大盗賊は弓を射る ~生ける叙事詩、最強の魂~   作:顔が盗賊

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第十五話 「よく訓練された劇団員(護衛)」

 

 

どこから指示を飛ばしたのか、否、弓人には伝令があの指揮の男から走っていったのを気配で把握していたのだが、門をあっさりとくぐることが出来た。小さい方の門を通されたが、元々門から出る側は空いており、弓人はあっさり外に出てこれた。

 

(さて、商隊か、街道を進んでいけばいいのだろうか?)

 

帝都からは太い街道が伸びていて、ちょうどあの森を迂回するような形で少し湾曲している。それを見やり、弓人は控えめに翔け出した。

 

スピードが乗ってくると、周りの視線を意識して、誰も見ていない隙に街道横に避けて草むらを翔けだした。隠れようとしているのにも関わらず、相変わらずの人外の速度で。

 

そして2分ほど翔けていると、

 

キンッ、ガッ...........「オォラァ」、カンッ、カンッ、ドォンッ............

 

前方から、戦いの賛歌が聞こえてきた。

 

「次を乗り切ったら商隊前進!!帝都に出来るだけ近づくぞ!!」

「「「おう!!」」」

 

(なるほど、戦いながら帝都に逃れようとしている訳だ。そして.......)

 

見間違えるはずがない。昨日弓人が殺戮の限りを尽くした、あの被害者達がいた。

 

 

(まぁ、ちゃっちゃと終わらせたいが.........)

 

力を見せつけるにも限度がある。そう思った弓人は近くに護衛とみられる死体を意識する。

それは服の上から革の鎧を着ており、

 

(少し失敬しようか。)

 

“あるもの”を拝借した御遺体に会釈する弓人。その視線はすぐさま戦場を射貫いた。

 

 

(さぁ、ヒーローショーでも、始めようか。あ、何か恥ずかしっ。)

 

 

 

////////////////////////////////////////

 

 

 

「商会長の馬車が攻撃を受けている!!」

 

そんな護衛の一人の報告から隊長と思しき人物が|檄(げき)を飛ばす。

 

「なに!?どこから抜けた!!3班!何をしている。」

 

戦いが混迷を深めているころ、そこにその悲劇をぶち壊す人物が現れる。

 

.......しっ.......... っ......... っ...... はっ............... しっ........ っ...........

 

「なん.........だ?.....」

 

護衛の一人が情けなく疑問を放つ。そこには........

 

「正門からの要請で救援にきた。商隊とはあんた達のことか?」

 

鼻から下を布で巻き、目元以外を覆い隠した12、3歳に見える小さき少年が魔物の死体の山を眼下に、静かに(たたず)んでいた。

 

「なんだ!あいつは?」

「味方なのか?」

「.......っ、総員警戒!私が行く。」

 

隊長格の男が近づいてくる。弓人は至って緊張もせず。

 

「君は冒険者なのかね?」

「ああ。俺のいた支部にこの状況を見た正門の警備が救援を求めてきた。」

「ランクは?」

「......今、.......必要か?」

 

「いや.........」

 

『この死体の山を築いたのはおそらくこの少年だ。』と、この状況を飲み込んだ男。自分の息子にいてもおかしくない外見の少年の強さに、流石に興味が湧いていた。

 

「いや、失礼。私はこの商隊の護衛の責任者、隊長だ。」

「俺は冒険者組合の組合員だ。」

 

お互い名前は名乗らない。隊長は弓人の正体に疑問があり、弓人は逆に名乗られていないからである。

 

「それで?俺は何をすればいい?」

「........魔物の討伐を頼む。」

 

弓人は無言で頷き、そして、消えた。

 

(.......なにぃ?)

 

突然の目の前の人物の消失に驚きを隠せない隊長。

 

気が付くと周りから水っぽい音が........大量に........。

 

弓人は狼型の魔物の攻撃もそうだが、護衛が放っている矢も避けながら商隊周りの魔物を討伐していく。今回は出来るだけ無駄な動きはしない。元々無駄のない動きをしているが、出来るだけ早く相手を斬ることだけを考えて、走った。ただナイフを逆手に持ち、前に突出して。ただそれだけ、それだけで多くの魔物が死んでいく。

 

弓人はただ翔けて、翔けて、翔けた。

 

獲物が血を噴き出すその前に次の獲物へ。殺した魔物が死ぬ前に(・・・・)次の獲物へ。速度は増していき、魔物と商隊の戦いはただただ、弓人だけのカーニバルになった。

 

周りで戦っている護衛達から見れば、目の前の魔物が一瞬動かなくなったと思えば、次の瞬間血飛沫を上げて倒れているのだ。

 

今まさに魔物に食われそうだった若い者も、比較的安全な場所から矢を放っていた者も、勇敢に戦い、傷を負いながら魔物を通さんとしていた者も、そして豪華な馬車の中からその様子を震えながら見ていた小さき者も、(みな)一様に正体不明の影によってこの悲劇から降壇(こうだん)させられたのである。

 

「さて、終わったが?」

 

問題はその影の正体(・・)が、正体不明(・・・・)の少年であるということだが.........。

 

 

 

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「助かった.......よ。ありがとう。なんとお礼を言ってよいやら.......はは。」

 

先程の隊長が近づいて来てお礼を述べる。

 

「ああ。助けられて良かったよ。」

 

弓人は短い返事で返す。内心では少し焦っていたのだが。

 

(たしかに助けられたのは良いが、ここまでしてしまうと最初の決意『正体を隠してパトロンを見つける』を全く達成できないぞ。顔は隠したが......。さて、意味はあるのだろうか。)

 

苦し紛れに死体の服を少し破って目以外を隠したが、これからの展開に頭を悩ませる弓人。そこへ.........

 

「あなた様ですか、(わたくし)共の商隊を救ってくださったのは。」

 

そこにはスーツを着込んだ、中肉中背の比較的スラリとした、茶髪で丹精な顔立ちのダンディーなおじ様が立っていた。

 

(このファンタジー........なんか違うよなぁ..........。)

 

弓人の中ではこういう金持ちはズボンのベルトの上に大きな(ぜい)肉を乗せ、いやらしい笑みか、作ったような、こちらを伺う様な表情の人物を思うかべたが、今回限りは認識を改める必要があると思った。

 

「まぁ、はい。魔物を討伐したのは私です。」

「おお!なんと御強い!そのお年でこのような強さを御持ちとは、さぞ高名な指導者がいたのでしょうな。........いや、失礼。見た目では判断出来ない強さを持っていらっしゃるという事は貴方(あなた)も当然見た目通りでないと思った方がいい。つまりは............」

 

(は、話が、長い........)

 

その若干うんざりしていた弓人に救いの手が、

 

「あなた、命の恩人に失礼ですよ。」

 

ドキッ 弓人は思った。この声は絶対の美人の声だと。別に弓人は人妻属性があるわけではないが、ただ純粋に美人を見るのは好きなのである。

 

「この度はお救い頂き有難う御座います。妻の<ミルデ>で御座います。」

 

やはり美人だった。この場合期待を裏切るのが定石だが、弓人のファンタジーは一味違った。外見は美しい茶色の毛並に、整ったボディライン、服はやはり高級そうな種類も名前もわからないようなものを着ている。  

 

「おお!?私としたことが、申し遅れました。(わたくし)商会長をしております<コルバ>と申します。以降良しなに。」

 

そういって挨拶するとコルバは少し表情を硬くした。

 

「さて、早速ですが報酬の件についてお話しましょう。」

 

 

 

流石は金を司る商会長様である。

 

 

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