艦これ✕FFT~イヴァリースを巡る~   作:聖騎士ボコ

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chapter20 ~苦悩~

「ああああああぁぁぁぁあぁぁぁっああああぁぁあっ!」

 

戦闘が終わっても、朝潮は叫び続ける。

まるで、叫んでいないと壊れてしまうような勢いで。

 

だが、実際はもう壊れていた。

 

今まで、朝潮は実際に人を殺めたことがなかった。

戦闘不能になる程度のダメージしか与えられなかったからだ。

わざわざとどめを刺そうともせず、それよりも仲間を助けることに意義を見つけていた。

 

しかし、今回。

 

ミルウーダにとどめを、ミルウーダを殺してしまったのが自分の意思だとわかってしまってから、朝潮は叫び続けている。

 

「朝潮っ・・・!」

 

なお叫び続ける朝潮を、ラムザは力いっぱい抱きしめた。

 

「ごめん・・・朝潮・・・ごめんっ・・・」

 

「ああああ・・・し・・・れい・・・・・・か・・・ん・・・」

 

「そうだよ、君の司令官だよ!ごめん・・・こんなつらい思いをさせて・・・そして、ありがとう・・・僕を守ってくれてっ・・・!」

 

「あ・・・」

 

のどがかれてしまったのか、それともラムザが抱きしめたからなのか、朝潮の叫びが止まる。

 

それでもなお、ラムザは朝潮を抱きしめ続けた。

 

そのうちに、ラムザも抱きしめ返される感覚を感じる。

 

「しれいかん・・・あさしおは・・・しれいかんを・・・まもれましたか・・・?」

 

「あぁ、守ってくれたさ。こうして生きてることが何よりの証拠さ。」

 

「あぁ・・・それはよかった・・・で・・・す・・・」

 

抱きしめていた朝潮から力が抜ける。

叫び疲れたのか、それとも張り詰めた気が途切れたのか、朝潮は意識を失った。

 

「・・・朝潮をこれ以上は連れていけない・・・」

 

ラムザはいわゆるお姫様抱っこで朝潮を持ち上げると、陽炎を呼んだ。

 

「陽炎、朝潮を連れてイグーロスに戻ってほしい。今の朝潮じゃ戦えない・・・」

 

「・・・わかったわ。」

 

陽炎はそれ以上何も言わず、朝潮を背負い来た道を引き返していく。

幸い、ガリランドからそう離れていないため、多少歩く程度でガリランドにいる騎士団と合流できると、ラムザは判断していた。

 

 

 

「・・・僕は・・・なんて無力なんだ・・・」

 

朝潮と陽炎が部隊から離脱して1日後。

ラムザ達は夜営をしていた。今はラムザの見張りの時間である。

周りにはいくつかのテントと、そのテント群の中心にあるたき火がある。さらにテントの外側は崖に囲まれており、空がずいぶんと狭く見えた。

 

「朝潮たちは・・・無事に合流できたよね・・・?」

 

いくら何でもガリランドについているであろうと、ラムザは考えた。そして、それ以上朝潮たちのことを考えず、今いる仲間のことを考えるように意識した。

だが、朝潮の心の傷はかなり深く、そしてこちらのディリータの身体の傷も深い。

 

「話し合いで解決できるなんて・・・『敵』と話し合いが通じたことなんてなかったじゃないかっ・・・!」

 

地面を思い切り殴る。だが、こぶしに迷いがあったためか、力がまとまらず衝撃波もなにもおこらない。

 

「・・・どうして、こんなことになってしまったのだろう・・・」

 

そんなラムザの独り言を、テントの中で眠っていたはずの五十鈴が聞いていた。

 

「・・・どうして、かしらね・・・」

 

そのつぶやきは、誰にも覚えられることはなく、夜の闇に消えていった。

 

 

翌朝

 

ディリータの傷は、魔法であらかたふさぐことができた。

ただし、見た目だけ大丈夫に見えても、きちんと傷が癒えたわけではなかった。

 

「無理しないでください。ふさがったように見える傷も、激しく動けばまた開くのですから!」

 

高雄がディリータに念を押す。ディリータは苦笑しながら肩をすくめる。

 

一行は前日にミルウーダたちが通ったであろう道を進んでいた。

足跡が深く残っていた。装備品をつけながら行進した結果の足跡だった。

 

「つまり、進軍ではなく逃走するために、裏から回っていたと?」

 

「うん、でなければ、ミルウーダの来た方向と発言のつじつまが合わないんだ。」

 

青葉とラムザが一行の一番前で、ミルウーダの行動を分析する。

その2人を見ながら、五十鈴が村雨に近寄る。

 

「・・・あなたのせいじゃないわ、村雨。」

 

はたから見れば落ち込んでいるようには見えない村雨が、びくっと身体を震わせる。

ごまかそうとしていた雰囲気を出していたが、五十鈴が本気で心配している顔を見て、村雨はごまかすことを諦めた。

 

「・・・でも、私がもっとうまく立ち回っていれば、朝潮ちゃんがあんなになるまで壊れなかったはずなんですっ・・・」

 

ぐっとこぶしを握り締める。握り締めすぎていたのか、村雨の手から血が垂れる。

 

「・・・そうしたら、あなたが壊れてただけよ。たぶん、朝潮なんかよりもよっぽどひどくね。」

 

五十鈴が自身の荷物からガーゼと包帯を取り出し、村雨の手を処置する。

 

「私は、もう、覚悟を決めてますから。」

 

「表面的に壊れてないように見えるのが、一番たちが悪いのよ?」

 

これでよし、と五十鈴が言うと、そこには村雨の手にきっちり巻かれた包帯があった。

 

「いい?私の意見を言うと、今回壊れたのが朝潮でよかったと思ってるわ。これで、朝潮は戦う怖さを知ったわ。朝潮には悪いけど、あの子のためにも離脱してくれてよかったと思うわ。」

 

「どういう・・・ことですかっ・・・!」

 

普段は飄々としてる村雨に、怒りの表情が浮かぶ。聞き方によっては、朝潮がいなくなってよかったともとれる発言に、村雨の怒りも面に出てくる。

 

「落ち着いて聞きなさい?朝潮はよくも悪くも素直すぎるのよ。善意も悪意も関係なく受け止めるあの子は、感情で物事を処理しきれない不器用さも持っていたの。そして、処理できる積載量を超えたあの子は、ついに壊れた。」

 

「だから・・・いらないと!?」

 

「勘違いしないで。人間同士の争いってのは、必ず欲が絡む。それが片方にしかないのか両方ともにあるのかは別として。そんな誰に得があるのかもわからない戦いに、朝潮のような純情な子を、本当は巻き込みたくなかったのよ。」

 

「・・・」

 

「結果的にだけど、朝潮をこの争いから遠ざけることができたわ。そのまま、人を殺める恐ろしさを知った朝潮が、戦う道から降りてくればいいと思ってるのよ。」

 

「朝潮ちゃんは・・・壊れちゃったんですよっ・・・!」

 

「そこのケアは、イグーロスにいるであろう漣たちに任せるわ。こういっちゃなんだけど、第七駆逐隊の面々って、すごく面倒見がいいから。」

 

五十鈴は言い終わると、前を歩くラムザ達に追いつこうと―村雨から逃げる意味もあった―足を速める。

 

(・・・手を汚す人は私みたいな人でいい。これ以上、朝潮みたいな子を出させるわけにはいかないからっ・・・!)

 

五十鈴は、心の中で決心をした。

 

 

続いていた足跡は、目の前に現れた風車小屋に続いていた




朝潮離脱、陽炎離脱。

ラムザの苦悩と五十鈴の決意
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