ダンジョンに救済を求めるのは間違っているだろうか   作:美宇宙

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帰還

「君は?」

 

目の前に広がる迷宮、その入り口で出会った少年が少女に尋ねた

 

「……アイズ」

 

彼女がそう答えれば少年は笑顔で自分の名を口にする

 

「俺はカイ、オリムラ・カイ。これからよろしくね、アイズ」

 

それが、未来剣姫と呼ばれる少女と少年の出会い

 

 

「総員、撤退だ」

 

そこは迷宮(ダンジョン)と呼ばれる大穴、どこまでも続くモンスターの巣窟である場所の50階層

彼らの前にいる一匹のモンスター、完全な異常事態(イレギュラー)であるそれが姿を現したのだ

芋虫のような下半身を持ちながら、上半身は女性をかたどったような姿のモンスターがゆっくりと前進する

彼らはロキ・ファミリア、この迷宮の上に立つ迷宮都史オラリオで最も大きなファミリアの一つだ

その彼らに襲いかかった芋虫型のモンスターの進化形態のようなモンスター、その全長はこの迷宮の階層主と同等といえるだろうそれが彼らを襲っていた

 

急に現れたこの芋虫型の特徴は腐食液を吐くことにある

一般的な武器も、迷宮の岩盤さえ溶かすそれは身体を切った際、血の代わりとして噴きだされる

通用はするが武器は消える、まさに相手にとって自分たちの攻撃は諸刃の剣だ

そう、だからこそあのモンスターを倒そうとすれば必ず多大な被害が起きる

 

ロキ・ファミリア団長であるフィン・ディムナの指揮の元撤退を開始する

必要最低限の荷物を担ぎ上の階層へと進み始める中、1人あのモンスターに立ち向かう

金色の髪を翻し、風を纏い疾走する彼女の名はアイズ・ヴァレンシュタイン

オラリオ最強の女剣士であり、彼女自身が剣を使うこともあり2つ名は剣姫

 

彼女の愛剣であるデスペレートは特殊武器(スペリオルズ)であり 不壊属性(デュランダル)

その特性上あのモンスターの腐食液にも耐える武器で、彼女は芋虫型と戦闘を繰り広げた

団長の命令である時間稼ぎを優先していた彼女にモンスターの攻撃、あの腐食液の攻撃が放たれた

防御が間に合わない、逃げることもかなわないほどのモンスターの完璧なタイミング、腐食液を受けると思い目をぐっととじる彼女にそれは当たらなかった

 

何かが跳ね返る音が耳に聞こえる

 

「ーーーーーーーーーーーーッ!?」

 

モンスターの悲鳴、その後から自分の周囲が暖かくなるのを感じた少女はゆっくりと閉じていた双眸を開いた

自分の目の前に広がる妙な光景、迷宮から溢れ出す綺麗な光と、モンスターの下半身が溶け落ちているその姿

そして自分の前に立つ黒いコートを着込んだ誰かは、右手に持った青い装飾の鞘に包まれたままの刃を出していない剣をゆっくりと構えた

周囲の暖かな光を引き寄せた剣の姿は巨大な一条の光とかし、それを

 

「エクスブレイザー!!!」

 

振り下ろした

天井をえぐりながらモンスターの頭上にせまるそれに対抗する芋虫型は腐食液を吐きだした

しかし、消えたのは腐食液の方だった

そして、止められなかった光の剣はモンスターを包み込んだ

 

完全消滅したモンスター

先ほどまで握られていた剣は光となって消え去り、周囲にあった光も消え、またいつもの迷宮にへと姿を戻した

黒いコートを着た誰かが、アイズの方に振り向いた

フードを深くかぶっているせいで表情がわからないが、その口だけははっきりと見えた

少し嬉しそうに三日月を描いた唇、そこからでもいまその人がどんな表情をしているかはわかる

 

アイズがそっと手を伸ばす

先ほどの声からして男性、その声に聞き覚えはある

昔よく聞いていた声、ここに潜り始めた日から2年半、ずっと聞いていた声

そして6年半もの間、ずっと聞いていなかった声

懐かしいくも愛おしい人の名を彼女が口にする

 

「カイ?」

 

その名前に反応し、最初は口をポカンと開き、でもまた嬉しそうにして彼はフードをとった

黒い髪に彼女同様の金色の瞳、その何もかもを彼女は知っている

突如として消えた少年、いくら探しても見つからなかった少年が今、彼女の前に帰還した

 

「覚えていてくれたんだね、アイズ」

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