大盗賊は弓を射る ~生ける叙事詩、最強の魂~   作:顔が盗賊

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第十七話 「お嬢様(純正)」

 

 

スゥゥゥ.................

 

「!?、どこに行きましたの!?」

 

なんだか面倒くさい展開を読み取った弓人は気配を殺す。そう弓人はこの体の制御の段階をまた一つあげつつある。馴染んできたと言うこともできるが。

 

「!?........!?」

 

弓人は、ぶんっぶんっと周りを探す“お嬢様”を観察する。

 

(んん?金髪?)

 

そう、このご令嬢、金髪の縦ロールにお姫様のようなピンクのドレス、靴も旅に履いていくようなものでは無い音が土を踏む音から聞こえてくる。

 

(年は........こっちの人間は皆丹精な顔立ちをしていて年齢が分からん。12、3歳......俺と同じくらいか?)

 

そして弓人はそれよりも気になることがあった。

 

(金髪と言うことは商会長夫婦の子ではない?)

 

そして先程の呼び止め方。

 

(はぁ、純正の“お嬢様”かぁ。)

 

ファンタジーにおいてお嬢様は主人公を悩ませつつも最後にコロッといくものもある。しかし、実際に対応する本人はたまったものではない。解離する常識、ぶっ飛んだ価値観、そして圧倒的な我がまま。これらを御すにはそれこそ劇的な展開からお嬢様を救ったり、力を示すしか方法はない。

 

(力は示した筈なのだが.........)

そうである。つまり弓人はあの高圧的な呼び止め方には何か理由があると考える。

 

(「私の王子様に!」.........ないな。 「冒険者風情が商会長に不遜ではなくて!」.........近いが、貴族でもないし、なにしろ彼女が近くにいなかったのは気配で分かってる。 「その力、雇って差し上げますわよ!」.........彼女は戦いの場にはいなかった........いやこの気配、視線だけは通っていたな。)

 

相変わらず化け物じみた能力である。

 

(つまり俺のことを雇いたいと?しかしお嬢様気質であのような呼び止め方になった。これが一番しっくりくるが.........)

 

答え合わせをしたい弓人であったが.........

 

「あの御仁はどこに?」

「え、ええ消えてしまいました。」

 

商会長夫婦は気配を消した弓人を見つけることが出来ない。実際には視えてはいるのだが。

右往左往している夫婦を尻目にお嬢様の方をみる。御付きの人もあたふたしている。いきなり姿を消したのはまずかったか?と今更ながら考える弓人であった。

 

考える弓人ではあったが.........

 

(ああいう輩との物語を、俺は掘り下げない。)

 

さっさと逃げる事にした。

 

 

 

////////////////////////////////////////

 

 

 

自らが救った商隊を弓人は堂々と歩く。誰にも声を掛けられることは無い。出来るだけ印象を薄くしようと、これ以上姿を見せるのを嫌ったからである。周りを見渡しながら歩いていると、魔物の死体を片付ける者、仲間の遺体を集める者、壊れた荷馬車から荷物を積み替える者、ただ立ちつくし、空を見上げる者。この戦いでは多くの運命が廻り、交わった。それは残酷で、ただただ傷跡を残す行為だったかもしれない。人も魔物もそんな“劇的”な中を争ったのだ。

 

それをものの見事にぶち壊したのが何を隠そう弓人であったのだが.........。

 

(まぁ、俺には関係の無い事だ。)

 

無責任はこの男によって極められた。

弓人はこちらに来て間もなく、城を脱出するときに自らを心の中で怪盗と称していたが、その『“劇的”の幕引き』まで奪うとは、全くもって“大怪盗”である。

 

(さぁて、この陰気なところから早く離れよ。)

 

弓人は歩きから軽いランニングの姿勢に入る。驚くべきことに常人の全速力を既に上回っているのだが。

街道には今も帝都の南正門に向かう馬車や人が歩いている。騒ぎが収まったのを感じたのだろう。やはり街などの壁の外は常に危険が付きまとうような世界では、他人の命は思ったより軽いものなのかもしれない。弓人はそんな、人々の冷たさを感じながら街道を帝都へ向けて走る。誰にも気づかれず。誰にも視られず。

 

 

 

そう“誰”にも。

 

 

 

 

 

(あ、昼飯食わんと。)

 

弓人にシリアスは似合わない。

 

 

 

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正門の周りには、出てきた時と比べれば節度を持った列ができている。列には商人風の者、冒険者風の者、久方ぶりの魔法使い風の者も。小さな門に並ぶ者達は急かすわけでもなく大人しく並んでいる。あの騒ぎが収まったからだろう。

 

弓人も静かに並んでいると20分程で自分の番がやって来た。

検問は分厚い壁の小さい門、つまりトンネルの中で行われる。持ち物検査のスペースと何かの探知機のような人ひとりサイズの門があるのを見ると、まるで空港のゲートのようだ。

 

「通行証か組合証明を。」

 

冒険者組合の組合証を渡す。

 

「ん、通ってよし。」

 

実にあっさりとした検問だった。そんなことを考えていると.........

 

ビーッビーッ、ガリガリガリガリガシャーン、ビーッビーッ...........

 

「「「確保ぉっ」」」

 

隣の列の門だろうか。けたたましい警告音と共に何かが降りたような音がした。よく考えるとまだ組合証を返してもらっていない。始めの検問の男は次の係員に渡していたようだ。

 

「こちらを。」

 

男が近づいてきて、先程渡した組合証が返ってくる。

 

(なるほど。組合証と魔力が一致しないとああなるのか。)

 

しかし、弓人は自分がまだゲートを通っていないことを気にしていると。

 

「冒険者組合より緊急の依頼があった冒険者と聞いています。ここを抜けましたらすぐに登録した支部へ向うように、との事です。」

 

弓人は思い出す。ここには通信が出来る魔道具が存在する事、そして自分がいたことで通信障害が起きていた事を。つまりはあの上司風受付嬢が何か気をまわしてくれていたらしい。

 

(こうして初任務を終えた弓人は帰路へついた。)

 

 

 

(あ)

 

 

(商隊にいるとか言ってた妹の事、忘れてた。)

 

 

流石は弓人、緊急依頼とはなんだったのか。

 

 

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