自由なエリレさん。   作:灯火011

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神通と島風を強制的に連れ去った港湾棲姫とレ級。
深海棲艦の宴会準備が着々と進む頃、呉鎮守府でも一騒動あったようです。
そして、ついに宴会が始まるようです。


22 そのころの呉鎮守府、そして

呉鎮守府は、久しぶりの鎮守府合同作戦ということもあり

最低限の人員と艦娘を残して、全力出撃を行っていた。

金剛、第六駆逐隊のメンツも、ショートランド泊地へと出向している。

 

「あぁ、疲れたなぁー。ま、輸送作戦も完了したし、一応は一段落か。

 あとは金剛達連合艦隊が敵の主力を破壊しれくれれば、憂いなし、なんだけどなぁ。」

 

ぼそりと呟く提督の眼の下には、うっすらとクマが見て取れる。

ココ数日間は、人員の調整や艦娘の編成、そして他鎮守府との連絡と

全く睡眠が取れていなかった。

そのため、書類整理をしながらも、うつらうつらと、瞼が閉じそうになる。

そして、提督はふいに文字を書いていた手を止めると、ぐいっと背伸びをしていた。

 

「あぁー・・・!ったく眠い!

 一回夜風でも浴びて来るか。このままじゃまともに執務なんてできねぇわ。」

 

提督はそう言いながら、机に備え付けてある電話を取る。

そして、素早い手つきで、居酒屋鳳翔の内線へと電話を繋いでいた。

 

「お、鳳翔。ちょっと頼みが。

 悪いんだけどさ、眠気覚ましにコーヒーと甘いもの頼んだ。」

 

電話の先では、鳳翔がいつもの優しい声で提督へと話しかける。

 

『はい。わかりました。

 丁度羊羹がありますので、持って行きますね。

 お時間はどうしましょう?今すぐのほうがよろしいですか?』

 

「いや、少し眠気覚ましに夜風にあたってくるから、

 そうだな、1時間ぐらい後で頼んだ。」

 

『はい。それでは、1時間後にコーヒーと羊羹をお持ちいたします。』

 

ガチャリ、と提督は電話を切ると、上着を羽織り、早速執務室を後にする。

 

「羊羹か、鳳翔はいつも気が利くよなぁ。本当助かるわ。

 久しぶりに鳳翔を秘書官に指名すっかなぁ・・・・。」

 

提督はぼそりと呟きながらも、歩みを鎮守府の外へと向けていた。

目指すは、いつも提督が釣りをしている、堤防である。

 

 

呉鎮守府の堤防。

レ級達と提督が出会った場所であり、

呉鎮守府の提督が自らの艦娘を出迎える場所でもある。

 

「うぉおおお・・・・空気が刺すなぁ。寒い寒い・・・・。」

 

提督はコートを羽織っているが、それでも海風は、提督の肌を刺すように吹き付けていた。

 

「それにしても、妙な深海棲艦とであっちまったよなぁ。

 レ級に港湾棲姫・・・。まったく。敵意がないってのは逆に厄介すぎだろうよ・・・。」

 

提督の脳裏には、笑顔で酒を煽るレ級と港湾棲姫が思い出されていた。

妙に人懐っこく、人間臭い深海棲艦。

それがレ級と港湾棲姫に対しての、呉の提督の評価である。

 

「まったくなぁ・・・。人型の深海棲艦が撃破しづらいじゃねーかよ。

 今までは、深海棲艦は敵だけと信じてたから躊躇なく戦えてたが・・・。

 他の深海棲艦もレ級と港湾棲姫みてーに話せるとしたら・・・。」

 

----話せば理解できる相手を、力で押さえつけて殺すことになる----

 

提督は言葉にはしなかったが、その顔からは、苦悩が見て取れる。

頭に手を当て、中腰になり、提督は更に言葉を続けていた。

 

「くそがっ。戦争、そう、これは戦争。だから敵は撃破せしめねば。

 ・・・だが、だけど、話して判る相手だ。

 しかもアレは、姿形は違えど

 中身は酒が呑める普通の人間じゃねーか。あぁ・・・くそっ!」

 

提督はぼそりぼそりと呟きながら、苦悶の表情を浮かべる。

艦隊を預かる提督とはいえ、中身はただの若い人間の女性だ。

ここ数日の大規模作戦の疲れと、普段からの重圧が、確実に彼女を蝕んでいた。

 

『人間さん人間さん。

 そこ気にしちゃだめなのです。

 これは戦争だからそこら辺割りきらないと、精神が壊れるのです。』

 

提督はふいに聞こえた声に、がばっと顔を上げる。

すると、提督の目の前には、よく見慣れた「敵」の姿が写っていた。

 

「なっ・・・駆逐イ級・・・だとっ!?」

 

提督は驚愕の表情を浮かべ、一歩身を引く。

駆逐イ級は、そんな提督を見ながら、更に言葉を続けていた。

 

『あぁっ。怖がらないでください・・・っていうのは無理ですね。

 でも、人間さん。これは戦争なのですよ?親しくなったとはいえ敵なのです。

 現に今だって、レ級さんと港湾棲姫様は、

 人間さんが気にしていることなんて気にせずに、作戦行動してるのです。』

 

「そう、なのか?」

 

『なのです。親しい呑み友、戦場での敵。

 これはこれ、それはそれなのです。』

 

駆逐イ級はそう言うと、少しだけ堤防へと船体を近づけていた。

提督は、そんな駆逐イ級を見ながら、口を開く。

 

「これはこれ、それはそれ。か。

 あぁ、戦争だから、仕方ないん、だよな?」

 

『なのです。割り切ることは大切なのです。

 自分の身と心をを守るためにも、覚えておくと良いのです。

 ただ、その葛藤は忘れないでください。

 その葛藤をなくしてしまったら、あなたは人間ではなくなりますから。』

 

駆逐イ級は、提督をつぶらな瞳で見つめていた。

そんなイ級を見ながら、提督は、少し落ち着いたのか佇まいを直していた。

 

「そっか、ありがとう、少し落ち着いたわ。

 ・・・それにしても、駆逐級も交流できるのかぁ。

 まったくもー。やりずらいなぁ・・・。」

 

提督はため息を吐きながらつぶやく。

 

『そうなのです。言葉は通じるのですよ?

 ただ、実際のところ交流ができるのは、

 姫直属の偵察艦ぐらいしかいないのです。』

 

「・・・お前、偵察艦なの?」

 

『なのです。港湾棲姫様の所の偵察艦なのです。』

 

「偵察しに来たの?」

 

『それは違うのです。港湾棲姫様からの命令で、

 これをお届けに来たのです。』

 

駆逐イ級はそう言うと、自身の背中に括りつけられた

発泡スチロールの箱を提督に見せていた。

 

「それは・・・?」

 

『北寄貝なのです。

 鳳翔さんのお酒をおいしく頂いたお返し、って言っていたのです。』

 

提督は深くため息をつくと、今この場にいない港湾棲姫を思い出していた。

 

(あの姫様、無駄に気が効くのか何なのか。)

 

提督はそう思いながらも、北寄貝の入った発泡スチロールを受け取っていた。

そして、中身を確認すると、確かに箱いっぱいの北寄貝がつめ込まれていた。

 

『今朝取れたばかりの新鮮な北寄貝なのです。

 お刺身が美味しいのです。』

 

「はは、ありがとう。

 ・・・全くお前ら、港湾棲姫の周りの深海棲艦はどっかおかしいな。

 私達敵同士だろう?なんでこうも友好的なんだよ。」

 

駆逐イ級は目をパチクリとさせると、ゆっくりと口を開いていた。

 

『んー、そうですね。戦闘中は確かに敵ですが

 こういう時ぐらいは敵であっても、友好的でもいいと思うのです。

 港湾棲姫様もそう言っていたのです。

 っと、それはそうとしまして、ワタシはそろそろ行くのです。』

 

「・・・そっか。うん、またね。

 北寄貝、おいしくいただかせてもらうわ。」

 

駆逐イ級は体を転身させると、ゆっくりと鎮守府の堤防から離れていく。

 

『あ、そういえば一つ聞くの忘れていたのです。』

 

「どうした?」 

 

『人間さんと艦娘さん、岩牡蠣は食べれるのです?』

 

「岩牡蠣・・・?あぁ、うちの鎮守府の連中は好き嫌いないからな。」

 

『わかったのです。次は岩牡蠣いっぱい持ってくるのです。

 それじゃあ、人間さん。また、なのです。』

 

駆逐イ級はそう言うと、体を水面下へと沈めていった。

 

「岩牡蠣かぁ。生でちゅるっと・・・ってまて!

 なんで深海棲艦がここまでノーマークで来れてんだよ!?

 いや、北寄貝貰ったのは、すっげぇ嬉しいけどさぁ!」

 

提督は呆然とその姿を見送っていたが、ふと我に帰り、大声で叫びをあげるのであった。

 

 

 

島風と神通は、今、混乱の極みにいた。

コロネハイカラ島への輸送部隊の護衛任務を終え

帰還途中に、いきなり海面下に引きずり込まれた挙句に、

気づけば、なぜか炬燵に入っていたのである。

 

そして、更に彼女たちを混乱させることが目の前で起こっていた。

 

「えぇと、ごめんなさい。

 今お酒はウィスキーしかないの。

 えっと、呑み方はどうする?」

 

敵の親玉の一隻である、港湾棲姫が

エプロンを羽織り、グラスと酒瓶を持って、

神通と島風に話しかけていたのだ。

 

「「えっ、あっ、えっと・・・」」

 

目が点になっている島風と神通。

その2隻を尻目に、いつの間にか現れた頭の艤装を外し、ツナギを着込んだ

空母ヲ級と呼ばれる深海棲艦が静かに、かつ迅速に

島風と神通の入っている炬燵めがけて、自然に足を突っ込む。

 

「あぁー、ぬっくいですねー。

 夜風にあたったあとの炬燵はこんなにも魔性の道具でしたかー。」

 

「「・・・!?」」

 

神通と島風は更に目が点になる。

そして、そんな2隻を気にせずに、ヲ級は港湾棲姫へと口を開いていた。

 

「で、港湾棲姫様。

 一杯目は乾杯しますし、オーソドックスにハイボールでいいんじゃないですか?

 レ級さんのおかげで在庫いっぱいありますし」

 

「そうね。まずは乾杯からかしら。

 それじゃあ、作るからちょっと待っててね?」

 

港湾棲姫はそう言うと、炬燵に置かれた6個のグラスに

氷を入れていく。カラン、カランといい音をさせるグラスには

さり気なく「港湾」と彫り物がしてあった。

そして、氷をグラスに入れ終わると、

竹鶴のボトルからウィスキーをグラスに注ぎ込む。

その量は、おおよそグラスの3分の1。少し薄めだ。

そして、港湾棲姫は直前に作っておいた炭酸水を、

竹鶴の入ったグラスにゆっくりと注ぎこむと

炭酸が飛ばないように、マドラーで、ゆっくりとかき混ぜる。

 

「はい、神通と島風の分ね。あとヲ級も。

 おつまみももう少しでくるから、ちょっとまってて」

 

スッと出された竹鶴のハイボールのグラス。

島風と神通は、グラスを見つめたまま、完全に固まっていた。

 

(じ、神通さん、・・・これどういう状況なの?)

(わ・・・私に聞かないで。私も一杯一杯で、なにがなんだか・・・)

 

辛うじて会話を交わすも、神通と島風は為す術はない。

そして、更に2隻を混乱させる事態が襲いかかる。

 

「みんなー、とりあえずポテトチップスとソーセージ、

 あと唐揚げにほっき貝の刺し身、あと生岩牡蠣出来たよー。

 あっ、神通、島風、気づいたかー!とりあえず食え呑めー!」

 

「自信作よ。これで不味いとか言ったら沈めるわよ・・・!」

 

皿を持った戦艦レ級と、あろうことか先ほど戦った軽巡棲姫が

隣の部屋から、大皿を持って大声を出しながら入ってきたのである。

そして、炬燵へと料理を置くと、これまた自然に、炬燵へと足を突っ込んだのである。

 

港湾棲姫、戦艦レ級、空母ヲ級、軽巡棲姫、神通、島風。

6隻が、港湾棲姫の要塞執務室に、揃った形である。

ただ、その姿は異様だ。港湾棲姫、戦艦レ級、空母ヲ級、軽巡棲姫は武装解除。

神通と島風も、いつの間にか武装が外されていた。

そう、この深海棲艦と艦娘は、武装解除した状態で

炬燵に入っているのである。

 

「それじゃあ揃ったことだし、まずはハイボールで乾杯しましょうか。

 では、各自グラスを持って。」

 

港湾棲姫は全員が席についたことを確認すると、グラスを持つように促していた。

深海棲艦はもちろん、流れに身を任せるしか無い艦娘も、なんとなくグラスを持っていた。

 

「持ったわね。それじゃあ、そうね。

 軽巡棲姫、音頭をお願い。」

 

「・・・妬ましい、けど、せっかくの酒の席。呑むことにします。

 ワタシ・・・いえ、神通、島風。

 今日は飲み明かしましょう。姫様、レ級、ヲ級。

 この場を用意していただいてありがとうございます。 

 ・・・それでは、乾杯っ!」

 

軽巡棲姫の音頭に合わせ、港湾棲姫とレ級、ヲ級が叫ぶ。

 

「「乾杯ー!」」

 

そして、神通と島風も、合わせるように口を開いていた。

 

「「・・・乾杯?」」

 

島風、神通、困惑の極みである。

島風に至っては、最速どころか完全に固まっている。

 

「あの、すいません。いろいろ質問したことがあるのですが・・・

 とりあえず一つだけ。私達も、呑む、のでしょうか?」

 

神通はグラスを両手で持ちつつも、困惑しながら港湾棲姫に話しかけていた。

港湾棲姫は、神通を見ながら、グラスを掲げつつ、笑顔で口を開く。

 

「ええ、どうぞ、召し上がれ。

 大丈夫よ。毒なんて入ってないわ。」

 

港湾棲姫はそう言うと、ゴッゴッと喉を鳴らし、自分のグラスを一気に空けていた。

そして勢い良くグラスを炬燵に置く。

 

「・・・アァッ!竹鶴はやっぱり美味しいわっ!」

 

港湾棲姫は笑顔で叫んでいた。それに続くように、レ級、ヲ級、軽巡棲姫も

一気にグラスを空け、笑顔で大声をあげていた。

 

「美味しいー!」

 

「美味しいですねぇ!レ級さん最ッ高です!」

 

「ックゥー!取って来たかいあったわー!」

 

神通は美味しそうに酒を煽る深海棲艦をただただ見つめていた。

神通も実際は酒が好きである。特にウィスキーには目がない。

そんな神通の前に、敵であるとはいえ美味しそうにウィスキーを呑む奴がいる。

 

「・・・美味しそうですね」

 

神通はそう呟くと、自分の持っているグラスを一気に煽っていた。

 

ゴッゴッゴッゴッ

 

神通の喉から、勢いのよい音が響いていた。

 

「・・・!?神通さんっ!?ダメッ!」

 

固まっていた島風であったが、神通の飲みっぷりに気づいたのか

焦った声をあげていた。なにせ、敵からの飲物だ。

何か仕込まれていて当たり前と思うのが普通である。

 

「・・・ップハァー」

 

「おぉ、良い飲みっぷりだなぁ。神通!」

 

「私、やるわね・・・!」

 

だが時はすでに遅し。神通は、ハイボールを完全に飲み干していた。

そして、島風を一瞥するも、すぐに港湾棲姫に視線を向け、口を開く。

 

「港湾棲姫さん。もう一杯。今度は濃い目でお願いします。」

 

「ん。」

 

港湾棲姫はそう言うと、神通からグラスを受け取り氷を入れなおすと、

今度はグラス半分までウィスキーを入れていた。

 

(・・・呑んだところ、本当に竹鶴のウィスキーのハイボールでしたね・・・。

 あぁ、なんでしょう。この状況。

 深海棲艦が酒を飲む?私達艦娘と?御摘みも彼女たちが作る?

 しかもお酒は美味しい・・・・あぁ、考えるのが馬鹿らしくなってきました・・・。)

 

神通はそう考えると、島風の方に顔を向け、口を開く。 

 

「島風、これはただのお酒です。

 タダで飲ませてくれるというのです。理由はどうあれ、呑みましょう。」

 

「神通さん!?」

 

神通、ヤケクソである。

そして、神通は炬燵に置いてあった、岩牡蠣を手にとっていた。

 

(これは見事な・・・)

 

神通の口に収まらないぐらいの巨大な岩牡蠣だ。

そこに、もみじおろしと、万能ねぎ、そしてポン酢がかかっている。

 

「美味しそうですね・・・」

 

「美味しいぜ。さっき取って来たばっかりだしな。」

 

レ級は自慢気に、胸を張って神通へと言葉をかけていた。

 

「それでは、いただきます。」

 

神通はそう言うと、岩牡蠣を口に流し込む。

無理やり一口で口に入れた神通は、岩牡蠣を噛む。

すると、噛んだ瞬間に、濃厚な磯の香りと、

ミルクのような濃厚な旨味が、神通を襲う。

 

「・・・!」

 

あまりの美味しさに、神通は目を見開いていた。

噛むたびに、牡蠣の更に奥から濃厚な旨味がどんどんとあふれていた。

 

そして、ちょうどそのタイミングで、

港湾棲姫が濃い目のハイボールを神通の前へと差し出していた。

 

神通はそれを受け取ると、そのままグラスを口に運び、ハイボールを呑む。

すると、牡蠣の旨味とウィスキーの香りが絡み合い、

神通の体がビクッと跳ね上がっていた。

そして、しばらくハイボールと牡蠣を楽しんでいた神通であるが、

 

「あぁっ・・・・・美味しい・・・・!最高っ!」

 

満面の笑みを浮かべた神通は、敵の目の前ということを忘れ、

ため息を吐くようにつぶやいていた。




妄想はかどりました。これはひどい。
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