どうか今回も
チラ見してやってください。
篠ノ之さんとの特訓の日々を過ごしてきた現在。オレは今、ワンサマーと共にアリーナのピットにて専用機が来るのを待っている。いよいよクラス代表決定戦である。
現状で『良い』と言えることはオレのISスーツがウェットスーツ式だったことくらいだろうか。
「遅いなぁ……早くしろよ。じゃないとセシリアを俺のヒロインに出来ないだろうが」
オレの隣でワンサマーがまだかまだかとソワソワしながら言う。オレはガタガタするだけ体力の無駄なので黙って待ってる。
「あ、そうだ。聞いたぜお前の噂。今日一勝も出来なかったらお前消えるらしいな」
「…………」
恐らくはワンサマーの取り巻き共から情報を得たんだろうな……女の情報網マジどうなってんだよ。粗方、情報源は頭スカスカタイプの教師だろうがな。
「ざまぁみろバーカ!ま、俺みたいにメインキャラが身内にいなかったことをせいぜい羨ましく思えよ?」
「…………」
ワンサマーはヘラヘラと嘲笑しながらオレが負けた前提で話を進める。
クソが調子に乗りやがって凄まじくムカつくが、オレは無力なので何も出来ない。ただ黙殺するのみだ。
すると、ピットの扉が勢いよく開かれ、織斑先生とやまや先生が勢いよく入室してきた。
「二人の専用機、ただいま到着した!」
「今から搬入します!」
二人はピット内で忙しく作業し、数人の作業員がピットに二機のISを搬入した。
……オレとワンサマーの為に、こうして頑張ってお仕事してくれる人がいる。片やハーレム目的のクソ野郎、片やクソクソ言ってる牛糞野郎のオレの為に。
それを見た瞬間、あまりなかったISに対するモチベーションが上がっていくのを感じた。サンキュー作業員の方々、サンキュー先生方。
ただし倉持技研、テメーはダメだ。
「織斑、柊。これがお前達二人の専用機だ」
「これが……オレ達のIS」
オレは二機のISを見つめる。
片方の真っ白なISは
白式から目を外し、もう片方のISを見る。
原作には存在しないオレの専用機……パッと見の印象は『継ぎ接ぎ』だ。色は黒で統一されてるがパーツの形が一つ一つ違う。しかもよ〜く見ると所々ボロい。黒色に塗装して誤魔化したって感じ。篠ノ之束が言ってた通り、ワンサマーの専用機開発の片手間に寄せ集めのジャンクパーツで組んだツギハギポンコツガラクタ機のようだ。
正直、こんなのに搭載されてるISコアが可哀想でしょうがない。アレって確か意思持ってるんだろ?オレがISコアだったらこんなガラクタに搭載しやがった倉持技研の連中全員ぶっ殺してやりてぇと思う。それに、この世界で量産機含めて合計……確か、467個だったか?それしかないISコアの一つがこの機体に搭載されてると考えると……なんだか申し訳ない。
「白いISが織斑君の専用機『白式』で、黒いISが柊君の専用機『
ツクロイ……見た目はおかしくないように文字通り『繕い』ましたってか。ハハ、ナイスジョーク。
倉持F×CKIN'技研め……この手の込んだゴミでオレをバカにしてんのかクソ!FU×K!
しかし、それは外見だけ。性能は篠ノ之束が手をつけたから大丈夫なはずだ。多分。きっと。恐らく。maybe.
「柊、まずは一戦目のお前から装着準備を始める。ISに搭乗してくれ」
「分かりました」
オレはセットされているISを身に纏う。横でやまや先生がオレのISの調整を始め、オレはそれを黙して待った。
……徐々にではあるが試験で乗った打鉄の時のような、あの重苦しい感じが解消されていくのを感じた。
やっと牛の糞山から足が抜け、ゴリラの赤ん坊が背中から降りてったようだ。……わざわざ前の戯言ほじくり返すことでもなかったな。
そんなことを考えていると、機体が変形していく。
これが
機体の変形が止まると、目の前にメッセージウィンドウが現れる。
『初期化と最適化が終了しました。確認ボタンを押して下さい』
アナウンスに促され、確認ボタンを押す。これで一次移行完了ってことか。
形は少々変わった程度。継ぎ接ぎ感もボロさも変わらずだ。まあ大事なのは性能だから。ちゃんと動くのなら問題ない。
「柊君、調整は済みました」
「ありがとうございます。山田先生」
一勝も出来なきゃ死ぬこの状況、ここはポジティブに考えよう。ワンサマーとやり合うよかマシだと考えるんだ。そこからはISとそれを使うオレ次第か。
……やってやる。やってやるよ。見ててくれよ篠ノ之さん、鷹月さん、織斑先生、やまや先生。あと出来れば椛根さんも。
オレの今世紀初頑張りを!
「では、行ってきます」
オレはピットから飛び出し、アリーナへと少々ブレながらも飛行する。
……ヤベェ、ISの動きが一秒くらい遅れてる。一次移行終わったのに。オレのランクがクソ過ぎるせい?
……いや待てオレ。オレはFランクだ。Cの下の下のそのまた下のクソランクだ。それなのに『たかが』一秒遅れで動かせるのは凄いことだろう。大事な勝負前だ。ポジティブに考えてモチベを保たなくては。『ISバトルで一秒遅れるとか致命的じゃね?』とは考えないようにしよう、そうしよう。
ポジティブシンキングしながら飛行し、そろそろ我に返ってみると前にライミーがいた。
「あら、尻尾を巻いて逃げたと思ってましたが……まさかそんな御粗末なISでこの私の前に来るなんて」
ライミーは人を見下した目でオレを見つめながら言う。まあ無理もない。このISが『見てくれは』御粗末なガラクタなのは事実だし。
「貴方に最後のチャンスをあげますわ」
「……チャンス?」
「えぇ。貴方と私では、勝負になることもなく私が完全なる勝利を手にするのは自明の理。今この場で観衆の前で頭を地に付け許しを乞うならば、特別に棄権することを許可して差し上げないこともなくってよ?」
改めてこの世界のライミーは酷いと痛感出来る御言葉を頂く。女尊男卑が酷いとはいえあまりにもあんまりだ。
ワンサマーはコイツのどこがいいんだ?見た目?オレ超願い下げなんだけど。性悪美人はもうお腹いっぱいだ。
「……あまり調子に乗るなよ、『候補生』が」
「!?」
「せめて代表になってからデカい口叩けよ。さぁ、そろそろ試合開始だ。無駄口叩かずかかってこい」
そう言ってからオレは右手でVサインを作り、そのまま手の甲をライミーに向けてやる。
「極東の黄色猿の分際でこのセシリア・オルコットに対してそのような……!許し難いですわ!!」
オレの生意気な侮辱込みの宣戦布告にライミーは顔を真っ赤にしてわなわなと震えながら吠える。専用機と見事にミスマッチ。これだけ怒って頭に血が上れば少しくらいは手元に狂いが生じる筈だ。
悪く思うなよライミー。こっちは命がかかってるし、先に侮辱してきたのはそっちなんだからな……さて、集中するか。
思考を中断して試合開始のブザー音が鳴るのを待つ。
3……2……ーーー
「ーーー沈みなさい!!」
開始のブザー音が響くと同時にライミーの怒声が響き、オレもそれと同時に左に動いて開幕直後の射撃を回避する。
……つもりだったがやっぱり反応が遅れる。だが、直撃はせず右肩部を掠った。
右肩部に直撃かと思ったが……どうやらライミーの手元の狂いがオレの予想を上回ったようだ。これならどうにかなるかも知れない。いや、どうにかする。
「黄色猿が私の狙撃を避けるなんて……生意気ですわッ!!」
ライミーは勝手に怒りながら再びレーザーライフルを何回も撃ってくる。オレは落ち着いてそれらを右へ左へと回避する。
弾のスピードはとてつもねぇが、篠ノ之さんの指弾に比べたらどこを撃つか丸分かり。その上ライミーはプッツンキテるせいで狙いがブレてる。反応の遅れにさえ慣れれば、避けるのは意外と簡単だ。
このままずぅーっとライフルオンリーで来てくれりゃありがたい。
「くっ……黄色猿が小癪な!ならば、ブルーティアーズ!」
しかし現実は甘くなかった。ライミーは六機のビットを飛ばしてくる。四機のレーザービットに原作で距離を詰めたワンサマーにお見舞いしたミサイルビットもだ。余程キレてる御様子。
というか、さっきから黄色猿ってうるせぇんだけど!それしか言えんのかこの猿ゥ!
「さあ、無様に逃げ惑いなさい!」
ライミーはビットを操作し、六機のビットでオレを取り囲んで四機のビットからレーザーを撃ってくる。流石にコレはキツい。二発回避したが一発掠り、一発直撃する。ISのセンサーがなければ全弾直撃だったろうし、まだシールドエネルギーはある。しかし、ミサイルビットからミサイル撃たれるものならキツい。爆風でもシールドエネルギー削られるだろうし、直撃したらまずヤバいだろうな。ということで、オレはアリーナの端に沿って飛行する。大きく飛び回ってミサイル封じだ。
しかし……あまり速くないな。いや、車よりは余裕で速いがビットに追いつかれるくらいには速くない。なんとかビームの直撃を一発で留めてるが、このままじゃジリ貧だ。
「手も足も出ず、只逃げながらも私の攻撃は当たるばかり……あれだけの大口を叩いておいて無様ですわね!」
ライミーは落ち着き、余裕が出てきたのかその場から全く動かずにオレを嘲笑う。そのせいかレーザービットの狙いが先程より正確になりつつある。
尚、その場から動かないことから実力は原作と同じだと思われる。いや、女尊男卑が酷くてオレの挑発でああなるんじゃ原作以下かね。ならそろそろ武器でも出してライミーを更に煽ってみるか。いくらこのISがガラクタとはいえ最低一つは積んでるだろうし、篠ノ之束が何か仕込んでくれたかも知れない。
オレはビットから逃げながら武装データを見る。
……マジかよ。
武装データには『IS用メイス』とだけ記されており、それ以外は空欄になっていた。
まさかとは思うが……このメイス零落白夜的なモノ積んだりしてねぇよな?もし積んでたら最悪だ。あんなの使いこなせる気がしねぇしアレ使うくらいなら牽制くらいしか出来んだろうが銃の方がいい。
……とりあえず展開しとこう。持ってれば何かしら出来るはずだ。
オレはビットから逃げつつ、三秒程かけて展開する。遅いとか言わないでくれよ。こちとらIS搭乗回数二回目のFランクなんだ。むしろよくやったと褒めてほしい。
展開されたメイスはIS用だけあってデカい。そして長い。そして柄の端にグリップエンドが付いている。
……これ『メイス』じゃなくて『金属バット』じゃねぇか!
非常に色々とアレだが、オレ個人としてはバットは好きだ。野球選手に申し訳ないがこの形状は武器としての扱いに未知なる可能性を秘めているからな。
オレはバットのグリップを右手で持つ。気分はヤンキーだ。
「中距離射撃型の私を相手に、そしてこの状況で近距離格闘装備を出すなんて……流石は黄色猿ですわね!」
「やかましいな。ビット任せにして怠けてると余計肥えるぞ」
「減らず口を……!!」
ライミーは再び顔真っ赤になり、眉間にシワを寄せながらレーザーライフルを向ける。
よし!ビットの動きが甘くなった!
オレはすかさずバットを振るい、周りのビットを二機程叩き落とす。
「なっ!ブルーティアーズが!?」
ライミーの意識が破損して落ちていくビットに向いたので、ここぞとばかりに三機のビットを叩き落とす。これで残りはミサイルビット一機のみ。オレはライミーを見据えながらバットを両手で持つ。
バットなら、こう使わねぇとな!
オレはミサイルビットを蹴ってオレの横に持ってきながらバッターの構えをとり、最後のミサイルビットにフルスイングをかましてライミー目掛けてぶっ飛ばす。
今の手応え……『ジャストミート』ってヤツだな。
「ッ!?」
ライミーは咄嗟にレーザーライフルを撃ち、自身に迫るミサイルビットを撃つ。するとビット内のミサイル諸共爆発し、黒煙がライミー前方に広がった。
今が好機!
オレはバットを振り被りながら黒煙に真っ直ぐ突っ込む。そして、煙を突き抜けた先にいたライミーにバットを振り下ろす!
!
「キャアッ!」
振り下ろしたバットはライミーの頭部に直撃。よろけるライミーにオレはすかさずバットを振ってレーザーライフルを叩く。レーザーライフルは破損しながらライミーの手を離れ、落ちていく。
「イ、インターセプーーー」
「ーーーさせるかッ!」
右手に剣を展開しようとしたライミーだがその右手を左手で掴み、バットのグリップエンドで頭部を何度も叩く!畳み掛けるように何度も何度も叩き込む!
「い、いやァッ!!」
ライミーは怯えながら空いてる左腕で頭をガードする。
なら……ーーー『叩き割って』やる。
オレはバットを振り被り、頭をガードする左腕目掛けて振り下ろす。バットが左腕部装甲に直撃し、ライミーがよろける。それを見てからライミーの右手を離し、両手でバットを持ち、思い切り振り被って左腕諸共頭を潰す勢いで振り下ろす。直撃したライミーは勢いよく落ちていき、地面に叩きつけられる。
……左腕部装甲が凹んでやがる。流石はバット。フルスイングかませば絶対防御も貫けるか。
それを見届けた後、すぐにブザーが響く。
『ブルー・ティアーズのシールドエネルギーエンプティー。勝者、柊桐生』
……勝った。オレは、勝つことが出来た。命を繋ぐことが出来た!
アナウンスを聞き、オレはバットを肩に乗せながら考える。
まさかこうも上手く事が運べるとは……ライミーの慢心&煽り耐性の低さ、この専用機の性能、そしてこれら全てが起こしてくれたオレのビギナーズラックに感謝しなくては。
ライミーはゆっくりと立ち上がり、ピットに戻っていく。それを見届けてからオレもピットに戻った。
IS紹介
倉持技研が設計開発した御存知ワンサマーの専用機。本来(原作)と違い、零落白夜はないが代わりに武器は遠近揃っており、基本性能もほぼ変わらずスピードに優れている。引き受けていた仕事を途中で放棄し、スタッフ総動員で製作された倉持技研の良い意味でも悪い意味でも本気が伝わる機体。ワンサマーの特典と組み合わさり、戦う際は非常に厄介な仕上がりになっている。
倉持技研が設計開発した柊霧生の専用機。しかしその実態はワンサマーの専用機の設計開発の片手間にジャンクパーツを組み合わせて半端なプログラミングで作られたまともに動作する保証のないガラクタ。しかし、篠ノ之束が人知れず手を加えたお陰でまともに動くように。武器は倉持技研でお蔵入りになっていたIS用メイスとは名ばかりの金属バットのみ。