提督と鳳翔は通常業務へ。
金剛とレ級はノックダウン。
さて、港湾さんはいったいどこへいったのでしょうか?
「戦艦レ級」
深海棲艦と呼ばれる存在の中でも特に上位種に位置する艦種である。
数多くの艦娘を沈め、提督を苦しめている最悪の敵と言って良い。
なにせ、開幕の航空戦、そのあとの魚雷、そして砲雷撃戦、対潜戦闘と
全てにおいて高水準で纏まっている敵である。
彼女達の中でも上位の固体である戦艦レ級エリート、という
個体が存在する。
何が違うのかといえば、通常個体に比べ、
2倍近い能力を持っている戦艦レ級である。
それ故に、通常であれば、赤いオーラの戦艦レ級を見たときは
提督の誰しもが、警戒を強め、眉間にしわを寄せるものである。
通常であれば、だが。
そして、今は通常の状態ではない。
「ンゴオオ・・・・」
戦艦レ級が、日本の呉鎮守府、しかもその中の
居酒屋鳳翔の座敷に、気持ちの良い笑顔を浮かべ
更にいびきをかきながら爆睡しているのである。
しかも、その隣には戦艦金剛が
「ンン、フフフヘヘ、、、提督ゥ
ダメデース・・・・時と場所を考えてくだサーイ。
ふふふぅ・・・」
寝言を言いながらこれまた気持ちの良い笑顔で
居酒屋鳳翔の座敷で寝ころんでいた。
現在の時刻は1200を過ぎたあたりである。
戦艦レ級と戦艦金剛は、つまるところ、
呑みすぎで行動不能状態である。
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戦艦金剛と、戦艦レ級が酒を飲み過ぎてダウンしているその頃
提督と鳳翔は、通常業務へと戻っていた。
通常業務とはいっても、実際の所今日は特に仕事は無い。
精々書類整理が残っていた程度だが、鳳翔と共に
完璧に書類整理を終わらせていたのだ。
そして、鳳翔は鳳翔で、書類整理が終わった今、
特に出撃をするわけでもないので
居酒屋鳳翔用にと、呉の街へと買い出しに出ている。
そう、類整理もほぼ終わらせ、更に艦娘も最低限を残して出撃している今、
提督は暇を持て余していた。
「なーんにもやることないじゃん。
呉護衛艦隊の旗艦様は、今も居酒屋鳳翔で寝てるしなぁ」
提督室の椅子に座りながらも、窓の外を見つつ
呟く提督の顔は、酒が残っているせいか少し赤みがかかっていた。
「演習させるにも、第六駆逐隊と阿武隈は訓練中だし。
金剛は寝てるし、鳳翔は買い出しいってるし。」
窓の外では、阿武隈を先頭に第六駆逐隊が訓練をしていた。
今は丁度走り込みをし、第六駆逐隊に激を飛ばしているようだ。
大日本帝国海軍、第一艦隊を纏め上げる阿武隈の姿がそこにはあった。
「阿武隈も普段頼りないけど、こういう時は
本当頼りになるよなぁ。」
窓枠に顎を乗せながら、外を見て呟く提督であったが
ココで一つ、重要なことを思い出していた。
居酒屋鳳翔で見たのは、寝ているレ級と金剛。
書類整理を手伝ってくれた艦娘は、鳳翔。
外で訓練をしているのは、阿武隈と第六駆逐隊。
・・・では?
「・・・あれ、そういえば、港湾殿はいずこへ・・・?」
港湾棲姫、呉鎮守府内でまさかの行方不明である。
その事実に気づいた呉の提督は、顔面蒼白になりながら
冷や汗を噴出させつつ、提督室を飛び出していた。
(オイオイオイオイ!冗談じゃねぇ!
姫を呉の鎮守府に野放しとか、まずい!
まずすぎるじゃねーかよぉ!)
心の中で叫びながら、呉鎮守府を走り抜ける提督の姿がそこにはあった。
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提督が焦って執務室を飛びたした頃、
港湾棲姫は、鎮守府内のとある場所に立っていた。
「ココ、カシラ?」
感心しながらも、感動する港湾棲姫の目の先には
「ゆ」と暖簾のかかった部屋があった。
「艦娘用ノドッグ・・・」
そう呟くと、港湾棲姫は、ゆっくりとした足取りで歩みをドッグに進めつつ
暖簾を自身の爪のある腕で押しドックへと入っていく。
「オォ!スゴイ!コレガ!艦娘用ノドックカ!
私達ノドックトハ、ゼンゼンチガウ・・・!」
港湾棲姫は、艦娘のドックの設備に驚き、目を見開いていた。
だが、暖簾をくぐった港湾棲姫の目に飛び込んできたものは
人間にとっては、当たり前の銭湯の風景であった。
別に驚く必要はない、と、一般の人なら思うであろう。
だが、港湾棲姫は深海棲艦である。
深海棲艦の拠点や、設備はまだ謎の部分が多いが
こと港湾棲姫の拠点に限っては、ドックが質素なのである。
海水を利用し、水温は海のまま。
そして、修復材を海水に混ぜ、浴びるだけの冷たいドック。
脱衣所、ましてや扇風機や牛乳などは一切ない、事務的な場所。
それが港湾棲姫のドックである。
さて、そんな港湾棲姫が艦娘のドックを見たらどうなるか。
明るい室内、荷物を置くための棚、完璧な脱衣所
そして冷蔵庫にある牛乳シリーズ。
「コレハ、ナンダロウ?」
港湾棲姫が手を伸ばしたのは、扇風機である。
ドックで熱くほてった体を冷やすには最適な道具であるが
もちろんそんなもの、港湾棲姫の拠点には存在しない。
港湾棲姫は不思議そうな顔を浮かべ、ぺたぺたと手を触れながら
扇風機の観察を続けていた。
「羽ガ・・・3枚?
ンート。ボタンガアルワネ。
オシテ・・イイノカナ?」
カチッと港湾棲姫の爪が扇風機の「中」とかかれたスイッチを押した。
するとブウウンとモーターが回転を始め、扇風機から風が送られ始める。
港湾棲姫は、風を顔面に受け、思わずしかめっ面をしながらも
更に観察を続けていた。
(オオ?風ガオクラレルノカ。
不思議ナ機械ガアルノネ。
・・・「弱」「中」「強」ッテボタン
コレハモシカシテ)
港湾棲姫はそう考えながら、今度は「強」のボタンを押す。
すると、港湾棲姫の顔面に強い風が当たり、白い髪が思いっきり
風で持ちあがり、荒ぶっていた。
「オオオオ!?ナカナカコレハ・・・ツヨイッ」
港湾棲姫はそう言うと、今度は「切」のボタンを爪で押す。
すると、扇風機は静かに、回転を止めるのであった。
(ナルホド、コウイウ、風ヲオクル機械ナノカ。
デモ、ナニニツカウンダロウ・・・・?)
はてなマークを浮かべ、首をかしげる港湾棲姫の目に
今度は、大きめの椅子が映る。
俗に言う、「マッサージチェアー」である。
しかもご丁寧に、最新鋭のモデルで、
ボタンひとつで体を測量し、フルコースが味わえるチェアーだ。
「フカフカソウナ椅子ネ。座ッテミヨウカシラ」
港湾棲姫は椅子の前に移動すると
静かに膝を折り、椅子に座る。
すると、なにやらコントローラーのようなものが
点滅していることに港湾棲姫は気づいた。
「ス、タート?ナニカシラ?」
そして港湾棲姫は「スタート」と書かれた
スイッチを押してしまったのである。
ピッ・・・
「ヒャッ!?」
押したと同時に、港湾棲姫の背中に
マッサージチェアーの揉み玉が当たり
腰のあたりから、肩の上まで一気に測量をしていく。
「オフッ、ナニコレ?」
他人に体を揉まれた事のない港湾棲姫は
マッサージチェアーの挙動に一瞬びっくりするも
(ナンダロウ・・?
デモ、キット、ドックニオイテアルンダカラ
悪イモノデハナイハズ)
港湾棲姫はそう思い、マッサージチェアーに
体を完全に預けていた。
そして、港湾棲姫がマッサージチェアーに体を預けると同時に、
マッサージチェアー測量が完了し
港湾棲姫の体へ、本格的なマッサージが開始されたのである。
「!アッ、ンッ!」
繰り返し言うが、港湾棲姫は普段マッサージなど受けたことが無いのである。
マッサージチェアー、しかも最新式のマッサージチェアーの
気持ちよさに、思わず声が出てしまっていた。
首、肩、腰、そして同時に足裏と脹脛、
そして腕と、マッサージチェアーは、港湾棲姫の体を
余すところなく、容赦なく解していく。
「ナニコレッ・・・!
アンッ!フー。キモチイイ」
(オォアー。コレキモチチイ。
声ガデルノガ難点ダケド。慣レレバ大丈夫ソウカナ?)
時折声を上げながらも、マッサージチェアーを堪能する港湾棲姫の姿である。
姫、というよりは、蕩けた顔でマッサージチェアーに座る
OLさんと言ったほうが、似会うのかもしれない。
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港湾棲姫が艦娘用のドックで色々堪能している頃、
提督は、港湾棲姫を探し、呉鎮守府を汗だくになってかけずり回っていた。
「ハァー!ハァー!くっそ。
港湾棲姫どこにもいねぇじゃねぇか・・・!」
息を切らし、赤レンガ倉庫に手を付きながら
グチる提督である。
それもそのはずで、探し始めて既に1時間。
職員にも話を聞きながら、なりふりかまわず探しているのに
一向に尻尾がつかめないのである。
「っつーか、汗かきすぎたな
一旦風呂入って、リフレッシュしてから対策考える、か」
自身の汗かき具合に嫌気がさした提督は
艦娘も使用する風呂へと足を向けていた。
さて、呉鎮守府の風呂というのはどこにあるのかと言えば
もちろん、艦娘用のドックも兼ねている場所である。
(今は金剛も寝てるし、レ級も寝てる。
他の連中もいないし。貸切じゃないか。)
港湾棲姫が見つからないのは問題であるが
提督は、貸切で風呂が使えることに笑顔を浮かべていた。
その足も、若干早足になり風呂へと向かう。
そして、風呂の近場まで来た時である。
「アフウウウ。」
なにやら聞き覚えのある声が、風呂場、
つまり艦娘用のドックから聞こえてきたのである。
提督は、その声にビシィッという音が
聞こえるのではないか、という勢いで固まっていた。
(この声、港湾棲姫じゃないか?
でも、なんでドックに?もしや、やっぱりスパイかなにかか?)
提督はそう考えると、風呂に入ることを切り捨て
真面目な顔で、ゆっくりと暖簾をくぐり
ドックの中を確認していった。
すると、そこにいたのは
「キモチイイイイ・・・アンッ。
コシ、イイワネェ」
マッサージチェアーに座り、蕩けた顔で
時折艶っぽい声を発している港湾棲姫であった。
提督は港湾棲姫を見ながら、一瞬固まるものの
「港湾殿、艦娘用のドックで、何を・・?」
と港湾棲姫に声をかけていた。
港湾棲姫は提督に気づくと
呆けた顔を提督に向け口を開く。
「私ノ、拠点ニナイ設備ガ、ンッ
一杯アッタカライロイロタメシッ、ッテ
ミテタ。コノイス、ウンッ、キモチイイネ」
提督は港湾棲姫の言葉に、思わずため息をついていた。
(レ級といい、港湾棲姫といい、自由すぎるだろ・・・)
提督は内心で愚痴りながらも
マッサージチェアーに近づき港湾棲姫に話しかける。
「拠点にないって、深海棲艦の拠点のドックってどれだけ設備悪いんだよ。
これ、人間でいうところの安い風呂屋の内装だぞ?」
港湾棲姫は提督の言葉を聞くと、目を見開き、驚愕の表情を浮かべていた。
「ソ、ソウナノ!?
ムゥゥウウ。艦娘ト人間、ズルイ」
港湾棲姫はそう言うと、マッサージチェアーから立ちあがり
提督と目線を合わせ口を開いていた。
「ネェネェ、物ハ相談ナンダケド。
コノ椅子、私ニクレタリハ・・・」
港湾棲姫がそこまで言葉を紡いだところで
かぶせるように提督が言葉を言い放った。
「無理だろ。敵に塩は送れねぇよ」
「ソンナ殺生ナ!」
提督の言葉に港湾棲姫は、膝から崩れ落ち
手をつき、下を向いていた。
「おいおい、そこまでマッサージチェアー気に行ったのかよ。
まぁ、そうだなぁ、これはやれないけれどなぁ・・・」
港湾棲姫の姿を見た提督は、気の毒だったのか
何か別のものをと風呂場を見渡していた。
すると、牛乳シリーズの入った冷蔵庫が目に入る。
「そうだ、港湾殿。
風呂に入った後の牛乳なら一本奢ってやれるぜ。
今回はそれで勘弁してくれよ」
と、ひざまずいたままの港湾棲姫に声をかけていた。
港湾棲姫は顔を上げ
「牛乳?」
「そ、牛乳。熱い風呂に入って、
火照った体に冷たい牛乳。旨いぜ?」
提督の言葉に、港湾棲姫は目を輝かせ、立ちあがっていた。
そして、提督の手を、自身の爪の手で器用に包むと
「ゼヒイタダキマス!
・・・トイウカ、ドックッテ、熱インデスカ?」
「おうよ。いいぜ。
・・・えっ、深海棲艦の風呂って、冷たいの?」
「ハイ。海水デスカラ」
港湾棲姫の言葉に、二の次が告げぬ提督。
というのも、疲れて風呂に入ったら、それが海水だった、
なんていう状況は誰でも遠慮願いたいのが人間の性である。
そして提督は、港湾棲姫の肩をがっしりと掴むと
「OK,OK。わかったわかった、
深海棲艦のドックって劣悪なんだな、OK、OK。
こうなったら、湾岸殿、特別だ。
風呂に入ろう、風呂に。ゆっくり温まれ。」
「ハ、ハイ?
ワカッタ。アッタマ・・ル?」
港湾棲姫は困惑した表情を浮かべながらも、頷くのであった。
妄想捗りました。