第六駆逐隊と訓練を行った後、タオルと飲み物を頂きにきた阿武隈は、
居酒屋鳳翔の座敷で、まさかの戦艦レ級と出会う。
カメラに撮影されたり、中破されたりと
レ級には良い思い出が無い阿武隈は、叫び驚愕の表情を浮かべていた。
そして、そんなこととはつゆとも思っていない
酒呑みの戦艦レ級である。
(少しだけカメコさんが語られます。
気になった方は、カメコレ級をご覧ください)
「なんで敵である貴女がこんなとこにいるのよ!」
阿武隈は、レ級を指さしながら叫んでいた。
というのも、過去、阿武隈は「レ級フラッグシップ改」に大破させられ、
あられもない写真を撮られていたのである。
「っていうか、レ級、なんで武装してるのよ!カメラは!?」
そして、阿武隈の記憶の中では、「レ級フラッグシップ改」以外のレ級は、
まともに話が通じず、直に攻撃を仕掛けてくる戦艦レ級ばかりであったため、
目の前の居酒屋鳳翔の座敷で寛いでいるレ級は、
カメラをもった非武装の「レ級フラッグシップ改」と
認識してしまうのは仕方のない事である。
「・・・ンァー?確カ、阿武隈ダッケ?」
だが、それは阿武隈の中での話である。
指を刺されながら叫ばれた「戦艦レ級エリート」、
ただし酒とツマミを愛する個体であるこのレ級は
首をかしげながら、阿武隈に言葉を返していた。
「武装スルノハ当タリマエダ。戦エナイジャン。
ッテイウカ・・・カメラッテナンダヨ」
首をかしげるレ級に、阿武隈は近寄り、
眉間にしわを寄せた顔をレ級に近づけながら、更に叫ぶ。
「とぼけないでって!私を散々撮りまくった挙句、
水しぶきを撮りたいとかいって私を大破させたじゃない!
忘れたとは言わせないわよ。レ級!」
阿武隈はそれこそ食ってかかる勢いでレ級に叫んでいる。
阿武隈の顔は、その時のことを思い出したのか、
頬が少し朱色に染まっていた。
だが、レ級は未だに何のことか判っていない。
未だに首を傾げ続けていた。それもそうである。
「戦艦レ級」という艦種は同じでも、
個体によって完全に趣味嗜好が別なのだ。
(阿武隈、私ヲ誰カト勘違イシテルナァ。
カメラ、カメラ・・・・カメラ?アァー!カメラネ、カメラ!)
レ級はしばし首をかしげながら考えていたが、
頭の中で一人の「戦艦レ級」が浮かび上がり、
にやりと笑いながら阿武隈に話しかけていた。
「・・・アァー、阿武隈。ソレ、私ジャナイ。
阿武隈ガ言ッテルノ、カメラヲ持ッタ、「カメコノレ級」ダロ。
私ハ、酒ト摘ミガ好キナ、「ヨッパノレ級」ダゼ?」
「・・・・えっ!?違うのっ!?っていうか、別の戦艦レ級!?」
レ級の言葉に、阿武隈は驚きの表情を浮かべて固まっていた。
そして、レ級は、固まる阿武隈を、呆れた表情で見ながら呟いていた。
「エッ・・・ッテ。固マルホド、オドロクコトデモナイダロ。」
「だ、だって、深海棲艦って普通、私達艦娘を見ると襲ってくるじゃない。
カメラのレ級ぐらいなのよ?友好的な深海棲艦。
まさか、同じレ級で、深海棲艦で、
こんな話せる船がいるなんて・・・思わないわよ」
阿武隈は、呆れるレ級の顔を見ながら、真面目な顔で話しかけていた。
そう、阿武隈の記憶の中では、普通の深海棲艦ならば、
艦娘を見ただけで襲ってくるのである。
特に戦艦レ級などといった、上位個体ではその傾向はもっとえげつない。
騙し打ち、隠蔽、なんでもありなのである。
そんな上位個体の一つ、戦艦レ級が鎮守府内の、
しかも居酒屋鳳翔でいびきをかいて寝ている状況は
阿武隈にとって、とてもではないが理解しがたい状況であった。
レ級は、阿武隈の真面目な顔をまじまじと見つめつつ、言葉を紡ぐ。
「アァー。ソリャアナァ。私達ハ基本的ニ怨念ノ塊ミタイナモンダカラ。
正義ト勇気ノ塊ノ艦娘ト人間ヲ見ルト、ドウシテモブッ壊シタクナルンダヨナァ」
レ級がそこまで言うと、レ級の瞳と体から、
赤いオーラが立ち昇り、その手は阿武隈の首へと伸びていた。
顔と顔がくっつきそうなほど近づいていた阿武隈は、
その手を避けることが出来ずに、なすすべもなく、
レ級の手に首を絞められていた。
そして、そのままレ級は座敷から立ちあがり、
阿武隈の首を締めたまま、阿武隈の体を空中へと持ちあげていた。
「ぐぅっ・・・貴女!」
レ級はニイイっと獰猛な笑みを浮かべ、
少しだけ阿武隈の首を絞めている手に力を加え始めていた。
自身の首にかかる圧力に、阿武隈は苦しげな表情を浮かべながら呟いていた。
「ぐうぅ・・・ぁ・・・!!」
阿武隈は、レ級の手を振りほどこうと、自身の首を絞めているレ級の青白い手に
自身の手を添え、力いっぱい引っ張るも、まったくびくともしない。
なんとかレ級から逃げようと、レ級を蹴ろうとするも、
苦しさからかまともに体が動かせないでいた。
そして、阿武隈の意識が闇に落ちようとしたときである。
「デモ、ダ!私ハソウトモカギラナインダヨナァ!」
レ級はそう叫ぶと、阿武隈の首から手を離し、
獰猛ではない、いたずらっこのような
人懐っこい笑みを阿武隈に向け、口を開いていた。
「私ハ強イ艦娘ト戦ウノハ好キダ!
ダッテ、全力デ戦ッタアトノ、オ酒ト摘ミ美味シインダモン。
デモ、真正面カラ当タッテコナイ相手トハタタカワナイ。
弱イノ相手ニスルト、酒マズクナルシ」
レ級はニヤニヤと、首元を抑えてせき込む阿武隈を見ながら言葉を続ける。
「ソウイウワケダカラ、マー。ナンダロウ、取リ合エズ。
オミヤゲデ持ッテキテル、秋刀魚、タベル?」
「・・・えほっ。えほっ・・・・人の首を
思いっきり締めておいて言う台詞じゃないわよ・・・。」
阿武隈は未だ首絞めのダメージが抜けていないのか、
せき込み、その顔は少し青ざめていた。
レ級は意外そうな顔を浮かべ、阿武隈に口を開く。
「アレ?スゴク、手加減シテタンダケド・・・・。
昨日、呑ミナガラ喧嘩シタ金剛ハ、
コノ10倍ノ力デ殴ッテモビクトモシナカッタンダケド・・・。
阿武隈サァ。訓練、タラナインダジャナイノ?」
きょとん、という言葉が似合いそうなほどのレ級の表情を見た阿武隈は
青い顔をしながらも、顔に青筋を立てながら、レ級に掴みかかっていた。
「げほっ。あのねぇ!いきなり首を絞めるのはダメなの!
あれはどう見ても攻撃でしょお!?
っていうかね!金剛さんは別格なの!化物なの!
あの人と私達、普通の艦娘を一緒にしないで!レ級!」
「ウオッ!?阿武隈、ドードー。首絞メハ調子ニノリスギタ。ゴメンゴメン。」
レ級は、青筋を立てて突っかかってくる阿武隈に、思わず謝っていた。
そしてレ級は、苦笑を浮かべつつ、口を開く。
「ソッカー。金剛ダカラ殴リアッテ大丈夫ダッタノカ。
確カニ、戦場デ私ガ殴リ負ケタカラナァ。
規格外ッテ、ドコニデモイルンダナァ。デ、ダ。阿武隈殿」
「なによっ!?」
「ソノ、規格外ノ御方ガ、
阿武隈ノ背中デ青筋立テナガラ立ッテイラッシャイマスガ」
「・・・・ふぁいっ!?」
阿武隈は、レ級の言葉に青ざめながら、勢いよく首をひねり、背中を向いていた。
するとそこには、般若面のような表情を浮かべながら、顔に青筋を立てている
「レ級を殴り倒せる」戦艦金剛が立っていた。
「・・阿武隈。私が化物とはどういうことデース?
別に、敵であるレ級からババァって文句言われるのはまだいいデスが・・・。
阿武隈、味方からそんな化物扱いされるのは、
正直心穏やかではないデースよ?」
阿武隈は、見たことのないような金剛の表情に、
更に蒼い顔になりながら口を開いていた。
「あ、あはは、金剛さん。これはその、言葉のあやというか。」
「問答無用デース!阿武隈ァ!その根性!『教育』し直して差し上げマース!」
『教育』それは、旧海軍に置いてシゴキと呼ばれる行為である。
今風に言えば、「教育的指導」といったところであろうか。
阿武隈は、今まで何度か金剛の『教育』を受けたことがあるが、
そのたびに大破したり、疲労が溜まりすぎて気絶したりと、
全くいい思い出がないのである。
「ひいっ!?金剛さん、それだけはっ!」
金剛はグイっと、おびえる阿武隈の首元に手を伸ばすと、
阿武隈のジャージの首元を掴み
戦艦の馬力で、無理やり阿武隈を引き摺っていく。
「問答無用と言ったデース!確か、第六駆逐隊もまだ外にいましたネ!?
フフフフ。久しぶりに腕がなりマース。直々に訓練、してあげマース!」
哀れ阿武隈、そして第六駆逐隊。
戦艦の馬力と、高速戦艦の足からは、絶対に逃げられないのである。
『鬼の山城、地獄の金剛、音に聞こえた蛇の長門
日向行こうか、伊勢行こか、いっそ海兵団で首吊ろか
地獄榛名に鬼金剛、羅刹霧島、夜叉比叡
乗るな山城、鬼より怖い』
そう揶揄された、帝国海軍屈指の鬼の訓練が、今、始まろうとしていた。
「いやあああああああ・・・・・」
阿武隈の断末魔が聞こえる中、
金剛はレ級に顔を向け、般若の顔から一転、笑顔でレ級に口を開いていた。
「あぁ、そうでシタ。レ級。姫の居場所がわかりマーシた。
あと、伝言もあずかってマース」
「オ。何処ダッタンダ?アト伝言ッテ?」
「姫は提督と一緒にドックにはいってマース。
伝言は「3つの御猪口と熱燗、あとあたりめ」だそうデース。
私も、阿武隈の『教育』が終わり次第、合流しマースネ。
またあとで宜しくデース!」
金剛はそう言いながら、片手はレ級に手を振りながら、
もう片方の手で阿武隈の首を掴み、引きずっていった。
「ワァォ・・・アリャ港湾ノブチギレヨリ、怖イナ・・・。
アァ、ソウダ、ソレハソウト、熱燗トアタリメ・・・?」
レ級はその光景をただ呆然と見守っていたが、提督と姫からの伝言を思い出し口を開いていた。
そして、レ級も、姫と同じように、冷たい、海水のドックしか知らない深海棲艦である。
「・・・・アァ。ナルホド。オ酒ヲモッテ、ドックニイケバイインダナ。
ソレニシテモ、ドック?
アンナ寒イ場所デ、港湾ト提督殿ハ、一体何ヲシテルンダロウ?」
そう呟くレ級は、酒呑みでありながら、『風呂に浸かりながら熱燗』という
人間では当たり前の、素晴らしい発想が思い浮かぶわけも無かったのである。
妄想捗りました。阿武隈さんー!