自由なエリレさん。   作:灯火011

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軽巡棲姫(仮)を要塞に無事収容した姫とレ級さん。
レ級が奪取してきた酒をヲ級を交えて呑みつつ今後の対策を話し合うようです。


21 宴会準備

 

コロネハイカラ島近くの要塞。軽巡棲姫・神通をドックに叩き込んだレ級達3隻は

要塞の一室、姫の臨時執務室で、炬燵に入りながら酒を煽りつつも

軽巡棲姫・神通について対応を話し合っていた。

 

「で、姫様。今ドックに入っている神通はどうします?

 姫のご要望とあれば、解体も視野にいれますよ?

 ・・・それにしてもレ級さんの持ってきたお酒いけますねー。」

 

ヲ級は流暢な言葉遣いで、港湾棲姫へと口を開いていた。

その手には、ウィスキーボウモアの炭酸割りがしっかりと握られている。

 

「デショウ?人類ノ酒ハ美味シイワ。レ級ニモ感謝シナキャネ。

 ・・ソレデ、ソウネェ。軽巡棲姫ナンダケド、解体ト考エモシタンダケド。

 別ニイマハ普通ニ会話デキテルシ。今後ハ深海棲艦ノ姫トシテ活動シテモライタイシ。

 トリアエズハ私ノ直属ノ部下ッテコトニシテオコウカナ。」

 

港湾棲姫はヲ級の言葉に、微笑みを浮かべながら応える。

若干赤い顔をしている港湾棲姫の手には、ウィスキー竹鶴のロックが握られている。

 

「二人ノ口ニアッテヨカッタデスヨォ。

 在庫ハマダマダアリマスカラ、ジャンジャン呑ンジャッテクダサイ。

 ソレニシテモデスヨ、港湾棲姫。今ハ神通、オトナシクシテイマスガ。

 神通ヲ見タ瞬間、コッチノ神通ハ理性ナクス可能性モアリマスヨ。」

 

「ソウナノ?酒トドックヲ楽シンデイル姿カラハ想像デキナインダケド。」

 

港湾棲姫は、ロックグラスを傾けながら、先ほどドックに入った軽巡棲姫を思い出していた。

というのも、軽巡棲姫は酒瓶を全く手放さなかったのだ。

 

『嫌です!酒瓶は私のなんでれすぅ!』

 

赤い顔でボウモアと角瓶を抱えた軽巡棲姫に、

レ級達は仕方なくそのままドックに案内した形である。

そして、さらに言えば、この要塞のドックは、修復ついでにと呉鎮守府をモチーフとしたため、

深海棲艦側のドックでは初めての、「お湯」タイプのドックを実装したのである。

 

『ふぁああ!あったかぁーい!・・・ングッ。

 っぷはー!お酒おいしひー!』

 

ドックに入り、酒瓶片手に満面の笑みを浮かべる、神通と瓜二つの深海棲艦。

そんな光景に、さすがの港湾棲姫とレ級も、呆れ顔を浮かべるだけであった。

 

レ級も港湾棲姫と同じように、ドックの軽巡棲姫を思い出したのか

苦笑いを浮かべつつ、姫に口を開いていた。

 

「・・・マー。今ノ神通カラシタラ想像デキナイデショウネー。

 デモ、艦娘ト対峙シテタ時ハ、ブチ切レテタコロノ飛行場姫様以上デヤバカッタデス。」

 

「・・・飛行場姫様以上ですかー。そうなると神通も同じような感じなんですかねー。

 姫様ぁ、やっぱり解体したほうがいいんじゃないですか?

 ちょうど要塞にも資材がほしいところですし。」

 

ヲ級はレ級と港湾棲姫を交互に見ながら言葉を続ける。

 

「あと、何よりも制御出来ない強力な力は身を滅ぼしますよ。

 今はまだ弱い神通、いえ、軽巡棲姫ですが、いずれ強大な深海棲艦になるのかと思います。

 その状態で暴走されちゃあ、我が深海棲艦の痛手です。」

 

真剣な目でヲ級は、港湾棲姫を見つめていた。

港湾棲姫はヲ級の目線を受けつつも、目線を合わせ、しっかりとした口調で言葉を発していた。

 

「そんなことないと思うわ。

 だって、軽巡棲姫はお酒を楽しく飲めるのよ? 

 ねぇ、レ級。お酒を呑める艦や人に、悪い人、いると思う?」

 

港湾棲姫から話を振られたレ級は、少し驚きながらも、笑顔で言葉を返していた。

 

「ムゥ、港湾棲姫マデソノ喋リカタ?今日ハミンナドウシタノサー・・・。

 ま、なんか一人だけ仲間はずれなんで合わせますけどもぉ。」

 

レ級は一旦言葉を区切ると、グラスを掲げて言葉を続ける。

 

「酒を呑める艦は良い奴ばかりです。人も含めてね。

 ここにいる私を含めた3隻、ドックに浸かってる1隻。

 そして、呉鎮守府にいる提督。それに金剛、鳳翔、隼鷹、龍驤。

 敵と味方ではありますけど、本質的に悪いやつは誰もいませんよ。」

 

にやり、とレ級は口角を上げていた。

ヲ級はそんなレ級を見ながら、ハイボールを煽りつつ、口を開く。

 

「レ級さん。いいこと言いますね。それにしても、お二人も流暢に喋れたんですねー。

 普段からそのほうが私にとっては聞き取りやすいから、これからもソレでお願いしたんですがー!」

 

「レ級、いいこと言うわね。そしてヲ級。それはできないわ。

 いろいろとほかの姫に勘ぐられちゃうでしょう?

 ・・・それでね、ヲ級、レ級、ちょっと提案なんだけど。」

 

港湾棲姫は腕を炬燵から出し、指先でちょいちょいと近づくようにジェスチャーを送る。

レ級とヲ級は、ジェスチャーの通り、顔を港湾棲姫へと近づけていた。

そして、レ級とヲ級が顔を近づけた時、港湾棲姫は静かに口を開いていた。

 

「ようは神通を見ても軽巡棲姫が暴走しなくなればいいのよね。」

 

レ級は、港湾棲姫の顔を見ながら、口を開く。

 

「ですです。軋轢をなくせればいいんです。

 難しいでしょうけどねぇ。」

 

港湾棲姫はレ級の言葉を受けると、ヲ級へと顔を向けていた。

 

「それでね、ヲ級、今、神通はどこにいるのか判るかしら?」

 

港湾棲姫から話を振られたヲ級は、偵察機からの情報を整理する。

 

「確か、さっき偵察機で確認した時は、潜水棲姫様の所でした。

 コロネハイカラ島に無事に物資を届けた後、後続の艦隊とともに、

 我が深海棲艦の掃討作戦に乗り出したようです。レ級さんが出会った島風も一緒ですね。

 おそらくですが、今後の継続した補給を行うための布石といったとこでしょうか。」

 

「なるほどなるほど。ねぇ、ヲ級。軽巡棲姫の修復時間は?」

 

「そうですね。大破でしたし、おおよそ3時間ほどかと思います。」

 

「ふふ、なるほど。それじゃあヲ級、レ級。行くわよ。」

 

港湾棲姫は、勢い良く炬燵から足を抜くと、

陸上基地型の姫とは思えない俊敏さで、立ち上がっていた。

レ級とヲ級は、ぽかんとした表情のまま、同時に口を開く。

 

「「・・・どこに?何しに?」」

 

「決まってるじゃない。神通のところ。

 あと、軽巡棲姫と戦った島風のところね。」

 

「「・・・なんででしょうか?」」

 

「愚問ね。レ級。ヲ級。」

 

港湾棲姫は一旦言葉を区切り、真面目な顔をしながら言葉を発していた。

 

「神通と島風を拉致して、軽巡棲姫と酒を呑み交わさせるのよ。

 呉鎮守府で私達と艦娘がしたように。

 結果として、呉鎮守府とは良好な関係が築けたわけだし。 

 本音で語り合えて、軋轢がなくなる方法としては、やっぱり呑みの場が一番じゃない?」

 

港湾棲姫はにやにやと口角を上げながら、残っていたグラスの中身を一気に煽る。

それに合わせるように、レ級とヲ級も、一気にグラスを煽り、立ち上がっていた。

 

「で、姫様。どうします?海上から行ったのではすぐにバレちゃいます。」

 

「そうね。ということで、今回はヲ級は陽動。拉致は私とレ級で行うわ。

 作戦としては、そうね、ヲ級。あなたは艦載機で艦娘の視線を、上空へと釘付けにして。

 決して攻撃を当てちゃダメよ?中破した神通と島風を拉致してきても、すぐに呑めないし。

 で、レ級は私と一緒に海中から神通と島風に接近。

 そして足首を掴んで、一気海中に引きずり込むわ。」

 

「わぁぉ・・・!ストレートな作戦だなぁ。港湾棲姫ィ。

 ノッたぜ。じゃあ、私は動きの早い島風を。港湾棲姫は質量の重い神通を頼むぜ。」

 

レ級はにやりと笑みを浮かべていた。

港湾棲姫も、笑みを浮かべながらレ級に言葉を返す。

 

「相手は駆逐艦と軽巡よ。どっちがどっちを掴んでも

 私達地上基地と、戦艦の質量に抗えるわけがないわ。

 それよりも、ヲ級。頼んだわよ?あなたの航空機にすべてがかかっているわ。」

 

港湾棲姫は不安そうな顔で、ヲ級に話しかけていた。

そんな港湾棲姫をみて、ヲ級は自信たっぷりと行った様子で、口を開く。

 

「問題ないですって。護衛艦隊はたかだか駆逐艦5杯と軽巡1杯でしょう?

 合流してきた艦隊には戦艦も航空隊もいるようですがっ。」

 

ヲ級はそこで言葉を区切ると、いつもの帽子のような滑走路と格納庫、

そして電探である杖を取り出していた。

 

「ここソロモンでは私以上の練度のヲ級はいませんからねー!大船にのったつもりでいいですよ!

 姫様、レ級さん。しっかりと作戦、遂行頼みますよー!」

 

ヲ級は装備を整えると、部屋から飛び出し、要塞の甲板から勢い良く海面に飛び降りる。

そして同時に、体から金色のオーラと、目からは蒼いオーラを吹き出させていた。

 

「いきますよぉ!烈・・・じゃなかった。Mk17試作型ぁ!!」

 

ヲ級はそう叫ぶと、頭の格納庫から一気に艦載機を発艦させていた。

 

「みんないっくよー!

 相手は本物!日頃の訓練の成果、空戦をもって評価してもらいなさい!」

 

ヲ級はそう叫ぶと、艦載機とともに一気に体を加速させ、前線へと向かっていった。

そして、港湾棲姫とレ級も、ヲ級に続き、要塞から海面へと飛び降り、そのまま海中へと潜る。

 

「相変わらずヲ級は戦闘となるとテンションあがりますねぇ。

 港湾棲姫、あれも一種の暴走なのでは?」

 

「何を言うの。レ級。ヲ級のあれで暴走なんて言っていたら、

 飛行場姫のブチ切れとかはどうなるのよ。」

 

「あぁー、そうでした。まだ理性があってこっちの言うこときいてくれるんですもんね・・・・。

 っと、このままだとヲ級を見失しないますね。速力上げまっしょう。」

 

レ級は赤いオーラを吹き出させると、しっぽを使い一気に体を加速させていた。

 

「そうね。早くしないと、軽巡棲姫の修理が終わっちゃうものね。

 おつまみも用意しないといけないし。艦娘って、北寄貝食べられるのかなぁ・・?」

 

港湾棲姫はそう言うと、見事なドルフィンキックをしながらレ級の後ろを追従する。

 

夜明け間際。要塞での出来事であった。

 

 

神通達、護衛艦隊は、無事コロネハイカラ島への物資輸送任務を終え

護衛艦隊とともに、帰路についていた。

 

「大丈夫ですか?神通さん。」

 

「えぇ、大丈夫ですよ。島風。あなたには不甲斐ない姿を見せましたね。

 それにしても、あなたもよく人型の深海棲艦を相手にして、無傷でしたね。」

 

そこには、ショートランド泊地へ、被弾した輸送船を送り届けた島風も合流していたのである。

 

「えへへ。だって私は速いもん。

 重い攻撃だって、当たらなければ意味が無いですもん。」

 

「流石です。島風。

 それにしても、平和な海ですね。

 主力の連合艦隊が近海の深海棲艦の駆逐を行っているとは言え

 夜の輸送作戦の時の戦闘がウソのようです。」

 

「ですねー。これなら最初っから、主力艦隊を全面に押し出せば

 輸送作戦ももっと楽だったのに。大本営は何を考えてるんだろう?」

 

「そうはいっても島風。敵の戦力がわかりませんからね。

 先ほどの潜水艦だってそうです。情報にない艦ばっかりなんです。

 そんな場所に主力艦を配置してしまった挙句、全滅となれば

 大損害もいいところ、という判断なんだと思いますよ?」

 

「ふーん。そうなんだ。

 ま、それでも行きよりは楽に帰れるからいいけ・・ど?」

 

島風は遠くの海面に釘付けになっていた。

なぜかといえば、そこには、よく見たことのある深海棲艦が

大量の艦載機と共に、海面に立っていただから。

 

「島風より神通。深海棲艦1発見。

 艦種は空母ヲ級フラッグシップ改!」

 

「こちらでも敵艦確認です。

 艦隊単縦陣!砲雷撃戦で仕留めます。全艦、対空防御を徹底しながら接近してください。

 砲雷撃戦が可能な距離になり次第、各自の判断で砲撃を開始してください。

 そして島風!申し訳ないですが一番槍、頼めますか。」

 

「了解!島風、突貫します!」

 

島風はそう言うと、機関出力を上げ、タービンを最大負荷まで回す。

そして、一気に体を加速させようとした、その時である。

 

『一名様ご案内っ!』

 

ザバァ!と、島風の足元に、戦艦レ級が現れたのだ。

 

「なっ!?」

 

唖然とする島風であったが、レ級はそれを無視し

島風の足首を両手でつかみ、一気に海中へと引きずり込んでいた。

 

「うそっ、ちょっ。まっ・・・・ごぼっ」

 

ドボン、という音とともに、島風は海面下へと姿を消していた。

神通達はただただ唖然としてしまっていた。

 

そして、その隙をつくかのうように、今度は神通の足元へと、真っ白な手が伸びていた。

 

『どうも、神通さん。』

 

声をかけられた神通は、声の方向、自身の足元へと視線を向ける。

 

「ヒッ」

 

そこには、真っ白な人の頭が浮いていたのである。

 

『ひどいわね。いきなりビビらないで』

 

「港湾棲姫っ!なんでこんなところに姫級が・・・!」

 

『野暮用よ。本来だったらこんなことはしないのだけれど』

 

港湾棲姫はそういうと、素早い動きで、神通の両足をがっしりと掴んでいた。

 

「えっ・・・ちょっ、まって。港湾棲姫、あなた、何をする気・・・?」

 

『え、ご案内。下に。

 あぁ、ほかの駆逐艦達。神通と島風は明後日には返すから安心して。

 じゃっ』

 

港湾棲姫はそう言うと、神通をゆっくりと、海面下へと引きずり込んでいた。

神通は、真っ青な顔を浮かべると同時に、必死に足を動かして拘束を解こうとする。

 

「わっ!?ちょっと本気なのっ?本当にっ無理っ、ごぼっ。」

 

『諦めなさい』

 

港湾棲姫はそう言うと、潜航速度を一気に上げる。

 

「ごはっ・・・んん!!んー!んー・・・・」

 

ドボン、と海面下に、港湾棲姫と共に、勢い良く神通も沈み込んでしまった。

そして、気づけば深海棲艦の艦載機も、空母ヲ級も消えていたのである。

 

「・・・はっ!神通さん!?島風さん!?」

 

雪風がいち早く意識を取り戻すも、護衛対象のみが海に浮かぶだけである。

そして、残された4隻の駆逐艦は、為す術もなく、佇んでいた。

 




妄想はかどりました。ご案内。
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