ダンジョンに救済を求めるのは間違っているだろうか 作:美宇宙
閉ざされていた目をゆっくりと開いた
部屋に差し掛かった月光、ということはあれから更に数時間寝てしまったのか
いやそれは大した問題じゃない
今一番問題視するべき点は俺が今おかれている現状だ
「なんでいるの?」
相手に気づかれないように呟いた
目の前には金色の双眸を閉じ小さな寝息をしながら俺を抱き枕として寝ている彼女、アイズの姿があった
そこも問題視するところだが、一番アウトなのが、俺も彼女を抱きしめていることだ
今はある程度離したものの、さっきまでゼロ距離だった、彼女の顔がちょうど俺の胸に当たっていたし
俺は経験上今の状態を抜け出せないことを知っているので取り敢えず俺は彼女から手を引いた
まずは状況整理だ、なんで彼女がここにいるかを考えよう
俺はあの謎の男に背中を切られて気絶、そこからの出来事を彼女を絡めて考えると……
俺が倒れた後彼女が駆けつけ、あの男は撤退、彼女は俺のファミリアの場所を知らないからここまで俺を運んで看病していた、というところだろうか
よくもまあ自分のファミリアを敵に回したような男の看病やらなんやらをしたもんだとは思うが、あれの後だし、多分ファミリアに告げずにやってくれたのだろう
傷に関しては鞘さえ戻ればすぐに消えるんだけどね、なんというか、好きな人が看病してくれていたってだけで元気になれそう
さて俺はこの後どうしようか
今彼女を起こすのも何か可哀想だし、かといってもう寝れそうにない俺にこの状況を耐え抜けっていう方が無理だし
この状況をどう打破するか、もうこのまま耐えて1日過ごします?明日絶対干からびてますねパスで
ならやっぱりここは彼女を起こすか?でも気持ちよく寝てますし起こすのは可哀想だ
でもそうなるとやはり干からびコースになると思うんだよなあ
「……カイ?」
「……起こしちゃった?」
いつの間にか彼女の金色の双眸は開かれ、俺の事を見ていた
寝起きということもあってまだ視点があってないようだ、俺の背中に回していた手を一つ解き目を擦っている
「寝てたいならもう少し寝ててもいいよ?」
「どこに、いくの?」
「水を飲みに?」
片方とはいえ手が解かれたことによって身動きが取れるようになったので抜けるために作戦に出る
このまま隣の部屋にでも行って布団ひいて寝る、寝れるかは不明だけど
「……もう少し、だけ」
「……も、もう少しだけ?」
「一緒に、寝よ?」
「ぐはっ!」
アイズの攻撃、カイに100のダメージ!効果は抜群だ!
……やばい、完全に反則だ
「……少しだけなら」
俺は諦めて彼女と向き合う
嬉しそうに頬を少し緩めて再度俺の背中に手を回す彼女に合わせるように俺も彼女の背中に手を回し、自分に引き寄せた
胸に伝わる彼女の体温が妙に熱いのは気のせいだろうか
「俺が寝てから、何日過ぎた?」
「……1日」
1日、予想よりも少し早いな
しかし1日もの間神様とベルには連絡が言っていないと考えていいだろう、迷惑をかけていること間違いなしだ
明日帰って無事だったことを伝えて、あとはあの男のことも神様に伝えないと
俺と同じ存在は俺の知る限りもう一人だけだったのだが、それにもう一人追加された事はとても大きい
しかも俺を狙っていたというこはもしかすれば家族が狙われる可能性もある
それだけはなんとしても避けたいがあの感じだと一回勝ってもまた挑んできそうだし、まず俺が勝てるかも定かではない
「これまで、どこにいたの?」
「これまで、か」
彼女の前から消えて6年半
その前日がちょうどあの人から力を貰って、その半年後に神様と会って一緒に暮らすようになった
その間にも彼女はもっと強くなって、彼女の話を聞くと自分のことでもないのに少し嬉しくなってたっけ
「神様とずっと一緒だった」
「ずっと?」
「うん。ダンジョンに潜り始めたのも2ヶ月前くらいから」
そう事実を述べれば不満そうに俺を睨む彼女
いやだってそれまで過去のことが抜けなくて家の布団に包まっていたんだしょうがないだろ
……完全な自業自得ですねすいません
「アイズはlv.5になったんでしょ?おめでとう」
迷宮都市オラリオの現在最高lvは7
今はないゼウス・ファミリアとヘラ・ファミリアにはこれ以上いたかは不明だがこの街の最強は彼ということになる
まあそれはともかくそれに続くようにlv.6、そして現在彼女のlv.である5がある
今現在の最速lv.2昇格者はアイズ本人、1年だ
これからもわかるようにlv.上げはとても難しい
それを5まで伸ばしたものはこの街にも数える程しかいない、そこに彼女もたどり着いたのだ
「カイは、まだ?」
「0だよ」
俺は本当にファミリアに入ったわけではない
本当に神の眷属になるには彼らの恩恵を受けないとならない
けれど俺は自分の中にある力と神の力が反発して受け取れないのだ
あの時は悔しかったなあ、机を5回ほど強く叩いて泣いた覚えがある
「なのに、1人で58階層に?」
「見ただけだよ。多分3秒くらい……あ」
ここで思い出したことがあった
さっきまで背中の傷が大して痛くないから忘れてた
「俺の剣知らない?」
「下にある」
「取りに行くのは?」
「今日は寝る」
「そうですか」
下にあることだけわかっただけで安心した
あれ無くしたらもう顔向けできないよ、特に鞘の方は本当に洒落にならない
「無駄話はやめて、もう寝よう」
「うん」
外は少し明るくなってきている気がするけれど、まだ暗い
ならまだ寝てもいいだろう、あれだけ寝たのにまた眠たくなってきたし、彼女もそんなに寝れてないだろう
「おやすみ」
「おやすみ」
2人とも同じ金色の瞳を瞼の中に隠す
意識はゆっくりと薄れていく中、俺はもう寝息を立てている彼女に言葉を送った
「ありがと」