自由なエリレさん。   作:灯火011

16 / 36
体を洗い終えたレ級さん。お風呂と熱燗を堪能するようです。


誤字直させていただきました。
呉です、呉。


15 お風呂と熱燗 その3

呉鎮守府のドックでは、相も変わらず

混沌とした状況が続いていた。

 

呉鎮守府の提督と、深海の姫君である港湾褄姫が

お湯につかりながら、とろけた顔で、熱燗を酌み交わし、

あたりめとさつま揚げを食らっている。

 

その横の洗い場では、青白い体と、巨大なしっぽが特徴な

戦艦レ級が体をごしごしと洗っていた。

 

状況を知らない人が見れば、おそらく卒倒するか

叫びを上げて、逃げ惑う光景であろう。

 

「ッハーア!オ湯モイイナァー!」

 

ザッパァ!と勢い良くレ級が頭からお湯を被る。

どうやら、体を洗い終えたようで、レ級は笑顔で

洗い場から立ち上がり、湯船へと歩みを進めていた。

 

「レ級殿、何を言ってんだ。

 これからが本番だぜ?

 早く湯船に使ってこいよ。熱燗とツマミがお待ちかねだぜ」

 

提督は、赤い顔になりながらも

湯船に近づくレ級に声をかけていた。

 

「ソウヨォ。レキュー。オユキモチイイワヨォ」

 

同時に、隣りにいた港湾棲姫も口を開いていた。

ただし、いつものおっとりたした顔よりも

さらに蕩けて、顔は真っ赤である。

 

「・・・姫様ダイジョーブ?」

 

「モンダイナイワァ・・・・アハァ、キモチイイワァ」

 

レ級の心配そうな声も気にせず、熱燗をぐいぐい飲む港湾棲姫である。

 

「ダイジョーブナライイケド。」

 

レ級はそうつぶやくと、改めて湯船を見る。

人工的ながらも、風情を感じる岩場を模した外観に

白い白濁したお湯が、湯船の奥から流れ続けていた。

常に湯船からは湯気が立ち、白いお湯に浸かる提督と姫は

すさまじく気持ちよさそうである。

 

レ級はニヤリと笑顔を作ると、ゆっくりとつま先を

湯船へと沈めていった。

 

さて、ここでひとつ、深海棲艦の労働状況を確認しよう。

まず、港湾棲姫。こちらは深海の拠点の奥で「艦娘を迎撃」している。

つまりは、特殊攻略作戦でもないかぎり艦娘と戦うことはない。

ただ、作戦指揮や多方面の戦略や、資材の管理、戦況の確認など

ストレスの貯まる立場である。

そのため、肩こりや頭痛はかなりものもであるが

休養は十二分に取れ、そこそこの健康体だ。

 

対して、戦艦レ級。

こちらも、港湾棲姫と同じように、

深海の拠点の奥で活動を行う船ではあるものの

遊撃部隊の隊長のような存在である。

「艦娘の迎撃・邀撃・追撃」そして、「艦娘と人類への進撃」を行っている。

つまり、艦娘が行う通常作戦の時でも、レ級はよく戦場へと出張るのだ。

作戦指揮はもとより、実戦をかなりの数を熟すのが

この戦艦レ級という艦種の宿命であり、休養はまともに取れず

体はかなりぼろぼろである。

 

と、いうことは、ストレスで体がカッチコチの姫と

ストレス+毎日の戦闘での疲れで体がカッチコチでボロボロのレ級。

 

どちらのほうがリアクションが大きいであろうか。

 

「フウオオオオオ・・・・!!」

 

レ級は、港湾棲姫以上の叫びをあげていた。

つま先から背中、そして頭へと、しびれにも似た

快感が駆け抜けていったからである。

 

そう、レ級は部下の消耗、艦娘の躍進でストレスを抱え

更には自身も戦闘で体を酷使しているのだ。

 

その疲れを、海水に高速修復材を入れた簡易的なドックで

癒やそうなど、無理がありすぎる話なのだ。

 

「アアアア・・・!」

 

レ級は、続いて腰まで湯船に浸かる。

尻尾も根本までお湯に包まれ

凝り固まっていた筋肉がゆっくりと、

しかし確実にほぐされていく。

 

そしてそのまま、レ級は肩までゆっくりと

湯船に浸かり、ひといき、ため息を吐き出した。

 

「フウゥウウウウウ・・・・。アァ」

 

-----最高ォ-----

 

呟きを吐き出すと、レ級はそのまま目をつぶる。

もちろん、尻尾も全て、湯船の中である。

 

「レ級殿、レ級殿。」

 

「ンァァァ?ナニー、提督殿ォ。

 ッテイウカコレ最高ォー。キモチイヨォコノオ湯ノドックゥ」

 

惚けるレ級に、提督はお猪口を差し出す。

 

「お前、忘れてるよ。熱燗。

 ・・・最高だぜ?」

 

提督のにやり、とした表情に、レ級はお猪口を受け取っていた。

そして、すかさず提督は、熱燗をレ級のお猪口へと注ぎ込んでいた。

 

「ほら、ぐいっと一杯」

 

「ン」

 

レ級は、提督に言われたとおり、熱燗をぐいっと

一気に喉に叩き込んだ。

 

すると、鶴齢のすがすがしい香りと、米の旨味が

お湯でほぐれたレ級の体に、ゆっくりと染みこんでいった。

 

「・・・・ックゥウウウウ!」

 

レ級は、目をつむり、顔を少し下げると思わず叫ぶ。

そして、自分で炙って持ってきたさつま揚げをつまみ

口の中に放り込む。

そしてすかさず、おちょこに少し残っていた

熱燗を、これでもかという勢いで、口の中に叩き込んでいた。

さつまあげの旨味とあぶったことにより生まれた、香ばしさ

熱燗の香り、コメの旨味。そして最高の風呂。

全てがレ級に襲いかかり、トロリと、レ級の表情を蕩けさせていた。

 

「アフゥ・・・最高ォダナァ。

 アァー・・・コンナノ、ナイナァー・・・・」

 

「ふふふ。満足したようで、なにより、だ」

 

「最高ヨォ。レ級、イイワネェココ」

 

レ級の呆けた姿を見て、提督と港湾棲姫は満足げにつぶやいていた。

 

 

------------------------------------------------------------

 

レ級、港湾棲姫、提督が熱燗と風呂を楽しんでいた頃

金剛たちの訓練も、フィニッシュを迎えようとしていた。

 

「ホラァ!ラストワン!気合いれて走るデース!」

 

「りょおおうかいいい!」

 

阿武隈は流石、教官ということもあり

なんとか言葉で返答を返していた。

 

対して、暁、雷、電の三人はというと

 

「「「あぁぁあああ!」」」

 

すでに、言葉になっていない。

赤い顔を上げ、なんとか阿武隈についていっている状態だ。

 

そして、金剛と響は既にノルマを終え

ゴール脇で阿武隈たちが走り終えるのを待機していた。

 

なお、金剛と響のレースの結果はどうなったのかといえば。

 

「金剛さん。間宮、忘れないでね?」

 

まさかの響、大勝利である。

しかも、金剛を完全にぶっちぎって、である。

金剛の頭では、確かにスペック上は響のほうが足が速いが

それはあくまで海の上での話であり

陸の上では、響はまだまだひよっこ、という認識であった。

 

「・・・響。あなたって一体何者デースかね」

 

それでいて、息一つ上げていない響を見つつ

金剛はつぶやいていた。

その脳裏には、2隻のレ級が浮かんでいる。

片方は酒をのみ、片方は写真を撮りまくる異端達の姿だ。

 

(・・・常識に囚われないと規格外にでもなるのでしょうか?

 ンー。私も何かつっぱしる必要、あるかもしれませんネ)

 

金剛の真剣な表情に、響は首をかしげていた。

響からすれば、完全に根性で金剛をちぎっただけなのである。

 

「何者って言われても。第六駆逐隊の響だよ?」

 

「そいうことではなくてデスね・・・いえ、イイデス。

 とりあえず、間宮は響の都合のいい時に奢りマース。

 その時は、声をかけてくだサイね」

 

「・・・?うん、わかったよ。」

 

金剛と響が会話を続けていると、最後のコーナーを立ち上がって

スピードをかなり出しながらゴールへと駆け込む

阿武隈たちの姿があった。

 

「ゴオオオオオオオオル・・・・・・もう無理ぃ・・・」

 

「「「あああっぁああ・・・・・・あぁぁぁ・・・ゲホッゲホ」」」

 

阿武隈はすぐに座り込み、暁、雷、電に限っては

地面に手をつき、完全にダウンしている状態である。

 

「よろしい・・・残り20秒でしたが、合格デース!

追加はなしとします!訓練ご苦労!

 ・・・あとは各自でよく疲れを取るように。」

 

「「「「りょ、了解・・・!」」」」

「ダー。金剛さん、阿武隈さんと暁たちは私がみておくよ。

 金剛さんは先に汗を流していいよ」

 

「お、気がききマースね!響。それでは後はまかせマス。

 ・・・阿武隈ァ。口は災いも元デース。肝に命じておいてくだサイね?」

 

金剛は阿武隈にウィンクを飛ばすと、笑顔でその場を後にしていた。

 

残された阿武隈たちは、息も絶え絶え、なんとか体制を立て直し

地面に座り込んでいた。

 

「っはぁ・・・・金剛さん、やっぱりすごかったなぁ」

 

「・・・はっ、はっ、はっ・・・それでも、やりすぎよぉ・・!」

 

「うぅ、響はなんて大丈夫なのぉ?」

 

「・・・・もう、だめ、なの、です」

 

「・・・?みんな、なんでそんなに苦しそうなんだい?」

 

「「「「・・・・」」」」

 

阿武隈達は、金剛と争ったのにも関わらず

まったく息が乱れていない響をみて、絶句していた。

 

「どうしたんだい?みんなだまって。

 さぁ、早く間宮さんのところいって、水分補給しよう。」

 

響は、そう言うと、食堂へと歩みを進めていた。

阿武隈たちは、ふらふらと立ち上がると

なんとか響の後を追い、食堂へと歩みを進めていった。

 

そして、阿武隈は足元はふらつきながらも、

瞳に強い意志を灯していた。

 

(・・・私もまだまだね。 

 金剛さんの負担を少なくするためにも、もっと鍛えなくちゃ。

 少なくとも、レ級を倒せるぐらいにならなくっちゃ・・・・!)

 

第一艦隊第一水雷戦隊の旗艦、阿武隈。

金剛と同じように、レ級と張り合える化物に

化ける日は、そう遠くないのかもしれない。

 

--------------------------------------------------

 

「ウンマイナー、熱燗。」

 

「そうだろそうだろー。

 持ってきて正解だったろう?」

 

「ダナー。ッテイウカ、姫様寝チャッテルシ」

 

レ級は、熱燗を提督と飲み交わしながら

港湾棲姫をちらりと見る。

そこには、港湾棲姫が岩に体を預け、ぐっすりと眠っていた。

 

「まぁ、なんだ。姫様も疲れてるんだろうよ。

 眠らせておいてやれ」

 

「ソリャーマー起コサナイケド。

 ックゥー。熱燗オイシイナァ」

 

提督とレ級は、お互いに熱燗を注ぐと

ぐいっと口に叩き込み、あたりめをもぐりもぐりと食べる。

 

にこにこしながらお互いに酒をカッくらっていると

 

「テェエエイイイトオオクウウウ!」

 

ガッシャーン!という音と共に、ドックの扉が開く。

するとそこには、素っ裸の金剛が立っていた。

 

「ウオッ・・・!?金剛カァ、ビックシリタァ」

 

「金剛っ!もう少し静かにしろ!」

 

いきなりの金剛の登場に、提督とレ級は驚きながら

声を荒げていた。

 

「Oh。Sorry。熱燗が待ちきれずに急いでしまいマーシた!」

 

金剛はにこにこした笑顔のまま、洗い場へとダッシュする。

そして、信じられぬほどの早業で全身を洗うと

ダッシュで湯船へと突撃していた。

 

「スッゲェ・・・ハエエ・・・・」

 

「ふあああー!やっぱりお風呂は熱めに限るネー!」

 

レ級の呆れ顔もなんのその。

金剛は、湯船に肩まで浸かるとおもいっきり体を伸ばしていた。

 

「熱燗おいしそうネー!手酌でいいので一杯くだサーイ」

 

そして、港湾棲姫が使っていたお猪口を取ると

熱燗へと手を伸ばしていた。

 

「イヤイヤ、金剛、私ガ注グゼ!」

 

「オオゥ!サンキューデース!」

 

レ級が熱燗を手に取り、金剛のお猪口へとお酒を継いでいく。

そして、つぎ終わったところで金剛は一気に熱燗を喉へと流し込んでいた。

 

「~~~~~!最っ高デース!」

 

金剛は、そういうと、レ級たちと同じように

あたりめとさつま揚げにてを伸ばしていた。

 

「金剛よぉ。お前自由だなぁ。

 私がいるっていうのに、そんな態度でいいのか?」

 

金剛は、眉間にしわを寄せながら呟く提督に

笑顔を向けながら、口を開く。

 

「提督ぅ。今はオフでーすよ?

 それに提督、いままでそんなこと言ったことないデース。

 ・・・もしかして、レ級にいいところ見せようとしてマス?」

 

提督は金剛から目線を外すと、お猪口から酒をぐいっと煽りながら

更に渋い顔になりながら、口を開いていた。

 

「・・・だって私提督じゃん。敵の船に少しいいとこ見せたいし」

 

提督の顔は、渋い表情ながら、頬に朱がさしている。

つまるところ、よっぱらいのたわ言である。

 

金剛は、提督のつぶやきを聞くと一瞬目を見開き固まっていたが

次の瞬間、提督の背中をばしばしとたたき、笑い声を上げていた。

 

「HAHAHA!提督ぅ。・・・もう遅いですよそれ」

 

「・・・やっぱそうかなぁ」

 

レ級は、そんな光景をツマミにしながら熱燗を煽っていたが

ついつい、にやにやとした表情を浮かべながら、呟いていた。

 

「私モオソイト思ウゼ。提督殿。威厳ナイシ。」

 

まさかのレ級からの駄目出しに、

提督はがっくりと肩を落としていた。

 

「レ級っ・・・お前までそんなこというなよぉ。

 だっていやだろぉ?敵の司令がコレじゃーさー」

 

提督はそうつぶやくと、レ級を少し睨んでいた。

 

レ級は、提督を見ながら、少し考える。

敵の司令官が、目の前に居るようなダメな女である。

ううん、と少し顔をかきながら、レ級は提督へと話しかけていた。

 

「嫌ダケド、マー。私ハ酒ノメレバ別ニ問題ナイカラ。

 威厳ナクテモ大丈夫、大丈夫。」

 

「・・・レ級、それはフォローになってない言葉デース」

 

「・・・情けねぇ・・・我ながら情けねぇ・・・」

 

深海棲艦、艦娘、そして人間が集う、

なんともカオスなドックである。




妄想捗りました。少々間が空きまして申し訳ございません。
裏タイトル 「なんぞこれ」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。