歩み続ける理由(リメイク)   作:OC

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なんか、輝久君がほぼ二重人格になっている気がする……
つまりはキャラ付ができてない?


TURNー1(後編) HEROvsウロボロス! 互いの反撃!

3ターン目

 先攻 矢代輝久 LP3400 モンスター:【ドラゴン・ウィッチ-ドラゴンの守護者-】×1 魔法&罠:【竜魂の城】×1 伏せカード×1 手札1枚 墓地0枚 除外1枚

 後攻 遊城十代 LP3400 モンスター:【E・HEROフレイム・ウィングマン】×1  魔法&罠 伏せカード×1 手札1枚 墓地4枚

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 最初の攻防でライフが並んだ俺達は心を躍らせ、俺は今引いたカードに、十代は次に俺が仕掛ける一手に胸の高鳴りを感じていた。

 

 ああ、これだから……デュエルは楽しい……

 

 長い転生の中で多くの絶望と喪失、孤独を感じ続ける中で俺には二つの『救い』があった。

 一つは彼女、ドラゴン・ウィッチと言う『癒し』だ。

 互いに傷つき、裏切られた悲しみがあるからかもしれない。しかし、同じ傷を知るからこそ俺達は支え合うことができた。彼女の笑顔がどれだけ俺を救ってくれたかはわからない。

 もう一つの救い、それはデュエルができるという『楽しみ』だ。

 どれだけ、苦しい中でも俺は逆転を狙い続ける。勝利への布石を考え続ける。相手が自分の予想を上回る時の高揚感。

 さっきの攻防で十代は多少の迂闊さはあったかもしれない。しかし、それでも彼には無謀や虚勢と言うものを感じない。

 無謀や虚勢などで攻勢に出る対戦者ほどつまらない者はなかった。

 結局のところ、俺は生粋の『デュエル馬鹿』と言うことなのだろう。

 それでも、俺は決して相手への礼儀は忘れることはないが。

 そして、このデュエルで初めてカードを引いた俺はそれを確認すると

 

「さてと、行くよ十代。

 【ドラゴン・ウィッチ】をリリースし、手札から【光帝クライス】をアドバンス召喚!」

 

 【ドラゴン・ウィッチ】をリリースして救世主の名を冠する光の帝を召喚した。

 

【光帝クライス】

ATK2400

DFK1000

 

「上級モンスター……と言うことは【ドラゴン・ウィッチ】を守っていたのはそいつで反撃するためなのか?」

 

 十代は召喚された【クライス】を見るとそう考えたらしい。

 確かに下級モンスターを維持するのはさらなる攻勢や反撃のための布石だろう。

 しかし、俺が【クライス】を召喚したのはただ攻撃するためじゃない。

 

「いや、【クライス】は召喚・特殊召喚されたターンに攻撃ができない。」

 

「なんだって?」

 

「……え?じゃあ、どうしてそんなモンスターを……攻撃できないのに……?」

 

 十代と丸藤翔は俺がモンスター一体をリリースして召喚するのは攻め手が一つなくなるのと同意義だ。それに加えて、【クライス】は場に現れたターンに攻撃に参加できないと言う欠点が存在する。つまり、俺の場には攻め手がいなくなったのも同然だ。一見するとアドバンス召喚にこのモンスターを召喚するのは割に合わないと思えるだろう。

 

「ふん、所詮はドロップアウト。考えが甘いな。」

 

「仕方ないですよ、だってあのレッドですよ。」

 

「俺達、オベリスクブルーがそんなミスをするわけないだろ。」

 

 レッドの2人が俺の行動を不可思議に思っていると万丈目が2人を見下し取り巻き2人は笑いながらレッド全体を侮辱し、さらにはそれを使って実際に相手と対峙してもいないのに自分達オベリスクブルーがさも特別だと言う勘違い発言まで口に出してきた。

 

「おい、いい加減にしろ。」

 

 あまりの暴言に、それも俺の対戦者相手に対するものどころか、あろうことか相手の所属する寮のことすらさらなる侮辱を告げたことに流石に怒りを禁じざるを得ず、そう口走った。

 

「なに……?」

 

 俺のその言葉を聞くと万丈目は眉を顰めた。

 

「どんな奴だって知らないことはある。それを嘲笑うのは情けないことだ。

 それに仮に俺が彼に勝ったからってそれはお前たちの勝利じゃない。

 それを戦っている当事者でもないくせに自分たちの勝利だと思い込むなんて情けないことだと思わないのか?」

 

「なんだと……!」

 

 俺の言葉に万丈目の取り巻き2人は黙り込むが万丈目だけは俺に噛みついてくる。

 所詮はあの2人は自らの財力と万丈目の取り巻きであると言うステータスで威張り散らす虚栄の鎧しか身に纏っていない。だが、万丈目の場合は違う。万丈目は仮令、何度俺に敗れても何度も俺に噛みついてきた奴だ。ある意味では、そこが彼の長所なのかもしれない。しかし、彼が本当の意味で強者となり得るには虚栄とも虚勢とも異なる何かが邪魔しているのだ。

 だからこそ、俺は万丈目に関しては俺からすれば過去の人物として今の万丈目はは幻滅しているが、彼の未来に対しては強く関心を抱いているが。

 そんな俺と万丈目の間に不穏な空気が漂っていると

 

「あなた達、何をやっているの。」

 

 後のデュエルモンスターズの歴史に影響を多く残すこの時代の人物が現れたことでその空気は遮られることになる。

 

「て、天上院君……」

 

 それはオベリスクブルーの女傑とされる天上院 明日香その人の声であった。

 万丈目は彼女の登場に動揺を隠せずにいた。万丈目は彼女に好意を持っているらしいのを3年間の付き合いと恋に目聡い【ドラゴン・ウィッチ】の影響で知っている。

 ただ、彼女の登場はこの複雑な空気を払拭するには渡りに船だ。

 

「ん?あんた誰だ。」

 

 十代は俺と万丈目が創り出した嫌な空気を意に返さずに天上院のことを訊ねた。

 

「あら?あなた、入学試験でクロノス教諭を倒した新入生じゃない。」

 

 それを訊くと天上院は十代に気づいたらしい。

 

「俺ってそんなに有名か?」

 

「いや、クロノス教諭てこのデュエルアカデミアの教師の中じゃ最高クラスのデュエリストだからね?

 しかも、エクシーズを使いこなすのもあの人この学校では早かったし……

 その人、相手に勝ってるんだから有名になるのは当たり前だって……」

 

 十代が今、自分の話題性を知らないことに少し、呆れを感じながらも俺はクロノス教諭の名誉のためにも彼がどれだけデュエリストとして優秀なのかをはっきりと説明した。多分、俺の姉さんを除けば、一番この学園で強い教師と言えばクロノス教諭に他ならない。

 召喚がめんどくさいが強力な古代の機械巨人をあらゆる方法で召喚し、なおかつ最近になって導入されたエクシーズを使いこなしてもいる。それどころか、俺の知っている中では珍しく汎用性が高すぎて誰もが依存しやすいエクストラデッキのモンスターに頼らずとも戦える戦法もできるまさに『デュエルアカデミア実技最高責任者』の名に相応しい実力者だ。まあ、性格はエリート至上主義があって難があるけど。

 

「え?エクシーズ?あの人、全く使ってこなかったすけど?」

 

「あ~……うん……クロノス教諭も流石にいつもはエクシーズ召喚できるわけじゃないよ。」 

 

 俺のその言葉に丸藤翔は首を傾げてしまい、俺はデュエルは時と場合によって召喚できるモンスターとできないモンスターがあることを告げてクロノス教諭が本気を出していたことを

 

伝えようとするが

 

「マジか!?じゃあ、今度こそ先生の本当の実力を見たいぜ!

 くぅ~……!!」

 

 厄介なことに十代は違う方向に誤解し始めた。

 

「え、いや……たぶん、あれ……本気……」

 

 十代が盛大にクロノス教諭が本気を出していないと思い、今度こそ本気を出させようとしたが、俺が考えるにはあのデュエルはクロノス教諭にとっては本気だと思う。

 だって、あのデッキはクロノス教諭がいつも使用しているデッキだったし。確実に十代のことを落選させようとしていたのはここにいるオベリスクブルーに所属する者は把握している。

 

「矢代君……彼、別方面に誤解しているわ……」

 

 天上院は俺のことをジト目で見ながら俺の口足らずなところを窘めようとするが

 

「……プレイを続行する。【クライス】の効果発動。

 【クライス】は召喚、特殊召喚に成功した時、フィールドのカードを二枚まで破壊することができる。」

 

 もう、めんどくさいので【クライス】の効果を発動した。

 多分、この数日のうちにクロノス教諭に対して十代が突撃をかましそうな気がするけど俺は悪くない筈だ。

 その際に万丈目と天上院から「めんどくさくて逃げたな……こいつ……」と言う冷ややかな視線を喰らった気がするけどそれは気のせいだ。

 

〝マスター……〟

 

 ついでに相棒(ドラゴン・ウィッチ)からも苦笑いをもらいました。

 まあ、重い空気から軽い空気になったんだからいいか。

 

「え、それじゃあ【フレイム・ウィングマン】が……!」

 

 そんな微妙な空気が流れる中、丸藤翔は【クライス】の効果を知ると【フレイム・ウィングマン】の安否を気にしだした。

 その懸念は普通なら確かに破壊効果を持つカードが現れたのならば当然だ。だが、それはこの光帝(クライス)の前だと別の意味へと変わる。

 

「いや、俺が破壊するのはこの二枚だ。」

 

「え!?」

 

「なっ!?」

 

 【クライス】の効果を知らない人間からすれば、正気の沙汰ではない選択肢を俺は選んだ。

 俺が選んだのは

 

「俺は【竜魂の城】と【クライス】自身を破壊する。」

 

「じ、自分のカードを!?」

 

「何が目的なんだ……?」

 

 自らのフィールドアドバンテージを失うような選択を目にして2人は驚きを隠せずにいたが

 

「【クライス】には破壊したカード一枚につき、そのカードの持ち主に二枚ドローさせる効果があるんだ。」

 

「へえ~。」

 

 俺が【クライス】の手札増強効果を説明すると2人は納得しそうであったが

 

「でも……それじゃあ、フィールドががら空きに……」

 

 やはり、手札を二枚も補充できるとはいえアドバンス召喚を含めて3枚もカードを損失する俺の戦術に丸藤翔は納得がいかないらしい。

 まあ、確かに単純計算でどう見ても俺の損失は大きいだろう。

 

「それなら、心配無用だよ。

 丸藤翔君。」

 

 そう、普通なら。

 

「え?」

 

「俺が【クライス】の効果で破壊した【竜魂の城】にはもう一つの効果があってね。

 このカードは表側表示でフィールドから墓地に送られた時に自分の除外されたドラゴン族一体を特殊召喚できるんだ。」

 

「えええええええええええええええ!?」

 

「俺が特殊召喚するのは……さっき、【ドラゴン・ウィッチ】の強化に使用した【トライホーン・ドラゴン】だ!」

 

 竜族の魂が宿る城の残骸から頭部に三つ又の角を生やした悪魔竜の最上級モンスターが姿を現した。

 

【トライホーン・ドラゴン】

ATK2850

DFK2350

 

「おいおい……」

 

「矢代さん、本気かよ……」

 

「容赦ねえ……」

 

 俺が全く、無駄のないプレイングを行うと万丈目たちは手を抜くかと思ったのか俺がいつもと変わりなく本気でデュエルをしていることにようやく理解したらしく苦笑いを浮かべ始めた。

 これでもまだ本気は出してない方だけどね。と言うか、俺も俺のデッキも基本的にスロースターターだからこれぐらいでは本気とは言えない。これぐらいで倒られるなんてそれこそ消化不良だよ。

 

「矢代君はいつもと変わらないわね……

 それとも、あのオシリスレッドの子がそれぐらいの実力を出すに値すると思ったのかしら?」

 

 天上院はどうやら中学時代から俺の本質を理解しているのか、俺が本気で十代を叩きのめす(敬意を払う)ことに気づいていた。あと、俺が楽しそうにしていることも気づいている。

 

「そんな……攻撃力が【フレイム・ウィングマン】を上回った……」

 

 どうやら丸藤翔は攻撃力が高いモンスターを召喚されただけでかなり動揺しているらしい。

 ちょっと、デュエリストとして将来が不安になるメンタルだと率直に感じた。

 

〝マスター、ドウドウ。〟

 

 俺の相棒は俺がデュエルの熱気で暴走しないか気になったらしく、暴れ馬を扱う言葉を俺に向けて発してきた。

 いや、まだまだ俺の熱気は臨界点なんか迎えていないよ。それはお前が一番わかっている筈だドラゴン・ウィッチ。

 そして、肝心な対戦相手である十代はと言うと

 

「うおぉぉぉおおおおおおお!!すげぇ……!

 手札を交換しただけじゃなくて最上級モンスターまで召喚か……!

 やるな、輝久!」

 

 エースが破壊されそうなのにものすごく楽しそうにしていた。

 うん、お前がそう言った反応をするのはわかっていた。お前には俺と似たような雰囲気が漂っているし。

 

 

「ああ、やるなら全力だ!バトルフェイズに移行!

 【トライホーン・ドラゴン】で【フレイム・ウィングマン】を攻撃だ!」

 

「ぐっ……!」

 

遊城十代 LP3400→2650

 

「そんな~……クロノス教諭を倒したモンスターが……」

 

「よっしゃあ!さすが、矢代さん!」

 

「あのモンスターをこんなに早くも破壊するなんて。」

 

「ふん……!さすがにデカい口を叩くことはあるな。」

 

「早くもエースカードを失うとはついてないわね……」

 

 とあまりに実技試験の中で記憶に残る活躍をしたことで【フレイム・ウィングマン】の存在は大きかったことでギャラリーは【フレイム・ウィングマン】の退場にはそれぞれ異なる反応が見られた。

 そして、破壊された本人はと言うと

 

「へへへ……やるじゃないか、輝久……

 フェイバリットカードを破壊されたのはデカいぜ。」

 

 自らが頼みとする【フレイム・ウィングマン】を破壊されたことに驚いてはいるが、むしろ、逆に楽しそうにしていた。

 

「おいおい……エースを破壊されたのに笑ってるぞ……」

 

「ふん、所詮は強がりだ。」

 

 天上院を除くオベリスクブルー生は十代のその反応に戸惑いを隠せずにいた。

 そして、天上院はと言うとどこか呆気に取られた表情をしていた。

 十代のその反応に嬉しさを感じた俺はさらに

 

「ありがとう……だけど、このままだと俺も俺のデッキもまだまだ本気を出せない。

 俺はさらにリバースカード発動、【リビングデッドの呼び声】!

 俺は墓地から【クライス】を特殊召喚する!」

 

「何!?」

 

「【クライス】が特殊召喚されたことで再び【クライス】の効果発動!

 俺は【クライス】と【リビングデッド】を破壊する!

 そして、二枚ドロー!」

 

 俺は少し、笑みを浮かべるとさらなる手札増強を狙ってフリーチェーンの汎用蘇生カードの代名詞とも言える【リビングデッドの呼び声】を発動して、再び【クライス】の特殊召喚を狙った。

 【リビングデッドの呼び声】は対象となったモンスターが破壊されるか破壊以外の方法でフィールドから離れるとその意味を失う永続罠だ。しかし、デュエルモンスターズにはそれにすら意味を持たせるカード群もある。

 俺の所有する【クライス】もその一つだ。

 【クライス】と【リビングデッドの呼び声】のコンボは墓地に【クライス】さえ存在すれば、罠を使っていることから時間は多少かかるが禁止カードである強欲な壺と同じハンドアドバンテージを得られる。

 そして、俺の手札は初期の手札と同じ5枚になった。

 

「さらにメインフェイズ2に移行して、俺は墓地の【クライス】を除外し手札から【暗黒竜コラプサーペント】を特殊召喚!」

 

 俺の場に小型のブラックホールが現れ、そこから闇属性の小型のドラゴンが姿を現した。

 

「そして、場に2枚のカードを伏せてターンエンド。」

 

4ターン目

 先攻 矢代輝久 LP3400 モンスター:【トライホーン・ドラゴン】×1 【暗黒竜 コラプサーペント】 魔法&罠:伏せカード×2 手札3枚 墓地3枚 除外1枚

 後攻 遊城十代 LP2650 モンスター: なし  魔法&罠:伏せカード×1 手札1枚 墓地5枚

 

 俺のエンド宣言と同時に十代のターンになる。

 場と手札のアドバンテージ差は歴然。さらには十代にとってはエースとも言える【フレイム・ウィングマン】が倒されたことで十代は圧倒的に不利だ。

 普通なら戦意を喪失する者が多いが

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 十代の瞳から戦意は消えず、そのドロー宣言からは闘気が感じられた。

 

「よし!俺はカードを一枚セット!

 さらに【カードカー・D】を召喚。

 そして、【カードカー・D】の効果発動!

 このカードをリリースすることでカードを二枚ドローする。

 この効果を発動した瞬間、エンドフェイズになる。」

 

【カードカー・D】

ATK800

DFK400

 

5ターン目

 先攻 矢代輝久 LP3400 モンスター:【トライホーン・ドラゴン】×1 【暗黒竜 コラプサーペント】 魔法&罠:伏せカード×2 手札3枚 墓地3枚 除外1枚

 後攻 遊城十代 LP2650 モンスター: なし  魔法&罠:伏せカード×2 手札2枚 墓地6枚

 

「あ、兄貴~!?」

 

「おいおい、いくらなんでも……」

 

「場に壁も作らないで……」

 

「正気か!?」

 

 十代のあまりに一見すると無謀にも見える思い切ったタクティクスにその場にいる全員が動揺を隠せずにいた。

 確かにこの場合ならば壁モンスターでも用意して時間稼ぎをする方が融合を軸にする十代のデッキにとっては良いだろう。

 だけど、

 

「なるほど、手札増強にかけたか……

 それに……」

 

 十代は強欲な壺と制約が割ときついが同じハンドアドバンテージを得られるモンスターを召喚し、手札増強を図り自分のデッキに賭けたのだ。

 【カードカー・D】は確かにたった一枚で強欲な壺と同じ枚数の手札を得られる。しかし、そのデメリットは明らかに重すぎる。

 まず、【カードカー・D】は効果を使用した途端に問答無用で自分のターンを終わらせてバトルも行えない。さらには使用するにはこのターンの特殊召喚も封じなくてもならない。これはあまりにも博打だ。

 だが、十代の判断は間違っていない。ここで壁モンスターを召喚しても結局は突破されてじり貧に悩まされるだけだ。だったら、反撃の布石に賭けた方がいい。

 何よりも十代は自分のデッキを信じている。

 その目には反撃を覗う闘志とカードを信じる心をしっかりと残しながら。そして、十代が今、場に伏せたのは

 

〝へえ~……流石、歴史に名を残すデュエリスト……

 これは楽しみですね?それに……〟

 

 どうやら、ドラゴン・ウィッチも十代が何に自分の命運を任せたのかが理解できたらしく、妙に嬉しそうだった。

 その気持ちは理解できる。俺も彼が何をしようとしているのかが理解できて高揚感を胸に感じている所だった。

 

「俺のターン!……」

 

 俺は興奮を必死に抑えながらもデッキからカードを一枚ドローした。

 そして、

 

「十代……今から、見せよう。

 俺のデッキの実力の一部を……!!」

 

『………………!!』

 

 十代に対して、確かな敵意(敬意)を剥き出しにして宣言した。

 

「俺は手札からチューナーモンスター、【サニー・ピクシー】を召喚!」

 

 俺の場に陽だまりを形にしたような妖精のモンスターが召喚され次に何か起こるのかを暗示するかのように【コラプサーペント】の横に並んだ。

 

【サニー・ピクシー】

ATK300

DFK400

 

「ちゅ、チューナーだって……!」

 

 その言葉に十代は目を輝かせていた。

 当然だろう、今からこの場に現れるであろうモンスターはこの時代においては導入されたばかりでしかも、そのモンスターを召喚するギミックに必要な素材であるチューナーが普及されていないこともあって他の二種よりも目にすることがないカードなのだろう。

 オベリスクブルーの生徒は何枚か持っているが。

 そして、これは俺の持つ最も古い記憶における俺の故郷で使い古された召喚方法に必要なものだ。

 

「この意味が分かるなら、話は早い……

 俺はレベル4の【コラプサーペント】にレベル1【サニー・ピクシー】をチューニング!」

 

 【サニー・ピクシー】が一つの輪となって、その輪をくぐるかの如く【コラプサーペント】が進みそのまま一筋の光となって

 

「シンクロ召喚、現れろ!【転生竜サンサーラ】!」

 

 輪廻の力を司る闇のドラゴンが召喚された。

 

【転生竜サンサーラ】

ATK100

DFK2600

 

「シンクロ召喚……!」

 

 恐らく、デュエルアカデミアに来て初めて目にしたであろうシンクロ召喚に十代は興奮を隠しきれずにいた。

 だが、十代以外の人間からの反応は言うと

 

「おいおい、攻撃力100て……」

 

「矢代さん、こんなモンスターのためにシンクロ枠使ったんすか……」

 

「守備力は確かに高いが……」

 

 とあまり芳しくない。まあ、確かに【サンサーラ】はどちらか言えばこう言った状況では召喚するモンスターじゃないだろう。

 だけど、俺がこいつをシンクロ召喚したのはあくまでも保険だ。

 

「まだまだぁ!俺は墓地送られた【コラプサーペント】の効果でデッキから【輝白竜 ワイバスター】を手札に加える。

 さらに永続罠、【強化蘇生】を発動!この効果で俺は墓地からレベル4以下のモンスター一体を攻撃力100ポイント、レベルを1上げて特殊召喚する!」

 

「なにっ!?」

 

「俺は墓地の【サニー・ピクシー】を蘇生し、

 そして、墓地の【コラプサーペント】を除外して手札の【ワイバスター】を特殊召喚!」

 

 再び、俺の場にレベル2となった【サニー・ピクシー】が現れ、更には【コラプサーペント】と対をなす恒星の力を宿した光の小型ドラゴンが登場する。

 

【サニー・ピクシー】

ATK400(+100)

DFK400

 

【輝白竜 ワイバスター】

ATK1700

DFK1800

 

「またチューナー……」

 

「と言うことは……!」

 

「その通りだ、俺はレベル4の【ワイバスター】にレベル2の【サニー・ピクシー】をチューニング!」

 

 二体のモンスターが異なる形の光となり再び俺のフィールドにシンクロ召喚の輝きが溢れだし

 

「現れろ、レベル6【大地の騎士 ガイアナイト】!」

 

 騎馬と一体化した大地の力を象徴するかのような青と橙色を基調とした鎧を身に纏った騎士が俺の場に馳せ参じた。

 

【大地の騎士 ガイアナイト】

ATK2600

DFK800

 

「れ、連続シンクロ召喚……!?」

 

「なるほどね。

 確かにこれなら単純にモンスターを召喚して攻め手を増やすよりも安定性はあるわね。」

 

「すげぇ……!

 輝久、俺かなりワクワクしてるぜ!」

 

 【サンサーラ】の時と打って変わって【ガイアナイト】の登場にこの場に熱気が集まったのが理解できる。

 だけど、俺程度のシンクロ召喚の使い手なんてザラだと思う。

 

「十代、褒めてくれるのは嬉しいが……

 俺の知っているシンクロ召喚の使い手なんて一ターンに3回以上はシンクロ召喚を普通に決めてくるよ。」

 

「マジか!?」

 

 俺は未来の英雄について語った。

 そう、俺のシンクロ召喚なんてそこまですごいものじゃない。

 そして、何よりも今の俺にとって乗り越えるべき実力者はシンクロではないもう一つの召喚方法を得意としているがタクティクスに関してはあっちのが絶対に上だ。

 俺の実力なんてまだまだ未熟だ。

 

「よし、いくぞ……!

 俺は【トライホーン・ドラゴン】で十代にダイレクトアタック!」

 

「兄貴……!」

 

「決まったな……」

 

「所詮はオシリスレッド。」

 

「クロノスに勝ったのはまぐれか……」

 

「………………」

 

 【トライホーン・ドラゴン】の直接攻撃宣言と同時に誰もが十代の負けを確信した。

 だが、そんな時だった。

 

「リバースカード発動!

【クリボーを呼ぶ笛】!」

 

 十代の場に不思議な空気が流れた。

 それは明らかに俺がドラゴン・ウィッチと共に戦っている時に感じるものだ。

 

「……っ!」

 

「俺はこのカードの効果でデッキから【ハネクリボー】を特殊召喚する!

 来い、【ハネクリボー】!」

 

〝くりくり~〟

 

「あのモンスターは……!」

 

「クロノスの猛攻を凌いだモンスター……!」

 

 実技試験において十代の危機を救った【ハネクリボー】の登場に目を大きくした。

 

〝マスター!あの子ですよ!あの子!〟

 

「ああ、やっぱりか……!!」

 

 俺とドラゴン・ウィッチは十代の場に現れた【ハネクリボー】の期待通りの登場に胸を躍らせた。

 恐らく、あの【ハネクリボー】は精霊のカードだ。

 十代は【カードカー・D】の効果で壁モンスターを自分のターンで用意できない。

 しかし、十代の発動した【クリボーを呼ぶ笛】は速攻魔法。

 つまりは【ハネクリボー】は十代の逆転のためにわざわざ力を貸したのだ。

 

「バトルを続行する。

 【トライホーン】、【ハネクリボー】を攻撃しろ!」

 

〝くりぃ~〟

 

「くっ……ありがとうな、ハネクリボー。」

 

「【ハネクリボー】の効果でこのターンの戦闘ダメージは0か……

 ターンエンド。」

 

 十代を守る精霊によってこのターンにおける決着は見送られ、俺は次に来る十代の反撃に備えて心を構えた。

 

6ターン目

 先攻 矢代輝久 LP3400 モンスター:【トライホーン・ドラゴン】×1 【大地の騎士 ガイアナイト】×1 【転生竜サンサーラ】×1 魔法&罠:【強化蘇生】×1 伏せ

 

カード×1 手札3枚 墓地5枚 除外2枚

 後攻 遊城十代 LP2650 モンスター: なし  魔法&罠:伏せカード×1 手札2枚 墓地8枚

 

「俺のターン……なあ、輝久。

 なんで、お前そんなに楽しそうなんだ?」

 

「ん……?」

 

 十代はドローをし終えるとふと、俺にそう問いかけてきた。

 

「楽しそうにしている……?」

 

「あの矢代が……?」

 

「そりゃ、あれだろ……

 生意気なレッド生に現実を思い知らせるのがだろ。」

 

 オベリスクブルー三人組はどうやら、十代を始めとしたレッドへの優越感からそう言った結論を導き出してきた。

 確かに彼らを含むオベリスクブルーはある意味では貴族みたいな考え方で単に落ちこぼれとされているレッドにこの学園の実力者であるクロノス教諭を倒したとされる十代が在籍しているのは生意気に見えるのだろう。

 

「やっぱり……あの人も僕たちのことを……」

 

 丸藤翔はオベリスクブルーの言葉に怯えだした。

 どうやら、彼は気弱な性格らしいのが理解できる。

 確かに他のオベリスクブルーならば、それは当てはまるだろう。

 だが、その答えはナンセンスだ。

 デュエルにそんなことは関係ない。精神年齢が百を超えようがこの昂ぶりにそんな下らんものは混ざらない。

 

「………………」

 

 次に天上院は沈黙している。

 その理由は理解できる。彼女が俺のこの闘争本能剥き出しの状態を見てなおかつ俺が楽しそうにしている姿を見たのは彼女の兄とのデュエルで見せてから初めてなのだろう。

 そして、それは十代が彼女の兄と同じかそれ以上の実力者を意味することになる。

 

「それは―――」

 

 俺は答えを彼にぶつけようと口を開き

 

「君が諦めないからだ。」

 

 はっきりとその言葉をぶつけた。

 

「え……?」

 

「諦めない……から?」

 

 十代と丸藤翔はその言葉に目を丸くして驚いていた。

 いや、この場にいる誰もが予想もしていないその言葉に呆気に取られていた。

 『諦めない』。それがどれだけデュエルにおいては重要な言葉なのかは俺自身が知っている。

 あの暗い地下における闘技場において、俺は苦しみながらも戦い続けた。

 歩みを止めるな。

 俺の頭に感じたのはそれだった。

 俺にはそれしかできない。

 それしかできないからこそ、それの大切さを知っている。

 自分が美しいと思えないものや素晴らしいと思えないものにどうして目を輝かせることができる。

 ゆえに他人が見せる『不屈』の姿に俺は輝きを感じる。

 絶対的な強者の立場でふんぞり返って弱者を嗤いながら叩き潰すことにどうして目を輝かせることができる。

 だから、俺は十代の逆境から見せる逆転を楽しみにしている。

 

「さてと、十代……

 問答はここまでだ。早く、君が見せる次の一手を見せて欲しい。」

 

 そして、十代はそれを実際に行える要素を持っているのだ。

 これを見て、楽しいと思わずして何が楽しいのか。

 十代がハネクリボーに託した希望、それは十代が何よりもこのデュエルを諦めていない証拠だ。

 それにハネクリボーは応えたのだ。

 となると、十代は必ず次のターンで反撃に出るはずだ。

 精霊とデュエリスト、否、デッキとデュエリストは一心同体だ。

 十代の反撃が楽しみでならない。

 俺の言葉を聞くと十代は

 

「……ああ。

 今から、始まるぜ!

 俺と俺のデッキのモンスターたちの逆転を!」

 

 俺が向ける期待を受け取ったのか、明らかにやる気を出していた。

 

「なんだと……!?」

 

「馬鹿な……!?」

 

「この状況でそんなことが……!?」

 

 オベリスクブルーの三人は十代のその言葉に信じられないような顔をしていた。

 むしろ、俺は彼らの反応の方が驚きを隠せないが。

 十代のデッキの要の戦術は融合。つまりは手札と融合さえあればいつでも反撃できるのだ。

 なぜ、その可能性を考えられない。

 

「いくぜ、俺は手札から【E・HERO エアーマン】を召喚!」

 

 十代の場に機械的な装備を装着した風属性のヒーローが召喚された。

 

【E・HERO エアーマン】

ATK1800

DFK300

 

「【エアーマン】は召喚、特殊召喚された時に二つの効果の内、一つの効果を選択して発動できる!

 一つはデッキからE・HEROを手札に加える効果、もう一つは場の魔法と罠をHEROの数だけ破壊できる効果だ。

 俺はデッキからHEROを手札に加える効果を選択して【E・HERO オーシャン】を手札に加えるぜ。

 そして、俺は【融合】を発動!俺は場の【エアーマン】と手札の【オーシャン】を融合!」

 

「来るか……!」

 

 十代は二枚目の【融合】を握っていたのだ。

 【ハネクリボー】が繋いだ可能性は十分に十代を逆転へと導いたのだ。

 

「来い、【E・HERO アブソルート・Zero】!」

 

 十代が召喚したのは名前が示すかの如く凍気を漂わせたまさに純白のヒーローであった。

 

【E・HERO アブソルート・Zero】

ATK2500

DFK2000

 

「攻撃力2500か……確かにすごいにはすごいが……」

 

「矢代さんの場には攻撃力2850の【トライホーン】と攻守2600の【サンサーラ】と【ガイアナイト】がいるんだぜ?」

 

「ふん、ただのはったりか。」

 

 十代が場に出した氷のヒーローのステータスだけを見た万丈目たちは軽んじたが

 

「い~や、まだ俺には召喚するヒーローがいるぜ?」

 

「……!」

 

 十代はそれに対して、悪戯心を見せるかのように手札の一枚を手に取り

 

「さらに俺は手札から【ミラクルフュージョン】を発動!

 このカードは墓地とフィールドのモンスターを素材としてE・HEROを融合召喚カードだ!」

 

「なにぃ!?」

 

 その逆転へのさらなる布石を投じた。

 これが融合の強さだ。融合モンスターの中には素材が重すぎて召喚しづらいモンスターが多くいる。

 だが、その問題を解消するためにあらゆる場所から素材を使う融合カードも多く存在する。

 これは恐らく、かのデュエルモンスターズの生みの親であるペガサス・J・クロフォードがシンクロとエクシーズと言ったかつて軽く見られていて価値がなかったと言われるステータスの低い低レベルモンスターへの活躍の場面を与えながらも手軽さでは前者よりも劣る融合が廃れない様にするための手段でもあったのだ。

 融合デッキの恐ろしさは融合魔法一枚だけで一気に強力なモンスターを登場させることのできる華やかさなのだ。

 そして、それは目の前で俺に起きている。

 

「俺は墓地の【スパークマン】と【バーストレディ】を素材として

 【E・HERO The・シャイニング】を融合召喚!来い、【シャイニング】!」

 

 十代の場に光輪を装着したまさに日輪をイメージさせる輝きに満ちた白き光のヒーローが召喚される。

 そして、奇しくも十代の場には絶対零度と日輪と言う異なる白さを持つ二体のヒーローが並んだ。

 

【E・HERO The・シャイニング】

ATK2600

DFK2100

 

「【シャイニング】の攻撃力は除外されているE・HERO一体につき、300ポイントアップする。」

 

「と言うことは……!」

 

「あのレッド生の除外されているヒーローは二体……!」

 

「つまりは攻撃力は……」

 

「3200……」

 

【E・HERO The・シャイニング】

ATK2600→3200

 

「すごい!すごいよ、兄貴!二回も融合を決めるなんて!」

 

「……さっきの意趣返してことかな?」

 

 二体連続の融合召喚に俺は少し笑ってしまった。

 十代は俺に先程やられた連続シンクロ召喚に対して、それに対抗するかの如く今度は同じ回数だけ融合召喚を決めて来たのだ。

 俺はそれに対して、笑ってしまった。

 

「ああ、さっきの面白いものを見せてもらったお礼だぜ、輝久。」

 

 十代は俺の言葉に対してそのまったくの悪意のない返しで応えた。

 

「やれやれ、やられたよ……だけど、仮令【トライホーン】か【ガイアナイト】がやられても次のターンで俺は反撃するよ?」

 

 と俺はすぐに態勢を簡単に整えることができることから余裕を込めてそう言った。

 俺のデッキのコンセプトは基本的に巻き返し可能な陣形を作り出すことだ。倒れても倒れても復活する。それが俺のデッキだ。

 ゆえに十代がこのターンで俺を完全に倒すことができない限りは次のターンで反撃ぐらいはすぐにできる。

 だが、その俺の言葉は

 

「い~や。このターンで決めさせてもらうぜ!」

 

 十代のその一言で否定された。

 

「なんだって……?」

 

 十代のその言葉に俺はこのデュエルで初めて敗北の予感を感じた。

 

「俺はこいつを発動するぜ!

 【融合解除】!」

 

「【融合解除】だと……?」

 

 十代が発動したのは場の融合モンスターをエクストラデッキに戻すカード【融合解除】だった。

 あれは確か、十代の最初のターンから伏せていたカードだ。

 

(なぜ……このタイミングで……)

 

 【融合解除】は相手の融合モンスターへのメタカードであると同時に自分のモンスターを再利用するカードであり、展開するカードだ。

 そして、何よりも相手の場が弱体化した時の相手への追撃用のカードでもある。

 俺なら、確実に勝てる時か防御にしか発動しないカードだ。それを十代は勝つために使うと言ったのだ。

 

「おいおい、せっかく出した融合モンスターをデッキに戻すのか?」

 

「このタイミングは間違ってんだろ?」

 

「どれだけモンスターを展開しても矢代の布陣を突破できない限りは勝てるわけないだろ。」

 

 十代の得体の知れない戦術に対戦している俺だけではなくブルーの十代たちレッドを見下していた三人組も馬鹿にしながらも動揺を隠せずにいた。

 

「俺は……【アブソルート・Zero】を融合解除するぜ!

 戻ってこい!【エアーマン】!【オーシャン】!そして、特殊召喚された【エアーマン】の効果で手札に【E・HERO】を手札に加える。」

 

【E・HERO オーシャン】

ATK1500

DFK1200

 

「あ、兄貴!?どうして、せっかく召喚した融合モンスターを!?」

 

「何を狙っているの……?」

 

 十代のその戦術に先程から俺たちのデュエルに一々、驚きを隠せずにいた丸藤翔どころか常に冷静な天上院すら目を見張っていた。

 確かに【エアーマン】の効果を再利用できるのは大きいが、この場合はむしろ相手のターンに実行すべき戦術だ。

 なのに十代はこの戦術を選んだ。これはいくらなんでも悪手にしか思えない。 

 だが、俺は自分の判断を愚かだと認識することになる。

 

「なあ、輝久……お前の場のモンスター達はどうなっている?」

 

「なに……?」

 

 十代のその言葉を聞き、俺は自分の場のモンスターを確認しようと先程から見ていなかった自分の場に目を配った。

 

「なっ……!?」

 

 そして、俺の目には驚くべき光景が映った。

 

「なあ!?」

 

「矢代さんの場のモンスターが!?」

 

「凍っているだと!?」

 

「な、なにが起こったの……」

 

 そう、俺の場に存在しその雄姿を確かに示していた【トライホーン】、【ガイアナイト】、【サンサーラ】の三体が氷に包まれていたのだ。

 

(ま、まさか……!?)

 

 俺はこの状況の意味をすぐに探るためにデュエルディスクを目にした。

 そして、そこにあったのは

 

「俺のモンスターが……全滅だと……!?」

 

 俺の場のモンスター全てが破壊されて墓地に送られたと言うディスクの処理だった。

 

「【アブソルート・ZERO】にはフィールドから離れた時に相手の場のモンスターを全て破壊する効果があるんだ。」

 

「なんだと!?」

 

 十代のその言葉に俺は頭が混乱しだした。

 なぜなら、その効果は明らかに禁止カードであるサンダー・ボルトと同じ効果なのだ。

 それどころか、【アブソルート・ZERO】はモンスター。

 しかも、効果の発動条件は場から離れること。つまりは相手の除去全てに対応していることになっているのだ。

 戦闘破壊、効果破壊、バウンス、除外。あらゆる方法でしかも相手ターンにも発動できると言うある意味ではサンダー・ボルトよりも凶悪すぎる効果だ。

 それに加えて、十代は【融合解除】によって展開とさらには【エアーマン】によるサーチすらも行っているのだ。

 期待よりも上過ぎる十代の反撃に俺はしばらく、呆然とした。

 

「な、なんていうデタラメな効果だ……」

 

「信じられない……」

 

「あ、ありえん……」

 

「やった~!兄貴!」

 

「矢代君に勝つと言うの……?」

 

 十代のあまりにも鮮烈な形勢逆転に誰もがこのターンで十代の勝利が確定したと思っている。

 だが

 

「フフフ……」

 

 俺はどうしても抑えきれずに

 

「あっはははははははははははは!!」

 

 このあまりの理不尽とも言える形勢逆転に楽しすぎて大きな笑い声をあげてしまった。

 

「矢代の奴……」

 

「彼……完全に火が着いちゃったわね……」

 

「あの人、どうしちゃったんすか!?」

 

 周りはあまりにも俺の常軌を逸した反応に俺のことを知っているオベリスクブルー全員以外である丸藤翔は困惑しだした。

 当然だ。俺は自分が完全に追い込まれているのに笑っているのだ。これを初めて見て正気だと思う奴なんていない。

 

「あははははは……

 ごめん、ごめん。十代、君のあまりの全力が楽しすぎて少し我を忘れちゃったよ。」

 

〝あ~あ……

 マスターの悪い癖がまた出ちゃいましたよ……〟

 

「え……?」

 

 ドラゴン・ウィッチは長い付き合いから俺のこのどうしようもない悪い癖にタメ息を吐いた。

 俺はなんとか笑いを止める様にして十代にそう言った。

 決して、今の十代のプレイングを馬鹿にしてはいない。むしろ、俺は感謝している。

 これほどの猛反撃。中々味わえることではない。

 絶対的な優勢を覆される。普通ならばそれに誰もが打ちひしがれる。

 

「だけど……」

 

 だが、十代は完全なるミスを犯した。

 それは

 

「俺をこのターンで倒せないのは大きなミスだったよ!」

 

「……!?」

 

 俺に対して、次のターンを残してしまったと言うことだ。

 

「え!?フィールドががら空きになったのに……!?」

 

 丸藤翔はその言葉に信じられないものを見る様な目をした。

 

「ああ、確かに俺の場は〝一瞬〟、がら空きになった……」

 

 そう、俺の場ががら空きになったのは紛れもない事実だ。

 

「何……?」

 

 たった一瞬だが

 

「ん、なんだありゃ……?」

 

「あのマークは……死者蘇生!?」

 

 その言葉の後に続いて現れたのはこのデュエルモンスターズにおいて、最も有名であり知名度の高い蘇生カード死者蘇生の刻印。

 そして、それを見終えると俺は

 

「蘇れ!【トライホーン・ドラゴン】!」

 

 先程の【アブソルート・Zero】の効果によって倒された【トライホーン・ドラゴン】の名を叫び、再び悪魔竜は咆哮をあげながら俺のフィールドに姿を現した。

 

「う、うそおおおおおおおおおおおお!?」

 

「なんで、【トライホーン】が……」

 

 十代と翔は【トライホーン】の復活に驚きを隠せずにいた。

 

「【サンサーラ】には相手の効果もしくは戦闘で破壊された場合に死者蘇生の効果と同じ力を発揮する能力があるのよ……」

 

 天上院が戸惑いを隠せずにいる2人に【サンサーラ】の効果を説明した。

 【サンサーラ】の効果を説明する天上院の顔は苦々しいものであった。俺の場に【サンサーラ】がいて、誰もがこいつを含めた俺の布陣を突破した時は勝利を確信した時だ。

 だが、そんな勝利への確信をなかったことにするのがこの【サンサーラ】の効果だ。

 そして、誰もが次のターンでその勝利への憧れ、希望、期待を壊される。 

 

「そ、そんな……せっかく、がら空きになったのに……

 で、でも……まだ兄貴の場のモンスターで一気に攻撃すれば……!」

 

 丸藤翔は十代の勝利に少し遠ざかったと思い、一瞬落ち込むがすぐに持ち直した。

 だけど、そこにはデュエルを楽しむ余裕が感じられなかった。

 そこにあるのはなんとか勝利してやると言う焦燥感と敗北への恐怖感しかない。

 いや、丸藤翔だけじゃない。万丈目も、その取り巻きも、天上院もまた楽しみを感じていない。

 

「すげぇ……」

 

「兄貴……?」

 

 だが、十代は変わらなかった。

 

「すげぇよ!輝久!次々と俺の予測できない戦いばかりをしてきて本当に面白い!

 俺、こんなにワクワクするデュエルができて本当に楽しいぜ!」

 

「「「「「なっ……!?」」」」」

 

 十代はただ、俺に勝利への布石を多少閉ざされたのにも関わらずにもただ楽しそうだった。

 そこにあったのは

 

「あはは……君も相当なデュエル馬鹿だね?」

 

 俺が常にデュエルに感じているものと同じものであった。

 

「それはお互い様だろ?」

 

「違いないね……」

 

 俺と十代は互いに敬意を持ってそう言った。

 

「さて、十代……俺は次のターンで君を倒せる……

 そう豪語してもいいかな?」

 

「なっ……!?」

 

「矢代君が……」

 

「勝利宣言だと……!?」

 

 俺の確かな勝利宣言。それは明らかなる相手への挑発だ。

 こんなのは相手に対する礼儀を失くしたとも言える発言だ。

 それなのに俺はどうしても十代に対して、そう言ってしまった。

 普段と全く異なる俺のその態度に俺を知る誰もが驚愕を隠せない。

 それほどまでに俺は十代とのデュエルが楽しくて仕方ないのだ。

 

「そうか……だけど、俺のデッキだってまだ負けてないぜ!

 行け!【シャイニング】、【トライホーン】を攻撃だ!

 オプティカル・ストーム!」

 

 十代は俺のその言葉に少し、残念そうな顔をしていたがそれでも気にせずに攻撃宣言を下した。

 だが、俺は無情にも

 

「そうはいくか!罠カード発動!【鎖付きブーメラン】!」

 

 3ターン前に伏せていた罠で防いだ。

 これで俺の勝ちは確定した。

 

「あぁ……!」

 

「くっ……!やっぱり、罠を用意していたのか……!」

 

「【エアーマン】の効果で罠を破壊しなかったのはミスだったね!」

 

 そう、十代はミスを犯した。

 十代の場の【エアーマン】には魔法と罠を破壊できる効果があるのだ。

 十代は恐らく、俺の反撃を考えて次の自分のターンに準備を整えていたのだ。

 そして、俺何よりも俺に次のターンを与えてしまったのだ。

 

「俺は【鎖付きブーメラン】を【トライホーン】に装備!」

 

【トライホーン・ドラゴン】

ATK2850→3350

 

「これで【シャイニング】の攻撃力を上回った!

 

「ぐっ……!」

 

「迎撃だ、【トライホーン】!」

 

遊城十代LP2650→2500

 

「【シャイニング】……!

 【シャイニング】の効果発動!除外されているE・HEROを二体、手札に戻す。

 俺はこれでターンエンド……」

 

7ターン目

 先攻 矢代輝久 LP3400 モンスター:【トライホーン・ドラゴン】×1 魔法&罠:【強化蘇生】×1 【鎖付きブーメラン(【トライホーン・ドラゴン】)】×1 手札3

 

枚 墓地7枚 除外2枚

 後攻 遊城十代 LP2500 モンスター: 【E・HERO エアーマン】×1 【E・HERO オーシャン】×1  魔法&罠:0 手札3枚 墓地6枚

 

 十代の手札には恐らく、次のターンで俺を倒せるカードは存在するのだろう。

 だが、たった1ターン。たった1ターンの誤差でも敗北は敗北なのだ。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 そして、俺は名残惜しくもドローする。勝てるとは言え、このあまりにも燃えるデュエルを終わらせるのが本当に惜しかった。

 だけど、ここでわざと手を抜くのは相手への侮辱に他ならない。 

 

「なあ、輝久。

 本当にお前て楽しそうにカードを使うんだな。」

 

 十代はそう言った。俺はそれに対して

 

「ああ……こいつらは俺の誇りだ。

 だから、こいつらが全力に出せるように俺は戦うんだ。」

 

 毅然とそう言った。

 

「そうか……だったら見せてくれよ!

 お前のさらなる全力を!」

 

「あいつ……」

 

「兄貴……」

 

「彼……」

 

 十代のあまりの敗北への恐れを知らないその言葉にこの場にいる誰もが注目せずにいた。

 俺はそんな彼の期待に応えるために

 

「ああ、だったら俺のとっておきを見せよう!

 俺は手札からチューナモンスター【ギャラクシーサーペント】を通常召喚する。」

 

 十代に決定的な敗北を与える星々の輝きを身に宿すドラゴンを召喚する。

 

「また、チューナー……」

 

「来るか……!」

 

 翔と十代はそれぞれ、俺が召喚しようとするモンスターに察しがついたようだ。

 そう、俺が出すモンスターは

 

「俺は……場のレベル8【トライホーン・ドラゴン】にレベル2の【ギャラクシーサーペント】をチューニング!」

 

「合計レベル……10……!」

 

 俺のデッキにおいて、最強クラスのステータスを誇る大型モンスターだ。

 

「現れろ!レベル10【トライデント・ドラギオン】!!」

 

 三つの首を持つ強大な力を誇るまさに暴竜とも言えるドラゴン族の大型シンクロモンスターが巨大な熱気を伴って君臨した。

 

【トライデント・ドラギオン】

ATK3000

DFK2800

 

「攻撃力3000……でも、これなら攻撃力3350の【トライホーン・ドラゴン】の方が……」

 

 丸藤翔は大型シンクロモンスターである【トライデント・ドラギオン】の登場に驚いてはいたが攻撃力では【トライホーン・ドラゴン】の方が上であったために拍子抜けしたようだが

 

「いいや、このカードはドラゴン族を素材としてしかシンクロ召喚できないがそれすらも意に返さない効果を持っている。

 こいつはシンクロ召喚に成功した時、自分の場のカードを二枚まで破壊することができ、その枚数分このターン攻撃できる!」

 

「そ、そんな……!?攻撃力3000の連続攻撃!?」

 

 【トライデント・ドラギオン】の効果に度胆を抜かされたようだ。

 

「すごいな……輝久、このモンスターや色々なモンスターを活かすためにデッキを作ったんだな。」

 

 召喚が比較的に難しい【トライデント・ドラギオン】の召喚に十代は俺のデッキを褒めてきた。

 そうだ。俺のデッキには癖が強いカードが多く存在する。しかし、一枚一枚がのその特徴を活かし、それらが連携することでどんな相手に勝てるようにと俺のデッキはできている。

 シンクロに使われることで場に残りやすい【強化蘇生】、ドロー効果と破壊効果は強力だが少し動きが遅い【光帝クライス】、レベル1だがその効果を活用するには手間がかかる【サニー・ピクシー】、墓地にモンスターがいなければ効果を発揮できない【竜魂の城】、最上級モンスターに動きが遅い【トライホーン・ドラゴン】、シンクロモンスターであるが他のレベル6シンクロよりも優先されやすい【ガイアナイト】、いれば安心だがどうしても効果の発動は相手頼みになってしまう【転生竜サンサーラ】。

 そして、【ドラゴン・ウィッチ】。だけど、こいつらのおかげで俺は戦えるとも思っている。

 だから、十代のその言葉は本当に嬉しかった。

 

「……ああ、ありがとうな。行くぞ、十代!これが俺と俺のデッキたちによる猛攻だ!

 俺は場に残された【強化蘇生】を破壊し【トライデント・ドラギオン】の攻撃回数を2回にする!」

 

 【トライデント・ドラギオン】はシンクロ召喚によって場に残されていた【強化蘇生】を破壊し、左に首にその力を取り込んだ。そして、これによって十代にトドメをさせる攻撃回数

 

を加わった。

 

「【トライデント・ドラギオン】、このデュエルに幕を引け!!【エアーマン】と【オーシャン】を攻撃!

 タイラント・ツイン・バースト!」

 

 俺の攻撃宣言と同時に【エアーマン】と【オーシャン】に向かって、【トライデント・ドラギオン】が灼熱の業火とも言える竜の息吹を中央と左の首の咢から放つ。

 そして、十代は

 

「今回は俺の負けか……

 だけど、輝久。次は俺が勝つぜ。」

 

 と不敵にもそう言ってきた。

 俺はそれに対して

 

「ああ、待っている……」

 

 ととても嬉しく思いながら期待の言葉をかけた。

 

遊城十代 LP2500→1000→0

 

〝ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!〟

 

 そして、【トライデント・ドラギオン】が勝利を雄叫びをあげ、このお互いに全力を出し合ったデュエルは終わりを告げた。

 

「くぅ~……負けた、負けた!

 だけど、ガッチャ!楽しいデュエルだったぜ!

 輝久!」

 

 十代は負けたことを悔しがりながらもとても嬉しそうにどうやら、彼なりの相手への賛辞を込めてのサインを送ってきた。

 

「ああ、俺も楽しかった。

 次も俺が勝つけどね。」

 

 俺は挑発的にそう言った。

 

「い~や、今度は俺が勝つぜ!」

 

 と十代も売り言葉に買い言葉の返しをしてきた。

 そして、ブルーの生徒を見ていると呆然としていた。

 十代と俺のデュエルはどうやらあまりにも彼らにとってはついて行けない応酬だったらしい。

 どうやら、これで十代が決してまぐれでクロノス教諭に勝ったとは思われないだろう。

 むしろ、これでレッドに対する認識が多少でも和らげば嬉しいことだ。

 この時、俺は彼のその姿に多少なりの期待を感じた。

 もしかすると、彼ならば俺のことを裏切らない友になってくれるのではと。

 先程、激しい反撃に次ぐ反撃。

 それでも十代は楽しいと言ってくれた。

 それなら、本当の意味で仮令、俺のことを忘れても俺に対して恐れを抱かずに友人でいてくれるのではと。

 俺のことを『化け物』と罵らずにいてくれるのではと。

 

(いや……やめよう。)

 

 けれど、俺はそれを辞めた。

 決して十代のことを信頼していない訳ではない。

 だけど、俺はそう言った期待を何度も裏切られたことがあるのだ。絶対に裏切らないと信じても『あいつ』が来るたびに俺の居場所は世界からなくなり、その期待のぶんだけ悲しみと

 

苦しみと辛さが増すだけだった。十代とのデュエル自体は楽しかったし、精霊が見える彼ならばあるいは『あいつ』の影響を受けないと思うが、それで俺を裏切ったら俺の心は絶望の淵

 

から立ち上がれなくなるだろう。

 きっと、進み続けるだろうがただそれだけの人間にしかならなくなる。

 そして、同時にそれは

 

(それじゃあ、俺は彼のことを利用しているみたいだしな……)

 

 十代を利用しているみたいだから嫌だった。俺は自分が友人だと決めた人間に対しては決して見返りなんか求めるつもりなんてない。そいつらと一緒にいれるだけで俺は幸せなんだ。

 

だから、友人を利用することなんて考える自分が許せなくなる。

 

〝マスター……?〟

 

「ん?どうしたんだ、輝久?」

 

 ああ、結局のところあれだ。俺はデュエルのこと以外には臆病者なんだ。

 そのことを隠そうとしているとドラゴン・ウィッチと十代が俺の表情の異変に気づいて俺の顔色をうかがってきた。

 

「……いや、なんでもない。それよりも本当にありがとう。」

 

 俺はすぐに彼と彼女に余計な心配を掛けまいと平然を装った。

 

「そうか、これからよろしくな。

 輝久!」

 

 彼は手を差し伸べて俺に対して何の気兼ねなくそう言って欲しいと『普通』の人間としての態度で俺に接してくれた。これはいつも通りだが、それでも俺はその好意だけは嬉しく思い

 

「ああ、これからよろしく」

 

 俺は彼の手を握りそう返事をした。なぜか、俺はここでも失うことが虚しい宝物を再び作ってしまった。

 と考えた。

 これがこれから始まる俺にとっては掛け替えのない三年の始まりだった。




とりあえず、長らくお待たせしました。
デュエル構成とそれぞれのデッキ構成、さらには会話文を入れないとまずいので時間がかかりますね。
ここで判明するリメイク前とリメイク後の比較は
・輝久君はデュエルにおいてはメンタル強いけど、それ以外だと弱い(特にトラウマ抉られることに関しては)。
・十代が普通にHEROのガチカード使用(ちゃんと当時のカードも使用もしますのでご安心を)。
・オベリスクブルーが強気なのはエクシーズやシンクロ、ペンデュラムを持っている(どこぞの次元のトップスとコモンズ並みにカードプール格差)。
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