自由なエリレさん。   作:灯火011

25 / 36
神通と島風と呑み比べをし始めたレ級達は、すっかり酔いつぶれご就寝。
そして、気づけば金剛たちが合流していたようです。


24 交流する船達

国民は熱に浮かれ、軍部に声援を送る。

出撃する連合艦隊、華やかな航空機達。

 

希望を、見た

 

真珠湾攻撃成功。米国相手に、我々大和の民は大勝を喫したのだ。

希望を、我々は確かに希望を見たのだ。

 

襲いかかる航空機、燃え上がる空母達。

熟練兵の航空機が次々と落とされ、残されるのは新兵のみ。

制空権を失い、次々に爆撃される軍船。

 

次々と肉片となる同胞達。

 

・・・・地獄を、見た。

 

敵国に蹂躙され、守るべき物が次々と消え去っていく。

そう、確かに我々は、地獄を見たのだ。

 

我々を血肉として、国が再建されていく。

世界から戦が消え、敵であった国とも、平和な日常を過ごしている。

 

我々は、希望を、確かに見たのだ。

 

世界な平和は、確かに訪れたのだ!

こんなに嬉しいことはない。

なぜならば、我々は、このために、このために戦ったのだ!

 

 

平和なはずの世の中。

なぜ、世界では争いが起こるのだ。

我々は、こんな世の中にならないようにと、

地獄を這いつくばりながら、血反吐を吐きながら戦ったはずだ。

 

そう、我々は平和のために戦ったのだ。

それであれば、今、この世界にとって

地獄を見た、我々の行動は、何一つ、無意味ではないか。

 

それならば、それならば。

 

・・・我々は、今一度、立ち上がろう。

人間が、世界が一つに纏まらざるをえない、強大な敵となろう。

現世を生きる、全ての世界の共通の敵として、我々が立ち上がろう。

 

希望を、絶望を、地獄を、共に見続けた我々だからこそ。

人間の平和のために、我々は立ち上がろう。

 

さぁ、各々方。準備はよろしいか。

 

いざ行かん。大海原へ。

敵対した過去は忘れ、我々は、今を生きる人間のために、立ち上がるのだ。

 

・・・なぁ、戦艦○○、貴様もだ。思う存分に力を振るうが良い。

 

「応。私の力が人間のために使えるのなら、こんなに嬉しいことはない。

 トコトンニマデ付キアッテヤル。

 

 イクゾ戰場ヘ。イクゾ、我ガ、我ラガ理想ノタメニ!」

 

 

戦艦レ級はコタツに入ったまま、ゆっくりを目を開ける。

 

「・・・なんだ今の。」

 

島風と酒を呑みまくったからか、

レ級の体は、すこしばかり寝汗をかいていた。

 

「なーんか変な夢見たな・・・。

 ふぅあ・・・呑みなおそ」

 

むくりと体を起こしながら、首をゆっくり回すと、

完全に酔いつぶれた島風が、気持ちよさそうに寝ている姿が目に入った。

 

戦艦レ級は、珍しく穏やかな笑みを浮かべると、島風の頭を撫でる。

 

「まだ、負けないんだからぁ・・・。」

 

「・・・即効で潰れたじゃねーか島風ぇ、って、寝言かっ。」

 

島風は眠ったまま、身じろぎをしながらも、レ級の手を受け入れているようであった。

そしてレ級は、そのまま更に周りを見回していた。

神通と軽巡棲姫の姿は、執務室には無い。

 

「美味しい料理デースねぇ。

 港湾棲姫の料理って、鳳翔にも劣らない料理デースよー!」

 

「だね。・・・それにしても、港湾棲姫にヲっちゃん。

 酒は持ってきたけど、こんなにごちそうになっていいのかい?」

 

「いいのいいの、気にしないで。前呉鎮守府でごちそうになったし。

 なにより、響にはヲ級も世話になっているしね。」

 

「響さん。港湾棲姫様の言うとおり、気にしたら負けですよー!

 ほら、ほら、レ級サンが準備した生牡蠣も美味しいんですから!

 遠慮せずに!金剛さんも!」

 

その代わりに、サクリサクリとカキフライを食べつつ

イギリスのエール、ボディントンを煽る港湾棲姫と空母ヲ級、

 

そして、戦艦金剛に駆逐艦響もエールを片手に、

カキフライと生牡蠣を食べながら、炬燵に入っていた。

 

「あら、レ級。おはよう。」

 

「レ級さん、おはようございますー。」

 

港湾棲姫とヲ級は、酒とツマミを頬張りつつも

体を起こし、首を傾けているレ級に声をかけていた。

 

「はようございます。姫、ヲ級。

 金剛と響が自然に呑んでるけど・・・・どういう状況?」

 

「それがですねー。レ級さん。

 先ほど港湾棲姫様と、外で空を見て酒を呑もうと思ったんですよ。

 そうしたら、金剛さんと響さんがこの拠点に向かってきていまして。」

 

「しかも、ボストンバックを抱えて。

 事情聞いてみたら、神通と島風の様子を見に来るついでに

 呑みに来た。って言われたから、ここに通したの。ビールも持ってきてくれたし。」

 

港湾棲姫はそう言うと、金剛を指差す。

金剛はレ級に気づいたのか、酒で少し赤くなった顔をレ級に向け、口を開いていた。

 

「起きたのデースね!レ級!可愛い寝顔、ありがとうございマース!

 それはそうとしてデースね!前の秋刀魚のお返しに、缶詰とビール持ってきたでーすよ!

 あとついでに、途中で哨戒してた響も連れてきたデースよ!」

 

「・・・半ば無理やりだけどね・・・。レ級、おはよう。金剛さんと同じ呉鎮守府の響だよ。

 そこのヲ級とも少し交流があるんだ。」

 

響はそう言うと、岩牡蠣をチュルリと口に放り込んでいた。

そして、エールビールをごくごくと、たやすく飲み干していた。

 

「うん、美味しい牡蠣だね。深海棲艦って、こんな美味しいもの食べてるんだね。」

 

「んー、響さん。そうでもないですよ。

 美味しいもの食べてるのは、我々港湾棲姫様の一派と、あと極小数の深海棲艦だけです。

 私としては非常に勿体無いことなんですけどねー。」

 

ヲ級はそう言うと、サクサクとカキフライをつまんでいた。

岩牡蠣のカキフライ。とても大きくてジューシーである。

 

「そうなのデースか?こんなにおいしい牡蠣、私達だったら毎日食べちゃいマースよ。

 むぅ、深海棲艦って勿体無いデース。」

 

金剛もそう呟きながら、カキフライに、タルタルソースを掛け、サクサクと食べる。

 

「オォフ・・・ジューシーで濃厚デース。

 それにタルタルソースもさっぱりしてて美味しいデース。」

 

金剛はそう言うと、笑顔でエールを煽っていた。

 

「ックゥー!美味しいッデース!

 炬燵もあったかくて言うこと無しデース。

 出来ることなら、提督も連れて来たかったデースよー。」

 

「あぁ、それなら心配ないわ、金剛。

 深海側で取れた新鮮な北寄貝と岩牡蠣。

 駆逐イ級に言って呉鎮守府に届けさせてるから。

 そちらはそちらで楽しみなさいな。」

 

金剛は目を見開くと、港湾棲姫を見つめていた。

が、次の瞬間、にへらと表情を崩すと、

港湾棲姫の手を握り上下にぶんぶんとふっていた。

 

「流石デースよ!港湾棲姫!

 帰ったら早速提督と楽しませていただきまーす!」

 

「えぇ、好きなだけ食べて。

 足らなかったら、イ級に言えばいいわ。届けさせるから。」

 

「判ったデース!提督にも伝えておきマス!」

 

金剛はそう言うと、新たにカキフライをつまむ。

レ級は、さくりさくりと美味しそうにカキフライをつまむ金剛を

呆れたような顔で見つめていた。

 

「・・・っていうか金剛に響、自由すぎじゃね?」

 

そんなレ級を見ながら、港湾棲姫は呆れ顔を浮かべながら

レ級にエールの缶を手渡していた。

 

「貴女が言えたことじゃないわ。レ級。

 とりあえず、金剛の持ってきたエールよ。美味しいから呑んだら?」

 

港湾棲姫の言葉に、レ級はバツの悪そうな顔を浮かべ

港湾棲姫から差し出されたエールを煽る。

 

「クリーミーで美味いな、これ。

 ・・・そういえば港湾棲姫。ジンツウ達は?」

 

レ級はそういいながら、カキフライを手にとっていた。。

タルタルソースをたっぷりと付け、口に運ぶ。

 

サクリ。

 

心地よい衣を砕く音がレ級の口から響き渡ると

レ級の口の中に、アッツアツの牡蠣のミルクが滲み渡っていた。

 

「うんまっ・・・!」

 

「ふふ、生もいいけど、揚げもいいわよね。

 と、それはそうと、ジンツウ達はドック、もとい風呂に行ってるわ。」

 

港湾棲姫はレ級を見ながら口を開いていた。

 

「あふっ。うまっ、あふっ・・・。」

 

レ級はそれどころではない。熱々のカキフライが口の中で踊っているのだ。

そして、レ級は片手に持っているエールを、一気に飲み干す。

 

「ックァー!たまんねぇ!

 金剛、いいエール持ってきたなぁ!最高だこれー!

 ・・・それにしても、ジンツウ達、風呂かぁー。」

 

「そ、お風呂。【語りたいから!】って仲良くね。」

 

港湾棲姫は呆れ顔で、レ級に口を開いていた。

続くように、ヲ級も口を開く。

 

「ですねぇー。結局呑み対決も決着出来ませんでしたし。

 でも、いい顔してましたよ。

 あ、金剛さん。コンビーフの缶詰美味しいです。 

 レ級さんも食べるといいですよぉ!」

 

「おっ、それじゃあ一個もらうわ!

 金剛、いただきまーす。」

 

「はいデース!どんどん食べてくだサーイ。

 あ、あと鯖缶とかもありマスよー!」

 

金剛は、そういいながら、コンビーフと鯖缶の缶詰をレ級に差し出していた。

レ級は缶詰を受け取ると、モッキュモッキュと勢い良くコンビーフを喰らいつつ、エールを煽るのであった。

 

 

 

コロネハイカラ島近くの深海棲艦の要塞には

港湾棲姫の一存で、呉鎮守府のドックを元にした、風呂形式のドックが実装されている。

 

深海棲艦では初のお湯のドックである。

 

そんなお湯のドック、言ってしまえば露天風呂付きの風呂。

そこに、姿形がよく似ている2隻の船が、のんびりと浸かっていた。

 

「はぁぁー。最高です。こんなのないです。」

 

「私・・・いえ、神通も苦労しているのですね。

 それにしても、御湯のお風呂は最高です。」

 

声もほとんど同じ2隻。

健康的な黒髪に、少し日焼けをした肌の神通に

漆黒のような黒髪に、不気味なほど真っ白な肌の軽巡棲姫である。

 

「苦労、といえば、そうですね。

 いつも深海棲艦との戦いに、頭を痛めています。

 貴女のように、気楽にお酒を呑める日はほとんどないです。」

 

「むっ。言い方にトゲがありますね、私。

 でも今日は思いっきり呑んでましたよね。深海棲艦と一緒に。

 それは良かったんですか?」

 

神通は顔を軽巡棲姫に向けると、苦笑を浮かべていた。

 

「・・・今日はその、あまりに常識はずれな事がおこりすぎたので・・・。

 言葉が通じる深海棲艦に、酒を飲む深海棲艦。

 それに・・・・。」

 

神通は一旦言葉を区切る。そして、真面目な顔で軽巡棲姫を見つめていた。

 

「深海棲艦となった私とも出会いましたから。

 私のいろいろなものが揺らいだんです。

 こんな日ぐらいは、何も考えずに呑みたかったんですよ。

 そうでなければ、私は呑み比べなんてしません。」

 

軽巡棲姫はそんな神通を見返しながら、口を開く。

 

「結局呑み比べ、勝負つかなかったですけれどね。

 それにしても私。難しいことを考えていたのですね。」

 

「それはそうです。だって、深海棲艦は謎の敵。

 私達艦娘と、人類の共通の敵、だったはずなんです。

 でも、今日出会った深海棲艦・・・あなた達はお酒を呑んで

 楽しくしてるじゃないですか。端からみると、それはまるで・・・・」

 

---艦娘と、人間と全く変わりがないじゃないですか----

 

「それに、私が・・・深海棲艦として存在している。

 もう、訳がわからないんです。」

 

神通はそう言うと、静かに目を閉じていた。

 

「ふーん、そうですか。

 案外私、馬鹿なんですね。」

 

軽巡棲姫は小馬鹿にした声で、神通に言葉を投げる。

 

「私、私は貴女が憎かった。だから人間と艦娘を攻撃しようとした。

 でも、貴女は人間が好き。だから守る。それでいいんですよ。

 単純な話じゃないですか。」

 

軽巡棲姫はドヤっとした表情をしながら、神通に顔を向けていた。

神通は思わず目を見開き、軽巡棲姫に叫ぼうとする。

 

「そんな簡単な話では・・・!ムグッ・・・」

 

軽巡棲姫は素早い動きで、叫ぼうとした神通の口元を押さえつけていた。

 

「簡単な話なんですー。っていうか私。

 精神が脆すぎますよ?気にしすぎです。

 あなたは艦娘で、私は深海棲艦。

 割りきって戦って、戦い以外では楽しく呑む。

 それでいいじゃないですか!」

 

笑顔でそう言い切ると、神通の口から軽巡棲姫はゆっくりと手を離す。

神通は苦笑を浮かべると、軽巡棲姫を見ながら口を開いていた。

 

「私、貴女は、それでいいんですか?私が憎かったのでは・・・」

 

「いいんですよぉ。戦争ですし。気に入った、気に入らないとは別の争いなんです。

 っていうことで、呑みましょう。

 実はボウモア、2本持ってきてあるんですよー。」

 

軽巡棲姫はそういいながら、傍らに置いてあったボウモアを一本、

笑顔を浮かべつつ、神通に差し出していた。

神通は戸惑いながらも、ボウモアを受け取る。

 

そしてお互いに瓶の栓を取ると、瓶を高く掲げていた。

 

「艦娘の私。先に礼を言っておきますね。

 あなたに憎しみをぶつけるあまり、私は周りが見えていませんでした。

 ですが、思いっきり貴女と呑めて生まれ変わった気分です。」

 

「礼を言われる筋合いはないのですが・・・。

 それはそうとして、深海棲艦の私。

 戦場で出会ったら、次は容赦なく叩きのめします。

 それまでに、ちゃんと練度を上げておいてくださいね?」

 

軽巡棲姫と神通はお互いを睨みつける。

そして、全く同じタイミングで表情を崩し、笑顔で口を開いていた。

 

「あはは!言われなくても!必ず私を沈めます!」

 

「ふふふ。期待していますよ?私。ですが、沈めるのは私です!」

 

軽巡棲姫と神通はそう言い合うと、ボウモアの瓶をかちりとぶつけ合う。

そして、全く同じタイミングで、ボウモアを煽るのであった。




妄想捗りました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。