ダンジョンに救済を求めるのは間違っているだろうか 作:美宇宙
今の状況をありのままお伝えしよう
アイズと顔を合わした後ロキ・ファミリアの主要メンバーがアイズを気にしてか殆どが50階層に戻ってきて、そこで顔を合わせた瞬間ほとんど全員によって縄で縛られたのが数分前
今はその主要メンバーに囲まれる感じで、一人は真横にいるけれど、俺は縄で縛られそこで前方にいる小人に視線を送っているというわけだ
「なんで俺は拘束されてるんだ?」
「カイが、逃げないようにするため」
「と言われても」
俺の質問に答えたのは今俺の横で俺の手をがっしりと握って逃がそうとしないアイズ
昔、俺が初めてこの迷宮に潜る際、一緒にスタートを切った少女であり、俺の初恋であり今も好きな少女であり、俺が恐怖した少女だ
いまでこそ普通に喋れてはいるが、恋愛感情よりも、俺の中にある恐怖心のせいで昔ならば冷たく接していたことだろう
「それで、なんでアイズの前から姿を消したの?」
俺に質問をする褐色少女、アマゾネス姉妹の妹の方であるティオナ・ヒリュテ
天真爛漫でとにかく明るい少女ではあるが少し怒ってそうな雰囲気だ
そして、俺はこの雰囲気を知っている
「諸事情です」
間違えた選択肢をとれば間違いなく終わる、俺が
「諸事情って言っても6年半も姿消すことないじゃん!」
「俺だって忙しかったんだよ?無理言わないでくれ」
「ダンジョンに潜らず何をしてたっていうのかしら?」
痛いところを付いてきたのはその姉ティオネ・ヒリュテである
ここの団長であるフィンに絶賛恋している乙女、だと思う
だがそれも俺がこの人たちと関わりを持っていた6年半前の話であるが
「……諸事情です」
何も言えない俺は諸事情を言い回す
事実ではあるが、顔を出すことぐらいなら出来ていたはずで、それがバレれば絶対に終わる
勘のいい数人はすでに気づいているかもしれないけど
「諸事情だけじゃん!」
「よく考えて欲しい、人それぞれにあるんだそれぐらい。君だってそうだろ?ティオナ」
「それもそうだけど!」
「まあここは穏便にいこう、ね?カイ」
「……」
この人が一番相手しづらい人、フィン・ディムナ
ここの団長である彼は当然オラリオの中でもトップクラスの強さを誇り、彼の戦っている姿は二つ名よろしく
小人であるためその姿は他の人と比べると小さいがこれでも覚えが正しければ今は40を超える人だ
「なんで急に消えたりしたんだい?」
「諸事情です」
なんとしてもこれで貫き通す
過去の事件を喋る気なんてまんざらないし、これを喋れば俺にはリスクしかない
最悪俺はこの街から追い出される、そうなる可能性があるのならば根から潰すべきだと俺は思う
「じゃあ後はホームでじっくり聞こうかな」
「え?いやいやいや、冗談きついですねフィンさん、なんで俺が貴方達のホームに行くみたいになってるんですか?」
「だって君、ファミリアには入ってないんだろう?」
本当に苦手だ
あっちは事情を知らないとはいえ、俺の過去を引きずり出してくるこの発言に俺は戸惑う
昔のことを思い出してしまう、あの愚かな頃の俺の姿を、浮かべてしまう
「……ますよ」
「ん?」
先ほどの言葉に反発するように言い放った言葉は小さく、相手には届いてなかったらしい
だから、俺は先ほどと同じ言葉を全員に聞こえるように叫んだ
「入ってますよ!」
その場にいたほとんどの人が驚きの表情を見せる
何故か、なんて言葉は不要だ
昔、アイズに恐怖した理由は彼女が自分よりももっと強くなっていくから、その理由を作り出したのは俺がファミリアに入っておらず恩恵を授けられなかったからだ
当時lv.0だった事はこのファミリア内の俺の知り合い全員が知っているからこその表情だ
「……どこの、ファミリア?」
俺の手を握る力が強くなったアイズが、俺に問いただす
「教えない」
どうやったって教えない
俺の事情もあるものの、最大の理由は俺の主神であるヘスティア様と彼女達のファミリアの主神ロキは仲が悪い
毎回会うたびに喧嘩しているらしく、ここで言ってしまえば何か悪いことが起こる気しかしないのだ
「まあいいだろう、その代わりにといってはなんだが、君に頼みごとがある」
「残念ですが俺は帰ります、この縄を解いてください」
「そういうわけにもいかない。さて、頼みというのは先ほどのモンスターの事もあるから一緒に迷宮を出るまで同行してもらいたい」
「それこそ嫌ですよ、早く戻らないと家族に迷惑が掛かるので」
「そう言わないでくれ、君の荷物もこちらが持つし、君が同行するについてはやることは一つだけだ」
「……何ですか」
正直今の俺の荷物は一人で持つにしては少し重すぎる
もう一つの条件次第では同行しないでもない、戦闘ならまだましだ、あの芋虫モンスターについても一応対策もある
「帰還するまでの間、アイズの側にいてほしい」
「!?」
それが爆弾であることはすぐに分かった
これが遠征ということぐらいすぐにわかる、つまり地上に戻るまで数日彼女の側で生きないとならないということだ
無理がありすぎる、主に俺の精神的に無理だ
「いやで「カイを連行!」
「はいっす!」
誰かの命令により遠征構成員のうちの一人が俺を担いだ
人間を担ぐなんて普通は重いことのはずだが、彼ら神の眷属は恩恵によるステイタス発生、その中にある力のアビリティにより人間程度なら軽々しく持ち上げる事が出来る
そしてステイタスのない俺には抗う術は無く
「下ろしてください!」
「ここでおろしたらあとあと怖いから無理っす!」
「お願いですから!」
「無理っす!」
そのままロキ・ファミリアの地上への帰還に同行する羽目になった
「そろそろこの縄を解いてくれ。アイズ」
「逃げない?」
「逃げない、約束する。逃げたらなんでもしてあげる」
最後の言葉に反応したアイズは誰もばれないように俺の縄は解いてくれた
そして俺は逃げないことを誓うために先ほどのアイズと同じ行動をとる
彼女の手に自分の手を伸ばす、一瞬躊躇ったものの、その手を握った
「こうすれば、逃げられないでしょ?」
「……うん」
頬を少し赤に染め、握り返すアイズ
やばい、幸せなんだけどなんか複雑な気分だ
俺は出来るだけアイズを見ないように、前を向く
「おい、なんであいつがいるんだよ」
「いいじゃん!もしかして嫉妬?」
「ちげぇーよ!」
前の方が妙に騒がしい
今叫んだ狼男の名前はベート・ローガだ
彼にとって俺は恋敵かなにかだろう、なんせアイズに好意を寄せているのだから
そしてこのファミリアで俺が苦手な人二位だ
理由は自分よりも弱い人を見下すから、そんな人を好きになれって言う方が無理だ
昔は俺もその対象で、よく言われてたな
「雑魚はアイズとは釣り合わない」なんて
「そういえば、アイズ」
「?」
「無茶はしないでくれ。後でリヴェリアさんにエリクサー飲ませてもらいなよ?」
「……」
やっぱり、彼女は無茶をしていたのか
ばれないようにしているのだろうが、割とバレバレである
数年前、なんでわかったのかをヘスティア様に聞いたら「勘だよ!」何て言われてその時は理解できなかったのだ今なら分かる気がする
「アイズ、地上に戻ったら俺の家に来なよ。積もる話もあるだろうしね」
家、というのは俺が昔一人で住んでいたオラリオの東方面にある小さな家のことだ
今はヘスティア・ファミリアのホームで過ごしはいるが、ちょくちょくと掃除しに行ってたりする俺の数少な思い出の場所である
よくアイズとはそこで集合して迷宮に潜って、その家でご飯も食べたりしていた
まあその後アイズと一緒に怒られてたけど
「すぐに、行っていい?」
「すぐ、はどうだろう。神様に会わないとならないし、ギルドに行って魔石換金しないとならないし」
なんせ今俺が所属しているファミリは極弱ファミリアである
構成員は俺を含み2人、神様合わせて3人だ
俺が再び迷宮に潜り始めたのは2ヶ月前、そのせいでお金がなく俺が迷宮にいくまでヘスティア様のバイト代で生きていた事もあるほどだ
「カイの神様は、どんな人?」
「んー、どんな人なあ」
温かい人、と言えばいいのだろうか
でも何か違う気がする、もっとこう、何かいい表現の仕方があるはずだ
か、可愛い?バイト先ではマスコット的扱い受けてるらしいし、一応あってるとは思うがなんか違う気がする
家族思い?おお、なんかしっくりくる、よし、これでいこう
「家族思いな「何手ェつないでんだァ!」
前方から何故か殺気を感じたので俺はアイズの手を離し、体を逸らした
見事俺とアイズの真ん中を通過したベートは地面に足をつけてチッと聞こえるくらいの舌打ちをした
そんなに敵意むき出しにしなくてもいいのに、俺少しショックだ
しかもばれないように縄解いて手を繋いでたのにバレていた現実
アイズ、自分の手を見ながら悲しそうにしないでくれお願いだから
「ベート!せっかくいいムードだったのに!」
「台無しね」
「や、やめましょうよ」
最後の子は6年半前にはいなかったな、ここ数年の間に来たのだろうか
それにしても、この状況はどうしようか
前の方でフィンさんやリヴェリアさん、それにガレスさん笑ってるし
居づらいなあ、どうしようか、なんて思い始めた今日この頃である