柊霧生が進む道   作:ダメオ

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皆様、覚えているかはさておき
お久し振りでございます。

そして、明けましておめでとうございます。

非常に苦しい弁明となりますが、
去年の六月から唐突に筆が動かなくなり、
キャラクターの行動も
想像出来なくなる事態に
陥ってしまいました。

そして現在、難産でしたが
一話だけ書けましたので
今年初の投稿をさせて頂きます。

これからもどうか、
頭の片隅にでも覚えて頂き、
ISで検索した際に上がっているのを
チラ見して鼻で笑って頂けたら幸いです。


EPISODE10 霧、打撃音、屋上にて

朝……太陽の光に眩しさを感じながら起き上がる。

 

クラス代表決定戦の日から数日経ったが、クラスのクソアマ共の視線が更に冷ややかになった以外は特に何もなかった。

 

IS実習でグラウンドに突っ込んで穴あけるようなことはなかったし、クラス代表決定記念のパーティーは『オレにだけ話が来なかった』ので部屋に引きこもってた。故に、何もなかった。

 

 

「…………行くか」

 

 

身支度をとっとと整え、オレは専用機である『継黒威』の待機状態であるオンボロ金属バット片手に部屋を出て学園に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学園に着いたオレはいつも通り売店に朝食を買いにやって来た。

 

 

「柊くん、おはようございます」

 

「おはようございます……椛根さん」

 

 

微笑みながら会釈する椛根さんは今日も変わらず美人さんだ。

 

 

「頂きます……」

 

 

オレは椛根さんに金を渡し、既に用意されていたコッペパンと緑茶を受け取り、口に運ぶ。

 

 

「……柊くん、最近大丈夫ですか?」

 

「えっ?」

 

「その……最近、柊くんの悪い噂を聞くんです。前のクラス代表決定戦も裏で何かをしたから勝てたとか、その他にも色々……」

 

 

椛根さんの言葉を聞いたオレは考えずとも気付いた。噂の発信源はワンサマーだと。

 

取り巻きのアマ共を使えば女子特有のウザったい繋がりで拡散するのは容易い。そしてアマ共はオレに対して敵意剥き出し待った無しという寸法よ。

 

正直入学前から予想はしてたし、実家で受けた仕打ちに比べたらこんなもの屁でもない。

 

 

「言いたいヤツには言わせておけばいいので、特に気にしてません」

 

「そう、ですか……でも、あまり無理はしないで下さいね。私でよければ、いつでも相談して下さい」

 

 

椛根さんは優しく微笑みを浮かべながらオレに言う。

 

オレにそんな言葉をくれるとは……世の中とオレの性根はこんなに腐ってるのに、なんて慈愛に満ちた人だ。オレ感激。

 

 

「……ありがとうございます。それと、ご馳走様でした。では、またお昼に」

 

「はい。用意して、待ってますからね」

 

 

椛根さんに見送られながらオレは歩き出した。

 

今日は、いつもより頑張れそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーおはようございます」

 

 

廊下を歩いていると、用務員に声をかけられた。歳は七十代くらい……年齢相応の皺が刻まれている優しげな顔に総白髪のお爺さん。しかし、背筋がピンと伸びている。

 

猫背気味のオレとは大違い。姿勢だけなら二十代だな。

 

この人は確か……轡木十蔵。表向きは『学園内の良心』と呼ばれる親しみやすい用務員だが、その正体はIS学園の実質的運営者だ。

 

 

「……おはようございます」

 

 

とりあえず一礼しながら言葉を返す。

 

前世で十四、五歳だった頃読んでいた二次創作物の小説だと生身でも只者ならぬ雰囲気を醸し出してたりしたが……どうやらこの世界の彼もその類らしい。先程から尋常じゃない空気を醸し出していやがる。

 

しかもこの空気……例えるなら、津上司を濃くしたような、そんな感じ。まあ、あの眼鏡野郎は本気出せばこれ以上の空気を醸し出すだろうが。見た感じ只者じゃねぇだろアイツ。銃刀法違反してんだし。

 

 

「君が……柊霧生君ですね?」

 

「そう、ですが……あなたは?」

 

 

分かりきったことを問いかけてやる。

 

 

「私は轡木十蔵……IS学園の用務員をしています」

 

 

その瞬間、彼から放たれる威圧感がオレの身体にひしひしと纏わり付いてきた。

 

何かしでかした覚えはねぇぞオイ。

 

 

「柊君。少しお時間頂きますが、宜しいでしょうか?」

 

 

『頂いても』じゃなくて『頂きます』って言ったぞこの爺さん。

 

 

「……朝のHRに間に合わなくなるんですが」

 

「織斑先生には前以て連絡しましたので大丈夫ですよ」

 

 

OKOK、オレに断る権利はないのね?あぁ、よく分かったよ。ならとことん付き合ってやるよ。

 

 

「……分かりました」

 

「では、ついて来て下さい」

 

 

ああクソ面倒臭ぇなクソッ。

 

オレは内心毒づきながら『轡木』の背についていった。

 

あの眼鏡野郎と同じ空気を感じる時点でこの爺さんには敬意を持つ気にならない。というか持ちたくない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

辿り着いた先は屋上。オレが入ってから、轡木が屋上のドアに鍵をかける。

 

これで邪魔者はいませんってか。

 

オレはそのまま真っ直ぐ歩き出し、屋上の中央辺りで足を止めて振り向く。

 

 

「柊君には、これから私と一戦交えて頂きます。私は素手で御相手しますが、君は何を使っても構いません。何ならISでも結構です。老いぼれと侮ることなく、私の命を『()』る気でかかってきて下さい」

 

 

そう言うや否や、轡木から更に威圧感が溢れ出す。表情は相変わらず優しげなのに眼光に殺意まで感じる。

 

『何故オレが戦わなきゃならないんだ』とかいう文句は言わない。この男についていった時からなんらかのことをやるであろう気はしていた。とても、非常に、誠に面倒臭いが、文句を言うのは終わってからにするとしよう。

 

 

「……分かりました」

 

「それでは……参りますよ!」

 

 

轡木はそう言うと、見た感じ七十代とは思えない速度でこちらに走ってきた。対するオレはバットを振りかぶり、轡木の顔面目掛けてバットを投げてから走り出す。

 

 

「!」

 

 

轡木は一時停止しながら身を屈め、オレの投げたバットを避ける。

 

オレは走ったままの勢いで跳び、屈んでいる轡木の顔面にオレなりに渾身のドロップキックをお見舞いする。

 

轡木が吹き飛ぶ姿を見届けながら受け身を取って着地。すかさず立ち上がり、再び走る。吹き飛んだ勢いで後転して立ち上がる轡木の顔面目掛けて右ストレートを繰り出す。

 

 

 

 

 

しかし、轡木の顔面に入る筈だった右ストレートは轡木の左肘で外側から押され、左に逸らされる。そこに轡木の右裏拳がオレの右側頭部を捉え、よろけた所に轡木の左足の靴底がオレの顎を蹴り上げる!

 

畜生、痛ぇ……!まさか受け流しからの裏拳、トラースキックコンボとは……このジジイ何者だよ!?

 

顎を蹴り上げられ背筋が伸びた状態になった時、轡木はオレの右膝裏を右脚で踏み抜き、オレはそのまま仰向けにダウンする!すると、倒れたオレに対して轡木は右脚を振り上げる!

 

アレは食らったらヤバーーー

 

 

 

 

 

「ーーーがあぁーッ!!つぅあ゙ぁッ、いってぇ!!!」

 

 

轡木のストンピングは倒れているオレの顔面に直撃し、後頭部が床に叩きつけられた!オレは叫びながら後頭部を押さえてのたうちまわる!

 

BLOODY HELL!!(クソ痛ぇッ!!)

顔面も痛ぇが後頭部の方がクソ痛ぇぞクソが!クソ!クソッタレ!!

 

痛みのあまりクソしか出ねぇ状況で上を見ると、轡木が再び足を振り上げやがった!

 

調子乗るんじゃねぇぞこのクソジジイ!!

 

オレは仰向けの状態で右脚を振り上げ、轡木の身体を踵で叩き、押しながら左脚を振り上げてその勢いを利用してバック転してやる。そこからオレはその場に屈み、両脚で地面を蹴ってよろけている轡木の腹部に痛む頭で飛び込み頭突きをブチ込む!

 

 

「ぐっ……!」

 

「まだまだァ!!」

 

 

そこから受け身を取って着地したオレはくの字になってる轡木の後頭部目掛けて浴びせ蹴りを叩き込んでやった。

 

顔面から落ちた轡木を見届け、オレは痛みでふらつきながら立ち上がり、恐らく垂れているであろう鼻血を左腕の袖で拭いながら歩く。ぶん投げてからノータッチだったバットを拾いながら痛む後頭部を左手で触って確認する。

 

それはそれは真っ赤な液体が左手を染めてらぁ……後頭部からも血が出てんじゃねぇかよ、ふざけんなよクソ!クソ、クソッ!!

 

オレは右手でバットを握り締め、先端を引きずりながら歩き、立ち上がろうとしている轡木の前で立ち止まる。未だ顔面と後頭部に残る痛みが、鼻と後頭部から垂れる血が、そしてオレにこんなダメージを与えた轡木の存在が、オレをイラ立たせる……イライラすればする程、力が湧いてくる気がする……。

 

今なら、あの眼鏡野郎が仰ってた『()る気』とやらを存分に籠めることが出来る気がするぜ。

 

オレは両手でバットを振り上げ、轡木の頭目掛けて思い切り振り下ろしたッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーいい所なんだろうけど、ここまでだ」

 

 

振り下ろしたバットは、轡木の頭蓋を割り、脳漿をブチまけることなく、津上司の右腕に遮られた。

 

 

「悪いね、霧生君」

 

 

その一言と共に鳩尾に激痛が走り、オレは踏ん張ることも出来ずに倒れた。

 

は、速ぇ……なんて左ボディ放つんだあの眼鏡野郎は…………クソ。

 

痛みのあまり、オレの意識は津上司に対する怒りを感じる間も無く途絶えてしまった…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霧生が意識を失った後、司は轡木に左手を差し出し、轡木はそれを手に取って立ち上がる。

 

 

「なんでこんな真似をしたんですか?」

 

「貴方が入れ込んでいるので少々気になりまして……いや助かりました。もし貴方がいなければ、本気を出す間もなく()られていました」

 

「俺が入れ込んでる理由が分かってもらえたようで何より。じゃあ、あとは宜しくお願いしますね」

 

「はい。では、これで」

 

 

轡木は未だにバットから手を放さず倒れている霧生を担ぎ、屋上の鍵を解いて屋上から出て行った。司はそれを見届けてから、自分の右腕を撫でる。

 

 

「……まさか、腕を折られるとは思わなかったなぁ」

 

 

霧生の最後の一撃は、司の腕を見事叩き折ってみせた。司は激痛が走る右腕を撫でながら、痛みなど感じていない様子で微笑を浮かべながら空を見上げた。

 

 

「……強引ではあったが、轡木さんのおかげで彼は『()』る気の籠め方を理解した。後は彼が『真の殺意』を抱けば…………」

 

 

司は笑みを浮かべながら屋上から飛び降りる。その後彼は姿を晦まし、血で汚れた屋上から誰もいなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー……ここは、どこだ?

 

ゆっくりと目を開き、辺りを見回す。

 

オレの身体を包むフカフカの布団……そして清潔感溢れる部屋。

 

そこから察するに、ここは保健室か。

 

現在地を確認してから、身体を起こして後頭部に触れる。頭には包帯が巻かれているが……おかしい。後頭部に痛みがない。オレは確かに、轡木のせいで血を流していた筈なのに。

 

 

 

 

 

「ーーー柊、大丈夫か!?」

 

 

突如、ドアが開かれると同時に響いた声の方を向く。

 

そこには、肩で息をしている篠ノ之さんが立っていた。

 

 

「篠ノ之さん……どうしたんだ?」

 

「柊が轡木さんを庇って階段から転落して……重傷だと聞いたから……」

 

 

篠ノ之さんはゼェゼェ言いながらもなんとか話しながらオレのベッドまで歩み寄ってくる。

 

オレみたいなヤツの為にこんなに息切らして駆けつけてくれるなんて……やっぱりこの篠ノ之さんは人間が出来ていらっしゃる。

 

 

「そうか……分かった。とりあえず落ち着いてくれ」

 

「済まない……柊が、重傷だと聞いて……いてもたってもいられなくなって……!」

 

 

篠ノ之さんはベッドに手をつき、泣きそうな顔でオレに詰め寄る。

 

言えない……実は轡木のクソ野郎にやられただなんて、口が裂けても言えない!このことは墓場まで、或いは来世まで持ってくとしよう……。

 

 

「篠ノ之さん……オレは大丈夫だ。確かに怪我はしたが、意識はあるし五体満足だ。暫く休むことにはなるが……クラスの女子連中と離れられるとポジティブに考えるさ」

 

「柊……。全く、お前という男は……でも、良かった。本当に良かった!元気そうで、安心した……」

 

 

篠ノ之さんは涙目ながらも微笑み、そう言うが……そんな近距離で微笑まれると、なんというかその……凄く、照れる。

 

 

「それは良かった……あぁ、その、篠ノ之さん……?ちょっと、顔近くない?」

 

「ん?……はっ!?す、済まないっ!えっと、その……しっ!失礼する!」

 

 

篠ノ之さんは少しの間を空けてから頬を赤く染め、離れてから逃げるように病室から出て行ってしまった。

 

……少し残念だと思ってしまった。

 

そんなことを考えていると、ドアをノックする音が響く。

 

 

「柊、入るぞ」

 

 

この声は、織斑先生か……。

 

ドアが開くと、織斑先生とやまや先生が入ってきた。

 

 

「今、篠ノ之とすれ違ったが……何かあったのか?」

 

「オレのお見舞いに来てからなにやら用事を思い出したようで」

 

「む、そうか……それで、柊。具合はどうなんだ?頭を強く打ったと聞いたが」

 

「……まだ、結構痛みますね」

 

 

とりあえず嘘を吐いておく。血を流してるんだ、普通ならまだ痛むだろうよ。

 

 

「分かった……とりあえず、傷が完治して痛みが完全に引くまでは安静にしているんだ」

 

「柊君が大丈夫だと思ったら、まず保険医の方に言って下さいね」

 

「分かりました……」

 

「では、私と山田先生はこれで失礼する。柊、大事にな」

 

「柊君、お大事に」

 

 

織斑先生とやまや先生も病室から出て行き、オレだけ残った。

 

オレは起こしていた上体をゆっくりと寝せる。フカフカで暖かい布団を身体にかけ、目を閉じて身を委ねると、あっという間にオレの意識は途絶えてしまった……。




メイン人物紹介

轡木十蔵

表は『学園内の良心』と呼ばれる親しみやすい優しげなIS学園の用務員であり、裏の顔はIS学園の実質的経営者。七十代でありながら凄まじい身体能力と戦闘能力を誇り、津上司と繋がりがある。司が気にかける霧生と一戦交えてから、彼もまた霧生を気にかけるようになった様子。
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