柊霧生が進む道   作:ダメオ

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EPISODE3 さよなら灰色人生、こんにちは黒白人生

ワンサマーにボコられて数日後……ついにこの時が来てしまった。

 

今現在、オレはIS学園の一年一組の教室にいる。ザルセキュリティで度々トラブル起こって、トラブル起きてるのに教員部隊はやって来ず、その度にその場にいる生徒が解決するハメになるあのクソ学園だ。今日からオレはここの生徒になる。

 

正直ここにいるくらいならトロマヴィルのハイスクールの方がいいな。最低で下品でくだらなくて……とっても楽しそうだ!隣に建ってる原発が炉心溶融(メルトダウン)したり突然変異したモンスターにぶっ殺される危険があるかもしれないが、IS学園で無人機相手にするよりかはマシ!

 

アホなボンクラ同士!仲良しこよしで!モンスター退治の方が楽しいと思う!そう、オレはボンクラだ!

 

世界F××××××××××CK!!!!

 

……なんか、妙なテンションになっちまった。急に冷めるのはイヤだね。首切り落としたくなる。

 

色んな意味で憂鬱になっている中、クラスの女子達はみーんなワンサマーに夢中。もうみーんな。誰もオレに視線くれない。サンキュー、ワンサマー。評価をクソバカからクソにランクアップしよう。

 

こんなバカなことを考えていると、教室の扉が開いてやまや先生が入ってきた。

 

 

「みなさん、おはようございます!今日から一年一組の副担任を任されることになった山田真耶です!これから三年間、よろしくお願いします!」

 

 

 

やまや先生は元気に挨拶をする。しかし全員シカト。やまや先生の容姿が胸以外ロリっぽくて教師に見えないからなのか、ワンサマーに夢中になっているからなのか……考えるまでもなく後者だな。

 

女子共、そろそろワンサマー視姦するの止めろよ。やまや先生涙目になってるぞ。まあ、この程度で涙目になるやまや先生もやまや先生だけど。

 

 

「よろしくお願いします」

 

 

とりあえず、オレだけはやまや先生の挨拶にきっちり返す。オレのようなザコを相手してもらった恩もあるし。ISランクFでクソ中毒のFU×K野郎と侮るなかれ。オレは頂きますもご馳走様も言えるんだぜ?

 

やまや先生は笑顔を浮かべ、自己紹介へと入る。あれだけで嬉しくなるのもどうかと思うけど。

 

一人一人自己紹介をやっては終えていく。正直非常に興味無い。みんなには悪いけど全然興味湧かない。だって、ワンサマーいるじゃない?しかも中身クソじゃない?確実にオレ潰されるじゃない?ならさ、出来ることなら部屋に引きこもっていたい。どうせあることないこと噂流されて嫌われんだから。

 

 

「ーーー柊君……あの、柊君!」

 

「……はい?」

 

 

目の前から聞こえる声で我に返り、最初に視界に入ったのは二つのバレーボールでした。いやぁ、やまや先生。あなたのバストはいつ見ても暴力的ですね。不健康だが健全な男子であるオレには非常に刺激が強い。

 

 

「次、柊君が自己紹介する番なの。してもらっていい……かな?」

 

「……わかりました。ボーッとしててすみません」

 

 

考え過ぎて自分の世界に入る……オレの悪い癖だ。ついでな感じでやまや先生に軽く謝罪してから起立する。周りの女子達はオレを一瞥し、すぐに視線をワンサマーに戻す。

 

ああそう……もうオレに興味は無いと。改めてサンキューワンサマー。クソからボケにランクアップだ。さぁ、早く自己紹介してしまおう。

 

 

「……柊霧生です。好きなものは……特になく、嫌いなものは色々です。まあ、適度によろしくお願いします」

 

 

我ながら変わってる自己紹介をしてちゃっちゃと着席する。ここに来る前はまともな自己紹介出来てたんだけどなぁ。IS学園おっかねぇ。

 

そんなことを考えてたら、頭に軽い衝撃が走った。何かでパシンと叩かれたようだ。

 

 

「ーーーもう少しまともな自己紹介をしろ」

 

 

オレの視界に真っ先に入ったのは、黒いスーツと黒ストがよく似合う黒髪吊り目なクール美女。彼女は織斑千冬。ワンサマーの姉だったり白騎士の正体だったり女尊男卑主義者に崇め奉られたりする教師。

 

オレは驚いていた。あのブリュンヒルデがあまり痛くない出席簿アタックをするということに。てっきりドタマカチ割らんばかりの勢いで轟音を響かせると思ったんだが……。この違いもまた平行世界だからだろうか?

 

 

「ち、千冬姉!?」

 

 

ワンサマーがわざとらしいリアクションで言うと、ブリュンヒルデはワンサマーの下に行って出席簿を振り下ろす。

 

振り下ろされた出席簿がワンサマーの頭にヒットした瞬間、教室に凄まじい音が響いた。オレが知ってる方の出席簿アタックだ。

 

ワンサマーは頭を押さえて蹲ってる。ザマァミロ。

 

 

「織斑先生と呼べ、馬鹿者」

 

 

ブリュンヒルデはそう言い、教卓の方まで行った。

 

 

「織斑先生、お疲れ様です」

 

「お疲れ様です、山田先生。あとは私が変わりましょう」

 

 

やまや先生が下がり、ブリュンヒルデは教卓の前に立つ。

 

 

「私が一年一組の担任になった織斑千冬だ。君達を一年で一人前に育てるのが私の仕事だ。理解出来ない者には理解出来るまで指導してやろう。手厳しくいくから、そのつもりでな」

 

 

な、なんだ。この所々に感じる柔らかさは。これもまた平行世界の違いか……。

 

……正直、今やっとISの平行世界も悪くないと思った。優しいブリュンヒルデとかちょっと素敵。なんか気味悪いけど。

 

 

「キャアァ〜ッ!!千冬様!本物の千冬様よ!!」

 

「ずっとファンでした!!」

 

「私、お姉様に憧れて北九州から来ました!!」

 

「お姉様のためなら死ねます!!」

 

 

はい始まりました〜。ブリュンヒルデの自己紹介後のファッキ○ノイズ。女特有の高い声が大音量でクソやかましい。耳がキーンってする。他のクラスに迷惑だぞクソ。動物園に来た小学生じゃねぇんだから自重しろよ。お前等世間一般で言うJK一年生だろうが。

 

 

「毎年毎年……何故私が受け持つクラスにはこの手の生徒が集まる?もしや、狙って集めているのか?」

 

「キャーッ!!もっと叱って!罵って!」

 

「私を躾けて!」

 

「つけ上がらないように調教して!」

 

「そして時には甘やかして!!」

 

 

ブリュンヒルデが割とガチで呆れ果てている中、アマ共は気付かずキーキーと喚き立てる。

 

ブリュンヒルデさんや。『この手の生徒』なんて言わず素直に『馬鹿共』って言えばいいのに。こんなアホ共を教育するならあの暴君的アトモスフィアを醸し出してたブリュンヒルデの方が良かったかも。

 

 

「静かにしろ!他のクラスの迷惑だ!」

 

 

ブリュンヒルデの実に正論な一喝で教室は静まり返る。ホントに教師って感じ。いいね!してあげたいと思った。

 

さて、自己紹介が再開したのであとは終わるまで暇だ。とりあえず退屈凌ぎに辺りを見回す。その時、オレの視界に一人の生徒が入った。そして、思わず驚いてしまった。

 

恐らく、彼女は篠ノ之箒だ。

 

何故『恐らく』なのかというと……髪型が違うからだ。目立つ程に長いポニーテールではなく、肩甲骨を覆うくらいの黒髪ロングとなっている。無論リボンはない。

 

それに、篠ノ之箒はこの時ワンサマーをチラ見してたよな?だが、今ここにいる恐らく篠ノ之箒であろう女子は全く目もくれず前を向いている。

 

これも平行世界の違い?あるいは……ワンサマーの過去の行動によって篠ノ之箒の現在が変わってしまったとか?

 

とりあえず言えることは一つ。

 

 

 

 

 

周りの話はちゃんと聞こう。

 

真面目に自己紹介聞いてりゃ彼女が篠ノ之箒かどうか分かって世話がなかったのに。我ながら世話がねぇぜクソ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全員の自己紹介が終わり、SHRが終了した。さて、寝たフリでもしとこうかな。

 

 

「なぁ、柊!」

 

 

……どうやら、寝たフリは出来ないらしい。ワンサマーが笑顔で声をかけてきた。

 

 

「織斑君、ソイツと知り合いなの?」

 

 

オレのことソイツ呼ばわりかよ。初対面なのになんてクソアマだクソ。

 

 

「まあ試験の時に会ってちょっと話した程度だけどな。柊、話があるから屋上まで来てくれないか?」

 

「…………分かった」

 

 

オレは立ち上がり、ワンサマーと共に屋上に向かった。その時に篠ノ之箒を見ると、あちらさんもこっちを見てた為目が合った。

 

これはもしかしたら……ワンサマーの過去の行動が影響してるかも。それが分かっただけでも収穫だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

屋上に着くと真っ先にパンチが飛んできて寝転がるハメになった。クソッ、こんな形で寝ることになるとは。

 

 

「まずは挨拶だ。軽〜く痛めつけてやる!」

 

 

ワンサマーはオレのボディを蹴り、背中を踏みまくる。超絶クソ痛ぇ。そこらのチンピラ程度ならほとんどダメージ抑えられるのに。クソが。

 

 

「……一つ、聞いてもいいか?」

 

「あぁ?なんだよザコ」

 

 

またもボロ雑巾にされたオレは満足げなワンサマーを見上げながら問いかける。

 

 

「確か……原作なら、ワンサマーは篠ノ之箒に屋上に連れてかれるんじゃなかったのか?」

 

「モップ?あぁ、アイツは俺のヒロインじゃねぇよ」

 

「……どういうことだ?」

 

「お前バカか?モップと酢豚にはヒロインとして価値ねぇから。やっぱヒロインといったら外国人だろ!セシリアにシャルにラウラ!まあ、簪と刀奈さん、それにのほほんさんと虚さんは例外で俺のヒロインだけどな!」

 

 

ワンサマーはベラベラと語ってくれた。

 

モップと酢豚、か……。まさかテメェの好みで篠ノ之箒と凰鈴音を除外したとは。

 

 

「あとは束さんもだな。ホント、モップのいい所ってそれだけだよな。束さんの妹じゃなかったら存在の価値すらねぇよ」

 

 

サンキューワンサマー。だがいらないことまでベラベラ喋ってるからファッキューワンサマー。

 

篠ノ之箒は好意の表し方が絶望的にヘタクソ過ぎて暴力振るう所があるが美人だし料理はこれから上手くなるし胸デカいし優良だろう。

 

凰鈴音も暴力属性なきゃ面倒見が良いし料理上手いしロリ体型だしワンサマーを追ってIS学園に来る乙女。そして二人共幼馴染。

 

それを理解せずモップだの酢豚だのと呼ぶこのクソ野郎の顔面を一丁殴り飛ばしてやりたいが、返り討ちになるだろうから止めとく。情けないヤツだと笑ってくれ。

 

 

「さてと、そろそろ戻るか。あーっ、スッキリした!」

 

 

長々と喋っていたワンサマーはその場を立ち去ろうとし、屋上のドアに手をかけた所で止まる。

 

 

「なんだったら、モップと酢豚をお前のヒロインにしていいぜ?あんなので良ければ、だけどなぁ?アハハハハッ!」

 

 

ワンサマーは人をバカにしたような笑顔で言ってのけてから屋上のドアを開いて立ち去った。オレは寝転がったまま、空を見つめる。

 

身体はまだ痛むが……アイツが長々と何もせず口からクソ垂れ流してくれたおかげで少しは引いてきた。それに前やられた分、受け方というのをちょっとは分かってきた。

 

この調子なら近い内にダメージを最小限に抑えられそうだ。

 

 

「……ハァ」

 

 

青い空、輝く太陽、そしてそこに浮かぶ白い雲。オレの視界にある全てはたったそれのみ。他には何もない。

 

 

「どうせなら……、あのちっちゃい雲として転生したかったなぁ」

 

 

オレは一人呟いてしまう。口から勝手に言葉がこぼれ出ちまうとは……それ程この人生に疲れてるんだろう。そうに違いない。きっと、絶対、マジで。

 

 

「ハァァァ〜……」

 

 

深くため息を吐きながら青空を見つめる。

 

……今、スゴく幸せだ。

 

悪魔によって転生されたこの人生で、一番の幸福を感じる。恐らくこの人生の絶頂期ではないだろうか。

 

このまま時が止まってしまえばいいのに。或いは、天文学的低確率で隕石がオレ目掛けて降ってきてしまえばいいのに。今、この幸福の頂点に達している時にこの人生を終わりにしたい。

 

 

 

 

 

「ーーーおい、大丈夫か!?」

 

 

現実逃避に精を出していると、恐らくオレを呼ぶ声が聞こえた。その声の主はオレの下に走ってきて、オレの顔を覗き込む。

 

 

「しっかりしろ!」

 

 

その人物は篠ノ之箒だった。まさか彼女に心配されるとは。思ってもみなかった。

 

 

「大丈夫……痛みはほぼ引いた」

 

 

少々名残惜しいが身体を起こして立ち上がり、身体についた埃をはたいて落とす。

 

 

「織斑一夏にやられたんだな?」

 

「まあ……」

 

「クソッ、奴め……小学の頃から相変わらずということか」

 

「……彼、小学の頃からあんな感じなの?」

 

「ああ。一時期同じクラスメイトだった……。昔から身体能力が高くて上級生すら喧嘩で倒してしまう程だったが、その力をいつも弱い者を虐げる為に使っていた……」

 

 

そうだろうな。容易に想像出来るよ。

 

 

「柊。もしまた何かあった時は私に言ってくれ。私に出来ることなら、力になろう」

 

 

な、なんなんだこの篠ノ之箒は。オタクこんなに人間出来てた?それにオレとアンタは初対面だぜ?

 

 

「……篠ノ之さん、だよな?なんで見ず知らずのオレにそこまでしてくれるんだ?」

 

「……織斑一夏には後ろ盾がある。でも、柊には無い。それに、お前を見てると分かる。お前も女尊男卑の世に苦しめられたのだと……」

 

 

コイツは参ったね……まさかこんなにも目がいいとは。これも平行世界だから?

 

 

「世の中がそうなったのは私の姉のせいだ……その風潮で苦しんでる者がいるなら、身内としても私個人としても見過ごせない」

 

「……そうかい」

 

 

この篠ノ之箒なら頼れる。まさかこんなにも頼もしげな味方を得れるとは。我ながら幸福だね。

 

 

「篠ノ之さん。オレは自分で言うのもアレだけど結構性格が悪い。だからズケズケ言わせてもらう。オレの為だと思っての勝手な行動はどうか慎んでくれ。そういう『勝手』な気遣い、嫌いなんだ」

 

「!……分かった、気を付けよう。これから宜しくな、柊」

 

 

篠ノ之さんは少し驚いてから微笑んで返事する。

 

インサイト力が高く人間出来てるこの篠ノ之さん、オレの言葉を理解して受け入れてくれたよ。こりゃ本格的にオレ幸運だね。

 

 

「よろしく篠ノ之さん。んじゃ早速だけど、教室まで走ろうか。時間がヤバい」

 

「むっ!?そうだな、急ごう!」

 

 

オレと篠ノ之さんは共に走り出した。

 

楽に死ねたらいいなとか考えてたが、前言撤回だ。ワンサマーが過去を歪めて現代に変化が出たならオレはそれを利用してやる。

 

目指せ卒業or中退or退学。そこがオレのこの人生の真のスタート地点であり、『楽園』への入口となるだろう。




メイン人物紹介

篠ノ之箒

一年一組のクラスメイトであり、霧生の味方。一夏(転生者)が自身の好みで相手をしなかった為繋がりがなくなっている。過去の一夏(転生者)の行動によって性格と未来に影響を及ぼし、心身共に本来(原作)の箒より強くなった為他者の心配が出来る程に余裕を持てるようになった。

姉である篠ノ之束がISを開発したことで世界が変わったことに肉親として責任を感じており、女尊男卑の風潮に対して真っ向から反抗している。

誕生日にリボンのプレゼントも渡されなかった為髪型の拘りは無くなっており、肩甲骨を覆う程のロングヘアとなっているのが大きな違い。
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