「あれは・・・」
「風車小屋、ですね。」
先頭のラムザと青葉が、草むらに隠れて警戒する。
「見張りの数人と、チョコボがいるわね・・・」
五十鈴が目の良さを生かして風車小屋周辺を見渡していく。
「できれば、ここを駆け抜けてジークデン砦まで行きたいが・・・」
「諦めなさいディリータ、敵はこちらに気が付いてるようですわ。」
見張りの数人が、明らかにラムザたちの方向を向く。
そして、風車小屋の扉が開き、2人出てくる。
片方は女モンク、もう一人が・・・
「なんと、お前たちは・・・あの時の・・・まさか、お前たち士官候補生がミルウーダを・・・」
骸旅団団長、ウィーグラフだった。
「ウィーグラフ!」
ラムザ達は草むらから飛び出し、各々が構える。
「我が妹、ミルウーダの仇・・・とらせてもらうぞ!」
ウィーグラフが剣を構えると、そのほかの骸旅団も構える。
「いくぞっ・・・!」
ウィーグラフがラムザに向かって詰め寄る。
「死兆の星の七つの影の経絡を立つ!北斗骨砕打!」
ウィーグラフの叫びとともに振り下ろされた剣がわずかに光った。
そしてその後、ラムザの足元からエネルギー体のおおきなとげが突き出てくる。
「ぐぅっ・・・」
腹部にまともに食らったラムザだったが、致命的ではない。
体制を立て直し、身構える。
「ティータを・・・妹のティータを返してくれ!」
ディリータがウィーグラフに叫ぶ。
ウィーグラフはラムザに向かっての構えを解かず、視線だけディリータに向ける。
「ティータ?あの娘のことか?だとすると、お前がベオルブ家の?」
「彼はベオルブ家と関係ない!僕がベオルブの名を継ぐ者だ!」
今度はラムザがウィーグラフに詰め寄る。
ラムザの拳撃をかわし切れず、一撃もらうウィーグラフ。その一撃だけで十分脅威であると、ウィーグラフは認識した。
「間違えたか・・・だが、全く関係がないわけではあるまい!」
再び北斗骨砕打を放つウィーグラフ。今度はラムザではなくディリータの足元から、エネルギー体のとげが放たれる。
「―――――――――っ!」
ディリータに放たれたその攻撃は、本来ならば必殺の威力ではなかった。
だが、ディリータの傷が思ったより深く、傷を完全に癒すことができなかった反動が、今現れた。
ディリータはその一撃を食らうと、そのまま倒れた。
「ディリータ!・・・くっ、青葉!ディリータを連れて一度下がって!」
「む、無茶言わないでくださいよぉー!こっちも手一杯なんですから!」
黒魔法を唱え、敵を攻撃しながら、徐々に下がっていく青葉。
しかし、相手の前衛は3人と1匹。それに対して、青葉たちは前衛が1人の後衛が3人と、圧倒的にもろい布陣となっていた。
「朝潮ちゃんがいなくったってぇぇぇぇ!」
村雨が前衛で孤軍奮闘する。本来ならサポートを受けて孤軍ではないはずだが、村雨は隣にいたはずの温もりを感じることができず、たった一人で戦っているような錯覚に陥る。
「ふぅっ!・・・ふっ・・・!」
五十鈴が手を休めることなく援護射撃をする。
しかし、多少敵の動きを阻害する程度で、決定打になっていない。
「サンダー!サンダー!サンダー!」
青葉が敵に猛攻撃を仕掛ける。しかし、敵もそれなりに修羅場をくぐってきた戦士。ただの魔法の連打ではひるまなかった。
「諦めろ、ベオルブを継ぐ者よ!今のお前たちでは我々を止めることはできん!」
三度ウィーグラフの剣が煌めく。
ターゲットが再びラムザになったようで、ラムザの足元からエネルギー体のとげが突き出る。
「ぐうっっっっ・・・」
たまらず片膝をつくラムザ。青葉たちも押され気味だ。
「ラムザ!」
高雄が駆け寄ろうとする。しかし、ほかの仲間の援護をしなければ、そちらも危ない状況だった。
「終わりだ・・・ベオルブを継ぐ者よ!」
「ウィーグラフ様!」
追撃の一撃をふるおうとしていたウィーグラフの動きを、さらに後方から現れた騎士の叫び声が止める。
「ジークデン砦が強襲されています!急ぎお戻りを!」
「なんだと!・・・こいつらは陽動か・・・こい!ボコ!」
ウィーグラフが名前を呼ぶと、チョコボが駆け寄ってくる。
「全軍撤退!ジークデン砦に向かうぞ!」
骸旅団は全員撤退する。ウィーグラフもチョコボにまたがる。
「待て!ウィーグラフ!」
「いいことを教えてやろう。エルムドア侯爵を誘拐させたのは誰だと思う?それはお前の兄、ダイスダーグ・ベオルブだ。このことは、ザルバッグ・ベオルブも知ってのことだろう!」
「馬鹿な!なぜそんなことをしなければならない!」
「簡単なこと。国王亡き後の覇権をめぐり、2人の獅子が争おうとしている。白獅子ラーグ公と黒獅子ゴルターナ公だ。今の2人は敵味方を見極めようとしている。だが、考えや思惑を判断するのは難しい。ならばいっそ亡き者にし、その領地に自分の信用する者を送り込めばいいと考えた。革命につかれた愚かなものが、ダイスダーグの甘言に釣られてあのようなことを起こしたのだ。」
「そんな・・・」
「うそでしょ・・・」
高雄と五十鈴が信じられないという顔をする。ラムザはあまりの話に理解も納得も追いついてはいなかった。
「うそだ!ベオルブの人間がそんなことをするはずがない!」
「自分の目と耳で確かめてみるがいい!さらばだ、ベオルブの名を継ぐ者!」
ウィーグラフはそれだけ言うと、チョコボを走らせ風車小屋を後にした。
「・・・どこまで・・・どこまで人を操れば気が済むんですのっ・・・」
「高雄・・・」
「・・・すみません、少し1人にさせてくださいな・・・」
高雄はそれだけ言うと、傷の手当てもそこそこに五十鈴と別れた。
少し歩くと崖が見えてくる。高雄は落ちないように気を付けながら、崖の淵に座った。
「・・・」
何が正義で、何が悪か。
高雄は元の世界でも考えた命題を、再び考える。
いつもなら答えが出ないはずだが、今回だけは違った。
「あら?1人なのかしら?」
その声に反応した高雄が、流れるような動作で立ち上がり、声のほうへ杖を構える。
「そんな警戒しなくてもいいのよ?高雄。」
「矢矧・・・?」
声のしたほうから出てきたのは、青いローブのようなものを来た騎士―矢矧だった。
「久しぶりね。元気そうで何よりよ?」
「これのどこを見て元気だと・・・!」
高雄が構えた杖に力をこめる。矢矧がやれやれと肩をすくめると、話始める。
「私のおかげで、あなたたちは助かったのよ?感謝してほしいくらいなのだけど?」
「・・・とりあえず久しぶり、とだけ言っておきますわ。それで、感動の再会をした私に、何か用ですか?」
高雄の警戒感は最高だった。再会したというのに全くと言っていいほど喜んでいないどころか、面白そうなものを見つけたような顔をしている矢矧は、高雄の知っている真面目で融通の利きにくい性格―自分自身と似ていると高雄は思っている―と違うように見えていた。
「要件をいう前に、私から一つ質問するわ、高雄。」
そうして面白そうな顔から一転、真面目な顔になる矢矧。
「あなたは、この世界を救えると思う?」
風車小屋終了です。
・・・ここのマップ、絶対負け戦だと思うんですよ。
だって準備しなきゃ絶対勝てないし、1、2人くらいキャラロスすること前提のマップな気がするんですよ。
なんで、今回のここはウィーグラフたちの撤退という形にさせてもらいました。
・・・うん、どう頑張っても勝てるように書けなかっただけですが。