ひとまずは、かばんイッパイの酒を手に入れたレ級さん。
一旦、港湾棲姫に報告に向かうようです。
戦艦レ級は、島風との邂逅を経て、
片手には軽巡棲姫、片手には飲みかけのボウモアを持ち
未だ、コロネハイカラ島近くの海域を闊歩していた。
というのも、ドロップしたと思われる軽巡棲姫を
港湾棲姫に引きあわせ、対応を決めなければならないからだ。
憎悪、怨念が強すぎた場合は、解体処分。
更生出来るようであれば、教育隊行き。
通常個体であれば、そのまま戦線に出るような形である。
「港湾棲姫ドコニイルッツッタッケナァ?
コロネハイカラ島ノ要塞ダッケ。」
レ級はそう呟きながら、片手に持っている軽巡棲姫を見る。
島風の攻撃をくらった軽巡棲姫は、見るも無残な状態だ。
島風に蹴られた頭は、ぱっくりと割れ血が吹き出し
魚雷をくらった足は、骨すら見えていた。
「コイツ、ドロップシタ割ニハ、頑丈ナ艦ダナァ。
人型ダシ。モシカシナクテモ鬼カ姫級カ。」
レ級はそう言いつつ、
気絶したままの軽巡棲姫を観察していく。
「黒い仮面、黒い服、魚雷発射管ニ、単装砲カ。
偽装ノ取リ付ケ位置モ同ジトハ。
コイツ本当ニ艦娘神通ニニテルナァ。
ソウイヤ駆逐棲姫ハ春雨、軽巡棲鬼ハ那珂ト阿賀野ニ似テタナァ。」
レ級は移動しつつも、呟きながら頭で情報を整理していく。
(マァ、神通ノコトヲミテ、「ワタシ!」トイッテルアタリ。
中身ハ完全ニ神通ダロウナ。憎悪ニノマレテルノガメンドクサイナー。)
「マ、ソレハソウトシテダ。
ソロソロ、オキテクンネーカーナー。
首根ッコ掴ンデ運ブモノツカレンダケドナー。」
レ級は、軽巡棲姫を見ながら呟いていたが
全くもって軽巡棲姫は反応を示さなかった。
「・・・ンー。ア、ソウダ。」
レ級は何を思ったのか、次の瞬間
片手に持ってたボウモアの蓋をあけると
無造作に、軽巡棲姫の口にボウモアの瓶を叩き込んでいた。
コポ、コポ、コポ、コポと瓶からボウモアが
軽巡棲姫の口の中に注ぎ込まれていく。
「・・・ンッ・・・グッ・・・グ・・・ググッ!?」
軽巡棲姫から、苦しそうなうめき声が聞こえるも
レ級は関係なく、更にボウモアを注ぎ込んでいた。
「グッ、ンムゥ!?ゴポッ!ンッーンーーーー!」
軽巡棲姫は酒を無理やり注ぎ込まれたことによって、
完全に意識が戻っていた。
(何っ!?何っ!?何が起こってるの!?
なんで私、口に瓶なんて咥えてるの!?
くっ、苦しいっ・・・!)
そして、足をジタバタさせながら、
酒瓶を口から抜こうと躍起になるが、
軽巡棲姫の首はレ級の左手に、
瓶はレ級の右腕に抑えられているためか、全く外れない。
「ンー!ンー!ンンー!」
呻きながら、軽巡棲姫はレ級の腕をバシバシ叩くが、レ級は全く意に返さず
ボウモア一本分を、無理やり軽巡棲姫の胃に注ぎ込んだのである。
「ンェッホ!ゲホッ!ゲホッ・・・。」
軽巡棲姫はようやく口から瓶を引きぬかれ、
状況が理解できぬまま、軽巡棲姫は涙目になりながら咳き込んでいた。
が、レ級は無慈悲に、今度はバックから竹鶴の瓶を取り出すと
スルリと軽巡棲姫の口に、瓶の口を突っ込み、
再度、無理やり軽巡棲姫の胃にウィスキーを叩き込んでいた。
「ングゥ!?ンゴォ!?ンー!ンー!
ンンー!ンンー!ンーーーー!」
再度訪れた苦しみに、軽巡棲姫は仮面の下の目を見開き、
涙を流しながらレ級の腕をバシバシと叩いてた。
それもそうで、無理やり食道に直接酒を注ぎ込まれている間、
軽巡棲姫は全く呼吸が出来ないのである。
しかも、流し込まれている酒はアルコール度数の高いウィスキーであるため、
体の節々にダメージを負っている軽巡棲姫にとって、
自身の食道を通って行くウィスキーが、ひどく熱く染みるのだ。
「サーテ、オ前、気ヅイタナ。
アト、気持チ、オチツイタカ?」
軽巡棲姫はウィスキーを注がれながら
首を縦に振ろうとする。が、レ級に首根っこを掴まれているため
上手く首が動かない。
「ンンンッ!ンンー!」
軽巡棲姫としては、「気づいた!落ち着いた!」と言ったつもりであるが
酒瓶で物理的に口を封じられているため、全く言葉が出ていなかった。
「ソウカー、マダオチツカナイカ。
大丈夫ダ。酒ハマダアルカラナー。」
「ンゴッ!?ンンンー!ンンンー!
ンゴッンー!ンンー!」
軽巡棲姫は【いやっ!大丈夫!落ち着いたよ!?ねぇ、聞いてる!?】
と、必死に訴えたつもりであるが、
やはり物理的に口を封じられているため、言葉にはならない。
そして、無慈悲に2本目の酒が全て軽巡棲姫の胃に収まる。
グポッっという音とともに、軽巡棲姫の口から瓶が引き抜かれると
口から唾液とともに、えづく声が漏れていた。
「げはっ、げはっ。んぐっ!?」
一瞬酒瓶から開放されたと思いきや
次の瞬間、今度は角の酒瓶を口の中に打ち込まれていた。
「んんっ!んー!んー・・・んぐぅ・・・・。
うごぅ・・・ごふっ・・・・。」
流石に1本2Lの酒瓶を、2本4L分、無理やり胃に注ぎ込まれた軽巡棲姫は
酔いが回ってきたのか、徐々に意識を失い始めていた。
更にそこに追い打ちの如く角瓶2L分が胃の中に叩き込まれれているのだ。
軽巡棲姫からしてみれば、もう頭の中がグチャグチャである。
(なんで・・・わたしが、こんな目に・・・あぁ、
私を沈めなきゃいけないのに・・・・。
まだ、こんなことで死にたくない)
軽巡棲姫はそう考えながら、完全に意識を失っていた。
レ級は3本目を軽巡棲姫に叩き込んだ時に
ようやく異常に気づき、首根っこから手をはなしたものの
時既に遅し、軽巡棲姫は急性アルコール中毒寸前に陥っていたのである。
「アッ、コレモシカシテ、ワタシヤッチャッタ奴カ!
ンンー、マァ、トリアエズ。」
レ級は、完全に気を失ってしまっている軽巡棲姫の口に、無造作に手を突っ込む。
「んぐぅ・・・うぉええええ・・・」
すると、軽巡棲姫の口から、今まで注ぎ込んだ
大量のウィスキーが吐き出されていた。
「うぉええええ・・・げほっ、げほっ。」
「大丈夫カー?」
軽巡棲姫は目を薄っすらと開け
声のした方向に首を向けていた。
するとそこには、ニヤニヤと笑みを浮かべる
パーカー姿の化物が居たのである。
「げほっ、げほっ、あな・・・たは・・・?」
「ん、意識ハアルンダナ。
ワタシハ戦艦レ級。深海棲艦ノ戦艦ダゼ。
オマエハ?」
レ級はにやにやしたまま、冷静に問いかけていた。
ドロップした深海棲艦は、まれに自分を深海棲艦と思っていないこともある。
そう、何事も、ファーストコンタクトは大切である。
「わた、しは・・・。軍艦、神通。」
軽巡棲姫はそこまで言うと、首を横にふる。
「・・・じゃない、深海棲艦、の、神通。げほっ。」
「オー、ソウカソウカ。ヨロシクナ、神通。」
「はい、よろしく・・・お願いします。げほっ、げほっ。」
レ級はそう言うと、未だ海面でえずく軽巡棲姫に
手を差し伸ばしていた。
軽巡棲姫はしばらくえづいていたが、
レ級の差し出した手を、しっかりと握り返していた。
そして、レ級は握手をしながらも、
軽巡棲姫について考えを馳せていた。
(フーム。コンナ深海棲艦ハジメテダナ。
艦娘ノ名前ヲナノルケド、自分ハ深海棲艦デス。ッテカ)
普通はありえないことである。
艦娘は艦娘、深海棲艦は深海棲艦となるはずだ。
が、ここでレ級は、金剛と飲んだ時のことを思い出す。
【艦娘は「軍艦や軍属の正義と勇気」を体現した存在。
深海棲艦は「軍艦や軍属の無念と憎しみ」を体現した存在。
って、私は思ってるんデースよ!】
あの金剛の仮説が正しいのであれば
あるいは、仮説でなくて本当のことであるならば
艦娘と深海棲艦の中間の存在がいるのではないか。
この、深海棲艦の「神通」と名乗る船のように。
「ソレハソウトシテ、神通。
オ前、艦娘ノ神通カナリ恨ミアルノカ?
傍カラミテタラ、凄イ形相ダッタゾ?」
「げほっ・・・あります。
なぜ、私と私は同じ存在なのに
私は深海棲艦で、私は艦娘なのか。
納得が、いきません。
私と同じ、深海棲艦にさせなければ、気が済まないです。」
「ナルホドナァ。
マ、ソウイウコトナラ、チョイト私ノ上司ノトコロ行コウゼ。
オマエ、生マレタバカリデ後ロ盾モ何モナイダロ?
修復モヒツヨウダシ。」
軽巡棲姫はレ級の顔を見ながら、頷く。
「そうさせていただくと助かります。
あぁ、早く、私を沈めなくては・・・・!」
「ドゥドゥ。焦ルナッテ。
トリアエズハ港湾棲姫、アァ、ワタシノ上司ナ?
ニ会ッテモラウ。何時マデモ「神通」ジャマズイカラ
オマエノ深海棲艦デノ通称ト、
アト拠点ヲ決メナイトイケナイカラナ。」
「はい。そうですね。焦らずとも私は海の上にいるのですよね。
それでは戦艦レ級さん。エスコートよろしくお願いします。」
「オウヨ。任サレタ。
ソレハソウトシテ、オマエ、酒イケルンダナ。」
軽巡棲姫は首を傾げながら、レ級に口を開く。
「酒、ですか?この姿ではまだ呑んだことないですが・・・・。」
「イヤ、気付ケニト思ッテ、無理ヤリノマセタンダケド。
吐イチマッタトハイエ、モウ立チ直ッテルンダモン。」
レ級は、ケラケラと笑いながら
空になった酒瓶を指差していた。
そして次の瞬間、軽巡棲姫は赤いオーラを纏い
顔には怒気を浮かべていた。
「・・・・レ級さん?もしかしてではなく。
私の口に直接瓶を突っ込んでませんでしたか?」
「ン、アァ、首根ッコ掴ンデ口ニ瓶ツッコンダヨ。
・・・・・・ドウシタノ?」
軽巡棲姫はぐぐぐっとレ級の顔面に近づく。
そして、自身の額とレ級の額にくっつけると
底冷えするような声で、レ級に対して、静かに叫んでいた。
「レ級さん。二度と、やらないでくださいね?
私気づいてましたから。本気で死ぬかと思いましたから。
よろしいですか?今後、絶対に、無理やりのませないでください。」
軽巡棲姫のあまりの迫力に、レ級は冷や汗をかきながら口を開く。
「・・・気ヅイテタノカ。ウン、ゴメン。ヤラナイ。
ア、ケドサ。時々普通ニ呑ムナライイヨネ・・?
深海棲艦、呑メル船アンマリイナクッテサ。」
レ級は少し涙目になりながら、軽巡棲姫へと問いかけていた。
軽巡棲姫はレ級を見ながら、少し笑顔で口を開く。
「普通に、ならば、いくらでも。」
「オォ、ヤッタゼ!
オット、トイウカ、ソロソロ行コウカ。
オマエノ怪我モ直サナキャイケナイシ。」
「はい。わかりました。
ただ、主機が損傷を受けてるので
最大10ノットぐらいしか速力は出せないと思います。」
「アァ。了解。合ワセルゼ。
イザトナリャ、私ガ守ッテヤル。」
レ級はニヤニヤとしながら軽巡棲姫に話しかけていた。
そんな姿を見た軽巡棲姫は、疑問に思ったことを口にする。
「そういえば、戦艦レ級さん。
あなたは深海棲艦の中で、どのぐらいの強さなんですか?」
レ級は軽巡棲姫の言葉に、首を傾げながら少しの間思案していたが
首を正すと、軽巡棲姫をまっすぐと見ながら、口を開く。
「ンー、最上位個体ノ姫ト喧嘩デキルグライ?
身内ジャガチバトルシナイケド、ソコソコ上位ダトオモッテイイゼ。」
「そうなのですね。
それじゃあ、安心してエスコートをお任せいたします。」
「ハイヨー。ソイジャア、ユックリデイイカラ付イテキテ。
コッカラナラ10ノットデモ、5時間グライデツクカラ。」
レ級はゆっくりと出力を上げ、約10ノットで進軍を開始する。
軽巡棲姫もレ級に合わせるように、10ノットで
傷ついた体を気にしながら、ゆっくりと進軍を開始するのであった。
◆
コロネハイカラ島、要塞。
港湾棲姫が自ら修復と守備を行っている拠点である。
「暇、ネェ。」
港湾棲姫は、要塞に腰掛けながら、月夜の海を見つつ
ぽつりと呟いていた。
「修復ハ、ヲ級ガヤッテルシ。
艦娘ガ来ルワケデモナイシ。
私ガデルホドデモナカッタカナ・・・。
モシカシテ杞憂ダッタ?」
そう言うと、港湾棲姫はスキットルを取り出し
中身である竹鶴を、ゆっくりと味わう。
勿論、スキットルは呉鎮守府から貰ったものであり
中身の竹鶴は、鳳翔から貰ったものだ。
「ンー。ストレートモイイワネー。
月夜ヲ肴ニチビチビッテイウノモタマラナイ。
アァ、コレデ艦娘ガ、コッチニコナケレバ最高ナノダケド。」
港湾棲姫は、月夜に照らされながら酒を呑み続ける。
夜風に吹かれ時折白銀の髪が揺れ動くその姿は
芸術品のようで、美しい。
「・・・ン?アレハ、ナニカナ。」
港湾棲姫は目を細め、遠くの海を見ていた。
月夜に照らされる海のずっと向こうに、
人影が2つ現れたのである。
「ヲ級、ヲ級。チョットイイ?」
港湾棲姫は、要塞の修復をおこなっていたヲ級を呼び出していた。
「ハーイ。ドウシマシタ?姫。」
ヲ級は要塞から顔だけを出し、港湾棲姫へと声をかける。
その姿は、いつものヲ級の姿ではなく
頭からかぶりもの---格納庫と飛行甲板---を外し、
黄色のツナギを着込んでいる。
旗から見れば、色白で少し美人なメカニックのお姉さんである。
「ヲ級、アレ見エル?」
声をかけられたヲ級は、上半身を完全に要塞から出すと
港湾棲姫の視線の先を観察する。
「ンン・・・?アァ、2隻イマスネ。
コノ距離デハ、艦娘カ深海棲艦カ判断ハツキマセンネ。」
ヲ級はそう言うと、胸元にしまいこんでいた
深海棲艦の偵察機を取り出していた。
「姫様、チョット偵察機トバシマスネ。」
「ン、オネガイ。デモヲ級、ソノ姿デ
ドウヤッテ艦載機ドバスノ?」
港湾棲姫はヲ級を見ながら、首を傾げつつ口を開いていた。
先も言ったとおり、ヲ級は滑走路と格納庫を外している状態である。
艦の一般常識では、どう考えても艦載機は発艦できない。
「1機グライナラ甲板ナクテモイケマスヨ?」
「ヘェ。ソウナンダ。」
どうやるのかと港湾棲姫は興味津々にヲ級を観察していた。
次の瞬間、ヲ級は艦載機が握られた手を思いっきり振り上げる。
「ソレッ!」
そして、掛け声とともに、艦載機を思いっきり空中へ投げていた。
ヲ級の艦載機は、一瞬きりもみ状態になるも
空中で体勢を立て直し、海上の2隻の船影へと一直線に飛んでいった。
「ワァ、大胆ネ。」
港湾棲姫は呆れ顔で、ヲ級へと話しかける。
「ンー、ソウデスカ?
赤城トカ加賀トカ、イザッテトキハ、艦娘モヤッテルラシイデスヨ?
デハ、一旦、要塞ノ修復ニ戻リマスネ。結果ガ出タラスグニ連絡シマス。」
ヲ級はニコニコと笑みを浮かべながら、港湾棲姫へと口を開くと
するりと、要塞の中に戻っていった。
そして、港湾棲姫はまた、月夜を見ながら竹鶴を煽る。
「ハーイ。ヨロシクネ。
ンー、私モ滑走路破壊サレテ
攻撃機離陸デキナクナルコトアルカラ、練習シテオコウカナ。」
艦娘が必死に輸送作戦を成功させようとしているさなかの、深海棲艦の一幕であった。
妄想滾りました。被害者:軽巡棲姫