自由なエリレさん。   作:灯火011

31 / 36
戦艦レ級と、港湾棲姫は、北の海に鮭を捕獲しに出向いていた。

そのさなか、北の海では、どうやら、
人間と艦娘、そして一部の深海棲艦合同の
撤退作戦が行われていたようである。

そんな彼らが合流する。果たして、北の海の運命はいかに。


29 レ級とレ級と姫と姫 その2

「・・・ムッ。レ級、上空ニ機影確認ヨ。

 撤退準備、ハジメマショウカ。」

 

鮭をとることに夢中であった港湾棲姫が

ここにきて、初めて上空を飛ぶ、

飛行場姫の偵察機を確認したようである。

 

「ンー・・・オ?デモ港湾棲姫、アレ、深海ノ艦載機ジャン。 

 撤退スル必要ナインジャナイ?」

 

「レ級、アレハ偵察型ヨ。

 偵察機ガ飛ンデイルトイウコトハ、

 恐ラクダケド、艦娘モチカクニイルトオモウノ。」

 

「アァー・・・。タシカニ。

 ソウデスネー。ソロソロ撤退シマスカー。

 港湾棲姫、戦果ハ、ドウ?」

 

港湾棲姫は自分の格納庫に放り込んだ

鮭の数を思い出す。

 

(ソウイエバ、途中カラカゾエテナカッタ。

 ・・・タシカ20匹マデハカゾエテタシ・・・。

 大丈夫、私達ノツマミト、大本営ニ送ル分ハ確保デキテルハズ。)

 

「レ級、オソラク40匹前後ヨ。

 ソノホカニ、マグロモ数匹イルワネ。」

 

「オォ!マグロカァ!

 カマヤキニシヨーゼー。」

 

「イイワネ。ソレジャア、レ級。

 転進シマショウカ・・・?」

 

港湾棲姫は、ある一転を見つめ、口を開けたまま、硬直していた。

レ級はそんな港湾棲姫の視線を追うように、首をひねる。

 

すると、レ級の目には

全速力で突進してくる、「戦艦レ級」と艦娘達の姿が写ったのである。

 

「・・・・ヘッ!?」

 

レ級も港湾棲姫と同じように、口を開けたまま固まってしまった。

それもそうである。艦娘だけでも想定外だというのに、

戦艦レ級が艦娘と共に行動しているのだ。

港湾棲姫とレ級からしてみれば、大混乱の極みである。

 

そして、突っ込んでくる「戦艦レ級」は、

全身から金色のオーラを滾らせると

口を大きく開け、港湾棲姫とレ級へと、叫び声を上げた。

 

「よっぱあああああーーーーー!」

 

その声を聞いたレ級は、にやりと笑みを浮かべると

自らのギアを一つ上げ、赤いオーラを滾らせる。

そして、つっこんでくる戦艦レ級に対し、同じように叫び声を上げた。

 

「・・・・ヘッ。カメコオオオ!!」

 

叫んだ後、レ級は海面を蹴る。

向かってくる戦艦レ級に対して、全速力で突っ込んだのだ。

もちろん、尾っぽには港湾棲姫を載せたまま、である。

 

ただし、未だに港湾棲姫は固まったままで、

艦娘と「戦艦レ級」を見つめていた。

 

そして、レ級と戦艦レ級が、交差した、その時である。

お互いに拳を振り上ると、拳を繰り出し、相手の拳にぶつけたのである。

 

「「ッシャアアアアアイ!」」

 

ガゴンっ!

 

鉄と鉄がぶつかり合うような、強烈な音と衝撃が周囲を覆った。

戦艦レ級を追いかけていた艦娘達は、

港湾棲姫とレ級を撃破できる最高のタイミングだというのに、

レ級達の突拍子もない行動に思わず静止してしまっていた。

 

「くくく・・・・あははははは!」

 

「クククク・・・・アハハハハハ!!」

 

そして、2隻のレ級はお互いに笑い声を上げながら

お互いの肩を、バシバシと叩き始めたではないか。

 

「久シブリダナァ!カメコォ!」

 

「久しぶりだなぁ本当!よっぱぁ!

 っていうかお前、なんでここにいるんだよ!」

 

「インヤァ、鮭食クイタクナッテナ!

 チョット漁シテタンダゼ!ナ!港湾棲姫!」

 

話を振られた港湾棲姫は、ここでようやく再起動を果たす。

はっ、とした顔で、金色の戦艦レ級を見つめると

ようやく、口を開き始めた。

 

「・・・マチガイナク鮭ヲトリニキテル。

 ・・・トイウカ、ソッチノレ級ッテ、

 モシカシテ飛行場姫ノレ級?」

 

「おお!そうですよー。というか、港湾棲姫様。

 貴女何やってるんですか。よっぱの尻尾に乗って。」

 

「エート・・・鮭トルタメノソナー役。

 アト、倉庫役。鮭ッテスグ痛ムラシイカラ。

 倉庫、冷蔵ト冷凍庫ニ換装済ミヨ。」

 

「うっへぇ。貴女もなかなかやりますねぇ。」

 

「カメラノタメニ、全武装ヲハズシテイタ

 貴女ホドジャナイトオモウ。」

 

「あっははは!それを言われると何も反論できませんよ!

 ・・・あれ、金剛達、なんで固まってるの?」

 

そう言われた金剛は、ここにきてようやく再起動である。

そして、頭を抱えながらも、ゆっくりと口を開いた。

 

「・・・いえ、なんでも、ありま、セーン。

 慣れとは怖いものデース。というか、

 ・・・もしかして、そっちのレ級と港湾棲姫って

 一緒に呑んだレ級と港湾棲姫デースかー・・?」

 

レ級は金剛の姿を確認すると、満面の笑みを浮かべていた。

 

「ンオ?オオ!金剛ジャン!オヒサー!

 鳳翔ノ酒、マタノモウゼー!ツマミハ今日トッタ鮭デ!」

 

金剛は、レ級の言葉に呆気にとられていた。

間違いなく、このレ級は、酒を飲み交わしたレ級である。

 

「あ、はい。

 じゃなくってぇ!レ級!なんで北方の海にいるのデース!?

 もしかして、ここらへんを根城にしてた深海棲艦って

 貴方達のことデースかぁ!?」

 

金剛は、港湾棲姫を指差していた。

港湾棲姫は、首をかしげると、ゆっくりと口を開き始める。

 

「根城・・・?イイエ。チガウワ。

 私達ハソロモンカラ、鮭ヲトリニキタノ。

 ソロソロカエロウカトオモッテタトコロヨ?

 ネェ、レ級?」

 

「ソーダナー。港湾棲姫ノイウトオリダゼ。

 十分ニ数トッタシ、ソロソロカエロウカナート。

 ソシタラオマエラガキタンダヨ。

 インヤァ、スッゴイ偶然ダナ!」

 

レ級がそう言うと、

今度は菊月は、言葉に反応して、ようやく再起動をしたようだ。

 

そして、菊月は目の前の状況に、

一瞬「ウワァ・・・!?」と呻きを漏らすも

次の瞬間、表情を固くしていた。

 

「偶然だな、ではないぞそちらのレ級よ。

 我々は今、作戦行動中だ。

 邪魔をシないならよし、邪魔をするというのなら

 ここでお前達を倒して進まねばならんのだ。」

 

菊月はそういうと、砲身と魚雷発射管を

港湾棲姫とレ級へと向けていた。

 

すると、レ級は特に身構えるわけでもなく

自身の格納庫に、勢いよく手を突っ込む。

 

「何をする気だ!レ級!」

 

その姿を確認した武蔵も、急ぎ46cm砲を

港湾棲姫とレ級へと向ける。

 

「何ヲスルキッテ。

 ホラ、コレ。」

 

レ級はそういうと、自身の格納庫から

「竹鶴」と書かれた、ウィスキーボトルを取り出していた。

 

「「へ・・??」」

 

その姿に、身構えていた武蔵と菊月は呆気にとられた顔をする。

そして、金色のレ級と、金剛は苦笑をうかべつつ、口を開いた。

 

「・・・どうせお前、何かの縁だから飲もうぜーとか言うんだろ?」

 

「レ級ぅー。どうせまた、酒のもうぜー!とか言うんでショー?

 作戦行動中だからそういうのは無理デースよ。」

 

酒瓶を持ったまま、レ級は溜息をつく。

そして、苦笑を浮かべると、ゆっくりと口を開いていた。

 

「ナーンデ考エテルコトヨマレテルカナー・・・。

 マ、作戦トヤラハ、邪魔スルキハサラッサラネーヨ?

 ナ?港湾棲姫?。」

 

「エェ。私ハ鮭ヲ無事モチカエレレバイイカナーッテ

 思ッテルカラ。作戦、スキニスレバイイトオモウ。」

 

港湾棲姫は、笑みを浮かべながらも、口を開く。

そして、その両手には、証拠といわんばかりに

巨大な鮭が、掲げられていた。

 

「ホラ、ミテヨ。

 オオキイデショウ?時鮭ニナッチャウケド

 スッゴイオイシソウジャナイ?」

 

港湾棲姫の言葉に、金剛、武蔵、菊月の艦娘3人組は

完全に言葉をなくしていた。

鮭を優先する深海棲艦なんて、聞いたことはない。

 

だが、身近にカメラを優先するレ級がいるので、

あながち間違いではないのかな、などと思う、艦娘3人組であった。

 

そして、その上空では、加賀の戦闘機と、飛行場姫の艦載機が

くるくると、回り続けていた。

 

 

「・・・はぁー・・・・!」

 

大きなため息は、飛行場姫である。

横須賀鎮守府で鹵獲という立場にいる彼女は

人類と友好的な深海棲艦の中では

そこそこ、まともな感性の持ち主である。

 

カメラが好きで作戦に参加したことに、後ろめたさを感じていたり。

深海棲艦と繋がりのある自分が、本当にここにいていいのかと悩んだり。

微妙に部下のレ級に好意を抱いてしまっている横須賀の提督を

どうしようかと悩んでいたり。

そして、カメラのレ級の手綱をどうやったら握れるかと考えたり。

 

そして、そんな彼女の悩みの種が一つ、増えたのだ。

 

それは、先ほど海上で出会い、なぜか合流にすることになった

「港湾棲姫」とその部下「酒飲みの戦艦レ級エリート」。

 

それが、なぜか知らないが。

アツ島撤退作戦の旗艦「あぶくま」に同乗しているのだ。

 

「ドウシタノ?飛行場姫。タメ息ヲツクナンテ。ラシクモナイ。」 

 

「・・・あ、」

 

「・・・ア?」

 

「あんったらのせいよ!何よ北に鮭を取りに来たって!

 『これだったらまだ裏切った私達を殺しに来た』

 って言われたほうがよかったわ!

 ていうか港湾棲姫!あんた、南の守りは!?」

 

「軽巡棲姫ニマカセテアル。

 テイウカ、ウラギッテタノ?マーイイケド。

 ソレニ、ソロモンニクル艦娘、呑ミナカマダシ。」

 

「はあぁぁあああ!?あんたいったい何やってんの!?

 艦娘と呑み仲間って、本気!?」

 

「本気本気。私トレ級、呉鎮守デモ艦娘ト呑ムシ。

 トイウカ、飛行場姫。アナタモヒトノコトイエナイワ。」

 

ウッ、と飛行場姫は口ごもる。

港湾棲姫にいろいろ言ったものの、結局、

カメラのために、人類と艦娘に味方するという、

前代未聞の裏切りをやらかしてるのは自分なのだ。

 

「それを言われると、黙るしかないわね・・・。

 ・・・で?なんでまた合流しようと思ったのよ。」

 

そう、飛行場姫からすれば、なぜ合流したのかが謎なのだ。

特に、飛行場姫が棲む「あぶくま」を見た瞬間に

どうしても合流したいと、港湾棲姫とレ級が言い出したのだ。

 

「シャケ」

 

港湾棲姫は、飛行場姫の問いかけに、ただ一言、答えていた。

 

「・・・シャケ?」

 

飛行場姫はオウム返しのように、言葉を返していた。

 

「ソウ、シャケ。ハヤクタベタクテ。

 コノフネッテ、現代艦デショ?ッテコトハ

 イイ、調理設備、アルノカナァッテオモッテ。

 焼キ魚デウィスキーッテノモ、乙ヨネェ。」

 

この深海棲艦、否、港湾棲姫とレ級は、やはりぶっとんでいた。

ようは、この深海棲艦は、こう言ってるのだ。

 

「作戦は別に関与しない。

 邪魔もしないし、協力もしない。

 でも、鮭を調理する場所を貸してください。

 酒と鮭を楽しみたいのです。」

 

非常識、ここに極まれり。

さすがの飛行場姫も、口をぽかんと開け、絶句してしまっていた。

 

(・・・港湾棲姫って、ここまでぶっ飛んでた?

 ・・・もしかして、酒飲みのレ級に影響されて?

 もしかしなくても、その可能性、大ね・・・。 

 それにしても、本当、どうしたら、いいのかしら・・・。)

 

飛行場姫はそう思いながらも、二の句を継げないでいた。

 

 

調理場では今も、炊飯係が調理を行っている。が

戦艦レ級(ヨッパ)は、あぶくまの調理場の一部を、占拠していた。

一応、邪魔には成らない位置なのであろう。

 

チラチラとレ級を見るものの、皆、仕事をそのまま行っていた。

 

レ級(ヨッパ)が立つ目の前には、

大きいまな板があり、その上には大きな鮭が一匹。

そして、レ級自身は、右手に出刃包丁を装備していた。

 

「サーッテ、ソレジャア捌キマショウカネー!」

 

レ級は早速、鮭の首元に出刃包丁を入れる。

まずは、背びれと腹ビレを切り落とすのだ。

そして、背びれと腹ビレを切り落としたレ級は

エラにそって斜めに包丁を入れ、中骨まで切れ目を入れる。

 

そして、一気に鮭の頭を胴体から切り離した。

 

レ級は一旦鮭の頭をどかすと、中骨にそって包丁を動かす。

うまいもので、ほぼ鮭の身を残さずに、上身が削げた。

そのままレ級は包丁を中骨の下に入れ、

今度は中骨を器用に切り取ると、

そこには見事に3枚におろされた鮭が鎮座していた。

 

「フゥー。」

 

レ級は一旦息を吐き、包丁を置く。

そして、今度は横においてあった鮭の頭を

圧力鍋に投入し、加熱し始める。

 

「鮭ノ頭デ一品ト・・・エート。

 身ハヤッパリ、ヨクヤキカナー。

 サシミハ・・・マ、コンカイハイイカー!」

 

レ級はそう言うと、圧力鍋を視線の端に置きながら

鮭の半身に包丁を入れ、見慣れた切り身の鮭へと変身させる。

 

そして、レ級はグリルへと切り身を9つ、投入していた。

もちろんそれは、艦娘と深海棲艦、そして横須賀提督の分である。

戦艦レ級×2,飛行場姫、港湾棲姫、金剛、武蔵、加賀、菊月。

そして、人間である横須賀の提督。

 

そう、戦艦レ級は自分たちの分だけでなく、

なぜか作戦行動中の彼らにも、鮭を焼いていたのだ。

 

もちろん目的は他でもない、酒である。

 

(作戦中であろうと、少しぐらいの息抜きは必要じゃないか?)

 

などという、無駄なレ級の気遣いである。

そして、レ級はグリルで切り身が焼けるまでの間、

少しの下ごしらえを行っていた。

 

まず、材料は人参2本と大根1本、そして大豆を1カップに、

酒粕を200gほどだ。塩も入れるが、ほどよく、で良い。

あとは油揚げだが、あぶくまには積んでなかったのでなくても良い。

 

人参と大根は、鬼おろしという、巨大なすりおろし器で

すべてすりおろす。これだけで、下ごしらえは完了である。

 

「サァッテ、アトハ待機ダナー。」

 

レ級はすべての下ごしらえを終え、のんびりとしていた。

調理が纏まることには、調理場の人間も、レ級になれたのか

ほぼ気にしないで仕事に没頭していた。

 

「・・・レ級さん、尻尾。ちょっと邪魔です。」

 

「ア、ゴメン。」

 

そう、人間と深海棲艦が同じ空間にいるという謎の状況が

あぶくまの調理場で、発生していたのである。




妄想捗りました。

ブレないレ級ズ、ブレない港湾棲姫。
苦労人飛行場姫。そして呆気にとられる面々。

いつもの光景です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。