かてきょー世界に生まれたのはいいけど一般人じゃねえか 作:阿呆酉
さあ(次から)本編始まるザマス!
山中で遭難者を確保した。
そう、連絡があった。
風紀副委員長たる彼によこす連絡としては、特異なものであった。
病院か、警察かに引き渡すのが常套ではないのかと思いつつも
緊急だと言う部下に従い、風紀委員の部屋に顔を出した。
そこで目にしたのは、狼だった。
力に、血に飢えた狼。
最初、彼女を病院へと運ぼうと考えた彼らだが
どうにも、怪我の具合から間に合わないと判断し
とりあえずの治療をしようということで、これを担いで学校に運んだという。
(……っ)
危機意識に欠けるとしか言いようがない。
これを、学校に運んだこと。
これを、助けようということ。
委員長が学校にいない今、これを止めることは、恐らく誰にも出来ないだろう。
そう思わせる覇気が、この化け物からは見て取れた。
いっそ、殺してしまうか。
そんな考えが一瞬浮かぶが、すぐ首を振った。
(馬鹿な、こんなにボロボロの女性だぞ)
それを殺すなど、ありえない。
草壁は溜息を一つつくと、気持ちを切り替え、治療用の機器の使用を許可
女子風紀委員に彼女の治療を指示した。
(まずは……教員に連絡か)
だんだんと常識的な思考が戻ってきた草壁は
ある程度、治療が終わったとの報せを受けると
彼女が怪我のショックから暴れたときに押さえられるようにという
男たちを部屋に入れ、自らは職員室へ向かった。
職員室には、来賓が居た。
眼鏡をかけた、長身の軽薄そうな男であった。
しかし、今は緊急だ。
礼を欠くが、近場の教師を呼びとめ、山の中で傷ついた少女を保護したと伝える。
すると、来賓の男が言った。
「それ……うちの娘かもしれません」
■
「おい、どうした!?」
声が聞こえた。
そして、ひどく自分が驚いていることに気がついた。
「……え?」
そこにいたのは父親で、だけれど『違う』
自分を心配そうに眺める男は、彼女の、いや彼? の良く知る人物。
もう、二度と会えないと諦めて。
傷つきたくないからすべてを
そして今になって彼女? は、それを思い出していた。
「父さん……?」
足が震えている。
唇が、口の中が干上がっていく。
頭は回らず、目の前の男をただただ見つめる。
知らないはずだった、それ。
つい先ほどまで、どうあれ消え去っていたと、忘れたと認識していた記憶が
まるで泉のように沸き出でる。
「あ……え?」
だが、わからない。
湧き出る記憶は、どれも鮮明で、でもどこか濁っている。
彼、彼女?
自分は、俺は、私は、何だ?
身長は?
体重は?
性別は?
名前は?
目の前の__父の、声は?
知りたい、思い出したい。
すがるように、見つめる。
が、
「いや、違うよ」
「……え?」
「僕は君のお父さんじゃない
何か大変目に遭ったんだね、今救急車を呼んでいるから__」
恐る恐る、視線を落とす。
そこにあったのは、目の前の男の子供のものでなく。
ここ十数年で見慣れている、細いがよく引き締まった女性の腕だった。
ぐにゃり。
「あ、終わりなんだ」
急に視界が白く染まり
気がつくと目が覚めていた。
なんという悪夢。
とっくに割り切ったと思っていたのだが……やはり、死にそうになると見てしまうようだ。
小さい頃に自分なりにこの状況を考察し、最終的に宇宙怖いという結論に至ってから
ろくに前世のことなんて考えていなかったというのに。
あんまりしつこいと発狂して邪教にでも目覚めちまうぞ。
いあいあ言いながら死ぬ気の炎ばら撒く黒いフードの女……あれ、良いじゃん。
ちょっとクトゥルー称えて来る。
「目が、覚めたのですか」
などと、久方の悪夢のせいで思考がおかしくなっている中、今まで無視していた
目の前のリーゼントが声をかけてきた。
声をかけてくるとしても、てっきり『テメェ、シカトこいてんじゃねェぞコラ!』
などと言われるとばかり思っていたが、かなり丁寧に
それも目が覚めてから数瞬置いて声をかけてくれたリーゼントに、少し好印象を抱く。
所謂、ジャイ○ンが少し良いことをするとめっちゃ良い人に見えるアレだ。
まあ結局本質はジャイ○ン……もとい、風紀委員会の人間だろうし、油断はしないけど。
こんなリーゼントの居る部屋にいられるか!
私は山に帰る!
「おお、目が覚めたか」
とフラグを立てた瞬間に回収してくださった__
引き戸を少し音を立てて開け、部屋に入ってきたのは
やたら背丈の大きなリーゼントの男。
他の委員共がDQNなら、彼は任侠といったところだろうか。
……うむ、あれだな、草壁さんだな、この人。
皆さんご存知、風紀副委員長だ。
いやあ、コレは困った。
有象無象ならともかく、副委員長殴り倒してスタコラ逃げ去ったら
恐らく__いや、確実に、トンファー持った匠がやってきて
山を平地にビフォーアフターしてくれやがることだろう。
俺は基本、脳筋だ。
だから、こんな状況に陥って力ずくで逃げる以外の方法はすぐには思いつかない。
しかし、殴るのはダメ。
というかそもそも、助けてくれた人たちを殴り倒すのは倫理的にアウト。
俺は覚えているぞ、死に掛けたときに見たあの風紀委員の腕章を。
そのご恩は消えないのだ。
……でも逃げたい。
ぶっちゃけ、原作キャラと接触あまりしたくない。
そのようなことを考え、おかげで硬直してしまい
状況を静観する状態になってしまったが、すぐに後悔した。
「丁度、目が覚めたようです」
どうやら草壁さんはもう一人誰かを連れているようなのだ。
残念ながら俺は、彼が敬語を使う人物を一人しか思い浮かべられなかった。
ギャグマンガの設定欄に『最強』って書いてある人をそのままバトルマンガに放り込んだ
神も仏も三寸のうちに入れない、天上天下唯我独尊の最強生物、雲雀恭弥。
つー、と背中を冷や汗が伝う感覚がした。
血管が爆発したのによくもまあ神経が生きているな、などと
場違いなことを考えながら、引き戸を注視。
誰が入ってくるのかを確かめようとした。
そして、悪い予感は、ある意味ではずれ
ある意味で当たった。
「おい、無事か! 心配かけやがって!」
父親である、無論現世の。
散々引っ張って君か。
まあ、ここで雲雀さんが出てきても苦笑いしかできなかっただろうけどね。
この状態でVS雲雀とかなにそのミッションインポッシブルという話である。
……原作キャラと会う=戦いという俺の物騒すぎる思考はさておいて
父と合流した俺は病院へ向かうこととなった。
ついでに、草壁さんがクラス表やらを渡してくれた。
名簿を確認すると、黒川さんと同じクラスだった。
ついでにツナとか山本とか、メインの人たちだな。
ふむ……黒川さんか。
ちょっと見たいな、10年後の彼女の凛々しさったらなかったからな。
というわけで後日、風紀副委員長じきじきに世話をしてもらって行かない~
というのは失礼なので、学校に向かうことにしよう。
黒川さんを拝むのはついでだ。
あくまでも、ついで、だ。
ただ、それほど長い間通う気はない。
今回の件で、自分の回復力の無さには絶望した。
いくら攻撃しかできないといっても、さすがに
ちから252でぼうぎょ0とか冗談じゃない。
「とっしん」使ったら、反動でひんしになったようなものだ。
実際、現在の自分の最高攻撃力は音速を超えたパンチであるのだが
それを使うと、肩とか腹筋とか体中の筋肉がギシギシ痛み
ついでにあちこちで軽い肉離れになる。
二度放てば、肩や腹筋が出血を始め、三度放てば……。 うん。
だから、俺は早く回復力もしくは耐久力をつけなければならないのだ。
原作チームと遊んでいる暇はねぇ!
と決意を新たにしたところで、俺の横を歩く父が話しかけてきた。
「なあ」
「……なに?」
「俺はさ、お前が心配なんだよ」
……えっ、なにそれ。
いきなり何の話をしだすのだ、この人はと父の顔を見ると
なにやら深く落ち込んだ様子だった。
「……うん」
とりあえず、相槌をうつ。
「だから、正直俺は、お前には怪我をしないでもらいたいし
毎日、家に帰って、風呂入って、ちゃんとしたもの喰ってほしいし
中学も通って欲しい」
「……」
悪いが、それはできない相談だ。
というのも、俺の我侭ばかりというわけではない。
この世界が滅ぶかもしれないからだ。
……中二病とかじゃないぞ、百蘭の事だ。
この世界線が、彼によって滅ぼされるものかもしれない。
その時は、俺が、あの百蘭に対抗できるくらいにまで強くなっていなければならないのだから。
けれど、そんなことは話せない。
だから、俺は黙った。
けれど、父は言葉を続けた。
「けどさ、それは俺の……親の我侭なんだよな」
「……?」
どういうことだろうか。
混乱する俺の頭に、ポンと父の手が置かれた。
「どの面下げてって思うかもしれねぇけど、俺は、お前の親なんだよ
だから、これから沢山我侭を言うと思うが……できるだけ、聞いてくれると助かる
俺も、お前をちゃんと守れるようにするから」
……いろいろ諦められているのだろうか。
だが、なぜ急にこんな話をし出したかは察した。
制服の件だろう。
だが、ぶっちゃけてしまえば父は悪くない。
数年単位できちんと家に帰っていない娘の身長やウエストをどうやって知るというんだ。
それで制服など買える筈もないのに。
「ごめんなさい」
謝って、考えを改めた。
別に、修行なんていつでもできると。
というわけで、俺は学校に行きます。 真面目に。
……ホントダヨ?
なお、医者には八ヶ月入院しろと言われました。
キツイぜ。
ギャグかライトなバトルが書きたいと思いながら書いた。
オリキャラのシリアスとか誰得なんだろう……。