「さて、早速ですが報酬の件についてお話しましょう。」
流石は商人達をまとめ上げる商会長である。命のやり取りが終わったと思ったら次は金のやり取りである。しかし弓人にとってこの提案は願ってもないものだった。
「どこか静かな場所で話がしたい。」
「ええ、そうですとも。私共の馬車の中というのはどうでしょう?」
「ああ、わかった。」
((よし))
(??)
心の声が二重に聞こえたのは弓人の気のせいだろうか。黙って商会長<コルバ>の後をついていく。
「どうぞ」
「お邪魔します。」
(あ、素が出ちゃった。)
中はやはり豪華だった。床は赤い絨毯、椅子は触らずとも見るからにふかふかで、良く見ると内壁の角の方にスリットが見える。空調かと思った弓人であったが、あえて触れないで置いた。当然相手が自慢して来たらこれでもかと驚くためである。そういう魔道具的な何かがあるのかと既に驚いてはいるが。
「ささ、お座り下さい。」
フカァ
(おお、しずむしずむ。)
少し沈み過ぎな気がしたが、バネすら入っていない馬車の車体はよくガタガタと揺れる筈だから必要である、と弓人は考えていたが、
「御気に召しましたかな。それは織物業の盛んな「あなた?」.........いえ、そ、そうです!今回お救い頂いた報酬の件でしたね!」
早速
しかし奥方の素早い対応に助けられた弓人、
相手の話が止まったのを利用して始めに条件をつける。
「前提として、私の事は他言無用で、護衛達の事はどうしようもないが出来るだけ話を広めないで欲しい。」
「なるほど、解りました。こちらも詮索は致しません。それほどの力をお持ちのことだ。きっとすばらしい「(じー)」.........んっんん。失礼。了解です。」
妻からの視線で何とか発作が起こる前に我に返るコルバ。
このやり取りからなんとなくこの夫婦の生活が見えてきた気がする弓人。これが欺瞞の関係とは思えない。子供はいないのだろうか、とも考える
「報酬の件だが、そちらで決めてもらっていい。私は世情に疎くてな。」
少しだけ鋭い眼光を飛ばしながら話す。
「.........つまり自分達の値段は自分達で付けるように、と言うわけですな。」
弓人は瞬きで肯定する。
「ん~これはこれは、下手な商売相手より難しい取引ですな。」
コルバは思案する。商品の価値を計ることはこの年季の入った商人の頭脳にかかれば一瞬であるが、自分達の命に値段を付けろと言われれば難しい。ここまで成り上がってこられたのは博打ではなく堅実な取引の積み重ねであるからだ。他の商人のはそうでないかもしれないが、コルバにとって弓人は苦手な相手の一人であるかもしれない。
(げ、なんか難しい顔で考えてる。こういうのあんまり得意じゃない人なのかな?)
暗に提案して、早速後悔する弓人であった。
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「それでは、こういうのは如何か。これから私個人との取引をして欲しい。」
弓人はコルバの思案が終わる前に提案する。
「取引......ですか。なるほど。........つまりあまり表に出さないで私と取引し、あわよくば後ろ盾になって欲しいと。」
今度はコルバの眼光が鋭くなる。
弓人の顔が驚愕に染まる。目だけしか見えてないが。
「.........!?ああ、これは失礼致しました。いつもの癖でして。今回は商売ではなく命の恩人だというのに。」
こればかりは弓人も驚かざるを得ない。
(普通に命中させてきたな。俺より上手いじゃないか。)
ここにきてあの城で出会った少女の他に、また自分の特技を
「でも、そうなんですね?」
「ああ。」
「それではどういった取引を致しましょう?」
これには弓人に考えがあった。このファンタジーに通用するかは不明であったが。
「貴重な魔物の死体・特定の部位、各種宝、一般に言えないようなものでも、それら全てで秘密裏に取引がしたい。」
「組合や表の商会には持ち込まないと?」
「そうなる。あまり有名になりたくなくてな。」
コルバはまた深く思案する。
「.........分かりました。正式な取引では長い議論と契約が必要ですが、個人との、それも秘密裏な取引開始のみの約束でしたらここで交わすことが出来ます。もちろんこの話は御受けさせて頂きます。しかし当然これで終わろうとは思っておりません。私共の値段が決まり次第、次の取引の時に報酬をお渡しします。」
「ああ、了解した。」
「それでは次の取引ですが......「いや、」」
弓人がそこで遮る。
「商会の場所だけ教えてもらえればいい。」
「.........なるほど.........はい。いつでも御越し下さい。」
弓人の本意が伝わったようだ。コルバはメモ出してそこに商会の場所を記入し、弓人に渡す。
「どうぞ。」
それを受け取った弓人は、
「それでは私はここで.........」
「お送りします。」
弓人はコルバの開けた馬車の扉から外へ出る。異世界生活2日目にして取引相手が出来たことに安堵していたが.........
「少しお待ちなさいっ!」
このファンタジー、やはり一筋縄ではいかない。