柊霧生が進む道   作:ダメオ

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お久し振りです

筆が進まなくなりながらも
何とかやりきりました

今回もチラ見してやって下さい


EPISODE7 バランス

翌日……授業は終わり放課後。織斑先生がオレの席に近付いてきた。

 

 

「柊、話がある。ついてきてくれ」

 

「はぁ……分かりました」

 

 

オレは席を立って織斑先生について行く。

 

恐らく、篠ノ之束が話してたクラス代表の件だろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生徒指導室に入り、鍵をかける。それからオレと織斑先生は椅子に座る。

 

 

「それで、話とは?」

 

「うむ……来週のクラス代表決定戦のことでな。かなり不味いことになった」

 

「かなり不味い……?あー、どのように?」

 

「オルコットと織斑の二名と戦い、一勝も出来なかった場合……お前の身柄は遺伝子研究施設に引き渡されることが決定した」

 

 

ああ、知ってましたよ。他ならぬアンタの親友に教えられてね。

 

 

「……一応聞きますけど、織斑一夏もですか?」

 

「…………いや、お前だけだ」

 

 

織斑先生は申し訳なさそうに言う。

 

ああ、どうせそうだろうと思ってたよ。聞いただけです。なんてったってオレは日本政府に買われた身だし。

 

 

「要は『ISのデータ取ることも出来ないなら、いっそモルモットにしちまった方が世の為人の為』ってことですよね?」

 

「表向きは、な……。しかし、今はどこもかしこも女尊男卑主義が蔓延している」

 

「と、なると……研究にかこつけてオレを処分するってことですか」

 

「……恐らくは、そうだろう」

 

 

つまりライミーとワンサマーにボコられた場合、国にトドメ刺されるオチということだ。改めて世の中クソだと思った。

 

 

「済まない、柊……。私にはどうすることも出来なかった……」

 

 

オレの前に立ってる織斑先生の表情は非常に暗く、申し訳なさそうだ。この世界の織斑先生は良くも悪くも生徒想い。自分の生徒が命の危機に晒されたとなるとこの人なら哀しむだろう。

 

……使えるものを使い、今世初の頑張りを見せる時が来たようだ。

 

 

「織斑先生」

 

「……なんだ?」

 

「要は……一勝でもすればいいんですよね?」

 

「あ、ああ……」

 

「でも現実的に考えてオルコットは代表候補生、織斑一夏はISランクS……ISランクFが相手するにはあまりにも無茶ですよね」

 

 

オレの言葉を聞いた織斑先生は更に表情が暗くなる。オレも自分で言っといてこのチェックメイトな状況に頭抱えたくなった。

 

だが、オレには篠ノ之束がついている。もしかしたら何かしらの厄介事と化すかも知れんが今の所アイツは最高に頼れる。

 

 

「そこで……織斑先生。頼みがあります」

 

「……なんだ?」

 

「最初の一回戦、オレとオルコットに出来ますか?」

 

「それくらいなら可能だが……」

 

「なら大丈夫です。あとはこっちでやれることやりますんで」

 

「……本当に、大丈夫なのか?」

 

「大丈夫って言ってるじゃないですか」

 

「もし二敗すればお前は殺されるんだぞ!?それなのに、どうして冷静でいられる……!?」

 

 

織斑先生は声を荒げてオレに問いかける。

 

正直、篠ノ之束がオレの専用機改良するとはいえそれで勝てるかは分からない。所詮オレはFランクだ、機体の差は無くても操縦者としての技量は歴然とした差がある。

 

だが、オレを雑魚だと思ってるライミーとワンサマーには隙がある。そして、原作の知識を持っているオレはライミーのこの時点での戦法も実力も大体は分かる。まあ、平行世界だから違う可能性もあるが……それでも何も知らないよかはマシだ。

 

 

「……ここでピーピー喚いても現実は変わりませんから。無駄なことはしたくないんです、オレ」

 

「そう、か……柊は強いな」

 

「弱さを理解してるだけです……では、失礼します」

 

 

オレはそう言い、生徒指導室からクールに出て廊下を歩く。

 

さて、と……柄じゃないが行動開始といくか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーFUC×FU×KF×CK...」

 

 

現在、オレは口から糞を垂れながらIS学園の廊下を歩いている。

 

頑張るなんて柄じゃないのにアリーナに行ったが……現実は非情だ。訓練機は予約がいっぱいで借りれなかった。それだけなら良かったさ。

 

だが、受付にいた女の一言がオレのFUC×スイッチをONにした。

 

 

『千冬様の弟君なら兎も角、アンタみたいなネクラには予約したって貸さないわよ』だってさ!

 

 

ふざけやがってクソ……お陰でさっきまで上がってたモチベーションがガタ落ちだ。場の流れとはいえ織斑先生にクールにキメてクールに去ったのに。もう予約が空いたとしても乗らねぇよクソが。

 

内心イライラしながらIS学園を歩き回っていたら、剣道場が目に付いた。

 

篠ノ之さん……ここで竹刀か木刀振ってんだろうか。

 

ふと気になり中を覗いてみると、篠ノ之さんはいた。

 

 

 

 

 

しかし、篠ノ之さんはオレの予想を裏切った。

 

篠ノ之さんは『素手』で一人演武の真っ最中だった。ここ剣道場なのにとかいう野暮なツッコミは胸の内にしまっとく。

 

しかし実に入りづらい空気……ここは覗き見を続行するとしよう。

 

……どうやらこっちの篠ノ之さんは『剣』ではなく『拳』がメインのようだ。しかも実力もあるっぽい。武術とかほぼ分からんズブの素人のオレでさえ、あの篠ノ之さんは『強いんだな』ってのが理解出来る。

 

 

「ーーーッ!誰だ!」

 

「……オレです」

 

 

覗き見していて目が合った上で声をかけられちゃ、出るしかないな。

 

扉を開けて出てくると、篠ノ之さんは微笑みながらこちらに歩み寄ってくる。

 

 

「柊か……どうしたんだ?」

 

「暇だったから学園を見て回ってたんだ。そしたら剣道場があって、中を見たら篠ノ之さんが演武やってて、入るのも気まずかったから覗き見してた」

 

 

さらりとウソを混ぜながら真実を言う。

 

 

「そういうことか……」

 

「あの動きって、何かの流派とか?」

 

「ああ。これは篠ノ之流といってな、私の家で先祖代々伝えられた古武術だ。あらゆる武器術と柔と剛を併せ持つ体術を扱うが、私は体術の方が身に合っていてな。武器は一通り使えるが、基本は徒手空拳だ」

 

 

木刀を振らない篠ノ之箒……原作を知ってる身としては違和感がハンパねぇ。

 

 

「柊は何かやってないのか?」

 

「武術とは縁がない生活送ってたからね。まあ、身のこなしは多少自信あるよ」

 

「そうか……」

 

 

篠ノ之さんはオレの頭の先から爪先までジロジロと見つめてくる。

 

 

「柊、ちょっと中に入ってくれ」

 

 

…………篠ノ之さんの頼みなら仕方ない。

 

篠ノ之さんに言われ、オレは靴を脱いで剣道場に入る。その後、篠ノ之さんは急にオレの右手に握手してきた。

 

 

「済まない。今からお前を投げるぞ」

 

 

篠ノ之さんがそう言うや否や、オレの身体は宙を舞った。

 

右手にあった篠ノ之さんの手の感覚は既にないのを確認してからオレは咄嗟に身体を捻り、地面に着地した。

 

どうよ。ISじゃなく生身ならこの程度のアクション、ワケないぜ。

 

ーーーそんなことを考えていたら、左頬に衝撃が走る。篠ノ之さんの右拳が現在進行形でブチ込まれていたが、ダウンはしなかった。

 

篠ノ之さんには悪いがワンサマーの打撃に比べたら軽い。受け方を知ってるオレには『こうかはいまひとつのようだ』程度さ。

 

というか……なんで殴られたのオレ?

 

 

「オイオイ……殴るなら殴るって言ってくれよ」

 

「す、済まん……」

 

「それで……なんで殴ったの?」

 

「その……お前の身のこなしを見た瞬間に、お前なら大丈夫だろうと思ってな。現にほぼ手応えが無かった」

 

「まあ、実際大丈夫だからいいけどさ……」

 

 

それでもワンサマーの次に痛いけどな篠ノ之さんのパンチ。女の打つパンチじゃねぇよ。

 

 

「そういえば、クラス代表決定戦は強制参加らしいな……」

 

「まあね……しかも、諸事情により一勝でもしないとオレの身が危うい。だから、篠ノ之さんに是非とも協力して頂きたいことがある」

 

「私に出来ることなら協力しよう」

 

 

やはりというか篠ノ之さんは快諾してくれた。

 

ISは篠ノ之束に期待してぶっつけ本番。オレはオレでイメトレでもやるとしよう。

 

 

「ありがとう……確か、篠ノ之流はあらゆる武器術を使えるんだよな?なら、飛び道具的なものはない?それを掻い潜って間合を詰める練習がしたい」

 

「飛び道具か……なら、『指弾術』はどうだ?」

 

 

篠ノ之さんはどこからかコインを取り出しながら言う。

 

指弾術……確か親指で弾いて玉やら撃つ技だ。まさか篠ノ之さんの口から聞くことになるとは。篠ノ之流スゲェな。

 

 

「OK。じゃあ、最初は慣らしを兼ねて『その場から動かず』に撃ってきてくれ。どこ狙っても構わないから。オレが篠ノ之さんにタッチ出来たら一回ストップで」

 

「防具はつけないのか?」

 

「避ける練習だから邪魔なだけだよ。まあ、当たって痛い目見てもそれは避けれないオレが悪いってことだから遠慮なく頼む」

 

「……分かった。じゃあ、始めるぞ」

 

 

篠ノ之さんは両手にコインを握り、両腕を下げて構える。それから、篠ノ之さんの親指がコインを弾く。それとほぼ同時にオレの額に衝撃が走り、思わずよろけてしまうが踏ん張る。

 

痛ぇ……いきなり額かよ。ホントに遠慮ナシだな。まあ、悪いのは気を抜いてたオレだが。

 

 

「済まん!大丈夫か!?」

 

「避けれなかったオレのミスだよ。さ、続けて」

 

「わ、分かった……」

 

 

気を取り直して再開。篠ノ之さんの親指がコインを弾くと同時に右膝を曲げて右足を上げると、オレの右足の甲があった位置にコインが着弾する。

 

マジでピストル並のスピードあるんじゃない?実際にピストルで撃たれたことないからよくは分からんが。

 

そんなことを考えながら左に一歩分ずれると、先程までオレの右肩があった位置をコインが通過する。続いてその場で右に90度回り、篠ノ之さんに身体の左側を向けるようにすると左肩と右脇腹があった辺りを二枚のコインが通過ーーー更にすかさず上半身を少し反らすと、オレの顔面目前をコインが通過した。そこからオレは前転してコインが着弾する音を二回聞きながら立ち上がり、篠ノ之さんに視線を合わせる。

 

さて、そろそろ攻めるか。

 

オレはすかさず篠ノ之さん目掛けて真っ直ぐ駆け出した。

 

 

「ッ!」

 

 

篠ノ之さんのコインを弾く親指に合わせて体勢を低くして飛び込み、右手を伸ばす。コインはオレの頭上を通過し、オレの右手は篠ノ之さんの右足に触れた。

 

 

「よし、最初はこんなもんかな」

 

「…………」

 

「どうかした?」

 

「改めて、柊の身体能力は凄まじいと思ってな……それで何も習ってないと言うのは俄かには信じがたい」

 

「と言われても……本当に何も習ってないからそうとしか言えないな」

 

 

オレは立ち上がりながら言う。

 

 

「さぁ、続けていこうぜ篠ノ之さん。次は篠ノ之さんも動いてくれ。ノルマは三回タッチで」

 

 

こうしてオレと篠ノ之さんは、徐々にタッチ回数とオレへの制限を増やしながら特訓を重ねていった。

 

そして、窓から夕日が射し込む頃。オレはすっかり汗だくになり、肩で息をしながら床に座っていた。

 

 

「今日はここまでにさせてくれ……篠ノ之さん、付き合ってくれてありがとう」

 

「役に立てたなら光栄だ。それはそうと、柊。随分汗を掻いたな」

 

「あぁ……出来れば篠ノ之さんの部屋のシャワー借りたいくらいだ。恐らく織斑先生まだいないだろうから」

 

「分かった。私はまだここにいるが、同居人にも許可は貰ったから一言断って使ってくれ」

 

 

まだ練習する気かよ……凄い御仁だな全く。

 

 

「どうも。では、また明日」

 

 

オレは靴を履いて剣道場を後にした。さて、部屋に行って服を取ってくるとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一年寮に戻ったオレは部屋で下着と服を取り、篠ノ之さんの部屋の扉をノックする。

 

 

「はーい!今出まーす!」

 

 

声が聞こえると共にドアが開く。そこにいたのは、短髪ヘアピンの女子。名前は確か……鷹月静寐(タカツキシズネ)

 

ワンサマーのヒロイン候補ではないし、確か性格は生真面目だった筈……なら、信用出来るか?

 

 

「あ……どうも」

 

「柊君?どうかした?」

 

「ちょっと、シャワーを借りたくて……」

 

「あぁ、篠ノ之さんから話は聞いてるわ。どうぞ」

 

「すみません……」

 

 

鷹月静寐に促され、部屋の中に入る。視界に入るのは、入学前にオレが寝泊まりしてたホテルより御高そうなホテルの一室を思わせる高級感漂う部屋。

 

オレの物置部屋とは比べることすらおこがましい。オレもこういう部屋に住みたかったよ、クソ。

 

オレは内心嫉妬しながらも、バスルームへと歩みを進めた。今は汗を流すことに専念しよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

汗を流し終えたオレはバスルーム内で着替え、バスルームから出る。

 

 

「鷹月さん。シャワー、ありがとうございました」

 

「気にしなくていいよ。あ、明日もシャワー使う?」

 

「出来ることなら、クラス代表決定戦までは毎日。まあ、寮長室が空いてるならそっち行きますけど」

 

「分かった。なら、寮長室が空いてない時はいつでも貸すからね」

 

 

鷹月静寐は笑顔で言ってくれた。

 

……篠ノ之さんといい、彼女といい、同年代の女にこんなに優しくされたの今世初めてだ。バカなアマもいればまともな女もいて、世の中はしっかりとバランス取れてるんだと改めて理解出来た。

 

 

「……ありがとうございます。では、これで。失礼しました」

 

 

オレは『鷹月さん』に深々と一礼してから部屋を出てオレの部屋に向かった。

 

……今日はもう眠るとしよう。

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