ダンジョンに救済を求めるのは間違っているだろうか   作:美宇宙

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恩恵

「よし、じゃあステイタスを更新しようか」

 

あれからあのジャガ丸くんを食べ終え、ベルのステイタス更新を行おうとしている

ステイタス、冒険者に神が与える恩恵、神の恩恵(ファルナ)であり、彼ら冒険者を超人化させているものだ

それは数値として表され、更新しない限り永遠に同じ値で戦うことになるため、こうして神に恩恵を更新してもらい、また強くなっていくのだ

 

神様が自前に用意していた針を自分の指に刺した

そこから滲み出た一滴の血が、ベルの背中に落ちて波紋を広げ、ベルの背中にしみこんでいった

 

「(最近初めて見たけど、やっぱり不思議なものだなあ)」

 

これが俺の感想である

ベルの背中には、神の血(イコル)によって刻まれた 神聖文字(ヒエログリフ)がある

神達と特定の人物が読めるこの文字で、神はステイタスを数値として背中に刻み込んでいるのだ

他にもスキルや魔法もこの文字で背中に刻まれているが、生憎ベルにはまだ発生していない

 

まあ冒険者になってまだ半月ぐらい、最初から発動させている人もいるらしいが、それは特例である

半月でスキルを与えるほど恩恵は甘くない、という事だ

 

「そういえば神様!カイさんが既に出会っていたんですよ!」

 

「ん?誰にだい?」

 

「アイズ・ヴァレンシュタインさんにです!」

 

「べ、ベル!?」

 

彼が急に話題として出した物に俺は戸惑いの姿を見せた

それを無視し、話を進める2人、ベルは文句を言うように、ヘスティア様は何かに躊躇しているかのように

それが、俺のせいだということはすぐに分かった

俺がこのファミリアに入った時、神様に願い事を2つした

まず1つ、俺という存在のことを誰にも言わないでほしいというもの

そして2つめ、家族には俺が冒険者であると嘘をついていて欲しいということだ

その願い事のせいで満足な返答ができずにいる神様に少し後悔しつつ、俺は話の話題をそらす行動に出る

 

「ベル、なんで裏切り者なんて叫びながら逃げて行ったんだ?」

 

「だって約束したじゃないですか!2人で運命の人をあそこで探し出そうって!」

 

「……それでか」

 

そういえばそんな約束してたなあ、なんて過去を振り返りながら思う

ベルにここに来た理由を教えてもらった時そんなこと言った気がする

あの時の裏切り者は、既にあっているのに嘘ついて一緒に探そうと言っていた俺向けの絶叫だったわけだ

 

「それでも逃げることないじゃないか、少し傷ついたよ?」

 

「す、すいません」

 

「別にいいけどさ」

 

あの時の腹いせは既にベートでやったから問題ない

え、問題あるって?ないない、ないと信じたい

 

「まあ例えその2人が相思相愛だったとしても、婚約はできないだろうけどね」

 

「そ、そんなあ!」

 

「応援したい気持ちはあるけどねえ、あのロキが素直に頭を縦に振ることなんて絶対ないさ!ほら、ステイタス更新終わったよ!」

 

ベルの背中を2回ほど強く叩き、背中の上からベッドの上に移動しこれまた自前に用意していた紙にスラスラと文字を書き込んでいく

今回はいったいどれくらい上がったのだろうか、少し言いにくいがミノタウロスに襲われるなんてレアな体験をしたから敏捷はそれなりに上がっているのではないだろうか

 

 

そんなことを考えながら神にステイタスを書いていってる神様が変な表情をする

まるで苦虫を噛んだかのような表情、今書いているあたりは確か……スキル?

と思っていたのも束の間、その欄を指でこすって決してベルにその紙を差し出した

 

「これが君のステイタスだ」

 

素直に紙を受け取りジロジロと見つめるベル

 

「神様、僕はいつになったら魔法が発現するんですかね」

 

魔法、戦況を一気に逆転させるかもしれない奇跡の力のことだ

それは当然の如く神の恩恵を受けることで発生する可能性が生み出される

最低1つ、多くて3つのスロットが存在し、各1つにつき魔法が1つ発現する可能性がある

しかし、そう簡単に発現しないのも魔法な訳で

恩恵を受けても魔法が永遠に発現できない人もいるという、なんとも恐ろしい物だ

 

「本とか読むくらいしか、俺は知らないかな」

 

「本かあ、僕そこまで読まないんですよね」

 

「また今度、ここにある本か、エイナさんに本を借りて読んでみたら?」

 

「そうします……あれ?スキルの欄に何か消されたような跡が……」

 

「ちょっと手が滑ってね、いつも通り空欄だよ」

 

「ですよねえ、じゃあ僕は部屋に戻っていますね」

 

そう言って部屋を出て行ったベルを見送って、声が聞こえないぐらいの場所に行ったのを確認してから俺は口を開いた

 

「ベルのスキルは、そんなに珍しいんですか?」

 

「やっぱり、気付いてたんだね」

 

「家族のことはよく見ているんです」

 

あの時、きっと彼女はそのスキルを消したのだろう

予想は多分相当レアなスキルだから、他の神にばれないようにするため、と言ったところだろう

 

憧憬一途(リアリス・フレーゼ)、早熟する、憧れへの思いが続く限り効果は持続し思いの丈により効果は向上する」

 

「憧れ?」

 

「君に憧れているんだろうね、なんたって彼からしてみれば君はあの姿そのものだったろうからね」

 

「英雄、ですか」

 

俺にしたら憎たらしい言葉No.1である

彼らのことは尊敬する、それはこの街の誰もが成し遂げられないようなことをやってのけているのだから

だがしかし、彼らのせいで過去の俺があり、今の俺が存在する

力に溺れた俺、力を恐怖する俺、そのどちらも作ったのは間違いなく彼らだ

 

「大丈夫、ベル君は過去の君のようにはならないさ」

 

「そう、ですね」

 

只今は、そんな日がくることがないようにとと願うことしかできなかった

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