ダンジョンに救済を求めるのは間違っているだろうか 作:美宇宙
「お世話になりました」
あちらの団員の1人から俺の魔石が入った袋を預かりフィンさんに頭を下げる
今は地上に出てギルドの入口前だ
あの後全員集合して再び出発し、そう時間が掛からないうちに地上に出た俺は別れの言葉を告げた
「ああ、また会おう」
「機会があれば、の話ですけど」
機会があれば、というのはそもそも俺が彼らと会うのを望んでいないからだ
今回はアイズを助けるためだったとはいえ同行し数日一緒に過ごす羽目になったがもううんざりである
これからは少し迷宮に潜る頻度を下げようと思いつつ俺はその袋を背負った
……おっも
え、前より重くなってないこれ、前はまだ持てる範囲だったと思うんだけど、なんでこんなに重くなってるの
というかよく持てましたね冒険者さん、まあ恩恵があるし当然といえば当然なのだが
「あ、いうの忘れてた」
俺はベートに視線を向ける
あ?とか声を上げて俺を見下すように見るベートに、俺は言葉を送った
「自分より弱い冒険者を見下すの、やめといた方がいいよ」
それだけ言って、俺はギルドの中に入っていった
今日も今日とて冒険者で賑わうこの場所はギルドという場所だ
どの冒険者もここを利用し、魔石換金、ランクアップ報告などを行う冒険者の総集部のような場所がここだ
さて、今回はどれくらいの稼ぎになったかな、できるならば今回のお金で神様とベルに何かご馳走したいものだ
「エイナさん、いますか?」
カウンターにいなかったので呼んでみた
数分後、奥の方からハーフ・エルフである女性が姿を現した
俺の担当であり、俺の事情を知る数少ない信頼できる人である
「あら、噂をすればカイくんじゃない」
「噂?」
「さっきベルくんがね、『カイさんとヴァレンシュタインさんの関係を教えてください!』って血まみれで言ってきたのよ」
「ち、血まみれ」
まさかあのままここまで来ていたのか、シャワー浴びてからきたほうがよかったのに、じゃなくて
やっぱりか、ベルのことだからこうなることぐらいは目に見えていたのだがそれでも血まみれで聞かないでも
絶対周りの冒険者びっくりしていたよねそれ、俺でもびっくりするわ
「なに?何か思い当たるとこでもあったの?」
「聞かないでくださいよ……」
少し落ち込んだところで俺は魔石の入った袋をカウンターに置いた
ドス!と音を立てながら置かれたそれの大きさなんとサポーターが持っているバックくらいの大きさである
ここまで引きずってきてしまったせいか少し穴が開いている袋をまじまじと見つめるエイナさん
「今回もすごい量ね……因みに何時間?」
「今回は2時間だったと思います」
「カイくんの強さを思い知らされる瞬間ね……」
そう、俺が迷宮に潜る時間は多くても3時間である
その全てが魔石目当てで攻略は全くしていないが、移動時間を考えても50階層まで行って帰る時間を合わせて2時間なんて無理がある
が、俺には後付けの力、あの武器達がそれを可能にしてくれている
光速移動に体にあるときは傷の急速修復、鞘としての役目を果たしているときは特殊攻撃を跳ね返す武器に、階層主並みの力を持つ白竜
自分でも思えるぐらいの化け物である、もしかしなくても
「それじゃあ換金してくるね、少し待ってて貰えるかな?」
「はい」
カウンターの奥に行ったのを見送って俺はソファに座り込んだ
「おっも」
金になっても重いのには変わりのない袋を背負いながら町外れにある廃墟とかした教会を目指す
そこが俺達のホームであり、俺がヘスティア様と出会ってからずっと住んでいた家だ
最近はベルも加わったことによってより賑やかな生活を送れていて嬉しい限りである
とまあそんな余談は置いておき、ここからだと相当な距離があり、その間これを担いで移動するとか無理がある
「こ、こうなったらエクスブレイザー使って帰るか?」
流石に使い道が何か小汚い気はするが俺のスタミナとか考えてもこのままだと帰宅中に過労で倒れてしまいそうだ、言い過ぎかな?
「カイさーん!」
「この声は!」
袋を地面に落として振り向けばこちらに手を振って駆け寄る少年の姿がある
俺の新たな家族であり、正真正銘ヘスティアファミリアの団員第1号であるベル・クラネルである
「ベル、すまないけどこれを持ってくれないか?」
「これですか?」
何て言いながら軽々しく持ち上げるベル
おお、流石ベル、冒険者に恥じない力持ちである
と言っても恩恵の力で力が上がってるだけなんだけどね
lv.1のベルでこれなんだから、一級冒険者とかになるとどうなるんだろうか?
ミノタウロスとかも持てるぐらいになるのだろうか?それもそれで怖いな
「なんで帰りが遅かったんですか?」
「君の今持ってるそれが、俺にとっては重いの」
「そうなんですか?」
「そうなんです」
他愛もない会話が俺たちの間で繰り返される
こういう会話は今も昔も俺はやったことがない
特に『家族』とのこういう会話はヘスティア様を除けばベルが初めてになるわけで
この会話だけで、心がとても暖かく感じるのだ
あの時のヘスティア様のような、これが家族のぬくもりだと俺は知ってしまった
飽きることなんてない、それどころか飽きようなんて思えないほどに中毒性があるそれに、俺はどっぷりと浸かっている
「幸せだなあ」
この他愛もない会話が、偽りとはいえ家族との会話が俺の心を満たしてくれている
その満足感を身に感じながら俺たちはホームに向けて歩き出す
「ただいま戻りました」
「おかえり!カイくんベルくん!」
帰ってきた俺たちを出迎えてくれたのは小さな神様だ
俺たちの親にしてこのファミリアの主神、ヘスティア様が俺たち二人を抱きしめる
「今回はなんで遅くなったんだい?」
「ロキ・ファミリアに捕まりました」
「え、ロキ・ファミリアに!?大丈夫かい!?何かされなかったかい!?」
「大丈夫ですよ、逆にお世話になったくらいです」
まあその代わりひどい目にはあったけど
「そういえば、ありがとうカイくん、ベル君を助けてくれて」
「いえいえ、家族を守るのは当然です」
「そっか」
俺たちから数歩引いて、彼女は再度手を開く
「さて、見ておくれよ!」
ババーン!なんて音が聞こえた気がする
さっきまでの親密な顔はどこに行ったのやら、笑顔で俺たちにあるものを見せてくれた
テーブルの上に置かれた皿に盛られた大量のジャガ丸くん、そういえば神様のバイト先ってここだったっけな
「僕ここ最近ここでバイトし始めたろ?客が増えたお礼にって貰ったんだ!」
「わあ、すごいです神様!」
「だろ!ふっふ、夕食はパーティと洒落込もうじゃないか、今夜は2人とも寝かせないぜ!」
親指をぐっと立てる神様にしゃがんで拍手を送るベルの姿はなぜか滑稽に見えた