提督と港湾の姫は、
一緒に風呂場でのんびりとしていたようです。
呉鎮守府の昼下がり。
秋独特の気持ちのいい風に
熱すぎない直射日光。
何とも言えない、この季節独特の最高の一日である。
さて、そんな昼下がりの呉鎮守府自慢の風呂には、珍しい光景が広がっていた。
風呂場の入口に、黒髪のスレンダーな女性と、白髪のグラマーな女性が
生まれたままの姿で並んで立っているのである。
「さて、港湾殿、って呼ぶのも何か嫌だな。
うーん、そうだな。レ級を真似して姫様とでも呼ばせて貰おうか。
構わないかしら?」
黒髪の女性、呉鎮守府の提督は
片手にタオルを持ち、自分の体を一切隠さず胸を張り
堂々と立ったまま口を開いていた。
「エエ。ソノ方ガ、呼バレナレテマスカラ。
ソレハソウトシテ、オ風呂ッテ、広イデスネ。」
対して白髪の女性、港湾棲姫と呼ばれる深海棲艦は
キョロキョロと風呂場を観察しながら、提督に言葉を返していた。
両腕にはめている爪を脱所に置いているため
額の特徴的な角以外は、色白なグラマー美人である。
「ははっ、これで広いか!
我が呉鎮守府の風呂は、他の鎮守府と比べると割と狭い方なんだぜ?
姫様は本当に風呂に入ったことないんだなぁ。」
提督は港湾棲姫の言葉に、笑いながらそう口を開いていた。
横須賀や佐世保に比べれば、こと艦娘と人間用の風呂は、
呉は少しだけ小さいのだ。
「ま、それはそうと、姫様。
風呂の作法はご存知で?」
提督の問いに、港湾棲姫は、首を横に振り
「イイエ、マッタク。
何時モ、艤装ツケテ服ノママハイッテタカラ。」
更にキョロキョロと風呂場を興味深く観察しつつ
提督に対して、口を開いていた。
「そうでしたか。
それではお教えいたしましょう。
ではまず、風呂の基本といたしまして
ここは共同浴場、ほかの人も一緒に使うお湯ですから
迷惑を掛けないように、体を洗いましょう」
提督は港湾棲姫に説明しながら洗い場へと足を向けていた。
さて、この提督、口調は男だが体は女である。
胸は豊満とは程遠いながらも
なかなかのスレンダーで、美人である。
対して、提督の後をテクテクと付いていく港湾棲姫は
ご存知の通り、胸は豊満であり、体の各パーツも豊満である。
そして、深海の中でも、上位の美しさを誇る個体だ。
この2人が脱衣所へ歩く。
その姿は、何も知らない男から見れば、
卒倒するレベルの楽園であることは、言うまでもない。
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体を洗い終えた提督と姫は、湯船の前に静かに立っていた。
「さて、姫様。ここからお風呂に入ります。」
「ハイ」
「ですが、この鎮守府のお風呂は
艦娘や私に合わせて、43度に設定されてますので
足先からゆっくりと体を湯船に入れてください。
そうしませんと、火傷するし、何よりもお風呂が気持ちよくない。」
「ワカッタ」
港湾棲姫は、提督のアドバイス通りに
指の先を、ゆっくりとお湯につけた。
「・・・オッ!?」
指の先から、痺れるような熱さが伝わり
一回、足先をお湯から離していた。
「はははっ。やっぱり熱かったかー。
ま、ゆっくり、ゆっくりなー」
提督は港湾棲姫を見ながら、笑顔で口を開いていた。
港湾棲姫が提督を見ると、すでに提督は
肩まで湯船に入っていた。
「ああああー・・・・やっぱり風呂は熱めに限るよなぁ」
その顔は、満足げであり、とろけそうな笑顔であった。
港湾棲姫は、提督の満足そうな笑みを見たと同時に、
自分の足に意識を向ける。
(キモチヨサソウ・・・!
私モ、肩マデ御湯ニハイレバ、キモチヨクナレルカナ?)
港湾棲姫とは思えない、残念思考である。
そして、残念思考を続けながら、足先を湯船にゆっくりと入れていく。
一回熱い湯を体験したからか
足先はさほど刺激なく、ふくらはぎまで
湯船へと入れることが出来ていた。
すると、港湾棲姫のふくらはぎから
湯の温かさが、体全体へと波及していった。
「オォ・・・・」
おもわずニヘラ、と顔の表情を崩して
満足そうに呻きを漏らしていた。
「そうそう、そうやってゆっくりなー。
私は慣れてるから一気にいけるけど、
姫様は自分のペースでなー」
提督はのほほんとした表情で
タオルを頭に乗せつつ、港湾棲姫に話しかけていた。
「ワカリマシタ。
アァ、デモ、マダ脹脛マデデスガ。
温カイドック、緊張ガホグレマスネ」
「だろぉ?私からすりゃあ、風呂が
海水で冷たいなんて、想像もできねぇよ。
緊張取れないし、疲れとれないし。
逆にストレスになっちまう」
「タシカニ。温カイドックヲ体験シタ後ダト
私ノドック、ダメデスネ・・・」
そこまで話したところで、港湾棲姫は
更に腰まで湯船につかる。
すると、今度は港湾棲姫の背中から頭まで
痺れにも似た快感が駆け巡っていた。
「フアアア・・・・」
思わず声を上げる港湾棲姫である。
「ははは。姫様お疲れだなぁ。」
港湾棲姫は、提督の言葉を流し聞きしながら
更に湯船に埋没していく。
腰から腹、腹から胸、そして、肩までと。
浸かる深度が深くなるたびに、
体の中に御湯、しかも熱めの御湯独特の快感が広がっていく。
「オォォオオアアアア・・・・・」
肩まで浸かった時、港湾棲姫は一際大きな声で呻いていた。
その時の港湾棲姫の顔は、先の提督と同じような
満足げであり、とろけそうな笑顔であった。
「ははっ、姫様も良い顔するねぇ。
あぁ、こうなってくると、酒ほっしいなぁー。」
「オ酒、デスカ?」
「あぁ、風呂に入りながら酒を飲むっていうのも良いもんだぜ。
しかも熱燗な。あたりめあたりをつまみに。
くっそ、本当に飲みたくなってきた。誰かこねぇかな」
「ヘー。美味シソウ。」
港湾棲姫と提督がお風呂にがっつりと浸かり
酒と摘みに思いを馳せた、まさにその時である。
「港湾棲姫ー?提督ー?お風呂デースかー?」
少し青い顔の、戦艦金剛が風呂場のドアを勢いよくあけ
港湾棲姫と提督に、声をかけていた。
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阿武隈と金剛が出ていき、静まりかえった居酒屋鳳翔。
先ほどまで阿武隈をからかっていたレ級は
金剛から受け取った伝言に従い、早速熱燗をつけていた。
行平鍋に、水を張り火にかけるレ級。
鍋の横には2合用の徳利が3つほど置いてある。
「サァッテト。
熱燗ッテイッテモナァ。酒ハドレニシヨウカ」
レ級は慣れた手つきで、居酒屋鳳翔の棚を漁る。
「日本橋」「鶴齢」「八海山」「四季桜」
さまざまな地酒の瓶を次々と手に取りながら
うーん、うーん、とレ級は唸っていた。
「ウーン、確カ四季桜ハノンダナァ。
鶴齢モノンダシ・・・・。」
そういいながら、更に戸棚を漁っていくと
戸棚のもっとも奥に、桐に入っているお酒を発見する。
「オッ。何ダロウ?」
恐る恐る桐の箱を取り出し、よくよく観察していく。
その桐の箱には、「一四代」と達筆で描いてあった。
「・・・スゴイ、高級ソウダナァ」
桐の箱を開けると、真っ黒なラベルに
「特上」と白字で書かかれ、瓶の真ん中には
「一四代」と、金色の文字で描いてあった。
しかも、この一四代、まだ封がされたままである。
「・・・ウーン、コレ、開ケタイ、ケド・・・」
脳裏に写るのは、居酒屋鳳翔の店主、鳳翔の姿である。
あの鳳翔が、戸棚の奥にしまっていたお酒だ。
相当大切な物だというのは、容易に想像がついていた。
「鳳翔ノダシ。ヤメテオコウ。
・・・ウン、トリアエズハ。昨日飲ンダ鶴齢ヲ熱燗ニスルカァ」
レ級は、一四代を戸棚に戻すと、戸棚の手前においてある
鶴齢を取り出し、2合用の徳利へと注いでいく。
その数は3つ。提督用、姫用、自分用である。
そして、酒を漁っているうちに、行平鍋のお湯が温まってきたのか
鍋の底から、少し小さな泡が立ち始めていた。
「オッ、温マッテキテルナ。
サテサテ、ソレジャア、徳利ヲ入レテオイテト・・・」
レ級は、行平鍋に、徳利をゆっくりと入れる。
3つ入れた段階で、安定していることを確認すると
キッチンタイマーを10分に設定し、レ級は、今度はあたりめと
適当なツマミを探そうと、冷蔵庫を漁りだしていた。
「サテサテ、アタリメーハ・・・ット。
オッ、一杯アルジャナーイ」
レ級は呟きながら、『お徳用 あたりめ』
という袋を、冷蔵庫から引っ張り出す。
「ンーデモ。冷タイママジャショウガナイシ。
網ノウエデ炙ッテイクカァ」
レ級は、昨日の夜にさんまを焼いた網を
キッチンの戸棚から取り出し、その上にあたり目を無造作に置く。
そして、ガスコンロに火をつけ、
ゆっくり、じっくりとあたりめをあぶっていった。
すると、ゆっくりとあたりめに火が入り
チリチリ、パチパチと良い音と共に
イカの良い香りが、レ級の鼻をついていた。
「ンンー、イイネェ。
コノママ一杯ヤリタイネェ。」
レ級は、あたりめを煽りながら一人呟く。
同時に、レ級はもう一度冷蔵庫を漁り
他に何かおつまみがないかを探していた。
「アタリメダケデモイインダケドナァ。
モウチョット、オ腹ニ溜マルモノナイカナー」
ごそごそと、冷蔵庫の上から下までを
隅々まで漁っていく戦艦レ級。
鳳翔特製の煮物、漬物、浅漬け
昨日の残りであろう秋刀魚、鮃、
そして、かまぼこなどなど、様々なものを見つけては
「ンー、チョットチガウノヨネー」
などとぼそぼそと呟いていたレ級であったが
一つの棚の所で、動きを止め、あるものを引っ張り出していた。
「オッ!コレナンカチョウドイインジャナイカ!」
笑顔で冷蔵庫の前に立つレ級の手には
狐色に染まっている「薩摩揚げ」が握られていた。
「ウフフ、アタリメニ、薩摩揚ゲ。ソシテ鶴齢デキューット。
最高ダー!」
レ級は早速、薩摩揚げをまな板に置き、斜めにスライスしていく。
厚さは丁度1センチぐらいの薄めである。
「アタリメノ合間ニ食ベタイカラ
薩摩揚ゲモ少シ炙ッテ、ト」
あたりめの隣に置かれる薩摩揚げ。
あたりめはチリチリときつね色に成りながら香りたち
薩摩揚げはジュウジュウと、ジューシーな音を立て
具であるネギの焦げる良い香りが、レ級の鼻を刺激する。
「オフ・・・美味シイ、コレ絶対美味シイ」
レ級の口の中は、よだれの嵐である。
そして、そうこうしているうちに、
キッチンタイマーがけたたましく鳴り
熱燗の出来上がりを知らせていた。
そこからのレ級の動きは早かった。
無言でお盆とお皿を取り出すと
アタリメと薩摩揚げを目にも見えない早業で
皿に盛りつけていく。
盛り付け終わると同時に、熱いはずの熱燗を
がっしりつかみ、お盆へと乗せる。
そして、お盆を器用に自らのしっぽに乗せ、
ドックへと足を進めていた。
「ヌフフフ。熱燗♪熱燗♪アッタリメー♪」
自作の歌を歌い、しっぽに酒とつまみを載せながら、
「入渠(ドック)」と書かれた案内板をみつつ、ドックを目指す戦艦レ級。
スキップをしながら鎮守府を闊歩するその姿は
どうやったって、ただの酒好きにしか見えない。
妄想捗りました。のんびりとする姫に、料理しちゃうレ級。自由なんです。