「・・・高雄、どうだい?」
「ええ、大当たりですわ。見張り部隊がいますわ、ラムザ。」
目の前に見えるのは、屋根のなくなった家。ただ、窓だったところから見える奥には、何人かの人が見える。
ラムザと高雄が2人で偵察し、敵に気づかれないうちに戻る。
ほかの方面にも偵察が出ていて、そろそろ一度戻る頃合いだった。
「戻ってみんなと情報を共有しよう。ここが本命かもしれないし、そうでないかもしれないからね。」
そういって、ラムザは隠れていた砂山から降りる。高雄もそれに続いて砂山を降り、急ぎ足で仲間の待つポイントへと向かう。
「・・・ラムザ、私たちはちゃんと正義の上で戦えてるのでしょうか?」
「どうしたんだい?急に。」
急ぐ足から、普段の徒歩と同じような速さに落ちながらも、歩みは止めない。
しかし、高雄はだんだんと速度を落とし、ついには立ち止まってしまった。
「・・・捕虜の尋問中、捕虜の言葉を聞いてしまいました。敵だ、とわかっていても、彼の言葉は一定の正義がありました。それは、それは私たちにとっての正義かもしれないのに、私たちは一部の人たちが言う正義に、何も考えずに従っているだけなのかもしれないと思って・・・」
「高雄・・・」
高雄は羽織っていたローブをぎゅっと握る。
「・・・教えてください、ラムザ。『正義』って何ですか?」
「それは・・・」
ラムザは、答えられなかった。
過去、自分がやってきたことを振り返っても、そこに自分の意思が存在した部分が、果たしてあっただろうか。
それはこの世界に来てからだけじゃなく、その前の世界にいた時も考えていただろうか。
ラムザは、やはり答えを出せなかった。自分の思っていることがすべて正しいとはもちろん思っていない。
だが、それでも、正義だと思って行動してきた。
(しかし、それは本当に自分で考えて結論を出した答えだったのだろうか・・・)
「・・・すみません、変なことを聞きました。今は・・・忘れてください。」
そう高雄がいい、話を切り上げて歩みを再び始める。
その後ろ姿を、ラムザは追いかけていいか一瞬迷った後、追いかけた。
「別の場所にも見張り。ただ、少人数で、2人しか見えなかった。」
陽炎からの報告を聞き、事前に話していたラムザの話を統合して作戦を立てる。
「だとすると、2か所同時強襲ね。」
「それが妥当かと思います。」
村雨の作戦提案に、朝潮が乗っかる。
ラムザもその点に異論はなかった。ただし、敵のいる位置がそれぞれ離れていて、連携が取れない可能性が大いにあり得るのが不安要素だった。
「3人ほど小規模見張りのほうへ向かってもらって、残ったメンバーが大規模見張りのほうへ強襲をかけよう。増援の可能性が十分考えられるから、殲滅は速度重視でいこう。」
各々が頷く。ラムザの提案した大まかなプランがまとまり、次はメンバー編成と現場での作戦立案だった。
「小規模見張りのほうへは、五十鈴をリーダーとする。」
(・・・!)
表情にこそ出さなかったが、高雄は動揺した。普段なら、こういったことは任されることの多いはずだと、高雄は考えた。
(・・・先ほどの話をしたばっかりに、提督に信頼されなくなった・・・?)
高雄の動揺を目ざとく悟った五十鈴が、少し怪訝そうな顔をしたが、すぐに真面目な顔に戻りうなずく。
「五十鈴、連れていきたい人員2人を選んでくれ。」
そんなラムザからの指示に促され、朝潮と青葉をメンバーに加える五十鈴。
2,3打ち合わせをラムザとした後、すぐさま五十鈴小隊は出撃していった。
「・・・」
そんな五十鈴たちを、高雄はじっと見送った。
「高雄」
強襲のタイミングを計っていたとき、高雄はラムザから声をかけられた。
「・・・何でしょう?」
「高雄の正義を貫いて。」
それまで、敵の動向を探っていた高雄が、振り返る。
その顔は驚愕。一体何を言っているのかという顔である。
「僕は正義が何なのか、今は答えが出せない。だから、高雄は高雄が信じる正義を貫いて。その結果、僕を討つことになっても、ね。」
「な、なにを一体・・・」
「僕は今まで、普通に暮らしてきた。・・・ううん、普通じゃない時も確かにあった。でも普通だと思ってた。それは、すべてを与えられているから、普通だったんだ。」
「・・・」
「その結果、僕は深海棲艦を悪だと思い込んで倒した。この結果が、一体何を意味するのか、なんてまだ分からないけど、少なくとも、僕は考えることを今までしなかった。」
「それは・・・」
「だから高雄、その悩みは君のものだよ。いろいろ悩んで、いろいろ試して、いろいろ体験してその結果出た結論なら、僕はそれを支持するよ。だから、少なくともこの世界では自分の意思を貫いてほしいんだ。」
お互いが黙り込む。そして、その一瞬の沈黙ののち、ディリータたちが敵のアジトに踏み込んだという合図が打ちあがる。
「信号弾だ。・・・今はいこう、高雄。」
「ええ、そうね。」
「はいはーい、やっちゃうからねー!」
うかつに前に出てきた敵騎士をまずは切り付ける。その後、ナイトになった陽炎が追撃する。
騎士は多少はひるむものの、致命傷ではない傷には目もくれず、村雨に襲い掛かる。
騎士の後方からは弓矢による援護射撃も飛んでくる。まだ直撃はないものの、精度は徐々に上がってくる。
一つの出入り口のほうに群がる敵見張り部隊。一部のモンクは迂回して背後を取るべく、もう片方の出入り口から回ってこようとする。
「ここは通さない!大人しく投降しろ!」
しかし、そこにはラムザが待ち構えていた。出入り口は人が1人通るのに少し狭いというくらいの広さしかなく、ラムザが仁王立ちしていると、通れなくなってしまった。
敵モンクはラムザに殴りかかる。強行突破をかけようとしている。しかし、その物理攻撃は、高雄の唱える「プロテス」によって効果を減らされてしまう。
さらに、たとえダメージを受けても、後方に待機している高雄がすぐにラムザを回復させてしまう。
モンク達は1人、また1人と倒れていく。
高雄のMPがほぼつきかけたとき、ついにラムザとは反対側にいた村雨たちの部隊が、入り口にいた防衛部隊を突破し、中に突入した。
ラムザと戦っていたはずの最後のナイトは後ろから挟み撃ちに会う形になり、振り返り村雨たちを迎撃しようとした瞬間、ラムザに殴り飛ばされた。
そして、敵の見張りを全員縛り付け、抵抗できないように拘束した。
「これだけ派手に暴れたんだ。ほかのやつらに気づかれてもおかしくはないはずだけど・・・?」
ラムザは、縛ったやつらに尋問しているディリータとアルガスを見た。相変わらずアルガスは叫んだり暴言を吐いたりしているが、流石に前回ラムザとその一行にこってりと絞られたこともあって、暴力はしていなかった。
「ラムザ、やはりここら辺にエルムドア侯爵がいるらしい。だが、どうもほかの仲間が身柄を拘束しているらしく、ここら一帯をやはりさがさないといけないことは変わらない。」
「そうか・・・わかった、尋問ありがとうディリータ。」
「いいってことよ。親友に気を使うなよ!」
背中をたたくディリータ。ラムザにとっては、ディリータはこの世界で初めて会ったはずだが、ディリータにとって『ラムザ』は親友ということらしい。
そんな奇妙なずれを、ラムザは認識できていなかった。
砂ねずみの穴ぐら戦終了です。
さ、ラムザ達はエルムドア侯爵を見つけることができるのでしょうかねー