この世界の馬車は、厳密にいうと馬ではない。
馬の代わりに、馬のような生物「チョコボ」を使って馬車を引いている。
基本的に、馬よりも早くて力強いこともあり、もはや生活に欠かせない存在となっている。
「やっぱり不思議ですねー、このチョコボっていう生物は。」
青葉が毛並みを整えながらつぶやく。
「僕らの世界の馬よりも、かなり早いし力強いし、いっそ一人一人がチョコボに乗って戦えばいいんじゃないかな?」
同じく毛並みを整えていたラムザが、青葉のつぶやきを拾う。
二人は今マンダリア平原の中央部で、馬車のチョコボを休ませている。
馬車一台につきチョコボ一匹のペースはこの世界では普通だが、だからと言って酷使していいわけではない。
野生化しているチョコボは人を襲うほど凶暴な個体もいる。
そんなことにならないように、ラムザは適度に休ませることを提案した。
「よーしよし・・・夜から走りっぱなし位だったから疲れたねー」
青葉は少し上機嫌でチョコボの世話をしている。
エサと水の準備、休ませるための簡単な寝床づくりなど、率先して作業をこなしている。
「青葉?一度みんなを集めて今後の予定を確認しよう。」
「りょーかいです!みんなを呼んできます!」
敬礼しながら走り去っていく青葉。
ほかの仲間は周囲の警戒に当たっている。その周囲の仲間たち全員を集めて行動を確認する。
事の発端は、前日の昼間、ザルバッグからの言葉だった。
「骸旅団からの身代金要求だが、どうも腑に落ちない。」
「どういうことですか、ザルバッグ兄さん?」
ザルバッグは少し間をおいてから、改めて話し始める。」
「・・・骸旅団は貴族や貴族に使える者たちを狙う半貴族派の象徴だ。今までになかったこの行動、どうも考えにくくてな。」
「バカなっ!やつらはただのならず者だ!」
アルガスが吐き捨てる。そんな姿を見て、ザルバッグは一つため息をつくと、改めてラムザのほうを向く。
「情報収集に放った“草”が一人帰ってきていない。このタイミングで帰ってこないとなると、その方向がアタリだと思うが、北天騎士団も人員を割けず調査は進んでいない。」
「どの方向へ放ったのですか?」
「ガリオンヌの東、ドーターという貿易都市の方向だ。」
振り返り中庭から城門のほうへ向かうザルバッグ。
「・・・城の警護など退屈だぞ。そうは思わんか、ラムザ。」
そして、そのまま歩き去っていくザルバッグ。
その姿を見送ったディリータが、妹のティータに何やら話している。
(あの情報、僕たちに行け、と言っているようなもの・・・いや、そういっているのか。)
くるっと振り返り、電のほうを向く。
「僕たちはいくよ。電も、元気で。」
ラムザはそうして一つぽん、と頭を撫でた後、先に歩いて行ったディリータとアルガスを追いかける。
「あっ・・・あの・・・」
その電の言葉は、風のなかに消え、ラムザに届くことはなかった。
ラムザが少し思い出していたうちに、警戒に出ていた全員が戻ってくる。
幸い、誰も戦闘になっていなかったようで、無傷のまま帰ってきた。
「さて、みんなにはちょっと強行軍を強いてしまって申し訳なく思う。ただ、事態が事態なだけに早めに確認しておきたいんだ。」
ラムザは、あらかじめ用意しておいた地図を広げ、とある町を指さす。
「ここにドーターという町がある。僕たちの目的はここだ。」
「はいはーい、なんでそこに用事があるのー?」
「おそらく、ここにエルムドア候に関する情報、もしくはエルムドア候その人がいる可能性があるからですよ、村雨さん。」
「青葉ちゃん、どういうこと?ちゃんと私たちにもわかるように説明してくれる?」
「た、高雄さん落ち着いて・・・今から説明しますから!・・・ラムザが。」
最初から説明する気だったとはいえ、突然のふりにさすがのラムザも反応が遅れる。
目だけで「後で覚えておいてください、青葉」とだけ送り、改めて昨日ザルバッグがしゃべった内容を説明した。
「つまりドーターの町で情報収集ですよ!つまり青葉の出番ってことですよ!」
ひゃっほう!という、普段の青葉からは想像できないハイテンションな声を出してそこらじゅうを走り回る青葉。
「それは置いといて。漣たちにも実は動いてもらってる。あとは実地で確認するだけ。みんな、命令違反になるけど、ついてきてほしい。」
ちょっと少ないですが、移動の最初の一日です。
ガリランドはどうしよう、止まるかも。