・・・どこいった?
「うん。一発やりましょう。私。やっぱり納得いかないわ」
大宴会の時、私はそう言って、私に喧嘩をふっかけた。
「・・・うん。当然よね。あぁ、すっきりした。じゃ、またね?」
私と勝負をしたとき、私はそう言って、海底へと沈んでいった。体は傷んでいたが、気持ちは晴れ晴れであった。
それにしても私は容赦なく私を攻撃してくれたものだ。一応、私は私の片割れなのだから、少しぐらいは手加減してくれてもいいと思うの。
--デ、オマエハナンデココニイルノダ。ソンナ愚痴ヲ言イイニキタノカ?---
あたりまえでしょう、愚痴ぐらい言わせなさいな。というか、なんで貴女がここにいるのよ。しかもそれ、港湾棲姫とよっぱらいのレ級が保管してたボウモアじゃない。殺されるわよ?
--イインダヨ。港湾ハ海軍ニイッテシマッタシ、ヨッパライモ消息不明ダシナ。ソレニ、娯楽ニ興ジタノハ私ガ一番オソインダ。コノグライノ役得ガアッテモイイダロウ?---
そりゃそうですけどね?でも、まさか貴女が海軍に協力するなんてね。宴会に参加したのも、てっきり内側から横須賀を攻撃するためかと思わったよ。
--ハ、蟠リハアルガ、我々ハ正面カラ当タル程度ノ誇リハアルサ。マ、消耗戦ヲツヅケテイテモシカタガナイト、判断シタノサ。我々ダッテ生キタイカラナ。ソレニ、人間ハ大丈夫ダ。我々ガ余計ナコトヲシナクトモ、前ヲムイテイタ。--
何いいことを言った、みたいなこと言ってるんですか。知ったふうに言うのが姫たちの悪いところですよ。
--アァ、マ。ヒトリゴトダ、ヒトリゴト。ソレニ私ハモウ、姫デハナイ。タダ残リノ艦齢ヲ潰ス、過去ノ残滓ニマミレタ、オ節介サン、サ。--
あー、まぁ、それには同意しますけどね。酒のんで肴つまんでる貴女と私は、とてもじゃないけど深海棲艦には思えませんしね。
--・・・ソレニシテモ、貴様ハ神通トタタカッテ沈ンダノデハナカッタカ?--
あぁー、来ました。その質問待ってました。引っ張ってくれちゃって。といってもネタもなにも無いですよ。沈む途中で、駆逐イ級に助けられたんです。「大丈夫なのです!?」とかいってね。高速修復材ぶっかけられて、燃料叩きこまれて、元気いっぱいですよ。
--ソレハ運ガヨカッタナ。--
全くねー。人が沈む気でいたのに余計なことをしてくれたものです。ま、それで大宴会に戻るのもカッコ悪いですからね。ここに顔を出したら、貴女が居たってだけですよ。
--アァ、ココハ、貴様ガ守護ノタントウダッタナ。--
よくご存知で。
--マァ、コレデモ海域ヲマトメテイタノダカラナ。動向ハ、ハアクシテルサ。--
ま、それはそうとして、私にも一杯下さいよ。シラフで喋るのって結構、辛いんですよ。
◆
「あぁ、気が利かずに申し訳ないな。軽巡棲姫。ほら、ボウモアに、肴のコンビーフだ。」
南方棲戦姫とよばれた深海棲艦は、そう言うと、軽巡棲姫の前に、瓶と缶詰めを差し出していた。軽巡棲姫は、無造作にボウモアのキャップを取ると、口に咥えて一口を飲み干す。
「うん、これです、これ。やっぱり酒は美味しいですよ。」
「それはよかった。で、これからどうするんだ?貴様も海軍に往くか?」
軽巡棲姫は一瞬考えこむように、腕を組む。
「それはそれで面倒くさいですね。ま、貴女さえ良ければ、ここのお風呂に浸かってゆっくりと余生を過ごしたいのですが。」
「は。・・・・ま、いい。好きにすればいいさ。」
南方棲戦姫は呆れ顔でそう言うと、ボウモアを煽る。
「えぇ。ではお言葉に甘えて。」
軽巡棲姫も同じように、ボウモアを煽りつつ、笑顔を浮かべていた。
妄想、ちょっとだけ、捗りました。
じんつう さん は。
余生は、温泉に浸かって、過ごすようです。