かてきょー世界に生まれたのはいいけど一般人じゃねえか 作:阿呆酉
俺、十二歳__女として転生後
前世の性別すら覚えていない中
なぜか覚えていた漫画・アニメの知識により
ここが家庭教師ヒットマンREBORNの世界であると理解。
せっかくなので話に混ざりたいなと体を鍛えていた俺は限界を感じていた。
鍛えに鍛えるも、あの化け物たちに勝てる気がしない。
足裁きで分身、なるほどできない。
変わりに全く音を出さずに動けるようになった。
マキシマムキャノン、なるほど打てない。
変わりに別の技を習得した。
自力で死ぬ気time、なるほど少しできた。
なれど、この程度で関わっていられるメインストーリーではない。
なにせ世界最強だの伝説の存在だのがゴロゴロ転がっているのだ。
そこで俺がたどり着いた先は、感謝であった。
自分自身を育て切ってくれた、前世の親へ
そしてなにより、ストーリーに混ざることばかり考えているこんな俺を
愛情を持って育ててくれている、現世の親への限りなく大きな恩。
自分なりに、それを少しでも返そうと思い立ったのが。
一日一万回のッッ!
感謝の正拳突き!!
気を整え 拝み 祈り そして構えて 突く。
一連の動作を、当初は6秒前後でこなしていた。
徐々に疲れ、重くなる体。
結果、一万回を付き終えたのは三十時間経ってからであった。
倒れこみそうになる体を抑える。
眠気を、首を払って忘れる。
ここで終わるわけにはいかないのだ。
『一日』 一万回の拳なのだから。
あと残った十八時間で、一万回を終える。
で、なければまた繰り上げて突き続ける!
強靭な意志の元、俺は突きを繰り出し続けた。
アドレナリンを制御下に置き、脳を突きにのみ最適化する。
それにより、俺は睡眠を不要とした。
ただひたすらに突き続けたその結果、三週間後。
一日を二時間残し、一万回のノルマを終える!
そして六ヵ月後__気づく。
一万回を終えても、まだ日が落ちていない!
下山の
「……こういうわけだから」
と、無断で半年間留守にしたうえに
本当のことを話したのだが。
「どういうわけだァアアアアア!」
ビシィ! と突っ込みが入った。
うん、安心しろセカンドマイファザー 俺もどういうわけかわからん。
若さの力という奴なのか、まさかあの会長が二年以上かかったこの
音を置き去りにする拳をわずか半年で……。
「は、半年も帰ってこないで一体何してるかと思えば!
なんだ感謝の正拳突き一万回って! 睡眠は不要って! 頭おかしいんじゃないの!
なんだ、音を置き去りにする拳って! なんでその鍛え方で成果でちゃうの!」
ふふん、この俺を誰だと思っている?
家庭教師世界の凡人Aだぜ? 訓練すれば、いくらでも伸びるんだぜ?
もう十二歳だし、体の無理は効く年齢だ!
どんな鍛え方だろうとも成果を出して見せようぞ!
「……次の目標は、空を歩くこと」
「できるか!」
知っています?
やってやれないこともあるけれど、やらなきゃやれないのよ?
「って、いうかいい加減学校行ってくれ頼むから」
「……!」
「何その『そういえばそんなのありましたね~』みたいな顔!?」
いや、真剣に忘れていた。
「はあ……」
小学六年生にして、拳が音速を超えたという
格闘世界チャンピオン真っ青な記録をたたき出したわが子を思い、溜息をつく男性。
思えば、あの子は昔からおかしかった。
歩けるようになったと思えば、まずやることは腕立てやスクワットなどのトレーニング。
そのくらいならまだいいのだが、三歳になると 途端に自虐行動に走るようになった。
二階から飛び降りる、のはまだ軽いほう。
床や壁をひたすら殴り続けたり、観光先の崖から飛び降りたりもした。
ついには頭に火をつける始末。
もちろん、病院に連れて行った。
だが、どこにも障害は見つからず精神状態も安定していた。
診断は異常なし、それならば自分が悪いのかと悩んだりもした。
男手一つで育ててきたもので、どこかで間違えてしまったのかと。
……だが、そのうちそんなことは気にならなくなってきた。
部屋に軟禁しようと、監禁しようと。
どうにかして脱出し、そして自虐行動や筋力トレーニングを繰り返す。
小学生に喧嘩を売ったり、それに勝ってしまったり。
気づいてしまったのだ。
彼女は『規格外』であると。
だが、それでも心配は心配だ。
半年も留守にされれば、どこかで野垂れ死にして居るのではとも思う。
が、彼女の書置きにこうあったのだ。
一年以内に戻る、と。
彼女が書置きの期限を破ったことは無い。
だから、一年は待とう そう思ったのだ。
あの子の邪魔をしてはいけない、あの子はあの子なりの目的を持っているのだから、と。
だが、しかし、だからといって。
「どうすんだよ、これ……」
体中に擦過傷と打撲痕が見られ
恐らく致命傷である巨大な傷を胸に付けた熊の死骸など持って帰ってこられても困る。
熊って狩るのに許可要らなかったっけ? 猟友会に怒られないか?
まさか警察に御用? ……と、熊を殺してしまったことに関する心配事ばかり浮かぶ時点で
彼女の父たる男も相当毒されてきているのだが、男はそのことに気づいていない。
熊って日本最強の獣なのよね。