ラムザたちがイグーロスの執務室に飛び込んだ。
そこにいたのはダイスダーグではなく、ザルバッグと電、それに騎士団の騎士が数名話していた。
「わかった。北天騎士団に通達。北に逃げたやつらを追撃。あと、半数はイグーロスとガリランド、ドーターの防衛に当たるように指示を!」
「はっ!」
室内にいた騎士は駆け足で執務室を出て行った。
「ザルバッグ兄さん!」
「ラムザか。すまない、今はそうゆっくりと話してられない。」
「ダイスダーグ兄さんは?」
「深い傷もあったが、今は自室にて休んでいる。会うこともできるが、あまり長い時間をかけるなよ。」
そういって、ザルバッグは執務室を出て行った。
「お兄ちゃん・・・無事でよかったのです・・・」
ぽすっという衝撃とともに、電がラムザに抱き着く。
「電・・・だいじょうぶだったかい?」
「電は大丈夫なのです・・・でも、ティータちゃんが・・・っ」
そうして、ラムザに抱き着いたまま泣き始める電。
「まさか・・・女の子が一人攫われたっていうのはっ・・・」
ディリータの顔が青ざめる。そして、ふらっと倒れかけたところを高雄が支える。
「ダイスダーグ兄さんに話を聞きに行こう!」
「敵のアジトを落としたそうだな・・・よくやってくれた。あとは、ザルバッグに任せてゆっくりと休むがいい・・・。」
ダイスダーグはラムザが来たと聞くと、ベッドから上半身だけ起こし、ラムザ達を迎えた。
いつも執務のときに来ている服ではなく、就寝時に着る寝間着に身を包んでいる。
ラムザはその袖口から、包帯を少し見た。
その視線に目ざとく気が付いたダイスダーグが、気遣うようにラムザに話す。
「・・・心配するな。少し休めばよくなる。それよりも、だ。」
ダイスダーグが改めて姿勢を正す。その行為に、ラムザ達は背筋を伸ばす。
「やつらの本拠地を発見次第、総攻撃をかける。」
「ティータは、ティータはどうなるんですかっ!」
「騒ぐなラムザ、さすがに傷に響く。・・・それに、すでに手は打ってある。」
傷口であろう右胸を押さえて語るダイスダーグ。ラムザは思わず叫んだことを謝り、落ち着こうとした。
「ティータの身柄を取り戻すまでは総攻撃などはせん。実の妹のように想っているティータを見殺しになど・・・な。」
「本当に助けるまで手を出さないと思っているのか?」
ベオルブ邸から出たとき、アルガスがそう言った。
「兄さんがティータを見殺しにするとでも思っているのかっ!」
「ああ、オレなら平民を助けるなんてことはしないな。」
その言葉に、ディリータがキレた。アルガスに殴りかかる。
「言わせておけばぁ!」
「よせっ!ディリータ!」
ラムザがディリータを止める。アルガスは殴られた表紙にしりもちをつき、口から血を流したが、意識ははっきりしている。
「やっぱり平民はこんなところにいちゃいけないんだ!お前は本来異物なんだよ、ディリータ!」
どくんっ・・・
その言葉に、ラムザは強烈な違和感と恐怖を覚えた。
「異物・・・?」
「そうさ!本来、ここにいていいのは貴族だけだ!平民は平民らしく生きていけばいいのさ!」
ぱぁん・・・
アルガスの頬がはたかれた。
アルガスがはたいた人物をにらみつける。
「どういうつもりだ?タカオ。」
「どうもこうも、あなたにはここからいなくなってほしいのですわ。」
高雄がアルガスを見つめる目が、冷たいどころか極寒を超えるほど厳しい。
「フン!お前みたいな“異物”もいるんだな。貴族のくせして平民をかばうなんて・・・」
「失せなさい、アルガス。」
再びの勧告に、アルガスは肩をすくめて立ち上がり、歩き出す。
「ずいぶんと嫌われたもんだ。まあ、エルムドア侯爵を助けてもらった恩は返したし、ここらで抜けさせてもらうぜ。」
歩き始めたアルガスだったが、すぐに足を止め、ラムザに振り返る。
「やつらの本拠地はジークデン砦が最有力らしいぜ。さっき、騎士団の連中がそう話してた。」
それだけ言うと、アルガスは今度こそ振り返らず、歩き去った。
そうして見えなくなったころ、ディリータが乱暴にラムザから離れる。
「ディリータ!」
「すまない・・・今は一人にさせてくれ・・・」
そして、ディリータはアルガスが歩き去ったほうと反対側に走っていった。
「ディリータ・・・」
高雄は、心配そうにディリータの背中を目で追っていた。
同時刻 とある神殿内にて
一人の歳をとった男騎士と、若い女騎士が向き合って話していた。
「・・・骸旅団をそのまま滅ぼしてしまっていいの?まだ利用価値はあるとは思うけど?」
女騎士が、男騎士に話す。
「構わぬ。確かに過去ならば利用価値があったが、すでにダイスダーグが動いているこの状況では、むしろ懸念材料でしかない。」
「へぇ?あのウィーグラフとかいう騎士、割と強そうに思えたけど?」
「だからこそだ。全力を出せる状況でなければ、計画は思うようには進まぬ。」
「死なすには惜しい人材ね。助けないの?」
「この戦いで生き残るならそれでよし。そうでなければその程度だったということだ。」
男騎士が振り返り、神殿奥にある十字架を見上げる。
女騎士はその特徴的で大きな黒髪のポニーテールをはためかせ、十字架と反対の神殿入り口へと向かう。
「見込みがありそうなら連れてくるわ、ヴォルマルフ。」
男騎士―ヴォルマルフは少し驚いたように表情をほんの少し変える。
だが、すぐにその表情を引っ込め、険しい顔になる。
「我らの計画に沿うような人物であることを期待しているぞ・・・ヤハギ」
女騎士―矢矧は振り返らず、神殿を後にした。
さあ、いきなりきな臭くなってきました。
ダイスダーグのティータ奪還の手とは・・・
そして、別勢力のように見えるヴォルマルフと呼ばれた男と、ここでまさかの矢矧が登場。この先一体どうなるのでしょうか・・・