提督と姫はぐでんぐでんに酔っぱらってしまい
寝てしまっているようです。
呉鎮守府のドックで、港湾棲姫と提督は酒も入り、
赤い顔のままで、体を岩に持たれかけつつ
気持ちよさそうに笑みを浮かべ、すやすやと、寝息を立てていた。
「提督と姫、ねちゃいましたネ」
「ダナァ。マァ、提督モ、オツカレナンダロ?
寝カセテオコウゼ?」
「そうデースね。程よいところで起こしましょうカ」
「オウヨー。ット、金剛。御猪口アイテルジャネーカ。
ホラ、御猪口ヨコセッテ」
「オオウ、ありがとうございマース。
レ級も御猪口を出すでーすよー」
対して、金剛とレ級は、お酒を飲み交わしつつ
のんびりと会話を続けていた。
そして、お互いにお酒を注ぎ合うと
ぐいっと、一気に喉に叩き込む。
「「クゥウー」」
2隻はいい笑顔で、ため息のような呻き声を上げる。
そして、おつまみのあたりめと、さつま揚げに手を伸ばしていた。
「最高ですねぇ。」
「最高ダナァ。」
レ級と金剛は、口をモグモグと動かしながら
またちびちびと、熱燗を含み続けていた。
「そういえばレ級。あなた、どうして鎮守府に来たのデースか?」
そして、金剛がふと、レ級に質問を投げかけていた。
「アァー、ソレハネ」
レ級は一旦言葉を区切ると、港湾棲姫を指差して、口を開く。
「港湾棲姫ガ、鳳翔ガ作ッテクレタオツマミ、全部食ベチャッテネ。
マタ何カツクッテクレナイカナーッテサ。」
「んー、そうじゃなくって」
金剛はレ級の言葉に、首を振りながら、言葉を続けていた。
「どうして敵の鎮守府に、来る気になったのかってことデース。
提督の話じゃ、たこ焼きを食いたいっていう理由とききましたガ、
それであれば、どこかの港に立ち寄るだけで良かったんじゃないんデスか?」
レ級は、熱燗をちびちびとやりながら、目を閉じ
少し考えに浸っていた。
(ナンデダロウナァ・・・・)
確かに、レ級はたこ焼きを食べたいからと、鎮守府へと上陸していた。
だが、よくよく考えれば、鎮守府でなくてもたこ焼きの材料は手に入る。
それこそ、大島に上陸し、明日葉を採ったように、
鎮守府ではなく、普通の飲食店に侵入すれば、材料は集まるはずである。
だが、レ級はそうはしなかった。
あえて、鎮守府を選んでいたのだ。
レ級はゆっくりと目を開けると、金剛に顔を向け
珍しく真面目な顔で金剛に話しかけていた。
「ンー・・・ソウダネェ。
ネェ、金剛。ココカラ先ハ、2人ダケノ秘密ニシテモラッテイイカナ?」
「オオウ。いいデースよ。
殴りあって酒をくらった仲ですし。」
金剛は笑顔で言葉を続ける。
「それにしても、レ級が真面目な顔をすると何か違和感がありマースね。
で、一体なんで鎮守府にきたんデース?」
すると、レ級は、今までの片言の言葉から一転、
普通の艦娘のように、話し始めたのである。
「実は、理由はそんなに無いんだ。
記憶の中でちょっと気になってたというか。
なんていうんだろう。
鎮守府の中になら、なんでかしらないけど
たこ焼きとビールはあるって覚えてたんだよね」
金剛は、レ級の豹変ぶりに驚いていた。
流暢に言葉を話しはじめたレ級は、金剛から見ても
艦娘に近い存在に思えたのである。
「レ級ぅ。普通に喋れたのデースね。
それにしても、記憶の中で、デースか。」
金剛はそうつぶやきながら、ある一つの噂を思い出していた。
(深海棲艦は艦娘の成れの果て。逆もまた然り。
そして、深海棲艦は、過去の大戦で沈んだ人間の憎悪の塊、
という噂を聞いたことがありマース・・・。
もしかしたらこのレ級も、もともとは艦娘だったのか、
それか、呉鎮守府に務めていた人間の成れの果てなのかもしれまセンね。)
「ふーむぅ。レ級、もしかしたらあなた。
呉の鎮守府に関連する船だったのかもしれまセンね。
深海棲艦は艦娘や人間の成れの果て、なんていう噂ありますし。」
「そうなの?」
レ級は金剛の言葉に、首を傾げながら言葉を続ける。
「だからなのかなぁ。正直さ。呉鎮守府に来てから
敵意が全くわかないんだよね。
海の上で艦娘と会うと戦いたくなるのに。
深海棲艦として、これでいいのかなぁ。」
金剛は、レ級の言葉に驚いて目を見開いていた。
今、このレ級は何と言ったのか。
(敵意が無い、デース?
むぅう、カメラのレ級といい、この酒好きなレ級といい
最近、私は変な深海棲艦と関わりマースねぇ)
「んー、噂は噂なので、信ぴょう性は無いのデースが。
それはともかく、レ級。別に悩む必要ないと思いマースよ?
私も艦娘ですけど、今、別に港湾棲姫とレ級を見ても
倒したいと思いまセンし。」
「・・・・そうなの?」
「デース。お酒を飲めるお友達、と私は思ってまーすよ?
まぁ、そりゃあ、海の上で出会ったら、もちろん倒させて頂きますガ」
金剛はレ級を見ながら、にやり、と口角を上げていた。
レ級は、そんな金剛を見て同じように口角を上げていた。
「ソウダヨ・・・!私金剛にぶったおされたままじゃん。
金剛ぅ。今度またこっちに来たら、絶対にリベンジするからね?」
「あはは、レ級、できるものならやってみるといいのデース。」
「言ったな?絶対にやってやる。」
金剛とレ級は、笑顔のまま軽口を叩き合っていた。
「それにしてもレ級。普通に喋れるなら、普通にしゃべりましょうヨ。
聞き取りやすいですし。何より怖くないデース」
「いやぁ、その。このしゃべりかたするとなんでか知らないけど
すっごい疲れるんだよねぇ。ってことで、そろそろ・・・・」
レ級はそういうと、一瞬目を閉じ、喉を鳴らす。
そして、目を開け、改めて口を開いていた。
「コッチニ喋リ方モドスワー。
ソレニシテモ、私ラ深海棲艦ガ、艦娘ノナレノハテ、カァ」
金剛は、いつもの喋り方に戻ったレ級を見ながら
少し真面目な顔で、口を開く。
「むぅ、喋り方もったいないデースよ。
・・・まぁ、深海棲艦と艦娘が同じ存在、という話は
あくまで噂なんですけれど・・・・・。
私としては、この話はそこそこ信ぴょう性のある話かなと思ってマス。」
レ級は、金剛の言葉に、首をかしげながら口を開きながらも、
その手には、あたりめが握られ、熱燗と交互にちびちびと
酒をかっくらっている。
「ソウナノカ?マァ、存在トシテハ似テルヨナァ。
人型デ海ノ上デ砲雷戦ガデキルッテサ。」
「それもありマース。ただ、私がそう思うのはもっと別の理由なのデース。」
「別ノ理由?」
金剛も、レ級と同じように熱燗を飲みながらも
器用に指を立てつつ、レ級に言葉をかける。
「我々艦娘は、脅威から仲間と人類を守りたいと
常々思っていマス。人間は好きです。
日本人、更に外国人も含めてデース」
「ソウナノカ。ット、金剛、熱燗。」
「オオウ、気がききまーすね。頂きます」
金剛はそこまで言うと、熱燗をぐいっと喉に叩き込んでいた。
「んーッ。熱燗、美味しいデース。
・・・っと、それでですね。そこで私はおかしいな、と
常々思っているのデースよ」
レ級は金剛の言葉に、思わず首をかしげていた
「何ガオカシインダ?
人間ヲ深海棲艦トカカラ守ルノガ艦娘ダロ?」
「そう、そこなのデースよ。」
金剛は酒によっているのか、赤い顔のまま
饒舌になりながら、更に言葉を続けていた。
「我々艦娘は、もともとは軍艦デース。
しかも、日本の軍艦は、第二次世界大戦で大半が沈んでいマス。
・・・連合軍の手によって。
ですが、その連合軍の国籍の人間であっても、
私たちは守るべきと思っているのデス。」
「ホォ・・・。確カニ少シ気ニナルナァ。」
「でしょう?守らなくてはならない、と感じるのが
日本人だけではないのデースよ。で、ここからなんデス。
もしかして、艦娘と深海棲艦は表裏一体なんじゃないかって
私は思うんデス」
「ンン?ナンデソウナルンダ?」
「いえ、レ級、考えてみてくださーい。
レ級はというか、深海棲艦は基本的に人間をどう思ってます?」
レ級も、酒で酔っているのか、赤い顔のまま
顎に手を当てながら、ゆっくりと口を開く。
「人間ハ・・・基本的ニ憎イナ、ソウイエバ。
日本人、連合国、ソレコソ人種、国籍、関係ナイ」
「そこなんデースよ。
我々艦娘は人類を守りたい。
あなた達、深海棲艦は、人類が憎い。
・・・何か、関係がある気、しまセンか?」
金剛は、真面目な顔でレ級に問いかけていた。
レ級は顎に手を当てたまま、目を閉じ、ゆっくりと思案する。
金剛たち艦娘は、第2次世界大戦に沈められた船の魂を持っている。
そして今、金剛たちは「人類を守りたい」と思って行動している。
レ級たち深海棲艦は、同じように第2次世界大戦の記憶を持っている個体もいる。
そして今、深海棲艦たちは、
「人類は憎い、殺しつくしたい」と思って行動している。
(・・・もしかして・・・)
レ級は、はっとした顔を上げると
金剛へと顔を向けていた。
「気づきまーした?
もしかしたら、という仮定にはなるんですが。
艦娘は「軍艦や軍属の正義と勇気」を体現した存在。
深海棲艦は「軍艦や軍属の無念と憎しみ」を体現した存在。
って、私は少し思ってるんデースよ」
「・・・ナルホドナァ。確カニ、ソンナキモスル。」
レ級と金剛は、真面目な顔でお互いの目を見つめていた。
青白い化物と、人間を模した艦娘。
そして、しばらく見合っていた2隻であったが
「まー。私の勝手な想像なんですけどネー!
それに、レ級みたいな深海棲艦があらわれたおかげで
私の仮説は粉々デースよ。」
金剛が真面目な顔を崩しながら、笑顔でレ級に口を開いていた。
「・・・・想像ニシテハ中々ノ分析ダッタトオモウゼ。
悪カッタナァ。私ハ、人間ヲ殺スコトヨリモ、
オ酒飲メレバイインダヨ!」
レ級も、負けじと笑顔になりながら口を開く。
「ふふふ」「クククク」
そして、全く同じタイミングで笑い声を上げたかと思うと
お互いにお猪口に熱燗を注ぎ合っていた。
「変な話をして申し訳ないデースよ。
それにしても、たこ焼きを食べたいからって
鎮守府に来るその根性は本物デースね。」
「ショーガナイジャン。
ビールトタコヤキ食ベタカッタンダモン。
イヤマァ、最初ハ、拙イカナッテオモッタケドサ」
レ級はおちょこを金剛に向けて掲げていた。
「コウヤッテ金剛トカト酒ノメタワケダシ。
マー。結果オーライダッタカナッテ!」
金剛も、レ級に合わせるようにお猪口を掲げる。
「あはは、全く、仕方ないレ級デース。
自由すぎマースよ!」
「面目次第モゴザイマセン」
そこまで軽口を叩き合った金剛とレ級は
チン、とお猪口を合わせると、一気に熱燗を喉に叩き込み
お猪口を空ける。
すこしぬる燗になった、香り高い鶴齢の香りが
喉と鼻を突き抜けていた。
「「ックゥアアーー!最高!」」
そして、全く同じタイミングで
頬を赤くしながら、叫んでいた。
「「あははは!」」
今日、何度目かの光景に、思わず
金剛とレ級は、笑い声を上げていた。
「そうだ!一つ聞くの忘れてマーシタ!
レ級!レ級って砲弾投げ返し出来マス?」
「・・・・ナンノコト?」
「イエ、カメラのレ級が、よくやってるんデス。
相手の砲弾を掴んで、そのまま投げ返して攻撃する方法デス。
弾薬使わないし、うまくできればダメージを喰らわないしで
一石二鳥なんデースよね」
レ級はぽりぽりと頭を書きながら、金剛の言葉に答えていた。
「・・・マァ、出来ルゼ?カメコホド、上手クハナイケド。
教エテモイイケドサ、ソウナルト、ドッカ場所必要ニナルケド」
「出来るでーすか!?本当デースね!?
場所は私が意地でも確保しマース!
明日にでも、すぐに教えてほしいデース!」
金剛は、ぐぐぐっとレ級に顔を近づけながら
大声で叫ぶ。レ級と金剛の顔は、息がかかるほどに接近していた。
「ド、ドゥドゥ。金剛。
ワカッタ、ワカッタ。ダラカオチツコウ?」
金剛は、レ級の言葉に、少し身を引く。
そして、鼻から息をいきよいよく吐くと
右手を握りこみ、高く突き上げていた。
「ふふふふ!これでカメコに追いつけマースよ!」
そんな金剛を見て、レ級はお猪口で熱燗をチビチビやりつつ
静かにつぶやいていた。
「カメコ、アイツ何シタンダロ・・・。」
◆
呉鎮守府、提督室。
風呂から無事上がった提督達4隻(人)は
片手に提督の冷えたビールを持ちながら
こたつに足を突っ込んでいた。
「カンパーイ」
「「「カンパーイ」」」
提督の音頭で、金剛、港湾棲姫、レ級が
冷えたビールを一気に喉に流し込んでいた。
「「「「~~~~~!」」」」
そして、お決まりのように言葉にならない叫びを上げる。
ちなみにではあるが、こたつの上には
みかん、柿ピー、ポテチ、カルパスが並んでいた。
すべて提督の私物である。
「最高だなぁ。深海棲艦は今日は全然近海に来る気配ないし。
風呂も最高、そして風呂あがりのビールも最高。あぁ、いいわぁ」
提督はとろけるような笑みで、どてらを着こみ、
こたつにどっぷりと浸かりながら柿ピーをつまみつつ、ビールを飲む。
「提督ぅ。レ級と姫の前ですけど。カッコつけなくていいのデースか?」
「んー?諦めたー。堅苦しいの私はやっぱだめだー」
「あはは。さすが提督デース」
金剛も提督と同じように、「金剛」と書かれたどてらを着こみ
カルパスをつまみながら、ゆっくりとビールを煽っていた。
もちろん、金剛の顔も呆けたような笑みである。
「アァー・・・温イ。
コタツッテ最高ネェ・・・。」
港湾棲姫も、こたつでのんびりしながら
ビールをぐいぐいと飲んでいる。
ただし、いつもの縦セータではなく
呉鎮守府特製、の錨が描かれた浴衣姿で
肩からは金剛たちと同じように、どてらをかぶっていた。
「・・・・ナンダコノジョウキョウ。
マァ、ビール美味シイカライイケド」
そして、その3隻(人)を見て呆れている戦艦レ級の姿である。
ただし、呆れている戦艦レ級も、さり気なく錨模様の浴衣を着こみ
薄い羽織を被っていあたり、全く人のことは言えない。
「ソレニシテモ提督殿。目ノ前ニ深海棲艦ガイルンダケド。
ホラ、レ級ト港湾棲姫。」
「ソーイエバソーネェ。深海棲艦、ココニイルワヨォ?」
そんなレ級は、ビールを煽りつつも、赤い顔のまま
提督へと話しかけていた。港湾棲姫も、それに便乗している。
提督は、そんなレ級と、隣で腑抜けている港湾棲姫を一瞥すると
呆れた表情を浮かべながら、ビールを煽る。
「いやいや、レ級殿と姫様。我が鎮守府の浴衣を羽織って
こんな敵の鎮守府のど真ん中で、コタツに入って酒を飲んでる敵なんて
いるわけないじゃないか。いたとしてもそれはもう深海棲艦じゃ、無い。」
「エェー。」
「エー。」
「デースねぇ。まったりしすぎデースよ。」
金剛も呆れた顔を浮かべつつ、レ級と港湾棲姫に話しかけていた。
「それはそうとして提督。近海に深海棲艦がいないのデースか?」
「あぁ、そうなんだよ。
今日は近海警備に若葉を出してるんだが
さっきから深海棲艦と全然出会わないそうなんだ。
まー、だから私達はこんなにのんびりと
ビールとツマミを楽しんでいられるんだけどもな」
金剛は、提督の言葉を聞くと、少し考え込んでいた。
こんな日は、鎮守府始まって以来、初のことである。
「へぇ、妙な日がありマースね。
そういえば、同じ深海棲艦のレ級と港湾棲姫は何か知ってマースか?
別に軍事機密って言うのであれば、言わなくていいデスが」
不思議に思った金剛は、赤い顔でビールを煽る港湾棲姫に
質問を投げかけていた。
港湾棲姫は少し呆然とした表情を浮かべると
ゆっくりと口を開いていた。
「ンー。シッテル。
私ガ帰ルマデ、呉鎮守府近クニハ来ナイデネッテイッテアル」
港湾棲姫の言葉に、レ級はビールをコタツに置き
思わず、目を見開きながら口を開く。
「姫様、マジデスカ?。」
「本当ヨ。ダッテオ酒ノンデルトキニ攻撃サレタラ嫌ジャナイ。」
軽口を叩き合うレ級と港湾棲姫の会話を聞きながら
提督と金剛はお互いの顔を見合うと、同時に口を開く。
「「・・・あぁー」」
「だからか。」「だからデースね。」
金剛と提督は、諦めたような表情を浮かべると
素早い動きで、新たにビールを一本取り出し、一気に喉に叩き込んでいた。
「「っくぁー」」
「提督ぅ。今日はとことん飲みまショウ。
この深海棲艦達、非常識すぎてワタシ、
頭がおかしくなりそうデース。」
「あぁ、そうだな。金剛、飲むぞ。
あぁもう、こんなのが敵の司令官かよ。
あぁもう、なんか情けねぇ・・・!
今日はもう、飲むぞ。」
提督と金剛はそう言い合うと、更にビールを取り出し
ぐいぐいと、次々にビールを開けていった。
そして、港湾棲姫は不思議そうな表情を見せながら口を開いていた。
「・・・レ級。ワタシ何カ変ナ事イッタ?」
「ンー。イエ、別ニ。
サ、私達モ飲ミマショウ。」
「ン」
レ級はビールを美味しそうに飲む港湾棲姫を見ながら、内心、
(一番非常識ナノ、姫様ダッタノカ。・・・ワタシモマダマダ甘イナァ。
ソレニシテモ、ヤリスギデショウ、姫様。
・・・私モ呑モウ。聞カナカッタコトニシヨウ。)
と思いながら、レ級自身もビールを煽るのであった。
呉鎮守府、1800。夕飯時の一幕である。
◆
呉鎮守府、2100。
深海棲艦と人間と艦娘が集う提督室を
とある駆逐艦が一人、静かに覗いていた。
「・・・楽しそうだね。今日の訓練の報告はまた明日にしようか。
阿武隈さんにも、そう伝えておこう。」
白い髪に青い瞳、第六駆逐隊所属、響である。
ロシア帰りの駆逐艦は、静かに、かちゃりと提督室のドアを閉める。
「でも、ビールばっかりだったね。
私はウォッカがいいのだけれど。」
響はそうつぶやくと、鎮守府のとある場所に足を進めていた。
「それで、御摘みは鳳翔さんの煮物と、レ級の秋刀魚かな。」
酒保、居酒屋鳳翔。
響は扉の目の間に立つと、ガラガラと扉を開けていた。
「あら、いらっしゃい。響さん。今日もウォッカでよろしいですか?」
「うん。あと煮物とレ級の持ってきた秋刀魚もお願い。」
鳳翔は、響の言葉に、意外そうな顔をして口を開く。
「響さん、レ級が秋刀魚を持ってきたなんて、よくご存知ですね。」
「ん。昨日、戦場で会った斥候のヲ級から聞いた。
向こうは撤退する間際だったんだけど、艦載機が一機飛んできてね。
【そっちに敵意の無いレ級がいくから、さりげなくフォローしてあげて】って
手紙もらってたんだ。最初は何かの冗談だと思ったんだけどね。」
鳳翔は響の言葉を聞きながら、ウォッカをグラスに注ぐ。
そして、煮物と一緒にウォッカを差し出していた。
「ウォッカのストレートです。あと煮物です。どうぞ。
そうだったんですね。それにしても、レ級が来ると知っていて
動じないあたり、響さんらしいです。
・・・そういえば、まだレ級さんと港湾棲姫さんは
鎮守府の中にいらっしゃるんですか?」
響は鳳翔に顔を向けると、少し笑みを浮かべて
ウォッカと煮物を受け取っていた。
そして一口、ウォッカを口に含むと、満足そうな笑みを浮かべる。
「うん、いいウォッカだ。鳳翔さん、いつもありがとう。
それでね、深海棲艦の2隻はまだ鎮守府の中にいるよ。
提督室でビールを飲みながらコタツに入ってたよ。」
「あらら、レ級さんも港湾棲姫さんも自由ですね。
提督と金剛さんも、深海棲艦を鎮守府の中に
侵入させて、のんびりと過ごさせるなんて、
少し非常識といえば非常識ですね。」
鳳翔は苦笑しながら、秋刀魚を七輪へと載せていた。
秋刀魚の焼ける良い匂いが、居酒屋の中を満たし始めていた。
「まぁ、個人的には、敵意がないならいいんじゃないかな。
こういうのも、私はいいと思うよ。」
ウォッカを煽り、鳳翔の煮物をつまみながら
響は淡々と言葉を続けていた。
続けるように、鳳翔も秋刀魚を焼きながら、口を開く。
「貴女がそう言うなら私は何も。
個人的には、レ級さんと港湾棲姫さんは好ましい部類ですしね。
・・・それで、大本営、横須賀付きの駆逐艦としての貴女は、
如何するのですか?」
響は鳳翔の言葉に、コトリ、とグラスを置く。
表情は相変わらず飄々とかわらぬまま、鳳翔を見つめていた。
「別にどうもしないよ。
カメラのレ級ほど脅威でも無いし。
金剛さんで倒せるレ級という話だからね。」
そして、鳳翔の目を見たまま、響は更に言葉を続けていた。
「何より、深海棲艦死すべしと、いつも血眼になっていた
提督と金剛が、深海棲艦一緒に酒を飲む。
ありえない事なんだ。見てて面白いじゃないか。」
響は言い終わると、にやりと笑いながら、ウォッカを煽っていた。
鳳翔は、そんな響を見ながら、苦笑を浮かべつつ口を開く。
「響さんったら、まったく、性格悪いですね。
はい。レ級さんの秋刀魚の塩焼きです。
美味しいですよ。」
「ん、頂きます。別に私は性格が悪いわけじゃないよ。鳳翔さん。
ただ、面白いことが好きってだけで。」
響は変わらず、飄々とした表情のままで、
秋刀魚をつつきながらも、ウォッカを淡々と煽っていた。
妄想はかどりました。
サブタイトル「ウォッカと秋刀魚、そしていつもの晩酌(BEER!BEER!)」。