非常に斬新で“
階段をロビーへ降りていくと......
「お出かけかい?」
「わかってるくせに。」
宿屋の主人バラルが茶化してくる。弓人の心を気持ちの悪い位正確に読み取る御仁である。弓人はそこだけは苦手だった。
「昼には戻ってきなよ。」
「冒険者の仕事でそんなのあるのか?」
弓人は当然のこと、と聞いてみた。
「おや?そこは知っていたかぁ。なるほど。」
(チクショー!!鎌をかけてきやがったな。)
「なんとなくそんな感じがしただけだ。...........。」
変な間が空いてしまった。
弓人はそんな締まりのない感じで新な門出を迎えた。
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ガヤガヤ、ガヤガヤ
そんな表現が似合いそうな街、弓人の第一印象はそれだ。この宿屋の入る前は怪しい露店の店主の気配から逃げていたから、良く周りを見ていなかったのである。しかし弓人の体は全ての人間の行動を把握していたわけだが...........。
(そういえば冒険者組合の場所を聞いてなかったな。)
主人バラルに聞けばよかったのだが弓人的には戻って聞きづらくもある。わざと教えなかったことも邪推してはいたが。
(仕方ない。その辺の人に聞いてみるか。)
「すみません。冒険者組合ってどっちですか?」
歩いていた人当りの良さそうな青年に聞いてみる。
「この大通りを向こうへ歩いていくとあるよ。」
「ありがとう。」
なんともすんなりいってしまったのである。弓人的には一悶着あっても良いと考えていたのだが。
(一応帝国の都で“帝都”な訳だし、皆ちょっとは余裕があるのか?)
生活に困っている人ばかりでは治安も心身も悪くなっていくものであるが、ここではそのようなことになっていないらしい。弓人は示された方へ足を向けた。
(にしても人が多いな。こういう医療や科学が発達してなさそうな世界は、地球に比べて人口が少ないような気がするのだが。)
医療は人口に対して大きなファクターであり、弓人はそこを一番気にしていた。
(でも、これも魔法の成せる技なのかね。)
治療系の魔法の存在を半ば確信する。証拠はそろっていないが弓人はテンプレ的に疑っていなかった。
大通りの交差点をいくつか抜けると『冒険者組合です。』と言わんばかりの建物が建っていた。
(おお4階建て!ランクの低いものは上のフロアには行けない的なやつか?)
やはりこの
そんなことを考えながらも、着実にその建物に近づいていった。
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(........さて入るか。)
テンプレなことを考えておきながらこの弓人、若干緊張気味である。
ドアの無い入口を入っていく。中に入るとほんのひと時だが所々から戸惑いと怪訝な視線を向けられた。人数は14人、全身甲冑やボロボロの服に剣を腰に差した流離の冒険者を想像したが、ほつれの無い普通のレジャーコートのようなものを着たトレジャーハンター?的な者や革の鎧の軽装、上等な金属を使っているのだろう、光沢は無いが胴体をしっかり守るのであろう軽装の者もいた。
(やはりこの
だが一部を除いて侮ったような視線は受けてはいない。そんなことを不思議に思いながらも弓人はカウンターと書いてある方へ向かう。
(あれ?ガルドがいないな......)
バラルの宿屋で弓人を組合に勧誘してきたあの冒険者の姿を探す。しかし受付は順調に近づいて来て、
「何か御用ですか?」
ガルドの事はとりあえず忘れる事にした。それよりも始めから『何か“ご依頼”ですか?』と聞かないところに弓人は好感を覚える。
そして何よりここの受付嬢は美人揃いだ。弓人としては好感を覚える以前に“好意”になっていてもおかしくないと思っている程には。
(しかし基本的にこの見た目でくると貴族の坊ちゃんとかに間違われると思っていたのだが。)
それよりも弓人はここにきて思ったことがある。それはこれまでも何度も起こったことだが、ここでは起こらなかったことだ。
(認識阻害が効いていない?いや、別に隠れようとしている訳ではない。つまりこの体に慣れてきたのだろうか?)
そう、神殿の見張りやあのお姫様、城壁上の兵士、露店の店主まで幾度もこちらに気付くまで時間が掛かった、あるいは最後まで気づかれなかった経験がある。悪事を働くには都合の良い体ではあるが、普段は何か無視されているようで気分が悪かったのだ。
(完全ではないが、気配のコントロールが出来るようにはなってきたようだ。これで惨めな思いも少なくなるだろう。)
そのおおよそ一般人では感じることの無い感動を胸に、しかし落ち着いた口調で弓人は話す。
「冒険者として登録したい。」
静かなどよめきが起きる。それはそうだ。傍から見れば12、3歳の子供がこのリスクのある仕事に就きたいと言っているのだから。
「承りました。リスクは御承知ですね。こちらに可能な限り記入をお願いします。」
そういって受付嬢は一枚の紙を出してきた。
それには『名前』『性別』『種族』『武器』『魔法』『その他特記事項』と書かれており、弓人は既にそこにどこまで書くのかは決めていた。
(名前以外は書かぬ!!!(バァアーーン))
名前のみ書いて受付嬢に突き返す。
すると........
「性別は書いて頂かないと困るのですが。」
(あ、はい。)
表面上無言で|頷(うなず)き、紙を逆に見て“男”と書く。それも正面から書いた時を全く|遜色(そんしょく)ない字で。
「それではこれで登録致します。」
これで終わりのようだ。
「それではこれから魔力の登録に移ります。」
終わってなかったようだ。
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弓人はカウンター横の部屋に通される。すると、そこは中心にある机に既に|バキバキに割れた(・・・・・・・・)透明な水晶球が置いてある、それだけの部屋であった。
「ここに手を..........え?.............あれ!?割れてる!!嘘っ!?」
客の前であたふたするとはまだまだである。弓人がそんな事を考えていると。
「如何しましたか?」
言葉から少し遅れて入口から、
(これ絶対上司だな。)
弓人らしい予想である。
「なるほど、それでは取り乱すのも無理はありません。が、人の前です。冷静に振る舞いなさい。そして直ぐに支部長に連絡しなさい。」
「はっ、はい!」
しかし冷静になれなかった受付嬢は部屋を出ていく。
(これがとても高価なものだからか?)
「これはそんなに高価なものなのか?」
「はい。ご存じありませんか?これは『反魔晶』文字通り魔力に反応する水晶です。地下深くの鉱脈から稀に見つかる原石を削り出すのですが、何分この大きさのものは数がなく。」
なるほどと弓人は思った。大体
「そんな貴重品をこんな場所に?」
この部屋は入口からも近く、誰でも入れそうな場所にある。
「まず、反魔晶は滅多に破損するものではありません。それにここまで完全に。これはとても硬いのです。魔力に対して抵抗無く反応しますので、魔法でも破壊は困難です。それもこの支部を完全に破壊するくらいでないと。」
「なるほど。」
弓人は、なにか重要そうな情報がたくさん出てきたので、それを頭で
「............それでは魔力の登録の方は.........」
弓人が“ないな”と思っていた頃。
「仕方がありません。他の地区にある支部に行って頂きましょう。」
「あ、はい。」
非常にデジャヴを感じる光景である。
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結果を言うと全て駄目だった。ここ帝都では東西南北を8つのエリアに分け、それぞれ外縁付近とそれよりも内側に支部を配置している。しかし、行く支部全てで『反魔晶』が割れており、そのあまりの確立に弓人が疑われたこともあった。中には弓人が入った瞬間に眩暈を起こしたように倒れる
「これでは登録ができませんね。.........仕方がありません。今回は仮登録の形をとりましょう。」
そこで弓人は疑問に思う。
「あなたが決めていいのか?」
「後で支部長に報告はします。今は人手が足りません。貴方にも仕事をして頂きたいのです。」
「わかった。それで、どの様に仕事を受ければいい?」
「はい、まずはこの組合の仕組みをお話しなければなりません。」
この上司風の受付嬢は弓人にこの組合の仕組みを説明した。
まず、ランクは下から順番に、J~A、AA、AAA、S、SS、SSSまである事、仕事はそのランクの上下1つまでのものが受けられる事、低いランクの内は一定期間内の達成回数のノルマが多い事、仕事は掲示板から依頼を選ぶ事、冒険者同士の問題は、年間契約で警察力の行使を許可された冒険者が対処する事などなど。
(思ったよりランク分けが細かいな.........)
細かい説明に面食らっていた弓人であるが、最後に、
「細かい内容なこちらの冊子をご覧下さい。」
(初めから......出してください。)
内心|呟(つぶや)く弓人であった。
「こちらが組合証になります。これには討伐した魔物の魂の放出を記録する機能があり、討伐部位と合わせてその証明とします。紛失されますと50万カッシュで再発行となります。」
(再発行が前提の様に言われて複雑な気分なのだが。)
受け取った組合証にはこう書いてあった。
ランク:J
氏名:ユミヒト
性別:男
種族:
武器:
魔法:
その他特記事項:
(説明はなかったが、当然のことながら最低ランクからのスタートだな。)
つまりランクJである。
名前については、
(キュート........これは絶対ないと踏んでいた。まぁそのままでいいか。)
という短い思考の中でここに来る前、既に決定されていた。
「わかった。有難う、手間を掛けたな。」
「いえ、仕事ですので。」
これにて組合登録は終了、と弓人が思っていた矢先、
「大変だ!南の大商隊が魔物に襲われた!!」
デジャヴPart 3を存分に味わう弓人であった。