かてきょー世界に生まれたのはいいけど一般人じゃねえか   作:阿呆酉

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※入学しません


入学編

「はなして」

 

「断わる」

 

くっ、おのれダディ……あくまで俺の道を阻まんとするか!

なれば、我の右腕に封じられし『暗黒炎笠龍《ダークフレイムマスタードラゴン》』の力で!

 

「いだだだ!

 ちょ、おま、抓るな!」

 

「はなして」

 

「断わる!」

 

__そんなこんなで、俺は父親に服の裾を掴まれているんだ。

 

それというのも、話は少し前に遡る。

 

 

 

 

十三歳を迎えた俺は、ついに『中学生』と相成った。

つまりは、家庭教師ヒットマンリボーンの中心舞台である中学進出である。

 

小学生の頃のように学校にも行かず修行をしているわけにはいくまい。

 

そのため、中学に行くという旨を父に伝えたところ

 

「えっ、マジ?

 ごめん、制服とか何も買ってない」

 

と、伝えられました。

そんなわけで__俺は拗ねた。

 

もういいし。

べつに中学なんて行かなくても物語関われるし。

 

在籍してるだけでフゥ太のランキングには乗るはずだから、行く必要なんてないんだし。

 

とまあ、見事な拗ねっぷりを披露し、再び山にこもろうと荷物を纏めていたところ……

発見され、逮捕されてしまった。 なんということでしょう。

 

おし、回想終わり。

 

「はなして」

 

三度目のお願い。

 

だが、

 

「断わる! なあ、謝るからちゃんと学校行こうぜ!?」

 

そんな俺の思いはあえなく一蹴された。

まったくもう……子供の気持ちをなんだと思っていやがる! 

これだから近頃の親は!

 

「じゃ、土下座」

 

「謝り方が思ったよりキツイ!?

 それが実の親に対する態度か!」

 

実の親が娘の制服買い忘れるんじゃねェよとか台詞に感嘆符多いよ馬鹿とか

いろいろ言いたいことはあるが__まあ、そんな俺の言いたいことは一語に集約される。

 

「じゃあ、はなして」

 

「断わる!」

 

はい、無限ループ入りました。

 

「……どうしたら、離す?」

 

「中学に行ってくれたら」

 

うん、それ無理。

そうだ、じゃあこうしようじゃないか。

俺が中学の勉強なんかしなくても人生こなすのは余裕ってところを

見せればいいんだろう?

 

「……将来は砲丸投げの選手になります」

 

俺の身体能力は、ちらっと見た限りテレビのプロ選手の方々と

既に大差ないほどだ。

 

プロスポーツなんぞもう余裕だろう。

だから、勉強なんてしなくても__

 

「じゃあ義務教育くらい終えてくれ」

 

「あいきゃんのっとすたでー」

 

正論で返す人、嫌い。

 

 

 

2

 

ややあって、俺のアームロックが決まり、父は意識を落とした。

うん、なんか、すまん。

 

というわけで、時計と換えの電池だけ大量にかばんに積め

それを背負って山へと向かう。

 

山に入ると、獣たちの懐かしい香りがしたが、それが遠ざかっていくのも同時に感じた。

逃げやがったなあの畜生ども。

 

まあ動物がいなくとも、座禅を組んで 気の増幅に務めるとかもあるし

大量の木材を担いでのトレーニングとかもあるからいいが……。

 

やはり生身に技を放つ経験とは変えられない。

 

……いや、べつに、違うよ?

命を奪うことに快感を覚え始めたとかそんなこと無いよ?

生温い返り血を浴び、嗤いながら動物をなぶり殺しにするとかないよ?

だいたい一撃必殺に務めていますよ、ええ。

 

おかげで俺は最低でもヒグマを一撃で葬り去るような

馬鹿みたいな威力の技ばっかり身について、防御が取れない

いわゆるフルアタック構成のキャラクターのようになってしまったがね。

 

まあ、小ざかしい戦術とか好きじゃないしいいんだけれど。

 

それに、良いこともあるんだ。

 

防御ができないのなら、長く戦うことは好ましくない。

ゆえにいわゆる瞬間移動かめはめ波のような__相手が油断してる隙に

120%の力を出した必殺技を叩きつけるような戦法に俺の戦い方は絞られてくるわけだ。

 

つまり戦闘中に覚醒とかご都合な事が起こらない限り、パワーアップ系の技が使えない

今の俺では、初撃が効かない相手に勝てないってことにもなる。

コレは、かなり便利である。

 

復讐者みたいな『明らかな強者』、絶対勝てないよこんなのって奴以外

たとえばメローネ基地のファミリー構成員Aとか相手にしたとき

『あ、これ勝てるんじゃね?』とか勘違いして戦う際の判断基準になるのだ。

 

最初の一撃が効かなければ、それすなわち勝てないのだから

すぐに尻尾巻いて逃げることができる。

 

まさに『いのちだいじに』って感じのすばらしい戦法だと俺は思うね。

 

さて、考えているうちにずいぶん山奥まで来たな。

 

それじゃあ、さっそくですが今日はパワーアップ系の技の練習です。

勝てそうに無い相手に、限界を超えたパワーアップで勝つ、とか……

熱い展開で、非常によろしい。

 

でも、やり方がわからないんだよなあ。

漫画では、筋肉が膨れ上がるとか血管が浮くような描写が多いし

血液をいっぱいめぐらせれば良いのかな。

 

でも心臓制御なんてできないし……。

 

あ、そうだ。

体中の筋肉使って血液を加速させればいいんじゃないか?

 

 

 

 

 

 

「ぐおお……逃げられた」

 

地面に四足をつき、唸っているのは

今しがた一人娘にアームロックで締め落とされたかわいそうな男である。

男は、まるで日課のように思い悩んでいるが、今日はいつもより深刻に考えていた。

 

それというのも、今度の事は彼が悪かったのである。

いや、拗ねて家出した彼女のほうが9:1くらいで悪いのだが

いつもは10:0であるのに、今度は1も彼のせいであるのだ。

 

自分に少しでも落ち度があれば、彼は深く落ち込む。

親としての矜持があったので踏みとどまったが

土下座すれば学校に行くといわれたとき、思わずしそうになったほどだ。

 

「……とりあえず、学校に行って教科書もらってくるか」

 

がっくりと肩を落とし、家を出る男。

道中、一人の走っている中学生を見かけた。

 

まだ少し早い時間であるので、恐らく新入生ではないのだろう。

 

白い髪の毛を短く刈り上げた少年は、男を追い抜きざまに

 

「おはようございますッ!」

 

と元気よく挨拶をし、返事も聞かず走り出してしまった。

 

(元気の良い子だな)

 

そう思いながら、その全貌が見えたわが子が行くはずだった中学を眺め

男はもう一度、頭を抱えた。

 

 

 

 

 

春分から、もういくつ過ぎたでしょうか。

桜の花が美しい今日この頃、当方、血液を一気に動かしすぎて

体中の動脈や静脈や毛細血管がズタズタになってしまいました。

 

動かした瞬間に破裂したので、筋肉無くて動かせなかった脳のほうはまだ無事です。

 

ですが目や耳、口など体中の穴という穴から血液が噴出してしまっています。

 

急速に失われる生命の源たるそれを押しとどめようと

無理に筋肉を収縮させて止血を図っていますが、そろそろ限界です。

そもそも脳に回る血液も少なくなってしまっているので、意識も薄くなっています。

 

また、体の内も限界ですが

外的要因からもそろそろ限界が近いです。

 

具体的に何がどう限界なのかというと。

 

「グルルルル」

 

今までの恨みとばかりにやってきた羆の群れが、私を狙っているのです。

 

まったくこの畜生どもは……日本最強の獣ともあろうものが

群れて死に掛けのやつを殺しにかかるとかなんなの?

 

情けないなあ。

 

「グルアア!」

 

「ッ」

 

まあ、情けない指数で表すなら俺のほうが上だけどね。

彼らが四万ちょいで、俺は五十三万とかそんな感じ。

 

圧倒的下位の相手に、自爆したせいで殺されそうとか……。

 

先も、攻撃を地面転がって避けたのはいいが、それだけで体中から血液が噴出した。

 

……まさか入学前にデッドエンドとか、虚しい人生だったなぁ。

次はこんなつまらん事にならないよう、記憶なんて消えて生まれ変わりたいものだ。

 

そう考えて瞼を閉じた瞬間、破裂音が山に響いた。

 

何事かと音の出所を探ると、何処かの学校の制服らしきものを着込んだ男性複数人が

手に黒い筒状の物を__銃、だろうか?__持ち、立っていた。

 

「グォオオ……」

 

人の怖さを(主に俺に)教え込まれた熊らは、健常男性数人の登場にあせったのか

それとも音に驚いたのか、山の奥に逃げていった。

 

「無事か!」

 

山奥に熊が引っ込んだのを確認すると、男らが駆け寄ってくる。

これが無事に見えるかと軽口でも叩きたいが、生憎、既に口も動かなくなっていた。

 

「これはひどい……!

 おい、すぐに病院に運ぶぞ

 並盛で事故死など、絶対に許すな!」

 

硝煙の香り__だと思う、嗅いだ事無いが__がする

先に発砲したであろう男が言うと、他の男が俺を担ぎ上げた。

 

が、すでに限界を迎えていた俺の体は、それだけで悲鳴を上げる。

 

「ぐ、ぅううう」

 

耐え切れず呻き声を上げた、と理解した瞬間に、強烈な眠気のようなものに襲われ

瞼が重くなる。

 

くそ、まあ……人いるし……いっか。

 

意識を手放そうと決め、重みに逆らわずに瞼を閉じた。

最後に目にした『風紀委員』の腕章を網膜に焼き付けて。

 

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