「ーーーやぁ、少年。調子はどうだね?」
真っ黒な空間で、闇髪灼眼の男がオレに問いかける。オレはこう言ってやる。
「まるでシンデレラのようだ。母親と姉二人に『男だから』って毎日こき使われて、気に食わなければひっぱたかれてる。童話の主人公の気分を味わえるなんて歓迎だ」
「……そいつは酷いな」
「そうだろ?だからまた『神様の手違い』とやらで死なせてくれよ」
「悪魔のオレにそんなこと言われてもどうにも出来ない。俺に出来るのはお前に力を与えて転生させるだけだ」
「ただし、特典と世界はランダムで、その上能力について話すことが出来ない」
「それが契約だからな。これを破るとオレもお前もマズイことになる」
オレは悪魔に何らかの特典を与えられ、インフィニット・ストラトスの世界に転生した。しかも只のIS世界じゃない。体感した限りだと原作より女尊男卑が激しい。特典持ちだとは言え、激しめの女尊男卑が蔓延してる世界に男が一般人として産まれたなら道は一つ。女共の下に這い蹲り、一生泥を啜りながら生きるハメになる。クソだろそりゃ。
「……特典は本当にオレの力になるものなのか?」
「ああ、後々本当に役に立つ。お前がいつそれに気付くか……そしてその力で何をやるのか……楽しみだ」
「…………」
「さぁ、そろそろ起きろ。今日はお前に転機が訪れる日だ。せいぜい頑張れ」
男は笑顔で言い、指を鳴らす。その瞬間、目の前が真っ白になっていき、俺の意識は途絶えた……。
「あ゙ぁ……ついに来てしまった。今日という日が」
朝起きてすぐに頭が痛み、オレは冷えている手を頭に当てながらガラガラ声で呟く。オレは頻繁に風邪をひく。それも治りにくい。お陰で毎日ダル重だ。クソが。
「……あ゙ぁイヤだ。もう時でも止まればいいのに………………起きよう」
現実逃避は止めだ。ダルい身体に鞭打ってベッドから出て着替える。さぁ、早く飯を作らなくては。じゃないと痛い目に遭う。オレは足早且つ静かにキッチンに向かった。安眠妨害でひっぱたかれるのは御免だぜクソッタレ。
ちゃっちゃと作業を済ませた。うむ、時間通りだ。和食良し、洋食良し、フレーク良し。
「……産まれてから十六年。家事炊事を大半任されて八年。朝飯作りももう慣れたもんだな」
色んなマンガアニメの主人公のように『家事炊事はプロ級』ではないが、生活に支障がない程度にはこなせるしまともに食えるものも作れる。何年も家事炊事こなしただけでプロ級の料理作れるとかプロナメてんのかと思うが、多分そういう所も主人公補正があるのだろう。羨ましい限りだ。
「……さぁ、片付けよう」
オレは一人道具を洗う。歩く音、椅子を引く音が聞こえる。丁度良く母親と姉二人が起きてきた。というより、起きる時間に合わせて作った。起きてきた時に用意出来てなかったら『早く作れ』とひっぱたかれ、起きてくるより前に作り終われば『飯が冷めた』とひっぱたかれる。このクソの詰まったクソ袋が。……オレもか。
「オイ!しょう油持ってきて!」
「あたしマヨネーズ!」
「……は〜い」
小さく舌打ちしてから洗い物を中断し、キッチンからしょう油とマヨネーズを持っていって母と長女に渡す。
「よし……ほら、持ってって」
「は〜い……」
母と長女が使ったしょう油とマヨネーズを回収し、キッチンに引っ込んで洗い物を再開する。調味料の類はオレがその都度キッチンから取ってきて回収する。テーブルに余計なものは置きたくないかららしい。
「洗い物終了……さて、あとは待機だな」
オレはキッチンで一人、持ち込んだマンガを読んで奴等が食い終わるまで時間を潰す。オレが飯を食っていいのはクソアマトリオが食い終わってから。小学の頃はお情けで飯食わせて頂いてたが、中学からはそうはいかないとひっぱたかれた。まあいいけどね。何故かはわからないが食欲なんてほとんどないし。基本的にクソアマトリオの食べ残しと残り物の味噌汁で食い繋ぐしかない上俺自身それで満腹感を得てしまうようになった。
「じゃ、いってきまーす」
「いってらっしゃい」
クソアマトリオは席を立ち、互いに挨拶を交わしてから家を出る。毎日思ってるが……アイツ等は頂きますもご馳走様も言えないのか。路上にチョークで落書きするクソガキでも言えるぞクソが。
「……さて、一人になれた。飯食おうっと」
オレは残った味噌汁を入れたお椀を持ってキッチンから出る。食卓に座って奴等の食べ残しを一つの皿に集める。
「……頂きます」
オレは残飯を味噌汁と共に流し込む。味?知らないね。中学あがった辺りから何食ったって美味くもないし不味くもない。なんかストレスのせいでどーたらで味覚に異常が出たらしい。非常に納得出来た。
「ご馳走様でしたっと……」
奴等の分の皿を持っていって全部洗い、それからオレも家を出て学校に向かった。
本日、オレの高校にISが運ばれてきた。主人公であるワンサマーこと織斑一夏が女にしか使えないISを動かしたことにより、政府は他の男の操縦者もいるんじゃないか?と考え、こうして全国で探すことにしたらしい。そして現在、オレを含めた全学年の男子生徒は全員体育館に集まっている。正直メンドクサイったらありゃしないが、オレの転機である為耐えるしかない。まぁ、これからはもっと耐えるハメになるんだろうがな!クソッ!
「ーーーよぉ、
一人でイライラしていると、オレの下に一人の男子が来た。
彼の名は
「よぉ、ハチ。どうだった?」
「ダメだダメだ。反応ナシ」
ハチはそう言いながら隣に座る。いいなぁ……オレも反応ナシで済めばいいのに。でもなぁ……今日はオレに転機が訪れるらしいし。そんで今日は適性確認の日。もう反応アリだってことだろクソ。
「次!
「とりあえず……ガンバ」
呼ばれて立ち上がる際にハチが言う。ああ、なにを頑張ればいいか分からないがとりあえず頑張るよ。オレはクソ兵器が置かれている部屋に歩き出した。
「ーーーF×CK!!!!」
「開口一番になんてこと叫びやがる」
オレは例の真っ黒空間で叫ぶ。悪魔がいたって御構い無しだ。IS適性?あったよ!予想通りな!オレに適性があると分かるや否や現場は大騒ぎ。オレは今の高校からIS学園に強制で転入するハメとなりましたとさ。いやまあ、知ってたよ?適性検査の日に転機が訪れるとかもうこういう意味だとは思ってたよ?でも、でも!
「ーーー声!張り上げずにはいられないッ!」
「あー……その……随分お荒れのようで?」
「黙ってろッ!!FU×K!SHIT!×UCKIN' SHIT!!BULL SHIT!!ASS!!BITCH!!FUUUUUUUUUU×K!!!!
……フゥー、フゥー…………」
「気が晴れたかい?」
「多少は……」
Fワードと暴言を叫ぶだけ叫んでから息を荒げて座りながら地面を見る。といっても、どこ見ても真っ黒だが。ちなみにオレのお先は真っ暗だが。嗚呼イヤだ。どうせイケメンでYDDなワンサマーと比較されまくってブサイクで無能だと叩かれるんだろうよ。クソが。
……あ、YDDってのは、
ってこと。まぁ、ワンサマーに限らず大抵の主人公ってそうじゃない?
「そういえば、荷造りは済んだのか?」
「済んで一眠りしてここに飛ばされた」
「そうかい。んじゃオレはお前があそこでどう過ごすのか、拝見させてもらうよ」
悪魔はニヤケ面でそうほざく。この野郎……楽しんでやがるな?
「お前楽しんでるようだからネタバレしてやる。オレはIS学園で只ひたすらに典型的根暗キモヲタとして心の中でFワード垂れ流しながら過ごしてやる。
「うわっはぁ、つまんねぇ学生生活だこと」
「じゃあ楽しかった学生生活を返してくれよ!これから高校二年目の青春が待ってたのに!」
「ハハハハ、無理だな。オレにはどうすることも出来ない」
クソ悪魔は笑いながら言う。コイツはいちいちクソムカつく野郎だな。クソだクソ。……我ながらクソクソ言い過ぎだが、オレはクソ中毒だということで割り切っておこう。
「さぁ、そろそろ身体が起きるぞ。戻れ戻れ。せいぜい、頑張れよ」
目の前が真っ白になる。そして、意識が途切れるまでの僅かな時間、オレはずっと腹の中でクソと唱え続けた…………。
メイン人物紹介
本作の主人公。元々はそれなりに充実した生活を送っていた十八歳の青年だが神の手違いで死亡した後、魂が放置されていた所で悪魔と出会い、詳細不明の特典を得てISの平行世界に転生した。現在はISが産まれる以前からの徹底した女尊男卑主義者である母親の下に産まれ、それに感化した姉二人と合わせて三人の女にこき使われて不遇の日々を過ごしている十六歳。
黒髪ショートカットで顔は窶れており、目の下に隈が出来ている等見るからに不健康そうな顔立ち。一般成人男性より少し高い身長を誇るが、貧相な食生活の影響で身体は細身。
頭脳は中の下を自称している下の中。身体能力は割と高い。前世の時から暴力に対して無意識に最適な受け方をしてダメージを最小限に抑えるのが自慢の技。
性格は冷静沈着に見られるが内心ではFワードと暴言とクソにまみれているクソッタレであり、ふと気がつくと汚らしい戯言を思い浮かべているクソ中毒。
霧生の今世にて出来た小学からの親友。あだ名はハチ。長くも短くもない黒髪に均整のとれた身体付き。更に端麗な容姿を併せ持つが、『イケメン設定』ではない為モテない。基本陽気で先のことはあまり考えないタイプ。特技はモノマネ。
霧生をこの世界に転生した存在。闇の如き黒の長髪と血の如き赤い眼が特徴。何故わざわざ霧生を転生したのか、その真意は謎に包まれている。