ダンジョンに救済を求めるのは間違っているだろうか 作:美宇宙
「なあアイズ」
「何?」
「俺の覚えが正しかったら君の家は逆方向だった気がするんだ」
「気のせい」
「ならさ、なんで俺と同じ方向に歩いてるの?俺今家に行こうと「気のせい」……じゃないよね?」
唐突だが、何故かアイズと俺は一緒に行動している
朝何もなく起床し、一緒にご飯食べて何気ない時間を過ごした後解散しようという話になって家を出たはずなのだ
だが彼女は別れるどころか離さないように俺の手をぎっちりと握りしめ、俺の歩く方向に歩いているのだ
完全におかしい
まず考えて欲しい、町外れにある教会に行くまでの間、既に何百人単位で俺たちを過って行っているはずだ
その中手を握っている男女、しかも片方はあの剣姫であるアイズだ、この意味をご理解していただきたい
完全に勘違いしてらっしゃる方がいらっしゃいますよアイズさん、君人気高いんだよ?神にも負けてないんだよ?
「アイズのホーム、えーっと……黄昏の館だっけ?先にそっちに行く?」
「……なんで?」
「いやだって俺のせいで帰ってないんでしょ?顔見せとかないとみんな心配するよ?」
実際は俺が彼女から逃げるための作戦である
彼女のホームに行って、二日前のことを盾に彼女だけを戻してそのまま帰宅
完璧だ、これなら
「いける!」
「何が?」
「あ、いや何も!?」
なんとか誤魔化してみるものの怪しそうな目を俺に向ける彼女
いやそんな目で見ないでくれよ、俺の精神がギリギリと削られてるから
「大体……ん?」
言葉の続きを言おうとした時、後ろから視線を感じた
数からして三人だろうか、動かずじっとこちらを見ているようだ
気になって後ろを見れば、其処には褐色の肌を持つ少女2名とエルフの可愛らしい少女1名の計3名がこちらをずっと見ている
というかティオナにティオネだ、もう1人の子は前の遠征の時にいた子だ
なんでここに?というかなんでこっちをじっと見ているの?
なんて彼女らの事を見ていたら視線に気づいたのかティオナが不思議な行動をとった
自分の服をくいくいと、何かを伝えるかのように引っ張ったのだ
顔を傾げれば次はティオネがある場所に指を指す
その方向を見やればそこは雑貨店だった、いろんな物が売られていて店の前で何を買うか迷っている人々が見受けられる
服、雑貨店?これになにが……あ
服屋?でもなんで服屋なんか、俺今ある服で十分なんだけど
また顔を傾げ彼女らにヒントを問う、そうすれば彼女らは最後のヒントと言わんばかりに俺の横を指差した
……まさかアイズの服を買いに行けとかいうんじゃないだろうな
やっと気付いたと言わんばかりの表情を見せるティオナ、呆れたように額に手を当てるティオネ、何故かあたふたとするエルフの少女
どうやら正解のようだ、つまり彼女らは俺にアイズの服を買わせたいようだ
「いや無理だって」
「何が?」
「あ、いや、何もない」
大体買いに行けと言われても肝心の服はどうする気なのだろうか
そもそも服などに興味のない俺には彼女の服をどう選ぶかなんてわかるはずがない
更に彼女自身、服を買いに行くことなんてほとんどないだろうし、そういう事に興味はさほどないはずだ
そんな二人で一体どうしろと?
彼女らに再度目線を送れば、ティオナが拳を握り、親指をぐっと立てた
要するに頑張れ、ということですね、他人任せという事ですねわかったよコンチクショウ
「アイズ、買い物に行こう」
「え?」
「君の服を買いに」
こうして、彼女らの思惑どうり(?)俺と彼女のデートが始まった