろん。

 フフッ、こちらから見てると、提督と港湾さん凄く似ていますね」

 

提督から渡された骨を、鳳翔は同じように七輪の上に置く。

じっくりと炙られていく秋刀魚の骨の

あぶられ、少し焦げていく骨の、

良い香りが七輪から一気に立ち昇っていた。

 

「アァ、良イ香リデス。

 竹鶴ノハイボールモ、秋刀魚モ、平目モオイシイシ。

 コレダケ満足シタノハ、久シブリ」

 

港湾棲姫は少し赤い顔で、笑顔になりながら呟いていた。

 

「いいよなぁ。私もここまでのんびりと

 満足したのは久しぶりだ。」

 

提督も同じように笑顔になりつつ、頷く。

呟きを聞いた港湾棲姫は、提督の顔を見ながら

ハイボールを煽りつつ、口を開いていた。

 

「提督サンハ忙シインデスネ。」

 

提督は港湾棲姫の言葉に反応し

視線を港湾棲姫に向け、少し表情を曇らせながら口を開く。

 

「そうだよー。お前ら深海棲艦の対応に追われてなぁ・・・。

 あと、まぁ、身内のトラブルだとか、大本営対応だとか。」

 

提督はそう言いながら、ハイボールのグラスを揺らしていた。

カランカラン、と氷の良い音が響いていた。

 

「ソレヲイワレルト、ナントモイエナイデス。

 アァ、デモ、身内ノトラブルトカ、大本営対応ハ、

 気持チ、ワカリマス」

 

港湾棲姫は提督の言葉に少し申し訳なさそうな顔をしながらも

頷き、更に言葉を続けていた。

 

「駆逐艦ト、軽巡ノ軋轢、主力艦隊ノ編成トカ。

 下手ニ編成間違ウト、相性モアッテゴタゴタシタリ・・・。

 アトハ」

 

そこまで言うと、港湾棲姫は、チラリと

金剛と殴りあっているレ級を見ながら口を開く。

 

「アアイウ、困ッタ部下ノ後処理、トカ」

 

提督も港湾棲姫と同じように、レ級と殴りあっている金剛を見つつ

頷きながら、口を開いていた。

 

「ははぁ。港湾殿も苦労されているようで・・・。

 と、いいますか、これ以上殴り愛されますと

 ココが持ちませんので、港湾棲姫殿。ご協力願えますかな?」

 

スッと提督の雰囲気が変わり、さきほどまでの酔っ払いモードから

提督モードへと変貌を遂げていた。

 

「エエ、モチロン。

 今回ノ喧嘩ノ原因。レ級ニアルヨウデスカラ。」

 

港湾棲姫は赤い顔をしながらも

顔に青筋を立て、目からオーラをたぎらせていた。

こちらも、よっぱらいから、深海棲艦の姫へと変貌を遂げている。

 

そして港湾棲姫と提督は静かに、同時に椅子から立ち上がったと思うと

次の瞬間、音もなく、殴りあっている2隻の後ろに素早く移動していた。

 

つまり、レ級から見れば、金剛の背中に青筋を立てた提督が見え

金剛から見れば、レ級の背中に青筋を立てながらオーラを放つ港湾棲姫が見えていた。

 

「ババァ!イイカ・・・ゲ・・・ン」

 

「レ級いい加減にだまる・・でーす・・?」

 

その姿を確認したレ級と金剛は、殴り合いを辞め

思わず、驚愕の表情でお互いの背中を見合っていた。

 

「レ級!う、後ろデース!」

 

「金剛ゥ・・!?後ロニヤバイノガ」

 

「「ウシロ?」」

 

レ級と金剛は、同じタイミングで勢いよく振り返る。

すると、お互いの上司の、青筋立てたマジギレ顔が視界いっぱいを満たしていた。

 

「て、テイトクー!?」

 

「港湾棲姫ッ!?」

 

思わず叫ぶ金剛とレ級。

そして、名前を叫ばれた提督は、

青筋を立てたまま、提督は金剛の頭を持ち

そのまま金剛の体を持ち上げると、ゆっくりと口を開いた。

 

 

「金剛よぉ・・・?

 私が気持ちよく酒呑んでる時に喧嘩たぁ。

 ・・・良い度胸してるじゃねーか?あ?」

 

「テ、テイトク、ソーリーね。

 レ級がババァって言うからツイ、ネ?」

 

港湾棲姫もレ級の頭を思いっきり掴み

レ級の体を持ちながら、口を開く。

 

「レ級?私、久シブリニ美味シイオサケノメタノ。

 ソレナノニ、レ級、ナンデ喧嘩シチャッタノ?

 ・・・私モ、怒ル時ハ怒ルンダヨ?」

 

「港湾棲姫様。スイマセンデシタ。

 金剛ガ、悪インデス。ダッテ・・・」

 

そして、金剛とレ級がお互いに申し開きをしようとした瞬間である。

 

「「謝って言い訳するぐらいなら

 最初っから静かに呑め。この馬鹿共!」」

 

提督と港湾棲姫は、叫ぶと同時に

金剛とレ級を、勢いよく居酒屋鳳翔の床に叩きつけていた。

 

「スタアッップテイト・・・ガフッ!」

 

「チョマッ・・グフッ!」

 

金剛とレ級は、ビターンと床に叩きつけられると

乙女が発してはいけない声を出しながら、意識を飛ばしていた。

提督と港湾棲姫は、気絶したレ級と金剛を一瞥し

椅子へと座りなおし、竹鶴のハイボールのグラスを握りなおしていた。

 

「静カニ、ナリマシタネ」

 

「だなぁ。さって。港湾殿。

 秋刀魚が冷める前に 美味しく頂こうとしましょうか」

 

「エェ。提督殿。」

 

カチン、と竹鶴ハイボールのグラスを当て

乾杯をする提督と港湾棲姫。

 

ゴッゴッゴッゴッと、良い音を立て

ハイボールが勢いよく喉に吸いこまれていく。

 

「アァ、イイデス」

 

「あぁ、最高だなぁ」

 

ハイボールの爽やかさに、満足げに呟く港湾棲姫と提督。

 

そして、居酒屋鳳翔の店主である鳳翔は

目の前で行われた部下潰しにあっけをとられながらも、

ひとつため息を付き、口を開いていた。

 

「提督、港湾さん。

 新しい秋刀魚も焼き上がりましたので

 私もそちらに行って一緒に呑んでもよいでしょうか?」

 

鳳翔の顔は、諦めたような、少し疲れたような表情をしていた。

その目線の先には、酒を呑み、楽しそうに秋刀魚をつつく提督と港湾棲姫に、

床に倒れ伏し、気持ちよさそうな寝息を立てる、レ級と金剛の姿が映っていた。




妄想捗りました。
裏タイトル「秋刀魚と竹鶴ハイボール。特に内臓と身を一緒に食べてからの酒」
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