自由なエリレさん。   作:灯火011

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27 島風と響の報告書

 

横須賀鎮守府、大本営。

陸と海の殆どの将校が、横須賀付の駆逐艦「響」と

大本営直属の駆逐艦「島風」の報告書を、静かに観閲していた。

 

「・・・海軍よ。またか?」

 

「・・・またです。しかも、今回は前回に続き、いえ、前回以上に前代未聞です。

 艦娘、しかも我が直属の島風が深海棲艦と交流を持つとは・・・。」

 

陸軍と海軍の将校は、そう言うと、改めて報告書を擦る。

いつにもまして、大本営の将校たちの口数は少ない。

というのも、報告書の内容が、信じられぬものだったのだ。

 

内容は以下のとおりである。

 

 

横須賀鎮守府 大本営 宛  

 

差出人 丙型駆逐艦 島風

 

コロネハイカラ島付近で発生した、

深海棲艦による艦娘拉致の事案について

詳細が判明いたしましたので、ご報告いたします。

 

1 報告者 

・丙型駆逐艦 島風

・吹雪型駆逐艦 響

 

2 事案発生日時 

・○○年○月○日

 

3 事案発生場所 

・コロネハイカラ島近海

 

4 事案被害者  

・丙型駆逐艦 島風

・川内型軽巡洋艦 神通

 

5 事案加害者

・深海棲艦 戦艦 レ級

・深海棲艦 港湾棲姫

・深海棲艦 軽巡棲姫

・深海棲艦 空母 ヲ級

(注 ヲ級は以前より内通している艦である)

 

6 事案 結果  

 

・巡洋戦艦 金剛 及び 吹雪型駆逐艦 響とともに

丙型駆逐艦 島風 及び 川内型軽巡洋艦 神通

○○年○月○日にショートランド泊地へ帰投。

         

7 事案 詳細

 

◆ 事案が発生したのは、上記の通りコロネハイカラ島近海。

 ○○年○月○日、輸送作戦完了後に、

 島風と神通が、深海棲艦により拉致された。

 

  拉致の主犯は、レ級と港湾棲姫である。

 空母ヲ級が囮として艦隊の前に立ち、気を惹きつけた隙に

 レ級と港湾棲姫が艦娘の足を持ち、海面下に引きずり込んだのである。

 島風と神通は、戦艦と移動拠点の馬力には抗えず、そのまま気絶。

 

  港湾棲姫の拠点にて、神通と島風は目が覚める。

 なお、同時刻、ショートランド泊地で、

 艦娘拉致の報を聞いた金剛と響が、

 港湾棲姫の拠点と思われる要塞に出立。

 

  翌日、金剛と響の活躍により、深海棲艦を避け、

 神通と島風は無事、ショートランド泊地へと帰投ス。

 

8 追記

 

 ・・・ここからは私、島風と、響の個人的な報告となります。

 詳細は次ページからとなりますが、覚悟のある将校のみ、観閲願います。

 

◆9港湾棲姫、及びレ級について。島風報告。

 

 将校の皆様は、カメラのレ級を覚えておりますでしょうか?

今回、私達を拉致したレ級は、どうやらカメラのレ級の知り合いなんだそうです。

港湾棲姫も、飛行場姫の事をしっているらしいのです。

 

ここまでで、感のいい将校様であれば、おおよそ、

何があったのかは、簡単に想像がつくのではないでしょうか?

 

そう、今回私達を拉致した深海棲艦は、非常に友好的だったのです。

 

まず、拉致されて、目が覚めた港湾棲姫の拠点。

驚くことに、炬燵で目が覚めたのです。炬燵ですよ?

 

信じられますか?もう一度いいます。

拉致されたと思ったら炬燵で目が覚めたんです。

 

最初は何があったのか全くわかりませんでした。

もちろん、神通も同じ炬燵で目が覚めて、何があったのか

非常に混乱しているようでした。

 

そして更に驚くことに・・・。というか、今でも信じられないのですが

港湾棲姫とレ級、そして軽巡棲姫がお摘みを作って饗してくれたのです。

ただ、先の報告書でも上げたとおり、軽巡棲姫については

神通と同じ存在の深海棲艦であるとの疑いがあるため、

未だ警戒は必要だと思われます。

 

ですが、それにしても、頭が変になりそうでした。

目の前には生牡蠣・・・それに北寄貝。

そしてウィスキーが並ぶ、本当の宴会のような光景です。

ただ違うとすれば、目の前には、

いままで殺し殺されるだけの関係だったはずの

深海棲艦が、エプロンを着ながら笑顔で酒を進めて来るのです。

 

私は酒に毒でも入っているのではないか・・・

と思ったので手を付けずにいたのですが

神通が何を思ったのか、急に食事を始めたのです。

 

すると、毒どころか、とても美味しい逸品だったようで

あの神通が、満面の笑みを浮かべて牡蠣を頬張るのです。

更にそこに、付け合せとしてボウモアが注がれる。

 

我々船、そしてあなたがた船乗りにとって、酒は非常に魅力的です。

それ故に、私も我慢できずに、牡蠣と酒を楽しんでしまいました。

 

そして、そこで更に驚くべきことが起きたのです。

 

なんと、金剛と響が、港湾棲姫先導のもとで

港湾棲姫の要塞、こたつがある部屋に、案内されてきたのです。

 

私はその頃には酒が回って、記憶が曖昧になっていますので

ここからは、響に文章を続けてもらいます。

 

なお、港湾棲姫の拠点には、こたつのある部屋の他にも

大規模な設備を備えた台所、大浴場形式のドッグ、

そして、畳の部屋にふっかふかの布団まで完備してありました。

 

・・・正直、姿形だけが違うだけであって、非常に人間臭いです。

 

 

◆10 港湾棲姫、及びレ級について。響報告。

 

私が港湾棲姫の拠点に来たのは、金剛のとばっちりさ。

本来であれば元々の命令通り、ショートランド泊地の司令・・・

今は牢獄に入った元基地司令の周辺調査のために、夜の海にでていたんだ。

 

そこを金剛に見つかって、首根っこつかまれたまま

コロネハイカラ島の深海棲艦の拠点までご案内さ。

 

そうしたら驚くことに、以前より内通していたヲ級がそこにいたのさ。

だから、少し安心して声をかけてみたら、向こうも私とわかったようで

笑顔でこちらに近づいてきたんだ。

 

その後方に、港湾棲姫を連れてね。

 

流石に私もあの時は死ぬかと思ったんだ。

だって、こちらの戦力は駆逐艦と戦艦だけだったから。

 

でも、そこからは金剛と港湾棲姫の世界だったね。

普通に挨拶して、普通に拠点に入っていくんだもの。

そして、気づけば炬燵に入っていたんだ。

 

その時に、神通と島風を発見したんだけど、

ふたりとも酔っ払っててひどかった。うん、ひどかった。

 

で、しょうがないから、島風を連れてお風呂にいったんだ。

・・・深海棲艦のお風呂は、非常に上質だ。

白い天然温泉が掛け流しになっていたよ。驚くべき技術だよ。

あの拠点でリフレッシュした深海棲艦は、さぞ強いだろうね。

 

さて、その後、島風と私は、コタツのある部屋に戻ったんだけど

そこで更に驚くべきことが起きていたんだ。

 

・・・信じられるかい?戦艦レ級が、あんこうを捌いて、あんこう鍋

しかも、茨城県でしか作られていないはずの郷土料理

「ドブ汁」を作っていたんだよ?

 

いろいろと突っ込みどころがあるんだけど、

一口食べてみたら、そんなもの関係なくなるくらい美味しかった。

お酒とも合う料理だったし、非常に満足したよ。

 

その後は、畳の部屋で、ふっかふかの布団で睡眠を取り

翌日、朝食に納豆定食を頂いて、帰投した次第だよ。

すごく、人間臭くて、友好的な深海棲艦たちだったよ。

 

あと、港湾棲姫は、鎮守府近海に現れる深海棲艦に

岩牡蠣が欲しいと言えば、後日岩牡蠣を送る、と言っていたよ。

 

・・・・念を押しておくけど、私は狂っていないからね?

ここまでの報告は全て事実だよ。

 

だから、私としては、民生品に関しても一度、流通を洗いなおすべきだと思う。

人間からの協力がないかぎり、あれだけ鎮守府に近い拠点を作れないと思うんだ。

 

◆11 証拠として

 

おそらく信じられないと思われますので、

証拠を一つ、送らせていただきます。

 

・・・大本営会議が開かれる○○月○○日、

発泡スチロールを携えた駆逐イ級が、横須賀に現れると思います。

 

そちらにいるカメラのレ級か、姫を迎えに出してください。

武装はないイ級だそうなので、発泡スチロールを受け取ったら

そのまま海に返してあげてください。

 

発泡スチロールの中身は、港湾棲姫曰く

「岩牡蠣」だそうです。新鮮なものなので、ぜひ生でどうぞ。

 

 

「・・・・で、これが噂の、岩牡蠣、か」

 

将校たちの前には、簡素な白皿に置かれた、巨大な岩牡蠣が鎮座していた。

大食漢である将校たちですら、一口で食べられるか、疑問の大きさだ。

 

「・・・・海軍、本当にイ級が届けてきたのか?」

 

「はい。私も立ち会っていましたから、間違いなく。

 確かに発泡スチロールを多数抱えたイ級が、やってきました。」

 

海軍の将校は、ため息を付きながら、岩牡蠣を手に持っていた。

 

「『生でポン酢がおすすめです。港湾棲姫様曰く、フライもおいしいそうなのです。』

 と、伝令も受け取ったよ。ま・・・。皆様の目の前に置いてあるのが

 おすすめの生でポン酢、という奴です。」

 

将校たちは、自分たちの目の前にある岩牡蠣を凝視していた。

見た目は確かに魅力的だ。ぷりっとしていて、磯の香り漂うそれは

見た目通りであれば、間違いなく美味である。

 

「・・・海軍よ、確かにうまそうではあるが。

 毒ではないのか?深海棲艦の新たな兵器とかでは・・・。」

 

「そうかと思ったのですがね。

 受け取ったカメラのレ級と飛行場姫、それに島風が

 喜々として生で食べていましたからね。

 レ級と姫はともかくとして、島風が食べている時点で、毒物ではないかと。」

 

「そうか・・・。それではまぁ、せっかくだ。

 勿体無いし、私はいただくとしよう。」

 

陸軍の将校は、覚悟を決め、岩牡蠣を持つ。

そして、鼻をつまむと、一口ですべてを口内に納めていた。

 

「なっ・・・陸軍!思い切りすぎです!

 せめて少しずつお食べになっては・・・!」

 

焦った海軍の将校が、止めに入るも、既に時遅し。

陸軍の将校の肩は、プルプルと震えていたのだ。

 

(やはり・・・深海棲艦の毒か!?)

 

陸軍の将校を見た他の将校たちは、将校を見ながら身構える。

だが次の瞬間、震えていた陸軍の将校は、大声を上げたのだ。

 

「んまいっ!なんだこれは!

 今までこんな岩牡蠣は食べたことがないぞ!」

 

「なっ・・・!?」

 

陸軍の将校の、まさかの反応に、他の将校は

身構えたまま、固まっていた。

 

「素晴らしい牡蠣だ。まず臭みがない。それでいて磯の濃厚な香り!

 これだけでも酒が呑める。

 更に、更にだ、一口噛めば牡蠣の中からとろり、とミルクがあふれだすのだ。

 ・・・なるほどこれは、とりこになる。

 深海棲艦侮りがたし。・・・友好的な深海棲艦、悪くないかもな。」

 

陸軍の将校は笑顔のまま、空となった岩牡蠣の殻を見つめていた。

そんな将校の反応を見た、海軍、陸軍の将校も、半信半疑で牡蠣を口に運ぶ。

 

すると、牡蠣を食べた全員が、驚きのあまりに、目を見開いていた。

 

「なんだこれは!旨いぞ!」

「本気で旨いではないか・・・!?」

「・・・おい海軍、これは本当に深海棲艦が運んできたのか?

 お前のことろが秘密裏に仕入れたものでは・・・」

「ない。・・・陸軍の画策か?」

「我らも覚えがないな・・・。ということは、やっぱり・・・

 本当に深海棲艦からの贈り物か・・・!?」

 

大本営、混乱の極みである。

 

結局として大本営は、よっぱのレ級達に関しては

「保留」と結論を出さずに、これからも経過観察をしてくということで

話が纏まったのであった。

 

なお、余談ではあるが

やんごとなきお方も、笑顔で牡蠣を平らげたという。




妄想捗りました。

・・・ただ、いまだの妄想の中だと、あんこう鍋食べて酒呑んで
オフトゥンにくるまってジラダクしている響が暴れています。

フリーダム響。妄想の中でも暴れるとは、恐ろしい艦です。

誤字修正致しました。
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