自由なエリレさん。   作:灯火011

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神通と島風を強制的に宴会に参加させたレ級と港湾棲姫。
混沌とした時間は、まだまだ続くようです。


23 宴会、そして2次会の予感

島風はハイボールをちびちびと煽りながら、目の前の惨状を観察する。

 

「ほらぁ!私ぃ!もっと、もっと呑むのよぉ!」

 

軽巡棲姫が、竹鶴の瓶を無理やり神通に咥えさせようとしていた。

 

「んごふっ!ちょっとまっ、んごっ、ゲフッ。

 私っ、ちょっとまっ、んぐっ!んー!・・・!」

 

神通の抵抗むなしく、瓶は神通の口の中にしっかりとセットされていた。

そして、軽巡棲姫が少し瓶を振ると、恐ろしい速度で神通の胃の中に

竹鶴ウィスキーがストレートで約2L、叩き込まれる。

 

「んー!んー!ごはっ・・・!」

 

そして、わずか10秒程度でウィスキーを叩きこまれた神通は

涙目に成りながら、軽巡棲姫を睨んでいた。

軽巡棲姫はといえば、2本目の竹鶴の瓶を持ち、ニヤニヤと佇んでいる。

 

「なぁにぃ?深海棲艦の私に、艦娘である私がまけちゃうのぉ?

 お酒よわいのぉ?だめじゃない神通ぅー!」

 

「・・・げほっ、舐めないでください。

 闇に落ちた私なんかに、私が負けるわけないです!」

 

神通はそう言うと、目にも止まらぬ速さで

軽巡棲姫から竹鶴の瓶を奪うと、そのまま軽巡棲姫の口へと

竹鶴の瓶を突っ込んでいた。

 

「んごふっ!んー!?んー!」

 

「練度ではこちらが上、です。

 先程は牡蠣の美味しさに油断していました、が!

 軽巡棲姫、あなたに負ける道理はありませんよ!」

 

神通はそう言うと、先ほどの軽巡棲姫と同じように瓶を振る。

すると、軽巡棲姫の胃袋に、2Lのウィスキーが叩き込まれる。

 

「んー!んー!げほぁっ!」

 

キュポン、といい音をさせて、神通は竹鶴の瓶を軽巡棲姫から引き抜く。

そして、良い笑顔を浮かべて、軽巡棲姫へと話しかけていた。

 

「わかりましたか?私。いえ、軽巡棲姫。

 練度は私のほうが上なんですよ。

 いいですか?私を潰したいなら・・・・」

 

神通は部屋の隅においてあるレ級のボストンバックを引っ張りだすと

その中から、角瓶を2本取り出し、炬燵の上に置いた。

 

「・・・正々堂々、呑み比べましょう。

 あなたが私に対して何を思ってるかは知りませんが

 気が済むまで、呑みましょう!」

 

「・・・はっ!言ったな私!いや、神通!

 あんたが私と同じ存在なのに、艦娘であることが気に喰わないのよ!

 いいわ、この思い、今日ここで全部ぶつけてやる!」

 

「来なさい!受け止めて差し上げます!」

 

神通と軽巡棲姫は、そう叫び合うと

全く同じタイミングで角瓶を握りこみ

勢い良く、喉にウィスキーを流しこむのであった。

 

「いいですねぇ!軽巡棲姫さん!神通さん!

 セコンドはこのヲ級におまかせください!」

 

「・・・神通さん・・・・。

 もう、これ、なに?どういうことなんだろう・・・?」

 

島風は、無表情のまま、神通と軽巡棲姫の呑み比べを見ながらつぶやく。

 

「島風ぇ。気にしちゃダメだって。

 せっかく酒とツマミ用意したんだし、呑め呑め。」

 

島風にレ級が話しかけていた。

手にはもちろん、角のロックが握られている。

 

「・・・レ級、でも、私達と貴方達って敵でしょ?

 なんでこんなことしてるの?」

 

島風は無表情のまま、レ級へと問いかけていた。

レ級はロックを一口煽ると、首を傾けて少し考える。

 

(正直に軽巡棲姫の恨みを無くすって言ったらダメだなぁ。

 ま、適当に言っときますかねー)

 

レ級はそう思うと、島風をにやりと見る。

 

「んー、酒が手に入ったし、この拠点の周り貝がいっぱいとれるんだよ。

 ウチら深海棲艦だけで食っても仕方ないだろ?」

 

「ん、あぁ、貝?・・・・うん?そう、そう?」

 

困惑する島風に、港湾棲姫が言葉をかける。

もちろん、エプロン姿で酒を作りながら、である。

 

「そうよ。今日は敵味方関係なく、呑みたかったの。

 島風、さっきから固まってないで、神通を見習って食べて呑みなさい?

 それに、貴方達の作戦は成功したのでしょう?憂いなしじゃないの。」

 

港湾棲姫はそういうと、呑み比べをしている神通と軽巡棲姫を指差していた。

 

(私ぃ!まだまだぁ!次はボウモアっ!)

(負けませんっ!一気です!ついてきなさい、私!)

 

島風は、神通を見ながらため息を一つ付き、ハイボールに口をつける。

 

(・・・この深海棲艦達に常識ってないのかなぁ・・・。

 っていうか、神通さんも、もしかして相当溜まってた・・・?)

 

そして、島風はそう思いながらも、仕方なく、北寄貝の刺し身に手を出すのであった。

 

「あっ、北寄貝、すごく美味しい・・・!」

 

口の中に広がる磯の香り、そして程よい食感。

新鮮な北寄貝独特の、臭みのない旨味。

島風は思わず、2切れ、3切れと北寄貝をつまむ。

 

そして、ふいに隣に置いてある岩牡蠣を一つ、手にとった。

 

「おぉ、でっかい・・・!」

 

今まで驚きのあまり、酒とツマミに無関心であった島風であるが

美味しい北寄貝とお酒に、少し、気を許しつつあった。

 

「でっかいぜ?うまいぜ?

 ハイボールとも合うんだぜ?」

 

レ級はそう言いながら、牡蠣を持つ島風を尻目に

勢い良く牡蠣を口に流し込み、そのままハイボールを煽る。

 

すると、レ級は身悶えるように目を閉じ、拳を握っていた。

そして、次の瞬間レ級は目を開くと、大声で叫んでいた。

 

「んーーーー!最ッ高!ダー!

 ほら、島風も食えって!」

 

「う、うん!いただき、ます!」

 

島風は意を決して、生岩牡蠣を口の中に放り込んでいた。

すると、放り込んだ瞬間に、濃厚な磯の香りが口の中に広がる。

そして、牡蠣を噛むと『海のミルク』と呼ばれる牡蠣の

濃厚な旨味が島風の口に襲いかかっていた。

 

「んー!」

 

島風、満面の笑みである。

美味しいお酒と、美味しい食事に、ここが敵地であるということを

すっかり忘れ去ったようである。

 

そして、ある程度牡蠣を食べたところで

島風はウイスキーのハイボールを煽っていた。

 

ゴッゴッゴッゴッ!

 

遠慮無く島風の中に収まっていくハイボール。

そして、グラスを空にすると、島風は笑顔で叫んでいた。

 

「うっまーい!最高ぅー!

 港湾棲姫!もう一杯!濃い目で!」

 

「はい。喜んで。」

 

港湾棲姫は島風から渡されたグラスに、氷を詰め込み

素早くハイボールを作っていた。

 

「島風ぇ、良い呑みっぷりだなぁ・・・!」

 

「ふふっ、レ級、私は最速だよ?

 お酒とおつまみを楽しむ速度だって、速いんだから!」

 

「ほぉ!?それじゃあ島風、飲み比べるか?

 私も速いんだぜ!?」

 

「へぇ・・・レ級、いいよ。

 深海棲艦なんかに、負けないんだから!」

 

「言ったな島風ぇ!たかだか駆逐艦に戦艦が負けるかよぉ!」

 

「言ったね!?それじゃあ、レ級。ボウモアの呑み比べでいい?

 いっぱいあるし。」

 

「おうよ!」

 

島風とレ級は、そう言い合うと、まったく同時に、

レ級のバックからボウモアを取り出し、お互いの目の前に瓶を置く。

 

その光景に、思わず、港湾棲姫は島風に声をかけていた。

 

「あの、島風、無理はしないほうが、

 ハイボールもあるわよ・・?」

 

レ級の酒の強さは本物である。

それ故に、港湾棲姫は、島風の心配したのである、が。

 

「お願い!ハイボールは後で呑むから!

 私は何事も最速じゃないと気が済まないの!」

 

そして、同時にボウモアの瓶の栓を抜くと、

レ級と島風は港湾棲姫へと叫んでいた。

 

「「港湾棲姫!スタートの合図!」」

 

港湾棲姫は、困った顔でレ級と島風を交互に見る。

港湾棲姫の目に映るレ級、島風共に、真剣な顔であった。

 

「どうなっても知らないわよ?

 ・・・じゃあ、呑み比べ、スタート」

 

真剣な目で、顔で見つめられた港湾棲姫は、仕方なく、スタートの合図を切る。

 

「「っしゃぁー!」」

 

ゴッゴッゴッゴッゴッ!

レ級と島風が持つボウモアの瓶の中身が恐ろしい速度で、減っていく。

 

「・・・まぁ、こんな日もあっていいわよねー。

 あ、そうだ、カキフライ作ろうかな。」

 

港湾棲姫は、呑み比べを続ける4隻を尻目に

執務室の隣の部屋「台所」へと足を向けるの出会った。

 

 

「神通と島風が連れて行かれた、デースか」

 

「えぇ、先ほど帰還した護衛艦隊からの情報です。

 戻ってきたのは雪風以下駆逐艦4隻のみ。

 神通と島風は、いまのところ未帰還です。」

 

ショートランド泊地、臨時司令室。

そこでは、呉所属の戦艦金剛と、横須賀所属の大和が

食事を採りながらも、会話を続けていた。

 

「ムー。作戦成功、かと思ったら最後の最後でこれデースか。

 それで大和、他に情報はないのデースか?誰に連れて行かれた、とか。」

 

金剛は本日の食事である野菜炒め定食を食べながら大和に話しかけていた。

シャリシャリ、と野菜の心地よい音が響く。

 

「あります。

 『2日後には返す』と、雪風達に、拉致していった深海棲艦が言い放ったそうです。

 これは眉唾だと思うのですが、帰還した駆逐艦隊の証言です。」

 

大和は本日のカレー、南国風味のカレーを頬張りながら

シャリシャリと野菜炒めを食べる金剛に話しかける。

 

「ムー、やっぱり料理は鳳翔が一番デースねぇ・・・。

 それにしても、『2日後には返す』デースか。妙な深海棲艦デース。

 それで、それを言った深海棲艦はどの艦種なんデースかね。」

 

野菜炒め定食を食べ終わった金剛は、紅茶をすすりながら

未だカレーを食べている大和へと話しかける。

 

「うーん、間宮さんのカレーがやっぱりいいなぁ・・・。

 えっと、これもまた眉唾ものなんですけれど

 雪風達いわく、『港湾棲姫』と『戦艦レ級』だったらしいです。」

 

ゴンッ!

 

大和がそういった瞬間、金剛は頭を机に叩きつけていた。

驚く大和を尻目に、金剛はゆっくりと頭をあげる。

 

「金剛、さん、どうされました?

 いきなり頭を打ち付けて・・・。」

 

「ノープログレム、です。大和。

 ナルホドネー。港湾棲姫と戦艦レ級、デースカー。」

 

金剛は頭のなかで、呉鎮守府でさんざ呑明かした

港湾棲姫と戦艦レ級を思い出していた。

 

(・・・港湾棲姫と戦艦レ級。もしかして・・・・?)

 

「大和、申し訳ないですが、用事を思い出しました。

 また後で。」

 

金剛はおもむろに席を経つと、片手を上げ、

急ぎ足て食堂をあとにしようとする。

大和は焦りながらも、金剛に手を振りながら、口を開いていた。

 

「あ、はいっ。また後で。

 それにしても、神通と島風、無事だと良いのですが・・・」

 

「デースね。まぁ、おそらく大丈夫だと思いマスよ。

 それじゃあ、また後で」

 

金剛はそう言うと、大和を残し食堂をあとにしていた。

 

 

金剛はショートランド泊地から、単艦にて、静かに出撃する。

司令官には、「神通と島風の所在について心あたりがある」と伝え

無理やり説き伏せた形である。

 

「ムー。それにしても、港湾棲姫と戦艦レ級の組み合わせ。

 間違いなく呉に飲みに来た姫とレ級で間違いないでしょうネー。」

 

金剛はソロモンの夜を、ただ一人進む。

深海棲艦も、艦娘もいない、静かな海である。

そして、金剛はまっすぐ前を見ると、笑みを浮かべ、大声で叫んでいた。

 

「神通と島風のいる場所、可能性はただ一つデース。

 今回の作戦で、唯一稼働していた敵の要塞。

 コロネハイカラ島近くの、要塞。

 輸送作戦に関係ないと見逃していました、が

 姫級が潜むとしたら、間違いなく、あそこデースね。」

 

そんな金剛の手元には、大きなボストンバッグが2つ。

片方には、缶詰がたらふく詰め込んであり、

片方には、ビールと日本酒が詰め込んである。

 

「さぁ、レ級、港湾棲姫っ。

 待っているのデース!今度はこっちが呑みにいくのデースよー!」

 

金剛はそう叫ぶと、右手を高く掲げ、

コロネハイカラ島へと進路を向けるのであった。




妄想はかどりました。

これは、ひどい。
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