人類と艦娘の特殊作戦の情報が入ったようです。
一部修正。デカブリスト&竹鶴。
17 レ級と輸送作戦 その1
横須賀鎮守府内部、臨時大本営に陸と海の将校が集っていた。
【呉鎮守府で鳳翔の料理と酒を堪能し、
提督の私室で宴会を開くという暴挙を行った深海棲艦がいる。
艦種は戦艦レ級と港湾棲姫。
実害はカメラのレ級と同様に特に無し。
友好的なレ級であるため、別段対応は必要ないと思われる。
ただし、此方では判断不可能な事柄であるため、本部での対応を求む。】
呉に斥候として在籍している響から
横須賀の大本営に届いた一報である。
この一報を読んだ時の将校たちの反応は
皆一様に同じで、呆れ顔でため息を付きながらただ一言。
「またか、またレ級か。」
と、発言するのみである。
皆、カメラのレ級のせいで
非常識な深海棲艦の対応には疲れきっていたのである。
なぜかといえば、カメラのレ級は、SN作戦後も
普通に艦娘の写真を取るどころか、横須賀に半ば在籍という形で存在しているのだ。
【もういいだろう、これ以上心労を増やさないでいただきたい。】
というのが、将校たちの心の声である。
それでも、報告が届いたからには、
大本営としての対応を決めなければ対外的に拙いであろうということで
半ば強制的に大本営が開かれて、将校たちは集結している形である。
「で、この一報についてなのだが。信憑性はいかほどか。」
陸軍の将校が、ぶっきらぼうに海軍の将校へと口を開く。
じっとりとした目で睨みつけているあたり
完全に呆れきっているようである。
「日本帝国海軍でも、響という艦は、特に清濁併せ呑む船です。
嘘の報告はまず致しません。
呉の鎮守府で、レ級と提督、艦娘と港湾棲姫が
宴会を開いたというのは、間違いのないことです。」
海軍の将校は、はっきりとした口調で断言する。
ベールヌイ、デカブリスト、響と呼ばれ
艦齢も長く、深海棲艦とも一定の交流があり
様々な任務をこなすこの船の信頼は
海軍の将校たちからは、特に高い。
響本人も、帝国海軍のためならば
自身が盾になりつつ、沈んでもよろしいと思っている船である。
そんな響が、「呉に深海棲艦がいて宴会してたよ」
と将校たちに報告するのであれば、それは、間違いのないことだ。
「響ほど帝国海軍に尽くしている艦は居ませんからね。
そんな艦が報告してきた事ですから、まず間違いは無いでしょう」
別の将校も、陸軍の将校を見ながら口を開いていた。
陸軍の将校は、そんな2人の海軍の将校を交互に見ながら
眉間にしわを寄せつつ、更に口を開く。
「そこまで言うのであれば、本当なのだろうな。
で、結局、海軍としてはどうするのだ?
また、レ級を横須賀に呼びつけて
実力を図るために演習でもさせるか?」
「それも考えましたが、カメラのレ級は
艦娘の写真という明確な理由があったからこそ
実現した演習です。
呉の宴会のレ級、及び港湾棲姫は
現段階ではなんともいえません。
報告書から判ることを強いて言えば、
このレ級と港湾棲姫は、鎮守府に乗り込んで
宴会を開く程の酒好き、ぐらいですしね。」
海軍の将校は、そこまで言うとフッと溜息をつき、表情を緩める。
「宴会を開く酒好き。目的がはっきりしない分、
正直カメラのレ級よりも質が悪い。
何を考えているのか全くわかりません。
それ故に、我が海軍としては、【静観】します。」
陸軍の将校を見ながら、海軍の将校は、苦笑を浮かつつ結論を述べでいた。
それを見た陸軍の将校も、苦笑を浮かべつつ、ゆっくりと口を開いていた。
「陸軍としては海軍の提案に賛成である。
これ以上、変な深海棲艦に絡んだ心労を
負いたくはない。」
「と、いうことであれば、大本営としての結論は
【レ級・港湾棲姫】に関して言えば【静観】と言うことで、宜しいですか?」
海軍の将校が、他の将校を一瞥しながら意思を確認していく。
そして、大本営の将校たち、そして天皇は、全員、静かに頷いていた。
「満場一致、ですね。ではそのように。
それで、あと今日は、もう一つ議題があるのです。
先のコロネハイカラ島の物資不足の件についてなのですが・・・・」
◆
呉鎮守府の宴会から数日たった日。
無事に呉鎮守府から出立したレ級は、
いつものパーカーを着こみながら、
ソロモン海域の奥で艦娘を待ち構えていた。
だがしかし、呉鎮守府から、
出立できるまでの道のりは恐ろしく長かった。
まず、港湾棲姫が完全に風呂の虜になり
2日・3日とずっと提督の私室とドックに入り浸ってしまっていた。
上司がそれなので、レ級も鎮守府を離れるわけには行かない。
正確には、本来、レ級は姫を見捨てても良いのだが
酒飲みの故の人(艦)の良さなのか、レ級は姫に付き合い
鎮守府の中に滞在していた形である。
更にレ級にとって、悪かったことが一つ。
それは、金剛が風呂の中で話していたことを
すべて覚えていたことである。
「さぁ、レ級!砲弾投げ返しをレクチャーするのデース!
どうやーるのデースか!?ハリーハリー!
覚えたらワタシ、早速横須賀の大和に演習を挑むデースよー!」
レ級は、金剛に無理やり首根っこを掴まれ、
連日無理やり、呉鎮守府の演習場に立たされていた。
最終日には、偶然居合わせた若葉曰く、
「アレ本当に戦艦レ級?」
というほどにやつれた顔をしていたという話である。
そして、金剛に砲弾投げ返しをレクチャーし
マスターさせるまでに費やした時間が約7日。
つまり、戦艦レ級と港湾棲姫は、結局1周間ほど
呉鎮守府で食っちゃ寝していたのである。
「・・・ヒッデェ一週間ダッタナァ。」
レ級は、自身の隷下の艦隊に索敵を命じながら
ソロモン海域をゆっくりと移動する。
表情は真面目であり、旗から見れば普通の戦艦レ級エリートだ。
しかしながら、片手にはウィスキーの竹鶴が入った、
呉鎮守府印のスキットルがしっかりと握られていた。
【レ級、あと港湾棲姫殿。
海で合った時に、貴君らを攻撃するのは惜しい。
他の個体と区別が付くように、これを持っていけ。】
と、呉の提督から手渡されているものである。
そして、レ級は時折、スキットルを口に加え
竹鶴をゆったりと楽しんでいた。
「マー、酒飲ミ相手フエタカライイケドナー。
オツマミモ心配シナクテイイシ。」
レ級が竹鶴を口に含んだ瞬間、優しいバニラのような香りが広がり
ゆったりとした気分にさせるウィスキーの香りが、レ級の口の中に広がっていく。
「鳳翔ノ所デ飲ンダ、ハイボールモ美味シカッタケド。
常温ダトマタイイ味スルナ。バニラッポイ。
サテ、サテ、コンナオサケニ合ウ砲雷撃戦シタインダケド・・・」
ちびりちびりと、艦娘を待ちながら
竹鶴を煽る戦艦レ級であったが、
結局その日は一隻も艦娘が現れなかったのである。
◆
戦艦レ級は、ソロモン海から撤退した後、
自身のドックの布団にくるまりながら
のんびりと時間を潰していた。
「ンァー。今日ハ暇ダッタナ。
ドウシタンダロウ。艦娘達。
一回モ来ナイッテノハ、何カアッタカナ?」
以前も一度、レ級のもとに艦娘が来ないことが合った。
その時と言えば、SN作戦が実施された時である。
(艦娘の大規模作戦がもしかしたら実施されるのかもしれないな)
レ級はそう考えると、ベッドから飛び起き、自身の拠点を後にすると
港湾棲姫の元へと、歩みを進めていた。
「港湾棲姫ー。イルー?」
ガチャリと港湾棲姫の拠点のドアを開けながら
レ級は大声で叫んでいた。
「ハァーイ。イルワヨ。
ドウシタノ?レ級、コンナ夜遅クニ。」
港湾棲姫は、レ級と同じように呉鎮守府特製のスキットルを片手に
机に向き合いながら、メガネを掛けた姿で、作戦要領書を作成していた。
「インヤァ。今日一回モ艦娘ガ攻メテコナカッタカラ。
何カ知ラナイカナーッテオモッテ。」
レ級はドアから歩みを進め、港湾棲姫が向き合う机の横に立っていた。
そして、何の気なしに、レ級は机の上の作戦報告書を確認していた。
「通商破壊作戦?港湾棲姫。ナンデ今更作戦要領書作成シテルンダ?
我々ハ常ニ人類ノ輸送船潰シテルジャン。」
レ級は、不思議そうな顔で港湾棲姫に問いかけていた。
港湾棲姫は、レ級の顔を見ると
メガネを机に置きながら、口を開く。
「エエトネ。日本ノ各鎮守府ニ、艦娘ガ護衛ニツク、
海上輸送作戦ガ発令サレタミタイ。
実ハ前カラ報告ハアッタンダケド、真偽ヲウタガッテタノネ。
デモ、ココニキテ、ショートランド諸島近海デ、
イツモハミナイ大和型トカガ確認サレタノ。」
「ホホー。確カニ珍シイデスネ。
大和型ナンカハ、何時モハ私ヲ叩キニクルノニ。」
レ級は、顔をぽりぽりと書きながら
港湾棲姫に相槌を打っていた。
港湾棲姫は、表情を変えぬまま、更に言葉を続ける。
「デショウ。更ニ、最近我々ノ通商破壊ノ影響デ
コロネハイカラ島ヘノ物資ガ不足シテイル事ガ判明シテイルノヨ。」
「アァ、ナルホド。
ソウナルト、先ノ情報トカチアウワケデスカ。
艦娘ノ護衛付キ、シカモ大和型ガ護衛ニツイテ
コロネハイカラ島ヘノ物資ヲ運ブト。」
港湾棲姫は、レ級の言葉に大きく頷く。
「ソノトオリ。ワタシ個人トシテハ、
マダ真偽ハ疑ッテルトコロハアルンダケドネ。
大本営デキメタコトダカラ、
セッカクダシ、新型ノ艦ヲダシテ、対応サセル作戦ヲ立テテタノ。」
「・・・ホゥ。」
「潜水棲姫ト駆逐水鬼。アト、私モ出ルワ。
コロネハイカラ島ノ近クノ拠点ガ、マダ復旧中ナノ。」
レ級は、聞いたこともない深海棲艦の名前に
にやりと笑みを浮かべる。
「聞イタコトノナイ深海棲艦ダナ。
・・・ソノ2隻、酒ハイケルノ?」
「アァ、2隻トモ下戸ヨ。
竹鶴チョビット飲マセタラ、目ヲ回シテタ」
「ソッカー。残念ダナァ」
レ級は若干肩を落とす。
毎回、新造艦が出来るたびにレ級は
港湾棲姫に問いかけているのだが
毎回、毎回、下戸の深海棲艦しか建造されないのだ。
「マ。レ級、ソンナニ気ヲオトサナイデ。
今回ノ通商破壊作戦ガ終ワッタラ、
マタ、一緒ニ鳳翔ノ所ニイキマショウヨ。」
港湾棲姫は、肩を落としたレ級に
笑顔を浮かべながら声をかけていた。
レ級は、港湾棲姫に対して笑みを浮かべると
ゆっくりと口を開く。
「ソウデシタ。鳳翔ノトコロニ行ケバ金剛モイルシナ。
・・・デ、港湾棲姫。私ハ今回、ドウスレバイイノカナ。」
「アァ、レ級ハイツモノ通リソロモンネ。」
港湾棲姫は、資料を見ずに即答する。
レ級は港湾棲姫の言葉に、思わず眉間にしわを寄せていた。
「姫ェー。毎回毎回サァ。
私ダケ、ポジション変更ナイッテノハドウカト。
一回グライハ、大規模作戦ニ参加シタインダケドォ?」
「レ級、判ッテ。
貴女ガ何時モト違ウ海域デ戦闘シテイタラ
誰ガソロモンノ奥地ヲマモルノヨ。」
「エェー・・・。他ニモレ級イルジャーン。」
「何ヲイッテルノヨ。
カメラノレ級ガ戦ワナイ以上、
レ級ノ中デモ、2番メニ実力ガ高イ貴女ガ、
拠点ヲ守ラナクテドウスルノヨ。」
港湾棲姫は、まっすぐにレ級の目を見ながら口を開いていた。
レ級は、そんな港湾棲姫の顔を見ながら、大きくため息を吐く。
「ハァー。判リマシタヨ。
コノレ級エリート、明日カラモ変ワラズソロモンノ奥地ヲ守リマス。」
「ン、ヨロシイ。頼ンダワネ。」
「イエス、マム。」
レ級は、美しい海軍式の敬礼をもって
港湾棲姫の言葉に答えていた。
そして、一歩身を引き、そのまま体を反転させ
港湾棲姫の拠点を後にしようとしていた。
「ア、ソウダ。レ級、一ツ言イ忘レテタ」
港湾棲姫は、ドアに向かって歩くレ級へと声をかけていた。
「人類ノ輸送作戦、トイウコトハ、
モチロン、食料モフクマレテルワ。嗜好品モネ。」
レ級は、港湾棲姫の言葉に、足を止め
首をひねり、港湾棲姫の方を見る。
レ級の視界に入った港湾棲姫は
それはもう、見事な笑みを浮かべていた。
「・・・ナルホド。
フフ、ナルホドナルホド。」
そして、レ級は口角を上げ、
にやぁりと笑みを浮かべていた。
「困窮地域ニ送ル物資デスモノネェ・・・。
良イ嗜好品、ツンデルンデショウネェ。
港湾棲姫、ソコラヘンノ情報ハアルノ?」
「モチロン。
ショートランド泊地ニ偵察ニデテイタ
イ級ガ、竹鶴ト角瓶、アトボウモアヲ確認シタソウヨ?」
負けじと、港湾棲姫も口角を更に上げ
にやりと、さらに良い笑みを浮かべる。
「判リマシタ姫様。
昼間ハ、通常通リソロモン海域デ守備ヲ行イマス。
夜間ハ、少々海域ヲ離レマスノデ、ソロモン海ノ戦力増強ヲ。」
「エェ、モチロン。レ級ノ通常個体ヲ既ニ2隻手配済ミヨ。
・・・頼ムワネ。」
港湾棲姫は笑顔のままつぶやくと、
レ級から視線を外し、机の作戦要領書へと向き合っていた。
「承知シマシタ。
少ナクトモボウモアハ確保シテキマス。」
レ級も、そう呟くと、港湾棲姫の拠点を後にする。
その顔は、港湾棲姫と同じ、良い笑みを浮かべていた。
妄想はかどりました。
→【酒瓶集めにレ級が、人類と艦娘を襲撃します。 】