港湾棲姫とレ級エリート、エリレさん。
そんな彼女らに、急転直下の出来事が襲いかかるようです。
※誤字修正いたしました。
唐突ではあるが、酒飲みというのは、何種類かに分けられる。
酒が好きで、酒を呑むだけの者。
酒が嫌いだが、人付き合いのために呑む者。
酒が好きで、人付き合いも好きで酒を呑む者。
などなど。
では、エリレさんと港湾棲姫はどうであるか?
酒が好きで、人付き合いも好きで、それでいて無駄に人間臭い。
更に、響、島風、金剛といった艦娘や呉の提督との関係を見るに
一度酒を呑んだ相手とは、敵味方とも関係なく、
何度でも酒を呑みたいと思うのが、エリレさんと港湾棲姫である。
つまり、人情派の酒飲みだ。
楽しく、美味しく。酒を呑む。
・・・では、そんな人情派の彼女たちが怒る事とは一体何であろうか?
酒を零される?
摘みを落とされる?
人から馬鹿にされる?
さて、一体、何が彼女たちを怒らせるのであろうか?
◆
キス島攻略作戦の旗艦、あぶくまの居住区の一室では
未だに、戦艦レ級エリート、エリレさんと、港湾棲姫の酒盛りが続いていた。
「しもつかれいいわねー。ハマった。」
「いいだろいいだろー。」
今、彼女たちは「しもつかれ」に舌鼓を打っているようだ。
「ま、今日のは即席なんだけどな。圧力鍋使ったし。
本当は一週間ぐらいゆっくり煮込んで、味を出すのがいいんだけどなー。」
「つまみ食いもできるしね。」などと、エリレは笑顔を見せながら
港湾棲姫へと口を開いていた。
「いいわね。それじゃあ、今度コロネハイカラ島の要塞でやりましょう。
また響とか島風とかと呑みましょう。」
「あぁー、いいですねー。
・・・しもつかれを見た時の反応が楽しみだぜ・・・!」
レ級は悪い笑みを浮かべ、港湾棲姫は楽しげに笑みを作る。
端から見れば、深海棲艦とは思えない光景が、広がっていた。
そして、その手元には、今こうして人間と呑むきっかけになった
呉鎮守府からプレゼントされた、スキットルが握ってあった。
「それにしても、不思議な縁ですよねー。
敵である人間と、艦娘と、呑み仲間になるなんて。」
レ級は手元のスキットルを眺めながら、しみじみと呟いていた。
「そうねぇ。そういえば、レ級はいつもひとり酒だったものねー。
私も鳳翔のタコヤキと、ビールでお酒に目覚めた口だしね。
呉鎮守府の提督には、感謝しても感謝しきれないわね。」
「そうですねぇ。本当、あそこのおかげで港湾棲姫とも飲み仲間になったし。
・・・ま、ただ、食い物の恨みは忘れませんけど。」
レ級はじっとりとした笑みを浮かべると、港湾棲姫を見つめていた。
港湾棲姫は、冷や汗を浮かべつつ、視線を外す。
「・・・ごめんなさいっていってるじゃない。」
「あは、冗談です冗談!」
アハハハ、とレ級と港湾棲姫が笑いあった、その時。
ドガン!!
レ級と港湾棲姫の部屋が、爆音と、炎、そして煙に包まれたのである。
「ぬうわぁっ!?」
「うわっ!?」
港湾棲姫とレ級は、何があったか、現状を把握しようと姿勢を正す。
「「何が・・・?」」
少しの間のあと、少しだけ煙が晴れ始めると
部屋の惨状が、レ級と港湾棲姫の目に入ったのである。
「うわ・・・ひでぇなこれ。」
砕け散った机、椅子。散らばった鮭と酒の瓶。
そして、燃える部屋の調度品。
大きく空いた装甲板から外を見てみれば
此方を撃ったであろう、戦艦ル級らしき姿が目に入った。
「・・・あら、戦艦ル級ね。どうやら、戦闘が開始されたみたいねー。」
「そうだなー。うーん、鮭、勿体ねぇ・・・。」
「勿体無いわねー。あら?レ級。怒ってないの?」
「えぇ、別に。酒と鮭台無しにされてますんで、煮えくり返ってはいますけど。
今回ばかりは、艦娘側で酒呑んでる私が悪いですからね。」
「あぁ、たしか・・・に・・・・。」
港湾棲姫は言葉を発しながらも、部屋の一点を見ながら目を見開いていた。
「んお?どうしたの。港湾棲姫。なんかやばいのみつけ・・・?」
レ級も、同じように部屋の一点を見つめながら、その動きを完全に静止させていた。
2隻の船が見つめるその先にあったもの。それは。
呉鎮守府からプレゼントされ。常に身に着けていたスキットルの
へしゃげ、割れ、変わり果て、鉄くずと成り下がった姿であった。
レ級と港湾棲姫は、お互いに顔を見合わせる。
そして、お互いに空気を肺に目一杯吸い込むと
「「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?」」
これでもかという大音声で、叫び声をあげた。
◆
煙と炎が渦巻くあぶくまの一室にゆらり、と
港湾棲姫と、エリレが静かに佇んでいた。
先ほどの巨大な叫び声からは想像もできないほどの、
恐ろしいほどの静寂だ。
「「・・・」」
レ級は無言のまま、自身の格納庫から、最後の竹鶴のボトルを取り出す。
そして、勢い良くキャップを投げ捨てると、一気にボトルの中身を嚥下する。
ゴッゴッゴッ・・・・。
そして、ボトル半分まで呑んだ所で、無言のまま
港湾棲姫へとボトルを手渡していた。
ボトルを受け取った港湾棲姫も、無言のままボトルの中身を嚥下する。
ゴゴゴゴッ!
レ級の数倍速い速度で酒を呑む。当然、すぐにボトルの中身は空となる。
港湾棲姫は、そのままボトルを、自身の爪で握りつぶしていた。
パリン・・・ガシャン。カラン、カラン。
そして、港湾棲姫とレ級は、砕け散ったボトルをそのままに、静かに歩みを進めていた。
居住区の部屋を出ると、そのまま煙の充満する通路をゆっくりと進み、
甲板へと出るように、上へ、上へ。
会話は一切ない。
カツ、カツ、カツ、カツ。と静かに歩みをすすめる音だけが
彼女たちの周囲を、支配していた。
そして、目的地であるあぶくまの甲板、
飛行場姫の横へと、静かに、無言のまま、並ぶ。
◆
「加賀!金剛のフォローを!レ級のフォローはこちらでやっておくわ!
チッ、相手のヲ級、フラッグシップかしらね・・・!ええい、やっかいね!」
飛行場姫は焦っていた。
相手の航空戦力と、戦艦群が予想以上に強力であったのだ。
と、その時、両隣に、誰かの気配を感じた飛行場姫に
聞き慣れた声で、話しかける人物がいた。
「飛行場姫、あなたがこんなに取り乱しているなんて。珍しいじゃない。」
「・・・港湾棲姫、忙しいのだけれど。
邪魔をするなら帰ってくれ・・・る・・・?」
飛行場姫が港湾棲姫の姿を確認した、その時だ。
その顔を、どんどん青くしていったのである。
「・・・ひっ!?」
珍しく、思わず声を上げてしまう飛行場姫。
顔面蒼白の飛行場姫の目に写ったもの、それは。
「どうしたの?らしくもない。」
言葉は普通だが、顔面に青筋を浮かべ
オーラこそ立たせていないものの、赤い眼光鋭い港湾棲姫と
「そうだぜ。喚き散らして。
飛行場姫。あんたらしくもない。」
言葉はこれまた普通だが、顔面に青筋を浮かべ
オーラこそ立たせていないが、蒼い眼光鋭いエリレの姿であった。
そして、港湾棲姫はゆっくりと、飛行場姫へと口を開く。
「ねぇ、飛行場姫。今この船を砲撃してきたのは
あのル級でいいのかしら?」
「え、えぇ。間違いないわよ。
ただ、まだ敵の全容が把握できていないのよね。」
飛行場姫は歯噛みしなが、苦しげに呟いていた。
なにせ、今キス島攻略に参加している艦艇の中で
飛行場姫が一番索敵能力があるのだ。
そんな自分が、未だに敵の数、配置を把握できていない。
情けなさと悔しさで、飛行場姫の心は少しだけ、折れかけていた。
そんな飛行場姫の状態を知ってか知らずか
港湾棲姫は、青筋を立てたまま、飛行場姫へと口を開く。
「判ったわ。飛行場姫。偵察機3機よこしなさい。」
「・・・え?」
「偵察機、よこせ。」
「あ、うん。い、今指揮権をそちらに移譲するわ。」
飛行場姫はそう言うと、電探偵察機の小隊を
港湾棲姫の隷下へと移していた。
港湾棲姫は、静かに眼をつぶると、偵察機へと意識を向ける。
(・・・ル級8,ヲ級2,姫・・鬼?が1。)
そして、飛行場姫では把握できなかった敵の数と配置を
静かに、それでいて恐ろしい速度で把握していく。
「見えた。全部で敵は11。戦艦8、空母2、姫1。
あぶくまの軸線上に展開してるわ。」
何せ、海から空、陸と全てを監視せなばならないのが港湾施設である。
その体現とも言える港湾棲姫が、索敵能力が高いのは、当たり前だ。
「・・・流石ね、港湾棲姫、でも、本当かしら。
作戦の邪魔をしようとか、考えてないわよね?」
飛行場姫は、港湾棲姫の索敵能力を認めつつも、
若干疑いの眼を向けていた。
「嘘は言わない。あぁそうだ。
私とレ級、作戦に参加するから。」
「はい?」
「参加するから。命令ちょうだい。」
あっけに取られていた飛行場姫であったが、
ずいずいと顔を寄せてくる港湾棲姫に気圧され
思わず、口を開く。
「わ、判ったわよ。まったく、自由なんだから・・・。」
飛行場姫は一旦佇まいを正す。
そして、港湾棲姫を見つめなおすと、改めて口を開いた。
「まぁ、なんにせよ戦力が増えるのはありがたいわ。
貴女とレ級なら、そうね。中央突破をお願い。」
「判った。レ級。」
「応」
レ級はそういうと、あぶくまの甲板から勢い良く海面へと飛び降りる。
それに続くように、港湾棲姫もあぶくまの甲板から、勢い良く飛び降り
器用にも、レ級の尻尾へと、着地していた。
「目標は真ん中のル級。その後は状況を見て指示する。」
「あいよ。じゃ、いきましょう。」
「「・・・スキットルと鮭の恨み、思い知れ」」
底冷えするような声でつぶやき、港湾棲姫とエリレは、
敵陣の中央へと、切り込んでいった。
◆
「飛ばせ」
港湾棲姫は、エリレへと小さく下知を飛ばす。
「応」
間髪置かずに、レ級は港湾棲姫が乗る、自身の尻尾を渾身の力を持って、振り切った。
同時に、港湾棲姫はレ級の尻尾を蹴る。
すると、港湾棲姫は文字通りに、弾丸のように敵の戦艦ル級へと空を飛びながら、突進していく。
戦艦ル級は、飛んでくる港湾棲姫に気づき
「・・・ハッ。ナンダソレハ!」
そう叫びながら、自慢の3連装砲の火を吹かせた。
一直線に戦艦ル急に飛翔していく港湾棲姫に、その弾丸を避けるすべなど無い。
ガガガン!
巨大な着弾音が響き、港湾棲姫が煙に包まれる。
いくら港湾型の耐久値のある深海棲艦の姫とはいえ、直撃弾を喰らえば沈むしか無い。
だが、次の瞬間。着弾の煙の中から、自身の艤装の爪の間に
戦艦ル級の放った弾丸を挟み込んだ港湾棲姫が勢いそのままに飛び出してきたのだ。
「ナニッ!?」
「甘いわ。」
港湾棲姫は、そのまま腕をふるい、爪の間の弾丸を、戦艦ル級へと投げ返す。
当然の結果として、戦艦ル級は投げ返された弾丸を防御しようと
巨大な砲塔を盾とし、その場へと腰を据えた。
ガガガン!
「・・・・!」
戦艦ル級の持つ盾へと伝わる、確かな衝撃。
だが、耐えた。港湾棲姫の攻撃を確かに耐えた。
戦艦ル級は、にやりと笑みを浮かべると、飛翔してくるであろう港湾棲姫を再度狙うために
盾としていた砲塔を開け、視界を確保する。
だが、既にそこには港湾棲姫の姿はない。
「ドコヘ・・!?」
戦艦ル級は、左右へと視界を向けるものの
どこにも港湾棲姫はいない。戦艦ル級は明らかな隙を作ってしまったのだ。
「喰らいなさい」
その代償は、少なくなかった。
下から聞こえてきた声に、戦艦ル級は何かを言おうと口を開ける。
その瞬間、港湾棲姫の爪が、ル級の口の中に、レ級の爆雷を叩き込む。
「ンゴッ!?」
苦しげな声を出す戦艦ル級。
そして、港湾棲姫は、左腕を海面につけると、
両足を浮かせながら、体を、足をこれでもかと言わんばかりに畳む。
「ま、一発は一発よ。」
港湾棲姫はそう言うと、左腕を支点にしながら、
体を一気に伸ばし、戦艦ル級の顎へと、両足蹴りを叩き込んでいた。
ドゴンッ!
港湾棲姫の蹴りが入り、ル級の口内の爆雷が爆発し、鈍い音が周囲に響き渡る。
だが、戦艦ル級は今だ健在だ。爆雷の1個や2個が爆発した所で、
戦艦である彼女に戦闘続行に全く支障はない。
それを裏付けるように、ル級は口内から血を吐きながらも、大声で
「クタバレ!」
と叫びながら、隙だらけの港湾棲姫を、ル級の視線が寸分違わずに捉えていた。
だが、戦艦ル級は失念している。
今日、港湾棲姫の傍らには、海の化物が憑いているのだ。
ル級が砲撃をしようと、全身に力を込めた瞬間である。
ル級の視界が、真っ暗になったのだ。
そして、戦艦ル級は何がおきたか把握できないまま、その意識を海底へと飛ばす。
その最中、戦艦ル級の耳に聞こえてきた音は
「バキリ、グシャリ、ゴリッ」という鈍い音と
---ハッ、やっぱり戦艦ル級は、旨くねぇな---
と呟く、女性の声だけであった。
◆
エリレは、自身が喰ったル級を見下していた。
といっても、海面に浮かぶそれは、ただの残骸だ。
海面に浮かぶは、両腕の砲塔、下半身、そして少しの髪の毛。
そして、海面に存在しない、戦艦ル級の上半身と頭は、今、レ級の腹の中である。
「ハッ、やっぱり戦艦ル級は、旨くねぇな」
レ級は吐き捨てるように言葉を紡ぐ。
「レ級。」
「応よ。」
港湾棲姫に声を掛けられたレ級は、阿吽の呼吸で爆雷を港湾棲姫へと手渡す。
そして、港湾棲姫は、さも当然なように、レ級の尻尾へと飛び乗った。
「次。目標は敵の姫。部下の責任は上の責任。レ級、行きなさい。」
「応よ。クソッタレなあの姫みてーな奴。叩き潰そう。」
「「スキットルと鮭の恨み!」」
レ級と港湾棲姫は、そう言うと、海面を勢い良く蹴りだした。
その速度は、エリレ級の最高速度、約40ノット。
駆逐艦島風をも超える、快速である。
そして、それと時を同じくして、
金剛達とカメラのレ級も、戦艦ル級を各1隻づつ撃破。
残存兵力は、敵の姫らしき深海棲艦が1隻と、空母ヲ級が2、戦艦ル級が5。
キス島攻略作戦は、エリレと港湾棲姫を加え、一気に状況が進むのであった。
◆
アハ、アハハハハ!素晴ラシイ!
ル級!ゴクロウ!サクラノオカデ!
ソレニシテモ、万全ノ状態デタタカウトイウノハコウイウコトカ!
全力ヲダセルノダ!サイコウダ!クハハハハ!
フフ・・・・アノシロイノト、アノシッポノハエタノ!
アレハイイ!アレハイイ!
アレガイイ!ゼンリョクヲダシテ、コロサレルノナラアレガイイ!
ワタシノサイゴハ、アレトゼンリョクデタタカッテ・・・・
◆
妄想捗りました。
そんな理由で怒髪天。エリレ&港湾棲姫。