「もこ×けね」物を目指して書いた作品でございます。投稿に関しては、現状環境が荒れており、安定した投稿は難しい状況。なので、完結までの日数的な目処はありません。
お気に入りにでもしていただき、ゆっくり時間をかけて見守って頂ければ幸いです。
では、お楽しみください。
どこまでも晴れ渡る暖かな陽気の下で、たくさんの子供が戯れていた。数人ずつの集団が三つほどで、柔らかな音のする玉を蹴り上げている。個人差はあるものの、全員が楽しんでいる事は、表情を見れば分かるだろう。
そのすぐ近くにある建物の日陰では、一人の女性がその様子を見ていた。正確に表すならば、見守っている。我が子を慈しむ親とも、成長を見守る年寄りとも違う。
それは、教え子の笑顔が好きなだけの、教師の姿だ。
彼女は長方形で板を挟んだ物に三角錐を付けたような、独特な帽子を頭に乗せ直して小さく呟く。
「あいつの言う通りだったな」
腰まで伸びた白髪が風に揺れ、それを真似するように、青を基調としたロングスカートが波打つ。澄んだ空気と土の匂いのせいで、どこか素朴な雰囲気が出ていた。
「今日の授業はここまでだ。昼食までには帰るんだぞ?」
教師らしき女は満足気に頷くと、手を叩いて子供達にそう告げる。
それを聞いた子供達は玉を一度手に取り、女の方へ向き直った。
「はーい。ばいばい慧音先生!」
慧音と呼ばれた女は軽く手を振り返し、建物の中へと入って行く。その後には、子供達の玉を蹴る音が暫く続いた。
ここはとある人里にある寺子屋で、歴史について子供達に教えている。とある一件で異変から人里を守ろうとし、それが知れてからは生徒が一気に増えた。授業の評判はあまり良くないが、慧音自体は好かれている。
順風満帆で、満ち足りた生活と言えるだろう。しかし、それが彼女の全てではない。
慧音は教室に入ると、置いたままにされている教材を集めそれを棚へ納める。
慧音は今、人間では無い。歴史について干渉できる、それなりに強い力を持つ妖怪だ。
妖怪に偏見を持つ者は多からず居る。場合によっては、少々過激な思想を持っているかもしれない。
それはこれまでの歴史の積み重ねのせいであり、妖怪と人が間違い続けた結果でもある。
力の強い者が弱者を好きにしてしまう。
そういった捻れが、妖怪と人間を争わせる原因となるのだ。
いつから妖怪だったか、それは大して重要な話ではない。むしろ、自らが偏見を持つ原因になりかねないだろう。そのため、自らの人間である頃の歴史を隠してしまった。
そうして残ったのは、人間と妖怪の相反する二つの思想。一つ分かっているのは、妖怪も人間も、初めから悪意がある訳ではないという一つの事実。
しかし、その事実をどれだけの者が知っているだろうか。人間を襲う妖怪も、自然を破壊する人間も。根底にあるのは純粋な気持ちの筈なのだ。
「さて、どうするかな」
教材を全て棚に収め、のんびりと窓から外を眺める。そこではまだ子供が遊んでおり、この授業が正しかったと改めて実感させられた。
慧音は一人の人間を頭に浮かべて、教室から出て行く。この授業をするきっかけとなったある人に、お礼を言いに行くのだ。
「この時間は……」
外に出て空を見上げたが、太陽はまだ頂上に達していない。まだ昼食の時間には少しばかり間があるようだ。慧音はその確認をすると、ひとまず里の中心へ向かった。
人里は幻想郷内にいくつもある。それらは少しずつ離れた場所に点在しており、資源のやり取りもある程度行われているのだ。
その中でも、食料のやり取りは里の中心が盛んなのはどこも変わらない。人里ごとの特産品から、調理済みの物まで。探せば割といい物が見つかる。
里の中心に近づくにつれ、人の数が増え、話し声が大きくなっていく。そうすると面識のある人も増え、時折挨拶を交わすようになった。
特に会話は無いが、相手がどのような人なのかは何と無く分かる。遠慮気味に言う人や、陽気な笑顔を浮かべる人。時には面倒そうに挨拶をする人も居る。
そういった少しばかりの違いを感じると、少しだけ悲しい気持ちにさせられる。人に違いがあるのだから、妖怪にも違いがあって当然。でも、それが分からないから争うのだろう。盲目的に敵を作らなければ、自己の正当性は保てないのだから。
「慧音じゃない。買い物なら、ついでに神社への奉納品も買ってきなさいよ」
物思いに耽る慧音の肩を叩いたのは、赤を基調とした巫女服の女だった。言葉遣いこそ粗野だが、好意的なことはその笑顔だけで分かる。
「昼食を買いに行くところです。霊夢こそ、寺子屋への募金活動なんてどうですか?」
霊夢の言葉に慧音も表情を緩ませて返し、相手へと向き直った。
「お生憎、どこぞの神社と違って余裕が無いのよ」
霊夢は肩を竦めて見せると、慧音の向かっていた方向へ歩き出す。どうやら、少し話したいことがあるらしい。
慧音も霊夢の背中を見て、肩を並べた。
「また異変でも起きたんですか?」
「人里に被害は出ないわよ。最近、迷いの竹林に霊力が集まっててね。また朝が来ないと困るでしょ?」
慧音からの探りに対して、霊夢は大仰に呆れたとジェスチャーで返す。
朝が来ないというのは何の比喩でも無く、事実そういった異変が起きた事があった。霊夢と慧音が初めて会ったのはその時で、それ以来たまに会っている。
「……偶然そこに居るだけで、永遠亭は関係ないですよ」
しかし、慧音は偏見を持った物の見方が嫌いだった。霊夢に悪意がないのは分かっているが、思わず反発してしまう。
永遠亭というのは、件の異変を起こした者達が営む薬屋のことだ。元は月に住んでいたが、今はここに住み着いている。そして、事実として人里を助けてくれているのだ。
「私は可能性を示唆しただけよ。勿論、貴女が原因である可能性も否定できないわ」
慧音の感情を優先した言葉に、冷たくも的確な言葉が返された。依然として霊夢の表情は緩んでおり、慧音を諭しているようにも見える。
「ごめんなさい、少し気が立っていたみたいです。怪しい妖怪や人を見たって話しは知らないけど、知ってそうな人に聞いてみます」
「そう。じゃあ何か分かったら教えてちょうだい」
慧音もそれが分かり素直に謝ると、目的を終えたのか霊夢は飛んで行ってしまった。
小さく溜息をつくと、また歩き出す。最近は、なぜか余計な事を考えてしまう。元からそういう癖があったが、特に悪い方向に考えるようになったのは最近だ。
もしかしたら、知らぬ間に異変に巻き込まれているのかもしれない。
そう思うのは、ただ自分が弱いからだろうか。
気を取り直して歩いて行くと、次第に良い匂いが漂いはじめた。濃い餡子の匂いもすれば、肉の焼ける匂いもする。まだ昼食時でないのに、すでにご飯にありついている人も居た。
「慧音先生、今日はうちでどうだい!」
どこで買おうか見て回っていると、景気の良い声が慧音を立ち止まらせる。牛丼の店主で、この里ではそれなりに有名な所だ。時折顔を出す妻の尻に敷かれており、それを見るのが人気だったりする。
「すまん。今日は予定があるから、また寄らせて貰うよ」
しかし、ご飯を食べに来たわけではない。二人分の食事を買って行くのだから、その店には立ち寄れなかった。
探しているのは行商人で、軽く火を通せば食べれる物があればなお良い。それを生業にしているだけあり、おにぎり以外の物を外で食べれるのもあり、それなりに人気がある。
この時間だと残っているかは分からないが、どうせ買っていくならそういった物がいい。
「見ない顔だな……」
そうして探していると、普段は見かけない行商人が地面に品を広げていた。
宝石や装飾品の他には、筆なんかもある。流れの商人だろうか。何にせよ、さして珍しくもない上に、胡散臭さが漂っている。これで商売になるのだとしたら、どうやって商売しているか気になる所だ。
「お嬢さん、一つ占いなんかどうです?」
訝しんでそれを見ていたが、声をかけられて回りを見た。人間からすればお嬢さんと呼べる歳ではないが、商人はこちらを見ている。
「最近の行商人は占いもできるのか?」
「信じてませんね。では最初の占いは御代無しで結構ですよ」
正直に言えば、怪しいことこの上ない。しかし、御代を取らないとなればよほど自信があるのだろう。
「仕方無い、少しだけ付き合おう」
「では、汚いですが座ってください」
慧音がそれを承諾すると、商人はにっこりと笑い座布団を対面に敷いた。慧音も嫌がることなくそれに座り、改めて並んでいる品を確認する。
よく見ると宝石等にはそれぞれ小さく謎の文字があり、占い道具であることが分かった。
「占い師だったのか」
「よく間違われます」
行商人も慣れているといった様子で頷き、筆を手に取る。
「手を上向きに出してください」
商人の言う通りに手を出すと、小瓶から砂を取り出しそれを手に乗せた。その後は筆でそれを払い、宝石を一つ手に乗せる。
「それを強く握って念じてください。念じたことに関して、占ってみましょう」
「こう……か」
宝石を強く握り思い浮かべるのは、さきほど霊夢の言っていた異変の予兆。霊力が迷いの竹林に集まっていると言っていたが、この占いで当たればそれにこしたことはない。
「……では、宝石を渡してください」
少しすると商人に声を掛けられ、言われたとおりに宝石を渡した。商人は同じように宝石を強く握ると、それを額に当て暫しの無言。
よく分からないが、読み取っているということだろうか。
「なるほど、これは面白い」
少しすると商人は口元を緩め、抑えられないといった様子で笑いを零した。
「貴女の近くに二人の女性が居ますね。とても強い力を持った人と、人ような……人、なのか。人のようで人でない、そんな者が居ます。彼女達は貴女に問いを投げるでしょう。それが、解決の糸口です」
商人は饒舌に言葉をまくし立て、最後だけはゆっくりと告げる。慧音にはそれが不気味に見えた。真っ暗な谷底を見下ろすような、心を掬われる悪寒。
「上手いじゃないか。まあ、的中したら御代を払いに来るよ」
「はい、お待ちしております」
それを誤魔化すように笑顔を作ると、すぐにその場から去って行く。ある程度の年月を生きていると、占いがどれほど信憑性の無い物か分かる。歴史を知っていれば、なおのことだ。
占いには人を不安にさせ、多からずとも当たれば的中したと思い込む。そうして次の占いへと続けていくのが、占いの本性である。
そう、あの人が異変に関わっている筈が無い。
慧音には人のようで人でない者、というのに心当たりがあった。ご飯を用意したら会いに行く予定すらある。
胡散臭い占いに惑わされ、友人を疑うなんてありえない。
「それ、ください」
不安をかき消すように最寄の店に入ると、弁当らしき包みを指差し手早く買い物を済ませた。不安がることは無い。彼女を信じているし、何よりも動機が無いのだから。
買い物を済ませて向かったのは、迷いの竹林へと続く道。めったに人が寄り付かない場所で、目的地へ近づくにつれ人は減っていく。
「中身くらい確認するべきだったな」
落ち着いてくると、包みが少々重い事に気が付いた。恐らくはおにぎりか何かなのだろう。当初の目的を見失うとは、情けない話である。
迷いの竹林のすぐ近くまで来て目に入るのは、ただの小さな小屋。小屋には看板が立てかけてあり”迷いの竹林案内人”と書いてある。
「妹紅、居ますか?」
ここに来たのは、何も迷いの竹林を案内してほしいからではない。ここに居る人に会いに来たのだ。
「その声は慧音か、空いてるから入っていいぞ」
呼び声に答えたのは少々男らしい声で、慧音もそれを聞くと頬を緩めて戸を開けた。
内装は畳みとタンスしかなく、人の生活する空間には見えない。しかし、白髪の女が壁に凭れて座っており、その周囲には昨日食べたであろう食事の跡が残っている。
「また壁に寄りかかって寝てましたね。体は大切にってあれほど……」
「あー大丈夫だって、死ぬわけじゃないんだしよ」
その様子を見た慧音は部屋に上がりながら小言を始め、妹紅は苦笑いを返す。
今慧音の目の前にいる女こそが、人のようで人でない者だ。彼女の言う死ぬわけじゃない、という言葉は、他の人とは指している意味が違う。
死んだりはしないから大丈夫ということではなく、何をしても死なないから気にするな。そういう意味があった。
彼女は少々特殊な薬を飲んでしまい、不老不死の身となっている。それを彼女は受け入れており、自分の体を労わる事をしなくなっているのだ。
慧音と会ったのは数十年前だが、妹紅曰く千年以上は生きているらしい。それだけの時間があれば、体を労わる事も面倒になってしまうのだろうか。
「そういう問題じゃないですよ。昼食も抜くつもりだったのでしょう?」
「お、これはありがたいな」
慧音の指摘は当たっていたようで、包みを一つ渡すと妹紅は笑って見せた。慧音も半ば諦めているのか、小さく溜息をつくばかりである。
「妹紅の言ってた通りでした。興味を持つには、まずは楽しくないとですね。ありがとう」
妹紅が包みを広げるより先に、慧音はまずお礼を言った。今朝の授業で子供達が遊んでいたのは、妹紅から言われたからだ。その結果として、子供達は歴史への関心が増している。
私自身も、自分の考え方や教え方が硬いというのは分かっていた。
しかし、その解決法まで分かる訳ではない。こういうのは年の功と言うのだろうか。私よりも妹紅の方が頭が柔らかいのだろう。
「気にするなって。私こそ、世間話のできる相手が居て嬉しいんだ」
お礼を言われた妹紅は、気恥ずかしそうに手を振って見せた。
そういう所では頭が回る癖に、人付き合いは慣れていないのだから不思議な物だ。いや、永く生き過ぎているからこそ、人付き合いができなかったのだろう。
永遠の時を生きるとなれば、普通の人間とは共に生きれない。どれだけ年月が過ぎても老いない体では、その異常な体が故に、共に過ごせないのだ。
私も永遠の命がある訳ではないが、ただの人間よりも寿命は長い。その点では、妹紅にとっては嬉しい事なのだろう。
「それについてはお互い様です。私も……いえ、何でも無いです。妹紅と居るのは楽しいので」
私も人間とは寿命が合わない。その言葉がどれほど残酷なのか、そのくらいは分かった。下手な笑みでそれを誤魔化したが、妹紅も同じように苦笑してみせる。
そうしたちょっとした気遣いが息苦しくて、どうもできない自分の無力に胸が痛む。
「おにぎり、美味しいよ」
気まずい雰囲気が流れてすぐ、妹紅は包みからおにぎりを出して口に含んだ。その笑顔はとても柔らかな物で、私の笑顔もそれに釣られて柔らかな物になる。
この人と何で親しくしているのか、たまに疑問に思う。でも、こういう時に分かるのだ。
妹紅は誰よりも、人間らしい。
言葉にはし難いが、端々に見せるその表情。色々な感情を塗りつぶしたそれは、美しいと感じる。
「……ですね。美味しいです」
包みから取り出したおにぎりは、塩が少し強めだった。不味くはないのだが、美味しいと呼べる物でも無い。
それでも、そのおにぎりは美味しかった。きっと、妹紅もそうだったのだろう。
「そういえば、最近迷いの竹林に霊力が集まってるらしいの。何か変な事は無いですか?」
ちょっとした幸せの時間を味わった後に、霊夢との約束を思い出して聞いてみた。迷いの竹林に関しては妹紅はよく行っている。伊達に迷いの竹林を案内している訳ではない。
「いや、何も無いぞ? そもそも、霊力っていうのはただの妖怪や人間には扱えない。そんなのを集めて、一体何に使うっていうんだ?」
しかし、その思惑は外れていたようだ。
妹紅の説明は的を得ており、それ以上聞く必要も無い。言われてみれば、そんなに気にする事では無い気がしてきた。
「そうですね。変な事を聞いてすいま……」
「あの、すいません。永遠亭まで行きたいのですが!」
おにぎりを咀嚼して終わって返事を返していると、唐突に戸が開いて声をかき消される。そちらに視線をやると、若い男性が肩で息をしながら立っていた。
「あぁ、分かった。ごめんな慧音。また今度奢ってやるよ」
妹紅も急ぎなのだと察すると、それだけ言い残してすぐ出て行く。残ったのは食べかけのおにぎりと、物悲しさだけだ。
小さくて深い溜息を吐き、自分のおにぎりを包みに戻して立ち上がる。部屋の静かさが切なくて、足音がやけに大きく聞えた。
妹紅の家を出ると既に二人の姿は無く、大人しく人里へと戻って行く。
やる事はないが、家に帰るしかない。こういった事は何度もあったから、慣れている。
人里の中心まで来ると人の往来が激しくなっており、つい先刻の占い師を探してしまう。しかし、元の位置には誰も居らず、まるで夢だったかのように消え去っていた。
やはり、占いというのは信用ならない。妹紅が異変に関わっている訳が無いというのに、おかしな事を考えさせられる。
また憤りが強くなってきたが、それは自覚して落ち着かせた。何も怒るような事ではない。彼にだって生活があるのだから、それを否定するのは野暮だ。
「慧音。少しいいか?」
反省をしながら歩いていると、白黒の衣装に身を包み、大きな箒を持った金髪の女が駆け寄ってきた。彼女、魔理沙も朝の来ない異変で遭遇している。
しかし、魔理沙とはあまり関わりも無く、私はただ首を傾げた。彼女から何かを持ちかけるとは、頼みごとでもあるのだろうか。
「ああ、構わないよ。丁度やることが無くて困っていた所だ」
「それは助かるぜ。早速で悪いが、家まで来てくれないか?」
どうやら、頼みごとで合っていたらしい。私を家まで連れて行くということは、そこらへんの歴史でも食べて欲しいのだろうか。
あまり変な事に使いたくないが、魔理沙ならそこまで心配する必要は無いだろう。
「ああ、分かった」
「それじゃ、運ぶから人の少ない場所まで行くか」
二つ返事でそれを承諾したが、魔理沙は周囲を見渡してから笑って見せた。こうも人が多いと、箒で飛ぶ際に誰かにぶつかってしまう。
運んでくれるというのなら、それに甘えるとして、それなりに歩かないといけない。ここからなら、寺子屋まで行けば丁度良いだろうか。
「それじゃ、寺子屋まで付いて着てくれ」
私の言葉に魔理沙も頷き、二人で肩を並べて歩き出した。
「そういえば、最近迷いの竹林に霊力が集まってるらしいぜ。何か起こるかもしれないから、注意しといた方がいい」
歩き出してすぐ、魔理沙の口から聞き覚えのある言葉を聞いた。一応魔理沙も異変の解決が趣味らしいから、調べはしているのだろう。
しかし、霊力を扱える者はあまり居ないというのを、魔理沙は知らないのだろうか。
「大丈夫だよ。霊力は普通の者には使えない。それこそ、博麗の巫女くらいじゃないか?」
「そうなのか? てっきり魔力みたいに誰でも使えると思ってたよ」
どうやら、知らないらしい。事実、私も妹紅に言われるまで分からなかったのだから、あまり知られていないのだろう。
「そうか……でも、だったら尚の事危ないと思うぜ。相手は、普通じゃないって事だからな」
「でも、霊力が集まってるなら霊夢も使えるだろ? あいつが更に強くなるって話だったら、それほど心強い物は無いさ」
魔理沙はどうも重く考えているらしい。これまで多くの異変を解決してきているから、事象を過大評価してしまうのだろう。
それに、もし竹林で何かが起きたとしたら、私や妹紅は勿論。永遠亭の住民も黙っていない筈だ。そんな大勢力を相手に挑戦するような阿呆なら、大して恐れる事も無い。
「その言い方、少しむかつくな。霊夢なんて居なくても、私だけで解決してやる。でも、もしもがあるだろ?」
「あぁ、分かったよ。定期的に妹紅にも聞くようにする」
霊夢もそうだが、魔理沙は頑固だ。努力の塊だからこそ、来るかもしれない何かに備える癖があるのだろう。
それは悪い事ではないし、むしろいい事だ。だからこそ断れなくて、つい承諾してしまう。
そうこうしている間に寺子屋に着いてしまい、まだ遊んでいる生徒を横目で見た。
「子供と遊ぶ時間は無いぜ?」
「子供を粗末にすると、後々自分の首を絞めるんだぞ?」
そんな私を見て魔理沙は箒に跨り、私も言葉を返しながら箒に跨る。魔理沙のごわごわした服が邪魔だが、背中からお腹に手を回す。
私が力を入れたのを確認してから魔理沙は飛び、私の足も地面から離れた。自分で飛ぶ時は何も感じないが、人に乗せて貰うというのは、少しばかり怖い。
しかし、そんな事を言う暇も無く箒は宙を舞い、人里を一息で飛び越えて行くのだった。
長文の読破お疲れ様でした。
次回の投稿は未定ですが、気長に待って頂ければ幸いです。
ではまた、いずれ会いましょう。